●気迫の勝利、継続の勝利 ('09-'10トップリーグプレーオフ決勝)
今日の午後は、秩父宮ラグビー場でトップリーグプレーオフ決勝。三洋電機ワイルトナイツ 0−6 東芝ブレイブルーパス。リーグ優勝をかけた大一番は、無敗の三洋とサントリーを倒した東芝という、昨季と全く同じパターンの顔合わせとなった。試合は今季最高1万8千観衆の前で行われ、東芝が準決勝に引き続いて激しいブレイクダウンでペースを握り、トライゲッターを欠く三洋は最後までゴールラインを越えることができず。東芝が2年連続5度目の優勝。
前半は立ち上がりから、決勝らしい張り詰めた攻防に。東芝はサントリー戦と同様にラック・モールで厳しくプレッシャーをかけ、三洋にスムーズなボール出しを許さない。インフルエンザで霜村・北川を欠く三洋は勢いに押される形となり、SOブラウンのキック不調もあって東芝がやや押し気味に試合を進めていく。9分、東芝はSH吉田がDFの間をぬってゴール前まで走り、たまらず三洋はオフサイド。SOヒルがPGを難なく決めて東芝が先制した。0−3。
その後も、ヒルのロングキックを武器に東芝が押し込んでいく。気合抜群の東芝に比べると三洋は微妙に動きが悪く、いつもの「かさにかかる」攻めが生まれない。ブラウンのハイパントも東芝BKの着実なキック処理でほとんど効果なし。もっとも、攻め込まれながら三洋DFも22m内では粘りの防御を見せ、スコアはなかなか動かない。終了間際、LO望月の快走から東芝がゴール前まで攻め入り、ヒルが再びPGを決めて0−6となったところで前半終了。
後半も流れは東芝サイド。三洋はパス攻撃で打開を図るも展開が単調で、東芝は前に出るタックルを決めて攻撃を寸断する。47〜50分にかけて東芝が22m内へ攻め込んだ場面は三洋が何とかしのぐも、ノータッチキックのミスが出て東芝のボール支配・パス攻撃が続く。58分、三洋はPKから東芝陣深くへ攻め込むが、ラインアウトから近場近場と攻め続けてDFを破れず、ついにノットリリースザボール。この場面に限らず、三洋は判断の悪さも目についた。
61分、三洋はバツベイを投入。これで三洋の攻撃にやや勢いが出てラインブレイクの場面も生まれるように。そして72分、三洋は22m内でPKを獲得。当然狙うかと思いきや、タッチからトライを狙う選択。うーむ……。結局、連続攻撃から榎本が右隅に飛び込むも、ダウンボール寸前の落球で逸機してしまう。その後は三洋のモールを交えた波状攻撃を東芝が強タックルや密集のターンオーバーでしのぎ続け、最後は14人になりながらもついにフルタイム。
長丁場のレギュラーシーズンと一発勝負のプレーオフとは別物なのだと、改めて痛感。
準決勝に引き続き、東芝フィフティーンの集中力と気迫は素晴らしかった。一つ一つのタックルやスウィープの強度には目を見張ったし、持ち味の堅守速攻に加えて今回は攻撃をどんどん継続していく姿勢が顕著だった。トライこそ奪えなかったものの、攻め続けたことでボールを支配し、三洋の攻撃機会を減らしたことが結果的に勝利をもたらしたように思う。鉄の信念をもってその時自分たちがやるべきラグビーを徹底したというか。まことに東芝らしい優勝だった。
プレーオフMVPはFBの立川。てっきりLOベイツかWTB廣瀬だと思っていたのでやや意外な選考だったのだが、考えてみれば立川は準決勝とこの試合でほとんど目立ったミスをしていないんだよね。タイトな試合になりがちなプレーオフにおいてFBの安定性が重要なのは言うまでもない。おまけにサントリー戦では彼らしいビッグプレーで決勝トライも奪っているし、そうするとさほど不思議な結果でもないのかな、と。あのポカ体質の立川がねえ……(笑)。
試合後のインタビュー。瀬川監督と廣瀬キャプテンの喜びを噛みしめる表情にはちょっとジーンとしてしまった。そういや、昨年の決勝の時はロアマヌの事件があったから素直に喜べなかったんだよね。そういう意味ではこの結果はホント良かったということになるのかな。おめでとう!
三洋電機は、またしてもレギュラーシーズンを無敗(もちろん1位)で通過しながら、決勝で敗れて初優勝ならず。霜村と北川の欠場は(特に霜村はBKで「もうひと仕事」できる存在だけに)痛かったが、他の選手もどことなく精彩を欠いていたように見えた。プレッシャーで固くなったのか、調子のピークを過ぎていたのか、それとも他にも体調不良があったのか。いずれにせよ、無冠だった時代と同様に「あと一皮むける」ためのさらなる努力が必要なのだろう。
つーか、72分のあの場面は断固として狙うべきだと思ったのだが……焦ったのか?
まあ、東芝については、大野・吉田を筆頭として好選手は数多いし、冨岡・廣瀬と続くキャプテンの人柄も好感度が高いし、ソリッドな勝負ラグビーはもちろん見事だしで、きちんと評価すべきチームだとは思う。ただ、このチームばかりがいつまでもタイトルを獲り続ける状況が良いことなのかどうか(なにしろ7シーズンで5回目の優勝だ)。日本ラグビーのレベルアップのためにも、三洋電機・サントリー・トヨタの奮起を望みたいところである。がんばれー!