●栄枯盛衰の赤黒対決 ('09-'10欧州CLベスト16)
ヨーロッパチャンピオンズリーグの決勝トーナメント1回戦2ndレグを今日になってようやく録画観戦した。マンチェスターU 4−0 ACミラン。いきなり1回戦で実現した名門ビッグクラブ同士の対戦(マスコミ的に言うと「ベッカムダービー」かな(笑))は、1stレグに引き続いてユナイテッドが決定力の違いを見せつけ、世代交代半ばのミランから4点を奪う大勝。ここ数年における両チームの充実度の差が如実に表れたような試合となったのであった。
8万近い観客で膨れあがったオールド・トラッフォード。既に第1戦で3ゴールを奪っているユナイテッドには相手を呑んでかかる勢いがあった。ルーニーへの楔をスイッチに次々アタッカーが攻め上がり、ルーニーやフレッチャーの強烈なシュートがミランゴールを脅かす。ミランもピルロのパスさばきから反撃を試みるが、若いFWにはユナイテッドのブロック守備を脅かすだけの迫力がなく、ロナウジーニョのトリッキーなヘディングシュートもポスト右に外れ。
そして13分、前線に1人で張っていたルーニーがネヴィルの上げたアーリークロスを頭で叩き、ゴール左にゲット。あまりにもあっけなく、あまりにも大きいユナイテッドの先制点。右後方から低く速く飛んでくるクロスに対してDFを完全に置き去りにし、かつ反転の力でボールを加速して枠に飛ばす素晴らしいシュートだった。その後はミランが攻勢に出るが、ユナイテッドは全く慌てることがない。ファン・デル・サールの好セーブもあって決定機には至らない。
2点目は後半開始早々に。左サイドを駆け上がるナニが右アウトサイドキックで、GKとDFの間に巻いていくグラウンダー。飛び出したルーニーがGKの目前で軽く触ってボールはコロコロとゴールの中へ。シュートが転がっていく数秒間、ミランの選手たちの闘志が抜けていくのが見えたような……これでほぼ勝負あり。その後は余裕の出たユナイテッドがパスを回しまくり。59分、スコールズがシュートフェイクから出したスルーパスでDF裏に出た朴がゲット。3−0。
ミランは64分にベッカム、68分にインザーギとベテラン勢を投入。ベッカムの登場時にはスタンドから大歓声と愛の塊のようなブーイングが(笑)。それに応えて強烈なボレーシュートを枠に飛ばすベッカム。しかし試合全体の流れは変わらず、ユナイテッドはルーニー、ネヴィル、スコールズと温存していく盤石の態勢に。88分、波状攻撃からラファエルの上げたクロスをファーサイドに流れていたフレッチャーが押し込んでなんと4点目。そして試合終了となった。
マンチェスター・ユナイテッドのファンにとってはたまらない結果だった。
まず、相手がACミランだったこと。前回対戦した'06〜'07準決勝ではホームでリードを奪いながらアウェイで0−3と大敗を喫していただけに、雪辱は果たしたぜ、という感じである。そして4−0というスコア。最近のユナイテッドは国内と欧州では戦い方を分けており、欧州では手堅く結果を出していたのだが、今回は(別に戦法は変わってないけど)スカッと派手な勝ち方だった。おまけにベッカムの元気なプレーまで見ることができたのだからそりゃ最高だろう。
それにしてもルーニーは凄い。「C・ロナウドのお膳立て」というたがが外れて一気に能力が解放されたというか。元々高いシュート力の精度が上がった上に「頭」という武器まで加わって……それに、単なる点取り屋ではない、というより攻撃そのものの中心でもあるからね。動き回って足下に収め、広い視野から的確に展開するポストプレーは絶品。いざという時は献身的だし、本当に凄い選手である。決勝くらいまで勝ち進んだら今季のバロンドールは決まりか?
一方、ミランの方は……難しい時期なんだなあ、という印象。国内リーグはインテルのもたつきもあってまだ可能性があるけど、怪我人は多いし、選手の構成的にベテランと若手に二極化しちゃってるし、何より全盛期の力強い自信が失われてしまっている感じ。2年前に比べればやや下降しているように思えるユナイテッドに大敗だからねえ。もう一度欧州トップレベルに戻るまでにはけっこう長い道のりがありそうだ。レオナルドも可哀想に、貧乏くじキャラなのかな。
つーか、フィオレンティーナも駄目だったし、チェルシー×インテルの結果如何ではまたイタリア勢が早々に全滅、なんて事態もあるのか。ジョゼさんはこの流れを止められるのかのう……。
コメント
村田さん、こんにちは。
私の連れ合いはミランのファンでただいまヘコんでおります。ミランが「もう一度欧州トップレベルに戻る」のは、ベルルスコーニの存命中にはもうないのではないかと思います。チームの栄光と衰退は彼の人生とともにあったというのは、悲しくも美しい物語ですが。
Posted by: Kay | 2010年03月14日 01:16
どうもです。>Kayさん
ミラン、確かにもう一度作り直すのはつらいかもしれませんが、まだあきらめるのは早いかとも思います。
チーム構成のギャップが戦いぶりにひずみを起こしているようにも思いますが、しかし妙に焦らなければきっかけは作れないことはないのでは。
ただ、レオナルド監督のままで良いかと言えば……やっぱ彼は気の毒に我慢の数年間だけ貧乏くじ、ですかね。
Posted by: murata | 2010年03月16日 00:10
私の投げやりなコメントにお返事いただき恐縮です。確かにマンチェスターUも、CLグループ・ステージを確か最下位で敗退という我慢の時期があって今の成功があるわけですよね。でも、「焦らず我慢」というのはベルルスコーニに最も似合わない言葉ですね。ちょっと負けが込むと彼が監督を責めだして、あまり建設的な雰囲気にならない気がします。レオナルド監督よりも、オーナーにさえ耳の痛いことをご意見できるような重鎮タイプの人(楽天の野村前監督みたいな)が必要かもと思います。
Posted by: Kay | 2010年03月23日 03:00