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2010年01月11日

●ウイニングカルチャー構築中、かな ('09-'10ラグビー大学選手権決勝)


昨日の午後は、国立競技場でラグビー大学選手権決勝。東海大学 13−14 帝京大学。準々決勝で早稲田が、準決勝で慶応と明治が敗れ、いずれも勝てば初制覇といういわば新興勢力同士の対戦となった今回の決勝。地力上位と見られた(よね?)東海が序盤もたつきながら一旦は逆転に成功するも、キックとFW戦に狙いを絞った帝京が根性と執念の再逆転。わずか1点差の大接戦を制した赤黒ジャージが創部40年にして初の栄冠をいただくことになった。
 
 
帝京が持てる力の全てを出し尽くした一方で、東海はやや不完全燃焼だったかもしれない。

決勝進出自体が初めての東海は序盤明らかに浮き足立っており、ダイレクトタッチなどのミスを連発。すかさず帝京はたたみかけ、4分にSO森田のトライで先制。しかし東海も前半半ばになると落ち着いてゲームを支配するようになり、16分にはカウンター攻撃から早いリスタートを仕掛けたSH鶴田がトライを奪う。その後も東海は幾度か22m内へ攻め入る場面がありながら密集近場での攻めにこだわり過ぎて逸機してしまう。7−7の同点で前半終了となった。

後半は風上に立ってパス攻撃を継続する東海の攻勢。帝京はこらえきれず反則を連発し、51分、60分とFB豊島がPGを重ねて13−7。ところが、ここで東海は思い切った攻撃が裏目に出てパスミスからボールを失ってしまい、26分に帝京FL吉田が猛突進でトライを奪う。残り15分は東海が懸命の反撃を見せるも帝京は驚くべき粘りで好タックルを連発してしのぎ、最後は東海がゴール前数mまで攻め込みながらまたFWにこだわって反則、1点差で試合終了。
 
 
おそらく、BKの展開力をはじめとして、チームとして持っている引き出しは東海の方がずっと多かったのだと思う。「今現在」目指しているラグビーの質でも、現メンバー(WTB宮田あたりは豊島やマイケル・リーチに負けず劣らず有望かと)での伸びしろも東海が上のように感じられた。だが、試合の流れをうまくつかむ力、言い換えれば80分間の混沌の中で勝利を引き寄せる力においては力関係は逆であり、それが結果に直結したと言えるのではないだろうか。

東海にしてみれば、リーグ戦とは違う雰囲気の中で序盤の混乱は仕方がないとして、たとえばペースをつかんでからの前半残り10分。後半風上に立つことを考えて「同点なら上々」という考えだったのかもしれないが、わざわざ(帝京が得意な)近場のFW戦にこだわる必要があったのか。また、後半6点リードした場面。あとPG1本とれば勝利に近づく状況で冒険的なパス回しをする必要があったのか。ラストプレーの場面といい、チグハグさは否めなかった。

対する帝京は、キックによる陣地獲得とFWを軸にした肉弾戦という自分たちの得意技(のみ)を徹底して勝利をものにすることができた。それに加えてここまでのシーズンでは見られなかった鋭い出足のシャローディフェンス。ここら辺は昨季決勝を経験している強みであり、その試合で敗れてしまった悔しさのおかげでもあるのだろう。あまり好きにはなれない種類のラグビーではあるが、この試合の勝者にふさわしいだけの執念が帝京のプレーには現れていたと思う。

なんというか、どちらも新興校だけにウイニングカルチャーを身につけているとはとても言えないのだけれど、帝京の方が少しだけそれに近いものをもっていたかな、と。戦術や選手のスペック的能力だけでは計り知れない、「経験」を核とする目に見えぬ力。

まあ、過去の歴史を見ても、たとえば清宮監督時代の早稲田も1年目は関東学院に苦杯を喫しているわけだし、確か関東学院も初決勝は敗れて翌年優勝しているはず。第1次上田政権の慶応だって決勝で同志社に敗れた翌年に優勝(そして日本一)を収めたのである。今回の帝京と同じように、来年東海が雪辱を果たす可能性は決して低くないと思う。つーか、個人的には赤ユニよりは青ユニの方が好感度が高いし(笑)、この悔しさを糧に来年はぜひ頑張ってほしい。
 
 
いずれにせよ、初めての顔合わせ、対照的なプレースタイルとジャージーの色、そして記念すべき初優勝と、今までにない新鮮さに満ちた決勝戦だった。帝京の監督や主将の優勝コメントは非常に謙虚だったし(「これがスタート」ってのは、ホントその通り。来年はもっともっと良いラグビーを見せてほしい)、スタンドのファンも素直に喜びを噛みしめている様子で、試合後の雰囲気もかなり爽やかなものに感じられた。両チームの健闘を素直に讃えたい気持ちになった。

9年後のワールドカップの話となるとちょっと早いかもしれないが、こういう風に新しい顔ぶれが台頭してきて、もちろん早・慶・明や法政、関東学院といった伝統校・強豪校も負けずに対抗して、ここのところ沈滞ムードも漂っていた(と書くと誰かに反論されるかもしれないが……)大学ラグビーシーンももっとずっと盛り上がってほしいと思う。それがまたトップリーグや日本代表のレベルの底上げにもつながっていくわけだし。とりあえず、帝京はおめでとう!!
 

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コメント

今年もよろしくお願いします。
準決勝からはテレビ観戦でしたが、帝京はフツーに強かったです。
逆に東海は後半の終盤からタックルが高くなり、ボールキープもままならりませんでしたが、昨季の教訓を生かして目に見えぬ慶應の伝統をかわして何とか勝利。
東海×慶應は、紙一重だったと思います。

その時点で私には帝京>東海の図式はみえました。
そこは、murataさんが仰る”ウイニングカルチャー”に近い存在だったのは帝京だと思ったからです。

東海は真面目さがにじみ出て好感が持てるチームです。
来季はU-20でも主将を務めたマイケル・リーチが主将になって、大学日本一に駆け上がるのではと思っております。
決勝は同じカードで(笑)。
でも林さんが監督をしている慶應も機は熟しているような(笑)。
個人的には関西勢の奮起を促したいのですが(泣)。

関東学院は、最初の決勝戦で明治に勝って優勝を決めていますよ。


元日のガチャピンは凄かったですね(苦笑)。

どうも、ご無沙汰してます。今年もよろしくお願いします。

帝京は、もちろんフツーに強いのはわかっていたのですが、対抗戦での取りこぼしぶりなんかを見ているとまだ勝ち味に遅いのかな、と思っていました。

まあ、準決勝は生観戦でしたので、東海のムラッ気というか不器用なところも見てはいたのですけれどね。今年に限っては、やはり帝京が昨年決勝で負けていたという事実も大きかったのかもしれません。

とにかく、早稲田でも関東学院でもない、新たな強豪が出てきたのは歓迎すべき現象でしょう。おっしゃるとおり、東海は好感度の高いチームですから、ぜひ来年は雪辱を果たしてほしいものです。決勝は(準決勝で早稲田を倒した)慶応と、(準決勝で帝京を倒した)東海の対決ということで。

いくらなんでも気が早いか(笑)。

>元日のガチャピンは凄かったですね(苦笑)。
代表でもあれをやれよ!ってね(笑)。

あ、関東学院についてはご指摘ありがとうございます。準決勝で負けた翌年に決勝で明治に勝ってるんですね(初優勝は生で観ました)。どうも失礼しました。

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