●新春ガチャピンショウ ('09-'10天皇杯決勝)
あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。
元日の午後は、国立霞ヶ丘競技場で天皇杯決勝。ガンバ大阪 4-1 名古屋グランパス。いよいよファイナル、といっても今年はFC東京が早々に負けてしまったのであまり「いよいよ」という感じでもないのだけれど(笑)。今回の決勝はリーグ戦・ACLでそれぞれ健闘しながらも敗れ、今のところ無冠に終わっている強豪同士の対戦となった。対照的なサッカーで後半半ばまでほぼ互角の展開となったが、頼れるエースの活躍によりガンバが2年連続の優勝。
キックオフ。予想通りというか、両チームは好対照な戦いぶりを見せる。ガンバはショートパスを丁寧につなぎ、ダイレクトにゴール方向を狙うことはあまりせず、相手の守備ブロックを「揉みほぐす」ような地上戦。個々の選手も適度に肩の力が抜けている様子だ。対する名古屋もパスサッカーではあるのだが、中盤のハードワークでボールを奪って中距離パスでサイドやDF裏のスペースを狙い、そこから前線にそびえるケネディへクロスを入れるわかりやすい攻め。
早くも6分、ガンバが先制する。左サイドでのルーカスとのパス交換からスピードを上げた遠藤が前線へ速いパス。DF裏へ抜ける橋本が中へ折り返したボールを山崎が落とし、フォローのルーカスが右足でズドン!と楢崎の脇を抜いてゲットした。あまりに滑らかでテンポの良いパス攻撃にDFは振り回されるばかり。いかにもガンバらしい得点である。1-0。その後も細かいパスワークのガンバ、大きなサイド攻撃の名古屋、という構図の攻め合いが続いていく。
ガンバにしてみればボールを支配してペースを握りたいところ。しかし名古屋もファウル覚悟の厳しい寄せで一方的なポゼッションを許さない。14分、左SB阿部のクロスを玉田がヘッダー、松代が正面でキャッチ。17分、右サイドからのFKを山口が頭で叩くが、楢崎が正面で捕球。23分、ガンバが逆襲で3対3の場面を作るが、ルーカスのシュートは力みすぎて枠外へ。30分にはスルスルッと前線に上がった吉村がシュートするも、バーに当たって決まらない。
次の1点が入ったのは40分を過ぎた頃。FKのこぼれ球をボックス右で拾った玉田がファーサイドへ浮き球を上げ、これをとんでもない高さのケネディが頭で折り返し、DFのマークを外した中村直志が前のめりに押し込んだ。「出た、ケネディハンマー!!」というか、10月に同会場で見たACL準々決勝でもそうだったが、ケネディだけはわかっていても止められないんだよなー。1-1。試合は振り出しに戻り、名古屋にとってはいい雰囲気でハーフタイムへ。
後半も立ち上がりは一進一退の攻防。49分、小川のクロスをGK松代よりも高い打点で叩いたケネディのヘッダーはポストのわずか右。52分、加地のクロスを橋本がボレーで狙った場面はDFに防がれ、さらにこぼれ球を遠藤がオーバーヘッドで狙うも枠外。60分、加地のクロスを今度は遠藤がボレーで狙うもDFが懸命のブロック。65分にはゴールライン際に飛び出したマギヌンの折り返しにケネディが走り込む決定機となるが、微妙にズレてシュートできない。
この時間帯、ボール支配はやはりガンバが上。疲れからか名古屋DFの寄せが鋭さを失い始めており、パス回しもよりスムーズになっていた。それでも決定機の数に差がないのは、ガンバが細かいつなぎにこだわるあまり自分で攻撃を難しくしてしまったからだろう。さすがの僕でも「シュート撃てよ!」と言いたくなる場面が幾度か。松代やCBコンビの健闘で何とか名古屋のサイド攻撃を押さえていたからいいものの、実はヒヤヒヤものの展開のようにも見えた。
それでも、決勝点を奪ったのはガンバ。77分、バイタルエリアで二川からパスを受けた遠藤が突如加速し、ヒラリヒラリとタックルをかわして左足を一閃!ボールは楢崎の指先を抜けてゴール右隅に飛び込んだ。遠藤の寝ぼけ眼が「クワッ」と見開かれたのが見えるような、見事な「緩→急」のギアチェンジ。今度は個人技だ!2-1。後のなくなった名古屋は巻・三都主を入れて極端な前傾布陣をとるが、スカスカになった中盤を使われてどんどん時間が経っていく。
そして86分、三都主を抜いた明神が左タッチ際を疾走して数的優位のカウンター、中央の二川→右でどフリーの遠藤へ。この時点で「勝負あり」だが、遠藤は小憎らしいことにシュートモーションでDFを引きつけてからもう一度中の二川へ戻すアシスト。3-1。さらにロスタイム、加地の浮き球をボックス内で受けた遠藤がターン一発でDFをかわし、楢崎の脇を打ち抜いてなんとと4点目。ガンバの天皇杯連覇は、まさに遠藤のワンマンショーで幕を閉じたのだった。
面白い試合だった。両チームがそれぞれの個性をきちんと出して、拮抗した試合展開で、でも個人技も凄いのがあって、終盤に点がバカスカ入って。
結果的には3点差がついたけれど、実力的にはそれほどの差はなかった。ボール支配ではガンバが上回っていたにせよ、名古屋のハードワーク守備やサイド攻撃もきちんと機能しており、少なくとも遠藤のゴールまではどちらに転んでもおかしくない試合だった。まあ、そこで決められるか決められないかが大きいのだと言われればそれまでなんだが……いずれにせよ、どちらもファイナリストとして恥ずかしくないサッカーをしたし、決勝にふさわしい内容だったと思う。
ガンバ大阪にしてみれば、シーズン最後になってやっと会心の試合ができた、というところか。1点目はアタッカーの発想と動き出しが連動してビューティフルゴールに至る、いかにもガンバらしいもの。その後は名古屋の厳しい寄せに苦しむ時間帯もあったものの、GK・DF陣の踏ん張りとギリギリのところでいなすポゼッションでしのぎきり、遠藤の個人技でブレイクしてからは圧巻のパスワークで決着をつけた。まことにお見事である。おめでとう!!
しかしガンバというチームも不思議な存在ではある。J有数のタレントを揃えて美しい攻撃サッカーを見せながらも肝心なところで取りこぼすことが多く、それでいて毎年必ず一つはタイトルを獲る。強いんだか弱いんだかよくわからないというか。まあ、西野監督の下でさすがに「ガンバのサッカー」自体は一応の完成を見ているだろうから、「この先」に進むことができるとすればやはり選手補強次第になるのだろうか。さすがに同じ監督で9年は長いようにも思うが……。
MVPはガチャピン、じゃなくて、遠藤やっと選手であることにおそらく異論はないだろう。この選手は視野の広さやテクニックはもちろん、いざという時に見せるフルパワーが凄いんだよね。決勝点となったスラロームミドルシュートは大拍手ものだったし、他の3得点にも彼のそうした「緩→急」系のプレーが絡んでいたのが何ともまた印象的ではあった。やっぱり2010年の日本代表にも欠かせない選手ということになるんだろうな。ホントすげーよ、ガチャさん。
あと、2点差がついた時点で、もしかしたら今シーズン限りの退団が決まっている播戸が出てくるかな、と思っていたのだが、結局出てこなかったね。いかにも西野さんらしいというか(笑)。
一方、敗れた名古屋グランパスは……良くも悪くもわかりやすいサッカーなのは相変わらずだった。精力的なプレス守備と、シンプルにスペースを突いてケネディの高さ・強さを生かすサイド攻撃。正直、もう少し引き出しを増やさないとリーグのタイトルには届かないようにも思えるのだが、どうだろう。来年は闘莉王と金崎を獲得するらしいけど、吉田の穴を埋める前者はともかくとして、既に小川・中村・吉村・マギヌンと揃っている中盤に加わる金崎はどうなるか。
ともあれ、これで長かったシーズンもようやく終了。みなさんお疲れ様でした(と新年早々書くのも、毎年のことながら何だか不思議な気分ではある)。ガンバは2年連続で年越しちゃったので、遠藤なんてオフシーズンが本当に短くなっちゃっうと思うけど。大変だねー。
コメント
遠藤の動きをテレビで見てて、昔天皇杯で、ピクシーが広島(だったような?)DFをコロコロ転がしながらゴールを決めてたのを思い出しました。あの時のストイコビッチみたいとまでとは言わないけど、この遠藤の決勝ゴールは良かった。Jリーグに遠藤ありということで、今年の終わりには必ずアブダビに来てくださいという感じでした。あ、ワールドカップ後に移籍とかしなモゴモゴモゴ…
Posted by: 三河屋 | 2010年01月03日 00:06
どうも、明けましておめでとうございます。
>Jリーグに遠藤あり
ホント、そんな感じで、この試合の遠藤は存在感抜群グンでしたね。熟練しきったというか、マイスターというか……昔はどちらかといえば専ら「水を運ぶ」選手のように思えたのですが、まさかここまでスーパーな選手になるとは。
>あ、ワールドカップ後に移籍とかしなモゴモゴモゴ…
ACLじゃなくて、移籍して中東にいたりなんかしちゃったりして、でっか(笑)。
Posted by: murata | 2010年01月03日 01:21