« 『卒業写真』 | メイン | 清宮監督退任 »

2010年02月07日

●「取りかえしのつかないこと」 ('10ラグビー日本選手権1回戦)


寒い風が吹きまくっていた今日の昼間は、秩父宮ラグビー場で日本選手権1回戦。東海大学 7−11 NTTコミュニケーションズ。「大学1・2位と社会人下部リーグ・クラブ王者」の組み合わせになり、学生の勝機が俄然大きくなった近年の1回戦。帝京×六甲ファイティングブルは前者の楽勝だろうと見込んで、より接戦になりそうな方を観戦した。試合は一進一退のせめぎ合いが続くロースコアゲームとなり、絶好機を大チョンボで逃した東海がわずか4点差の惜敗。
 
 
前半は風上に立った東海が押し気味に試合を進めた。いきなり2分、FB豊島のミニパントでゴール前まで攻め込んでスクラム・ラインアウトからトライを狙うが、ラックで微妙にボール出しを邪魔する社会人の巧さに阻まれる。東海は果敢なパス攻撃とキックを交えて攻め立てるが、セットプレーと密集のボール出しで苦戦する場面が多く、また奥目を狙ったキックはNTTコムのSO君島・FB栗原徹の着実な処理にあってなかなかチャンスにつながらない。

前半半ばを過ぎるとNTTコムも反撃し、5分以上に渡って東海陣22m内で連続攻撃をかける時間帯もあったが、ここは東海が粘りの守備でしのぎきる。その後も一進一退の時間が続き、ようやくスコアが動いたのは終了間際。37分、栗原が鋭いラインブレイク→ミニパントとお得意のプレー。東海DFが押さえそこなったところをNTTコムアタッカーがたたみかけ、最後はWTB友井川が左スミに駆け抜けてトライ。コンバージョンは決まらずに0−5。

しかし、これで目が覚めたか、東海は直後のキックオフでそれまでよりスピードアップしたパス攻撃を見せて大きくゲイン。40分のブザーが鳴ったところでFLリーチの突進も交えながら右→左と素早くつなぎ、最後はSH鶴田がグズグズになったDFラインを割って左中間を駆け抜けた。コンバージョンも決まって7−5。思わず拍手したくなるようなダイナミックなトライであり、東海にしてみれば「よし、ここから本領発揮だ」というところだったろう。
 
 
後半、前半最後のトライで自信も得ていたのだろう、東海が風下ながらキックオフからいきなりチャンスを作る。右22m付近から大きく左へ展開、DFが外へ流れたところを豊島が内へカットインして抜け、トライ……と誰もが思ったところ、インゴールで回り込もうとした豊島はDFの寄せを見て、なんと遠くの味方目がけたパス。そして案の定ボールはそれ、あえなく逸機。そのままボールを置けばトライだったのに……唖然とするスタンド、頭を抱える豊島。

絶好のチャンスを逃した東海はこれで勢いを失い、マーフィーとネルに替えてミカとジェラードを投入したNTTコムが追い風に乗って攻める展開となる。ロングキックからたびたび東海陣に入るNTTコム。だが、外国人の突破力に頼った単調なパス回しは決め手に欠け、ボールを奪った東海がキックやランでハーフウェーまで押し返す場面が続いた。もっとも東海の方も相手陣に入ろうかというところでノックオンや反則を繰り返し、得点機会はほとんど作れない。

「どっともどっち」のじれったい時間帯が途切れたのはまたも終了間際。NTTコムはペナルティからキックで東海陣22m内へ入って連続攻撃。たまらず東海がオーバーザトップを犯したのは37分を過ぎたところだった。君島がPGを決めて逆転。7−8。後のなくなった東海は次のキックオフで捨て身の攻撃。しかしさすがに自陣深くからの攻めはつらい。結局、再び得たPGを君島がきっちり決めたところで終了のブザー。NTTコムが2回戦進出を決めた。
 
 

まあ、若気の至り、と言ってしまえばそれまでなんだけど。

東海大学は、そのポテンシャルの一端は見せてくれた。前半終わりと後半始めに見せたパス攻撃は素晴らしく、このチームの志の高さが具現化されていた。少なくともあの時間帯に関しては胸を張って良いと思う。ただ、学生と社会人の対戦ではありがちなことではあるけれど、密集・セットの苦戦と、あとハンドリングエラーがとにかく多くて……。それでも4点差なのだから、「惜しかった」というべきか「しくじった」というべきか。印象的には後者である。

豊島君の大失敗には考えさせられた。おそらくコンバージョンの位置まで考えてより良い選択をしたつもりなんだろうが……。才能溢れる選手らしいチョンボとも言えるし、人によっては「絶対にやってはいけない」プレーだと言うだろう。何年か前の日本×イタリアで、どフリーの大畑がダイビングトライを試みてポロリ落球したのを思い出した。もちろんそんな軽率なミスはテストマッチでは絶対に許されないわけだが、今回も「負ければ終わり」の試合だったから。

なんつーか、やっぱり取りかえしのつかない失敗というのはあるのだなあ、と。試合後に号泣していた豊島君だけど、彼自身は3年生だし、来年取り返せば良い、と言えなくもない。スタンドから聞こえた「軽いプレーを反省する機会ができてよかったじゃん」という声もそのとおり。でも、チームには4年生もいたし、来年同じ所まで勝ち進めるかどうかはわからないのだから……。まあ、いずれにせよ、その重さを背負ってまた頑張るしかないんだけどね。

NTTコミュニケーションズは来年トップリーグへの昇格が決まっている新進気鋭のチーム。今回初めて見たけれど、正直なところこのままだと残留は相当厳しかろうと思う。核になる外国人選手はけっこう良くて、SO君島やFB栗原もレベルは高い。ただ、それ以外の選手の能力が「大学レベル」であることが今回証明されてしまったのではなかろうか。ラグビーの場合はJリーグと違って補強が難しいだけに、全体的なレベルアップが必要になってくるのだろう。
 
 
花園で行われていた同選手権の1回戦、サントリー×NECは大方の予想を覆してNECが大健闘を見せ、10−10の引き分け。抽選(試合直後!)の結果、なんとNECの2回戦進出が決まった。こちらはJSPORTSの中継で観たのだが、サントリーが何度となくチャンスを作りながらあと一歩のところでノックオン(平、佐々木、etc)やら反則やらが出て仕留めそこなった印象。最後のピシのDGが決まっていれば、単に「冷や汗」で済んでいたのにね。

圧倒的な得点をあげてレギュラーシーズン無敗だったことを考えれば、プレーオフ・日本選手権と続けて初戦敗退したことはサントリーとしては非常に痛いしくじりであるように思える。というか、「ナチュラルラグビー」とかいうスローガンが、最後は結局キツい仕事をする選手が少ないラグビーになっていたような……。清宮監督ももう4年目だけど、どうするのだろう。この敗戦は彼らにとって取りかえしのつくものなのか、それともつかないものか、はたして。
 

トラックバックURL

このエントリーのトラックバックURL:
http://umanen.org/mt/mt-tb.cgi/2570

コメントする

(初めてのコメントの時は、コメントが表示されるためにこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまでコメントは表示されませんのでしばらくお待ちください)