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2009年06月28日

●ジーザス・クライスト・スピードスター (FC東京×清水エスパルス)


昨日の夜は、国立競技場でJ1第15節。FC東京 2-1 清水エスパルス。先週レイソルに文句なしの内容・スコアで快勝し、リーグ中断明けの好スタートを切った東京。今節の対戦はエスパルスと。ナビスコ杯では快勝しているものの、ヨンセン・岡崎が復帰してモチベーション・顔ぶれともにあの時とは比べ物にならない相手である。試合は早々に先制するも追いつかれる苦しい展開となるが、エースの一発がチームを救い、公式戦の連勝を「4」に伸ばした。
 
 
キックオフ後しばらくはパス回しのリズムが上がらない東京に対し、清水の前へ出る勢いが勝っているように見えた。ヨンセン・原・岡崎が並ぶ前線はなかなかの圧迫感で、特にヨンセンはヘディングでブルーノに競り勝つなど高さが際立っていた。しかし、先制したのは東京。6分、ハーフウェーのFKからブルーノがロングボール、ボックス内での競り合いでカボレが兵働に倒されてPK。これを梶山がきっちり左隅に決めた。1-0。儲けものの1点であった。

早くも負ってしまったビハインドに清水は前目からのチェイシングを強め、対する東京はDFラインで回していなしつつ、ロングボールでシンプルに逆襲を狙う。14分、カウンターでカボレが右サイドを突進、石川のクロスをファーで待つ平山がオーバーヘッドで狙うも枠をとらえられず。その直後、ボックス正面からドリブルで仕掛ける岡崎にDF陣が引きつけられ、右をフリーで追い越す兵働へラストパスが通るピンチ。今野がカバーリングで粘って事なきを得る。

ここら辺の時間帯は東京のDFラインがヨンセン・原に引きずられる形で下がり、ボランチとの間で岡崎や兵働がボールを収める危険な形が多かった。だが、ここで東京は慌てず丁寧に「息を整える」ようなパス回しを見せる。賢明な選択であったし、ファンも「オーレ!」の声援で後押し。気がつけば、ジリジリと清水陣へ押し返すことに成功していた。もっともこの日は中盤~前線の連動性がイマイチで、ボール支配の割には決定機は少なめになったのだが。

25分、ヨンセンがボックス前から反転シュートで狙うがバーの上。28分、左サイドのパス交換から石川が左足クロス、平山が合わせるもポスト左。危なかったのは30分で、FKのクロスに飛び込んだ岡崎と権田が交錯し、こぼれ球をヨンセンが押し込むか、という寸前でブルーノがクリア。36分には左から切れ込む石川のミドルシュートがポストわずか右を抜けた。清水は終了間際に枝村OUTマルコス・パウロINで中盤守備を強化。1点差で前半終了となった。
 
 
後半、東京は次第にリズムの良くなるパスワークを押したて、一方の清水は岡崎のいる左サイドを中心にして、攻め合いに。47分、カボレから右へ展開、徳永のクロスをファーで平山が落とし、石川のボレーシュートがバーを越える。50分、青山が自陣でクリアミス、拾ったカボレが独走する大チャンスとなるが、GK山本の脇を抜いたシュートはポスト左に外れ……。その直後、清水の左からのクロスで東京ゴール前の混戦となったが、権田が体を張って止める。

55分、清水はボックス左でFK獲得、ヨンセンが頭で合わせるも権田の正面。57分、米本・石川との細かいパス交換で羽生が右サイドからゴール前へ突入、シュートを山本がキャッチ。このプレーの後で山本が(羽生と絡んで?)倒れ、場内騒然となる中で清水がリスタートからロングボール。ブルーノのヘディングが小さく浮き、集中力を取り戻せない東京DFが棒立ちになったところで、ボールの落ち際を叩いたヨンセンのシュートがゴールに突き刺さる。1-1。

何とも間の悪い失点。ここで雰囲気が悪くなってもおかしくないところだったが……今の東京には超前向きなエースがいるのだった。59分、ボックス右手前から石川が意表を突くノーステップのミドルシュート、山本がかろうじて弾き出す。そして63分。左サイドの長友から中の平山へつなぎ、さらに中を狙ったパスは梶山の反応が遅れたものの、右サイドにこぼれたボールを石川が右足アウトサイドキック一閃!ドライブのかかった強烈なシュートは山本の指先を抜け、バーに当たってゴールイン。すげーー!!スーパーシュート、である。2-1。

これで試合はヒートアップ。64分、縦パス一発で岡崎が抜けるが、シュートは権田がセーブ。直後に東京のカウンターとなり、カボレのシュートを山本が横っ跳びで弾き出す。65分、パス交換からボックス正面に進出した梶山がシュートするもバーの上。玉突きのようなスリリングな応酬だが、ある意味こういうのが一番危ない。68分には清水の波状攻撃となり、CKから岡崎のヘディングが権田の脇を抜くが、ゴールライン上で梶山がローリングソバット・クリア。

肝を冷やした東京はブロック守備を固め、鈴木のドリブルを交えながら着実なパス交換でボールを支配する。清水は両サイドから攻めるが攻撃機会自体があまり多くない。82分、東京は手数をかけたパス回しで攻め込み、最後は米本のシュートがバーの上。よしよし、という感じ。清水は市川に代えて辻尾を投入するも、東京も椋原をぶつけて封じ込める。終了間際にフリーの藤本にボールが渡るピンチもあったが、シュートは枠外へ。そのまま東京が逃げ切った。
 
 

内容的にさほど良かったわけではないが、しっかり勝ちきったことに価値がある。東京にとってはそんな試合だったように思う。

まず攻撃面では、特に前半、柏戦に比べると動きに連動性がなく、組織的なパス回しで崩す場面をあまり作れなかった。もちろん相手が違うのだから一概に比較できないのだろうが、カボレは細かいミスが目立ち、羽生は消え気味で、寝ぼけ眼の梶山は流れから遅れること度々。守備の方でも、清水アタッカーのツッコミに対してライン守備が崩れがちで、山本が倒れるドタバタの中でDFが集中力を欠いて最も警戒すべきヨンセンをフリーにする不始末もあった。

しかし、それでも勝つことができた。要因としては、絶好調の個人が輝いたことに加え、試合運びの進歩が挙げられると思う。前半半ばに清水がペースを握りかけた時、そして後半の勝ち越し後に「どつき合い」が続いた後。東京の選手たちが自ら試合を落ち着かせるようなパス回しを選択したのは嬉しい光景だった。押せ押せになれば強いが、イケイケぶりが裏目に出てやられる事も多いチームだから。「緩急をつける」ことの片鱗くらいは見えるようになったかな、と。

ついでに言うと東京のファン・サポーターも(少なくとも劣勢の場面でなければ)そうした選手たちの選択を後押しできるようになった。ボールが動くごとに「オーレ!」のかけ声、いいじゃない。3年ほど前はパスコースを失ったDF(つーか、増嶋な)がGKに戻しただけでもブーイングとかしてたのに(笑)。変われば変わるもんである。

それにしても、石川は凄い。超技ありな決勝ゴールに加え、ゴールに向かういくつかの積極プレー。悪くなりかけた流れを彼1人でひっくり返したと言っても良いくらいである。まあ、もう少しパス回しに絡んでほしいような気もしたが、もはや右サイドで空回りしている姿はどこにもない。近年は風貌的にキリストに似ているので勝手に「ジーザス」とか呼んでいたのだが、本当に神がかってきた。チームには地蔵顔の平山もいるし、神仏揃えばそりゃ負けないわな(笑)。

他の選手では、2トップはボチボチだったと思うが、平山はシュートを1本は枠に飛ばしてほしい。中盤では梶山が途中まで寝ぼけていた。先制ゴールと後半の好クリアで取り返したけど。いくら米本があちこちに顔を出してくれるとはいえ、動き出しが遅すぎるのはアカン。守備陣ではブルーノが目測を誤る場面が何度かあり、「どうしたの?」という感じ。そろそろ出番ぢゃ、鬼太郎(←田の中勇の声で)!権田もちと不安定だったかな。椋原はいつも通り良かった。
 
てな感じで、気がつけばリーグ2連勝、公式戦4連勝!である。順位も6位に浮上。首位の鹿島は遠く、上位陣ともまだ差がある状況だが、「ACL圏内を目指す」くらいは言ってもいいような位置に来た(かな?)。当面の目標は7月の名古屋戦×3になるのだろうが、とりあえずその前、下位に取りこぼさないようにしてもらいたいもんである。ヴィッセル神戸もインフルエンザでお客さんが減っちゃったり色々大変そうだから、お見舞い代わりに叩きのめしてしまえ(笑)。


[追記1]
試合前の記念撮影の後、選手たちと一緒に入場した子供たちの様子をなんとなく眺めていたら、他の選手たちがピッチに散っていく中で石川が1人ギリギリまで残って帰り際の子供たちと笑顔で握手を交わしているのが見えた。なんか、ホントいいヤツそうなんだよね。好男子、というか。以前、JSPORTSのリーガ・エスパニョーラ中継で金子達仁さんが「婿にするならシャビ・アロンソ」なる名言を残していたが、今なら間違いなく「婿にするなら石川直宏」だネ。

[追記2]
試合前といえば、キックオフ直前にブルーノさんが権田の肩に手を置いて長いこと話し込んでいるのを見た。おそらく、清水がヨンセンにハイボールを当ててきた時の処理について打ち合わせていたのではないか。この試合、ヨンセンは得点もしたしシュートも何本か撃っているのだが、彼の「落とし」に岡崎や原が飛び込むような場面は意外と少なかった。ミスっぽいプレーも目についたブルーノさんだけど、やっぱり効いてるのかな、とも思ったのだが。さて。
 

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コメント

>ジーザス・クライスト・スピードスター
元ネタを先週BSでしていましたね。ほんの数分だけしか観れませんでしたけど面白そうでした。

>近年は風貌的にキリストに似ている
なるほど!石川を観る度に感じていた既視感はコレだったのですね。
てゆーか、キリスト観たこと無い(笑)し、求道者っぽいところもそう連想させるのでしょうね。

しかし前線からプレスが来るチームだと中々思う様に戦わせてくれませんね。

今の石川ナオの良さは誰と組んでも同じ味を出せるって事なのかと、以前だったらケリーの良し悪しで決まってたのがチームの平均力を上げる作用をナオと羽生さんがこなしてる気がします。

昔はジーザス・クライフ・スーパースターってコピーが有ったですねw

赤嶺、逃げないで戦おうよ。

>ジーザス・クライスト
ちなみに、筒井康隆さんの書いた聖書のパロディ戯曲は『ジーザス・クライスト・トリックスター』でしたっけ。

>石川を観る度に感じていた既視感
この試合、終盤に前線に平山と石川が残っているのを見て、ふと「神仏2トップだな」と思いました(笑)。

>前線からプレスが来るチームだと中々思う様に戦わせてくれませんね。
まあ、それはある程度仕方がない、というか、これでも以前よりはずっとマシになったかな、と。

>今の石川ナオの良さは誰と組んでも同じ味を出せるって事なのか
確かに。前は周りに「石川の生きる状況」を作ってもらわなきゃいかんような感じだったのが、今は自分でも周りを使いながら力を出している感じですものね。

>赤嶺、逃げないで戦おうよ。
エヴァみたいですね(笑)。

まあ、移籍の話になるとどうしてもファンは「戦ってレギュラーとってこそ云々」とかいう話をしがちですが、私はそこまで厳しい見方はできないんですよね。赤嶺みたいなタイプがもっと生きるチームが他にあるのならば、そこを選ぶのもまたアリではないかな、と。いずれにせよ、本人の責任ですし。監督と合わないってのはどこに行ってもあり得る話ですし。

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