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2009年07月23日

●克服する意志 ('09ツール・ド・フランス第14~第17ステージ)


平坦ステージ連続の中だるみも過ぎ、いよいよ終盤戦が近づくツール。総合争いはトップ10に3人(ライプハイマーリタイアまでは4人!)を送り込むアスタナ帝国にサクソバンクが挑みながら、アスタナ内でランスとコンタドールがバトルを繰り広げる複合的展開。一方ポイント賞争いは「ボク狙わないも~ん」と公言しながらセコくクレバーにポイントを積み重ねるカヴェンディッシュに迫る「グリムスターの雄牛」ことフースホフト。どちらも目が離せない。
 
 
第14ステージ。最後の平坦ステージは翌日に重要な山岳を控えていることもあり、メイン集団が早々に逃げを容認する展開。残り10kmで逃げグループから飛び出したイワノフが独走優勝。ロシアチャンピオンがカチューシャに初勝利をもたらしたんだから美しいわな。また、16秒遅れてゴールしたヒンカピーにはマイヨ・ジョーヌのチャンスもあったが、コロンビアを含む追走がペースを上げたこともあってわずか5秒差の総合2位どまり。これはしゃーないな……。

けっこう道中でドラマの多かったこの日、地元でご機嫌に1人パレードを始めるモローやパンクに怒り爆発のフォイクト、コロンビアだけは総合首位に立たせまいと鬼引きするガーミン、といったあたりも面白かったが、最大の見せ場はやはりメイン集団のスプリント。カヴがヒンカピーとのタイム差を気にしつつフースホフトに先着するも、進路妨害をとられてなんと降着。せっかくヒンカピーの総合首位を犠牲にしてまで13位を獲りに行ったのにー。

ツールのスプリントで降着といえば、2005年にマキュワン会長がオグレディにヘッドパンチをかました一件が忘れがたいが……あの時は逃げも隠れもごまかしようもない、ある意味清々しいくらいの堂々たる妨害(笑)だったわけだが、今回のはどうなんだろう。まあ、カヴちゃんもベンナーティやらボーネンやら、優しいお兄さん方にさんざん進路を開けてもらってるわけだからマズいのは確かだわな。つーか、マキュワンとカヴのドッグファイトが見てみたい。
 
 
第15ステージ。大会2度目の山頂(ヴェルビエ)ゴール。最後の上りの手前からアスタナとサクソバンクが縦一列の猛引きでメイン集団を加速させ、一気に逃げを呑み込んで有力選手を発射。またしてもアタックを一発で成功させたコンタドールが残り6kmで飛び出し、グングン加速して2位のアンディ・シュレクに43秒差をつけて優勝。ついにマイヨ・ジョーヌを獲得するとともに「最大のライバル」アームストロングにも1分半を超える差をつけることとなった。

いやー、こういう「勝負ステージ」の緊張感(と勝負がついた瞬間の解放感)というのは何度観てもたまりまへんなー。研ぎすまされた集団のチームワークがもたらす絶好の舞台と、スーパー・クライマーたちによる問答無用の力勝負。タイムトライアルとかもそりゃ大事なんだろうけど、個人的にはこういうわかりやすい決着の仕方が好きである。

それにしてもコンタドールは強かった。加速力がケタ違い。なんつーか、カヴのスプリントと一緒で、自分の意志をもって仕掛けることさえできればもう誰もついて行けない、という感じである。そして、やはりチーム内の「政治」については色々とストレスもたまっていたのだろう、表彰台でのあの感情を爆発させるガッツポーズ!「おいおい、まだ早いんじゃないか」と思いながらも、、1人の若者の強烈な「克服する意志」を目の当たりにして胸が熱くなった。

で、いよいよ大本命がトップに。ランスもついに"Hats off"とのことだし(つーか、ランスがそれを表明する前にコンタが「これでチームは僕のために働いてくれる」「ランスのアシストは光栄だ」とかコメントしちゃうあたりが笑える)、あとはサクソバンクがどれだけ抵抗できるかがカギか。コンタと山岳でサシで勝負し得るのはアンディだろうが……TTもあるからなあ。さすがにコンタも今回はハンガーノックはないだろうし。ウィギンスの方が可能性あるか?

あと、表彰台のセントバーナード、かわいかったね~。
 
 
休息日明けの第16ステージは、超級・1級を越える山岳ステージながら、最後の30kmは下りが続く微妙なレイアウト。追い詰められたサクソバンクがプティ・サン・ベルナール峠で攻撃を仕掛けるも、アスタナが超強力「3兄弟」(特に長兄のラオウ、じゃなかった、ランス)の活躍ではね返してコンタドールのマイヨ・ジョーヌをがっちりとキープ。逃げ集団の中から「これしかない」タイミングで仕掛けたアスタルロサが咆吼のツール初優勝をものにした。

この日最大の見せ場は、なんといってもプティ・サン・ベルナールでの「ランス復活」だろう。峠半ばにしてメイン集団から置き去りにされたランス。「仕方ないな」と思いながらもその姿はちょっと寂しく見えた……と思いきや、山頂近くでいきなり猛スパート。ズンズンズンズン踏んで(BGM:『ジョーズのテーマ』)一気に追いつく爆走を見せた。いやー、やっぱりこのオッサンは凄い!戻ってメンチを切った瞬間にサクソバンクの攻撃が終わったもんなあ。シュレク兄弟のみならず、コンタやクレーデンまで「ええっ!」て驚いていたような(笑)。

まあ、ランスはランスで、年齢やブランクとの戦いだから。これもまた「克服する意志」。
 
 
第17ステージ。1級・1級・2級・1級・1級と山岳が連続する大会最難関ステージらしく、有力選手が次々と脱落していくサバイバル・レースとなった。エヴァンスが遅れ、メンショフが遅れ(こけ)、サストレが遅れ、ウィギンスが遅れ、ランスが遅れ、そしてクレーデンが遅れ……残ったのは懸命に引き続けるシュレク兄弟と超余裕綽々に付いて行くコンタドールだった。最後は「話がついた」のだろう、コンタが譲る形でフランクが兄弟歓喜の優勝。

まあ、クレバーなマイヨ・ジョーヌが動かずして果実を得た、という結果。シュレク兄弟のひたむきにゴールを目指す姿は美しかったし、「ダークホース」ウィギンスを徹底マークで潰してさらに猛スパートで追い上げたランスの走りも見事(なアシストぶり)だった。そんな彼らの頑張りの中でうまく立ち回って、アタックせずにリードを広げたコンタはちょっとズルい(笑)。予定通り翌日のTTでシュレク兄弟との差を広げれば、モンヴァントゥーは消化試合になってしまうね。

前日に下り坂で落車したフォイクト先生は顔や腕を骨折して意識を失ったものの、生命に別状はないとのこと。倒れて滑る自転車が火花を吹いたほどの大事故だったから傷の程度もひどそうだ。ヘルメットがなかったら確実に命を落としていただろう。グラン・ツールに欠かせない重要な脇役でもあるし、とにかく早く良くなってほしいものである。
 
 
しかし、気がつけばもうあと4日でツールも終わりではないか!終わりが近づくとやはり寂しいのう……つーか次はブエルタか……それまで寝だめしとかないと(笑)。
 

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コメント

17ステージのフースホフトには興奮&あまりの失速さに萌でした。
彼が乗るとサーベロも24インチの子供自転車に見えてしまうから不思議だ。(不思議じゃないけど)
以前自分が20インチに乗っていた時、ボリショイサーカスの熊だと言われた悪しき記憶が蘇ったのだが、、、

じゃいまからべっしゃんへ飲みに行きます。

>17ステージのフースホフト
あのマッチョな「雄牛」が1人ポツンと10km以上も山岳をこぎ続けている様子がおかしかったですね。

あと、ニバリがゴールする時、一回り体が大きいランスがものすごい形相で後ろから迫ってきたのを見たときは思わず「逃げて!」って叫びそうになりました。食われそうというか(笑)。ニバリ、よりによってランスに「前引けよ」とか言ってたし。

>じゃいまからべっしゃんへ飲みに行きます。
いいなあ。私は家のテレビでコンタのスーパーアタックを見ながら、ほっぴーで晩酌ですた。

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