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2009年06月14日

●この流れをのがすな ('09ナビスコ杯 vs清水エスパルス)


昨日の午後は、駒沢オリンピック公園陸上競技場でナビスコカップグループB第6節。FC東京 3-1 清水エスパルス。3月から断続的に行われてきたグループリーグもはや最終節。東京にしてみれば決勝ラウンド進出のために勝つことが必要であり、既に勝ち上がりを決めている清水にとっては「消化試合」とも言える一戦であった。試合は、両チームのモチベーションの差も影響したか、東京が3点を奪って快勝。逆転でグループ首位通過を決めた。
 
 
キックオフ。東京はいつも通りの4-4-2で、前節山形戦に比べると負傷の北斗に代わって椋原が、出場停止の平山に代わって近藤が入るスタメン。対する清水は岡崎・ヨンセン・山本真希を欠く状態で、苦肉の策にも見える原1トップの布陣であった。意外に早い先制点は6分。梶山からの楔パスをカボレが落とし、近藤がDFライン裏へ浮き球。タイミングよく飛び出したカボレが頭で浮かし、中途半端に前へ出たGK西部の頭上を抜いてゲット。1-0。

ともにパスを回してで攻めたい両チームだが、清水は伊東や藤本の動きにキレがなく、兵働1人で中盤を作る状態。アタッカーの突進力とフォアチェックの献身性で勝る東京がペースを握る。14分、近藤が敵陣深くで猛然とボールを奪取、ニアに飛び込むブルーノを狙うクロスは寸前でDFがカット。17分、藤本のミスパスをまた近藤がカット、DF裏でパスを受けた田邉がシュート性のクロスを撃つも、ファーに滑り込むカボレのつま先を抜けてポスト左に外れ。

東京で目立ったのは、田邉と米本の新人2人。動いてはたいてまた動いて、を繰り返し、チームの攻撃に活力と流動性をもたらした。ピッチを広く使う意識も高く、中盤では不調の清水を圧倒している感があった。守備の方もブルーノがドリブル対応にやや不安を見せるものの、他のDFとボランチのカバーがよく、危険な場面は少ない。24分、クロスのこぼれ球を拾った石川がクロッシュート、西部が横っ跳びで押さえる。28分、石川のミドルシュートはバーの上。

前半も残り10分を切ったあたりから、暑い中での試合でもあり、東京の選手にやや攻め疲れの様子が見え始める。攻撃でミスが目立ち、カボレと近藤が孤立気味に。ようやく清水がセットプレーでチャンスを得るようになった。38分、左CKからのこぼれ球を拾った兵働がシュート回転の左足クロス、権田の指をかすめたボールがバーを直撃してヒヤリ。しかしその他は権田が堅実なゴールキーピングを見せ、前半はリードを守って終了することとなった。
 
 
後半、清水は伊東に代えて長身FWの長沢を投入。ネジを巻き直した東京と攻め合いに。48分、カボレのヒールパスで米本が左サイドを抜け、ゴールライン際の切り返しでDFを外してシュート、ポストのわずか右を抜ける。51分、市川のスルーパスでフリーの藤本がボックスへ突入するが、シュートは当たりが悪く権田キャッチ。54分には攻撃参加した椋原のクロスに近藤が合わせるも、ヘッダーは左に外れ。57分、その近藤がOUTで鈴木達也IN。

体力的にキツい時間帯での鈴木投入はいいカンフル剤になったようだ。パスワークの鋭さが増し、清水をボックス周辺に釘付けにする。60分、クロスのこぼれ球をボックス前で拾った米本のミドルシュートは豪快にどふかし(笑)。そして62分、右に流れてパスを受けた田邉がよく中を見て、ボックス内へ走り込む石川へ折り返し。石川は立ちふさがるDFを前に細かいステップから左足でシュート、見事ゴール左隅に決めた。さすがエースの働き!2-0。

64分、孤軍奮闘する兵働が右からインスイングのクロス、ファーで長沢が合わせるも枠に飛ばせず。清水は次第に集中力が低下し始め、プレーの精度もいっそう低下。東京はカボレを下げて赤嶺を投入。70分、その赤嶺がボックス左でロングボールをDF2人と競り合った際に引き倒されてPKを獲得。赤嶺のキックは一度は西部に防がれたもののやり直しとなり、二度目は左隅にゲット。3-0。青山が抗議で退場になったこともあり、東京の楽勝かと思われた。

75分、田邉OUTで大竹IN。監督が「誰か出たいヤツいるか?」と聞いたら、「ハイ!」ってコンマ0.001秒くらいで手を上げたんだろうな(笑)。東京は余裕のパス回しを見せ、時たまスピードアップして清水ゴールを脅かす。82分、ボックス付近のパス交換から大竹のクロスを赤嶺が胸で落とし、梶山が突入した場面は惜しくもシュートならず。逆に83分、清水の左CKから逆サイドにボールがこぼれ、市川のクロスにフリーで飛び込んだ大前がゲット。3-1。

やや息を吹き返す清水。それでもまあ大丈夫だろと高をくくって見ていたら、86分、ボックス角付近でドリブルを仕掛けた大前を平松が倒して清水にPK。ボックスの外に見えたのだが……バランス(笑)?とにかく、これを決められたらさすがにヤバイ。だが、原のシュートは権田が横っ跳びで弾き出すスーパーセーブ!今度こそ清水は意気消沈し、ロスタイムはゴール裏からお久しぶりの『Hey Jude』が流れる中、東京がパス回しで時間を使って逃げ切り。
 
 

チームが良い流れに乗りつつあること、そして若手抜擢の成果が見えた試合だった。

6月のデーゲームであり、勝たなければならない試合であり、相手はパスゲーム得意の清水エスパルス。となればもっと粗いサッカー、個人能力を前面に立てた攻撃を仕掛けても良さそうなところだが、そこでチームコンセプト通りのパスサッカーを見せて快勝できたことの意義はとても大きいと思う。横浜戦、多摩川クラシコ、山形戦(の後半)あたりで見えてきていた「良い流れ」がいっそう明確になったというか。まあ、清水の不調の分は割り引くとしても、だ。

さすがに1年半ほど取り組んできて、選手たちにも(ついでに言えばファンにも)パスサッカーをやることの意味、みたいなものが滲透してきたのかもしれない。揺さぶって守備に綻びを「作る」こと、ポゼッションで敵の攻撃時間を減らすこと、相手を走らせてフィジカルで優位に立つこと……etc。もちろん監督コメントにもあるとおり課題はまだまだあるにせよ、全体的には良い雰囲気である。終盤、スタンドから飛ぶ「オーレ!」のかけ声とともに見せたパス回しとか。

個々の選手で光ったのは、まず田邉草民。球離れがいいし、運動量はあるし、チームのパス回しにリズムと活力を与えてくれている。パスサッカーとの親和性という意味では羽生や石川よりも上かもしれない。つーか、梶山がもさっとしている分、周りはキビキビしてないとね(笑)。とりあえず今は「小栗澤」な感じだけど、これから最終局面で持ち味を出せればもっともっと楽しみな存在になるだろう。個人的には、「現代サッカー風味の馬場憂太」になってほしい。

他の若手も概ね良かった。米本は90分こなせるようになったし、徐々にフィードも良いのが蹴れるようになってきた。隣の席のオジサンが「スパイダーマンみたいだな」とつぶやいていたが、確かにあの長い手足で絡め取る守備は魅力的である。右SBで先発した椋原も頑健な守備で勝利に貢献。長友や徳永と互角に扱ってよい選手だと思うんだけどな……ともあれ、普通にメンバーに入っている権田や大竹と合わせ、若手の活躍は明るい材料に違いない。

中堅・ベテラン勢では、まずカボレが点を入れたのが好材料。近藤祐介はポストプレーと守備で頑張っていた。石川は、良い意味で目立ちすぎず、肝心な所で個人技を出せたのがグー。梶山と徳永はちょっと寝ぼけ眼だったかな。ブルーノさんは、ドリブラーがいる相手だと少し怖いね。赤嶺は点を取ってこその赤嶺だから今回は○。あと、平松はPKを与えたプレー以外は無難で、今野のバックアップとしては合格だったかな(となると茂庭は……)。

まあ、いずれにせよ今回は良かった。問題は次、である。昨年、4月~6月はいい感じで調子を上げていったのに、リーグが再開してから急降下してしまったのは記憶に新しいところだ。また、山形戦、今回と、相手の出来の悪さに助けられたのも否定できない事実だろう。今野と長友、そして怪我人が戻ってきた時にいかにスムーズにフィットさせられるか。そして、いかにここ最近の良い流れを変えずにチーム力を上げていけるか。次の柏戦は要注目だろう。
 
 
しかし、グループリーグの方式が変わって、ますます「棚ぼた」感が強くなった気がするね、ナビスコカップも。「そこがいいんじゃない!」だけど(笑)。
 

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コメント

こんにちは、次が名古屋なのは良かったです、清水さんはナビスコでもう一度当りたいです。

米本はシュートが浮かなければ完璧でしたね、柔の技でボールを強奪するみたいな所が惚れ惚れするって言うか。

絶・好・調の人は相変わらず良かったですね。

清水は審判と試合をしちゃった感が。

どうもです。確かに、ナビスコを獲る気満々のチームよりも、ACLに気をとられている名古屋なのは良い組合せかもしれませんね。

>柔の技でボールを強奪するみたいな所が惚れ惚れするって言うか。
あの、長い手足で柔らかくボールを絡め取るような感じですよね。

>清水は審判と試合をしちゃった感が。
あれで青山、次の試合サスペンションになったらただのアホじゃないかと(笑)。

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