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2009年10月10日

●日本ラグビーは10年後を目指す、てか (サントリー×ホンダ)


金曜日の夜は、秩父宮ラグビー場でトップリーグ第5節。サントリーサンゴリアス 52-5 ホンダヒート。今季初めてのトップリーグ観戦。お目当ては、贔屓にしているサントリーの出来もさることながら、慶応のエースWTBが「なぜか」ホンダに加入して2年目、山田章仁のプレーである。試合はサントリーが終始コントロールする展開となり、前後半4トライずつを奪って快勝。
 
 
仕事帰りのナイトゲーム。キックオフ直前に慌てて駆け込もうとすると、入場門の脇に「ラグビーワールドカップ2019日本開催決定!」の横断幕が。五輪やサッカーW杯招致の陰に隠れて地味な扱いになってはいるが、そう、これだけは既に決定済なんである。ファンとしてはもちろん嬉しいことには違いないのだが……10年後というとあまり現実感がないというのが正直なところ。でも、色々な所を今から強化していかないと間に合わないんだよな、きっと。

 
試合開始。立ち上がりから力の差は明白だった。セットプレーでも接点でもサントリーが圧倒的優位に立ち、ポゼッションは比較にならないほど。ホンダは激しいタックルで対抗するが、ボールを奪ってもすぐにキャリアーが孤立して奪い返され、またサントリーの波状攻撃、の繰り返し。サントリーもノックオンの多発で手こずりはしたが、まず13分、ホンダ陣深くで左スミ→右スミへきれいにつないで長友がトライ。ニコラスがコンバージョンを決めて7-0。

個人的に注目していた山田だが、ボサボサ髪を後ろで結わえる「侍スタイル」になっていたのには面食らった。ホンダの6番も同じような髪型だったが、あれは影武者作戦か(笑)。という冗談はさておき、山田は右タッチ際へ張ってひたすらボールを待ち続けるのだが、そこまでボールが回ることはほとんど皆無で、まさに宝の持ち腐れ状態。スタンドのファンの期待は大きくたまにボールを持つと「オオ!」と声が上がるもすぐにつぶされ、完全に期待外れであった。

一度ホンダのCTBトゥプアイレイがステップを踏んで中央突破、ゴール前へ迫るもノットリリースで逸機。24分、DFラインを破って独走したニコラスがトライ。14-0。続いて27分、有賀が力強いランでDF3人をまとめてかわし、長友につないでトライ。21-0。ややサントリーがゆるめたところでホンダも反撃に出るが、やはりゴールライン際でストップ。逆に終了間際、サントリーはホンダ陣でのボール奪取からつないで平がトライ。26点差で前半終了となった。
 
 
ハーフタイム、メインスタンドからゴール裏へ移動。試合については「勝負あり」なので、まあ後半は目の前でたくさんトライを見ようかと(笑)。この角度で見るのは15年ぶりくらいだろうか。縦の距離感がなくて見やすいとは言い難いのだが、巨漢が向かってくる迫力や横パスのスピード感はなかなかに楽しい。周りで子供たちが走り回って遊んでるのも、楽しい楽しい。
 
 
後半、既に4トライのボーナスポイントも獲得しているサントリーは山岡・グレーガンに替えて青木・成田を投入。前半以上にボールを支配して畳みかけようとするが、しかしゴール前までたびたび攻め込みながら、なかなかトライには至らない。これは、一つにはホンダのタックルが引き続き激しく粘り強かったのと、成田のボールさばきがグレーガンに比べるとややぎこちないせいもあったかもしれない。サントリーFWがインゴールでノックオンする場面もあった。

それでも、ホンダは守備では健闘するもののボールを前に運べず、サントリーがスコアを重ねていく。53分に左サイドの密集から金井がゴールラインを越えてトライ。33-0。63分、モールを右中間にゴリゴリと押し、最後は元が押さえ込んだ。38-0。72分、有賀の中央突破から途中出場のティーポレが飛び込んでトライ。45-0。74分には22m内で右サイドから素早くつなぎ、最後は小野澤がカバーの山田にタックルされながら左スミに飛び込む。52-0。

このトライ・ショーの最中、反対側ゴール裏のオーロラビジョンに突如「7人制ラグビー、2016年夏季オリンピック追加種目に決定」の文字が。うーむ、まあ、確かにビッグニュースなんだろうしプレーが切れた間ではあったのだが、しかしそこでアナウンスするかな……別に試合後で良かったのではなかろうか。ともあれ、そうこうしているうちに最後は満足したサントリーの隙を突いてホンダのリンディーが「意地の一発」。52-5でフルタイムの笛が鳴ったのだった。
 
 

サントリーにしてみれば順当な結果だろう。最下位相手とはいえ50点以上は上出来だし、ゲームの大半をコントロールできていた。完勝には違いない。ただ、気になるのは、22m内に入ってからの詰めの甘さと、プレーぶりが全体的に「仕込まれたムーヴ」よりも「局面での即興的判断」に傾斜しているように見えたことか。清宮監督の言うところの「ナチュラル・ラグビー」とはそういうことなのだろうか……三洋や東芝の完成度の高さを考えると、ちょっと心配かも。

嬉しかったのは、昨季大怪我から復帰した有賀の復調ぶりである。上体を真っ直ぐに伸ばしながら強靱な足腰を生かして緩い角度のフェイントで次々にDFをかわすラン。サントリーに入ってからはどちらかと言えば地味な仕事ぶりが多かっただけに、こういう関東学院時代を思い起こさせるプレーが増えてくるのは大歓迎である。課題は2度失敗があったラストパスと、やはりキック処理のあたりか。この2つが克服できれば日本代表復帰は固いところだと思う。

ホンダは……やはり力不足なんだろう、大きなポカがあるわけでもないのに、相手がフェイズを重ねていくうちにあるところで糸が切れたように無力になってしまう。まるで強豪国と戦う「弱い時のジャパン」のようだ。タックルは悪くないから、せめてカウンターにもう少し切れ味があればいいのだけれど。そういう意味では、山田の使い方は何とかならないのだろうか。ウイングでタッチ際に浮かしておいても、そこまでパスが届かないのでは意味がないと思うのだが。

ともあれ、この、夜の屋外でビールよりも暖かいものが欲しくなる季節になると、いよいよラグビーシーズンも本格化という感じである。もっともサッカーの方もまだまだシーズン佳境だから、「フットボール二毛作」の身としてはいきなり正念場なのかもしれない。なんてね(笑)。
 
 
[付記1]
上にも書いたように、東京五輪招致の失敗やサッカーW杯招致の苦戦とは裏腹に、ラグビーは(2度目とはいえ)きっちりとW杯招致を成功させ、さらにオリンピック競技として復活することにも成功した。なんかラグビー界だけ明るい話題ばかりで悪いみたいだわい……などと言ってられるのも今のうちで、本当に大変なのはここからである。色々な意味での「強化」が必要だ。代表チームのみならず、国内リーグ、一般への普及、施設設備、そしてラグビー文化、etc。

[付記2]
前半はメインスタンド自由席で観ていたのだが、僕の2列前の席に某在ハマJリーグチームのDF(W杯出場経験あり、ボンバヘッドではない)が座っていた。ホンダの応援バルーンを持ってバチバチと叩いていたが……。そういや、昨シーズンの開幕戦(三洋×サントリー)も平日ナイターだったのだが、やはりメインで某赤い血のJリーグチームのサイドアタッカー(最近、鯱軍へ移籍)の姿を見かけた。何か理由でもあるのだろうか。近くにあるラモスのお店とか(笑)。

[付記3]
この日は隣の神宮球場でヤクルト×阪神戦が行われており、ヤクルトが接戦を制してCS出場を決めるなど大いに盛り上がったようだ。『六甲おろし』も聞こえてきた。その賑やかさに比べると、秩父宮はやや大人しめというか、観客の声とかはまあ文化の違いもあるから仕方がないとして、照明が暗いんだよなー。夜間照明が無かった時期もあるからあまり文句は言えないが、いかにも「神宮の陰」って感じなんだよね。10年後と言わず、何とかしてほしいもんである。
 

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