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2009年08月17日

●「充実の秋」を迎えるために (FC東京×横浜Fマリノス)


昨晩は、味の素スタジアムでJ1第21節。FC東京 0-0 横浜Fマリノス。「JOMOカップ」なる意味不明瞭な大会による中断が明け、2週間ぶりのリーグ戦。多摩川クラシコで悔しい逆転負けを喫した東京としては心機一転好スタートを切りたいところだったが、そんな折りの欠場者続出……試合は良く言えば均衡した、悪く言えば見せ場の少ない膠着した展開となり、ついに最後まで両チームともゴールを割ることができずスコアレスドローに終わった。
 
 
この日の東京は石川が負傷で、梶山が累積警告で、長友が虫垂炎で、ブルーノが一時帰国による調整不足で欠場というピンチ状態。田邉・金沢・椋原・茂庭が穴を埋めるべく先発した。横浜の方はお馴染みの「純国産」布陣。2週間空いて休養がとれた効果なのか、立ち上がりから8月の試合にしては動きが軽快に見える。1分、右サイドを田邉と徳永が持ち上がり、カボレのシュートをGK飯倉がキャッチ。2分には山瀬のミドルシュートがDFに当たって枠外へ。

もっとも、双方ともパスの精度はあまり高くなく、ボールを動かす割にはなかなかチャンスに至らない。17分、左サイドから長谷川のヒールキックで抜けた狩野がボックスへ切れ込み、折り返しを田中がシュートするも田邉がブロック。横浜はSBが高いポジションをとって左右にボールを動かし、焦らず遅攻で機会をうかがうのに対し、東京はカボレのスピードを生かす速攻主体の攻めとなった。20分、徳永が狙った直接FKはポストのわずか左を抜けた。

22分、無尽の運動量でチームを牽引する米本から左サイドへ好展開、えぐった徳永のクロスにカボレが飛び込むもわずかに届かず。直後、渡邉がボックス内へ走る小椋へラストパスを通すが、シュートはバーの上。前半半ばを過ぎると、横浜がアタッカーのキープ力を生かして押し込む形に。ボックス付近のパス回しからラストパスを東京DFがスライディングでしのぐ場面が幾度か。狩野・山瀬・渡邉と「周りが見える」選手が揃っているだけに対応も大変である。

30分、狩野とのワンツーでゴール前に長谷川が躍り出た場面は椋原がブロック。東京としては高い相手SBの裏を突くサイド攻撃が欲しいところだが、良い展開がなかなか出ない。36分、田邉が中央でドリブル突破を図った場面もあと一人、というところで中澤に止められる。その直後、長谷川とのパス交換で山瀬が一気にボックス内へ突入、シュートはバーをかすめて冷や汗。その後は双方ともいい形を作れず、モヤモヤした雰囲気でハーフタイムへ。
 
 
後半立ち上がりの45分、横浜は素早く縦につないで山瀬から長谷川へラストパスという場面を作るが、なぜか長谷川がシュートせずリターンしてしまい、命拾い。その後もやや横浜が押し気味の時間帯が続く。シャープなパス交換で攻め寄せる横浜に対して、東京は淡泊な「蹴るだけ」の攻撃が多い。50分、金沢の縦パス一発でカボレが抜けかけるが、判断良く前へ飛び出した飯倉がクリア。51分には山瀬が強烈なロングシュート、権田が正面で止める。

流れを変えたのは、サイド攻撃と2トップの頑張りであった。52分、左に張って狙っていた羽生にようやくパスが通り、クロスをカボレが落として平山がボレーシュート(DFがブロック)。直後、左から切れ込んだ徳永の低く速いシュートを飯倉がキャッチ。53分にはロングボールに反応してオフサイドギリギリから飛び出した平山が足下に収め、右を追い越すカボレへラストパス。カボレのシュートはゴールに突き刺さったかに思えたが、きわどくサイドネット。

ここに来てようやくスタンドも盛り上がってくる。54分、左から上げた羽生のクロスがファーでフリーになっていたカボレに通るも、オフサイド。東京は今野の前へ出る守備が攻撃を後押しし、茂庭が好フィードを見せるなどいい雰囲気になってきた。59分、金沢から左へ好展開、羽生のクロスにファーで平山が合わせるがわずかに届かない。もう一押しがほしい東京は、ここで田邉OUTで鈴木IN。鈴木はいつも通りのキビキビとした動きで攻撃に活力を与える。

ところが、東京は攻勢を続けながらも決定機を作れない。羽生から、あるいは椋原からクロスは入るものの、中へ飛び込むのは決まって平山・カボレで、中澤・栗原・飯倉の強力な壁を崩すに至らない。疲れの見える山瀬・狩野に代わってフレッシュな坂田・兵藤が入って以降は、再び横浜のペースになっていく。71分、東京陣中央にできたスペースを突いて渡邉が突進、オーバーラップの田中が権田と一対一となるが、幸運にもシュートをふかしてくれた。

東京は羽生→大竹の交代。羽生は金沢あたりと比べてもまだ動けるように見えたが……。73分、鈴木の反転パスで米本が右サイドを突破、速いクロスを平山の寸前で飯倉がクリア。その直後、ボックス手前のパス交換から長谷川のパスで兵藤がボックスへ突入するも、シュートはポスト左に外れ。東京は大竹がなかなか前でプレーさせてもらえない。76分には横浜陣中央のFKで大竹のクロスを平山が折り返すも、DFに阻まれてシュートできず。

終盤になるとバテの出た東京DFが横浜アタッカーに振り回される場面が頻発。81分、またもボックス付近のパス交換からクロスを小椋が折り返し、坂田が飛び込むも権田が抑える。東京は金沢に代えて北斗を投入するが状況は変わらない。83分、CKを中澤が頭で叩くが右に外れ。終了間際、カボレが2度左サイドを快走するもクロスはシュートに結びつかない。最後は小宮山のクロスが逆サイドに抜け、フリーの栗原が空振りしてくれたところで試合終了。
 
 

実はこの試合、チケットを家に忘れてきたことをキックオフ1時間前に気づき、全力ダッシュで取りに帰ったために最初の5分くらいは生で観られなかったのである。それでも汗だくになってスタジアムにたどり着き、まだ0-0なのを目にしてホッとしたのだが……試合直後、「諦めて家でテレビ観戦した方がマシだったかも」という考えが頭をよぎった(笑)。

まあ、なにしろ絶好調のリーグ得点王と不動のボランチと日本代表のレギュラーSBと数少ない攻撃の起点を欠いていたのである。厳しい試合になることは試合前からわかっていたことだ。実際、東京が攻めた時間帯もあったものの、決定機の数は横浜の方が多く、シュートミスに助けられたシーンもいくつかあった。雑なのはお互い様ながら、躍動感は確実に横浜の方が上だった。だから、冷静に考えればこの試合の勝点1という結果は「御の字」だろう。

ただなあ……結果論だから書いても仕方がないんだが(と言いつつ書くのだが)、「こういう展開で赤嶺を使わなかったらいつ使うんだ!」というのは率直な感想としてある。後半はおそらくハーフタイムの監督の指示もあってサイドからの攻めがそれなりにできていたが、平山・カボレは高いクロスで中澤・栗原に勝てる感じが全然しなかった。かと言って低く速いクロスを入れると平山じゃ追いつけないし。あそこは24番じゃなかったのかなあ。

……と、家に帰って焼酎ハイボールを飲みながらひと愚痴り(笑)。

個々の選手では、米本が良かった。「代わり」のMFがキレを欠く中で攻守に凄まじい運動量と気迫を見せ、時間帯によってはほとんど1人でチームを引っ張っていた感すらある。カボレは少し復調してきたかな。平山は「気がついたら足下からボールがなくなってた」的なプレーが多いね。羽生と鈴木はさすがに頼りになるっす。田邉は全然噛み合ってなかった。大竹は功を焦ってる感じで、まあ何というか、チームの競争原理はあまり機能してない印象である。

金沢は、下手ではないけどプレーの方向転換ができない感じ。中村北斗は存在感なし。椋原と徳永は長友ほどのインパクトはないにせよ、安心のプレーぶり。今野はここぞというところで前に出るプレーが良かった。茂庭は最初ヒヤヒヤしたけど、時間が経つにつれ良くなった印象。いいフィードもあった!まあDFは個々のプレーというよりマークの受け渡しとMFのカバーがイマイチだったのかな、と。あと権田はキックミスがやたら多かったけど、どうしたことか。

これで、リーグ戦5連勝の後で2分1敗。やや失速し始めている感は否めない。ただ、そもそも連勝の間も守備はともかく攻撃は石川の絶好調ぶりに助けられていたわけだし、ずっとメンバー固定でやってきた弊害がここで一気に出たということは言えると思う。次の山形戦で負傷者がどれくらい戻ってくるのかがわからないが、ここでメンバーを厚くしながら、攻撃における「崩し」の課題に取り組むことが再加速につながるはずだ。「充実の秋」を迎えるために。
 

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コメント

初めまして。
焼酎ハイボール(レモン)自分も愛飲しております。安くてアルコール度数高くて甘くないところが…

ところで、モニ、良かったです。
試合後挨拶に来た彼の顔は見たことのない表情でした。
疲れ切っていたけど、やり切った感が漂っていて、なおかつ目はギラギラしている。
やっぱり欠かせない戦力だと改めて認識しました。

はじめまして!

>安くてアルコール度数高くて甘くないところが…
そうなんですよね。甘ったるくないから飽きずにクイクイ行けちゃって、飲み過ぎの危険も……(笑)。

茂庭は良かったと私も思います。最初は「どうしよう、つなごうか、クリアしようか、ああ相手来ちゃった、しゃーないクリア!」的なプレイが多かったようにも見えたんですが、途中からは落ち着いてプレー選択できていたし、鈴木に通したやつでしたっけ、良いフィードもありました。ブルーノさんのパス能力も捨てがたいですが、スピードなら茂庭の方が上ですしね。

いや、正直なところ、「これで青赤のモニも見納めかもしれんな……」などと思いまして、わざわざ茂庭のサインが入ったTシャツを着て観に行ったんですよ、私。でもまだまだやれそうな(本人もやる気がありそうな)感じでちょっと安心しました。

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