« 北斗神拳炸裂 (横浜Fマリノス×FC東京) | メイン | この流れをのがすな ('09ナビスコ杯 vs清水エスパルス) »

2009年05月25日

●「魔がさした」10分間 (FC東京×川崎フロンターレ)


昨日の午後は、味の素スタジアムで第15回多摩川クラシコ。FC東京 2-3 川崎フロンターレ。徐々に調子を上げてあと1勝で五分の星に戻るところまで来た東京と、やはり序盤の不調を脱して上位に進出しつつある川崎の対決。リーグ中断期間前ということもあり、ともに負けられない一戦であった。試合は、バランス良い攻守を見せた東京が2点を先取するも、後半早々の一発退場をきっかけにたて続けの3失点。悔しい逆転負けとなってしまった。
 
 
この日の試合前イベントは東京スカパラダイスオーケストラのミニライヴ。04年の開幕戦以来だから、実に5年ぶりである。石川直宏の応援歌でおなじみ『DOWN BEAT STOMP』と、通常よりもアップテンポな『You'll Never Walk Alone』を含む3曲。楽しかった!盛り上がった!!特に最後のユルネバは「このままキックオフに突入すれば最高!」という感じだったのだが、その後にいつものユルネバがもう1回流れちゃってみんなズッコけた(笑)。惜っしい!

 
キックオフ。双方気合充分でいきなり激しいボール争奪戦に。東京は最近定番の4-4-2で、梶山・カボレ・石川が復帰したベストの布陣。対する川崎は攻撃時は中村憲剛が中盤の底からミドルパスを駆使する4-3-3で、守備時には4-4-2に変形する(つまり東京の攻撃時には「ミラーゲーム」になる)フォーメーション。序盤は川崎FWの前に出る勢いが目立つも、東京のブロック守備もよく機能して速攻を許さない。膠着した状態で時間が経過していく。

14分と19分、いずれもFKで中村が入れたクロスに谷口が頭で合わせたが、オフサイドと枠外で決まらず。17分、ドリブルで右サイドを切り裂いた石川からボックス内へパスが通るも、シュート寸前でDFがカット。決定機というほどの場面にはなかなか至らないが、だんだんとテンションが上がって攻め合いとなっていく。22分、中村が右サイドで長友を振り切ってクロス、ニアで鄭とDFが競ったこぼれ球を田坂がボレーで狙うが権田がキャッチ。

23分、石川のアーリークロスをカボレがどんピシャのヘッダーで叩くが枠外。24分、平山の鋭い反転スルーパスで長友が抜け、クロスがフリーの石川の足下に飛ぶがトラップ失敗。27分にはカボレが個人技で井川をぶち抜いてボックスへ突入するも、シュートはポスト左に外れ。そして28分、CKで今野が撃ったヘッダーはバーに弾かれたものの、はね返りをもう一度今野がボレーで叩いて右隅に決めた。主導権を握り始めた時間帯に望み通りの得点。1-0。

先制点の後も妙にイケイケにならないのが最近の東京の良いところ。カボレと石川の逆襲を中心に攻撃に人数をかけすぎず、バランスを維持。一方の川崎はACLの疲労もあるのか、早くも足が止まりだし、人任せのプレーや精度の粗いパスが増え始めた。39分、川崎陣中央でこぼれ球を拾ったカボレが真っ直ぐドリブルしてシュート、川島がキャッチ。他にも東京はあと一本パスがつながれば決定機、の場面をいくつか作り、優勢のまま前半終了となった。
 
 
後半頭、負傷の羽生OUTで鈴木達也IN。これが後々大きな影響を及ぼすとは……。開始直後川崎の左CK、ゴール前に落ちたボールを梶山がクリア。48分、徳永のクロスにカボレが飛び込むが、ヘッダーはまたも枠外。川崎は前半に比べて長いボールを減らして中村や田坂のタッチ数を増やし、引いたFWとともに「中盤を作る」意識が強くなったように見えた。だが、東京の守備もそう易々とは崩れない。54分、しびれを切らしたか田坂→ジュニオールの交代。

55分、東京の2点目。カボレがDFに競り勝って落としたボールを自ら左サイドに走って拾い、クロス。中央に走る平山が囮のような形となり、右サイドからフリーで走り込んだ石川がシュート!川島の横っ跳びも届かず、低く鋭い弾道でゴールに突き刺さった。お見事!川崎が何とか反撃のきっかけをつかもうとしている時間帯に、タイミングバッチグーの追加点である。2-0。正直、「完勝」の2文字が頭をよぎったものだ。まさかその直後に事態が暗転するとは……。

57分、中盤で中村→ジュニーニョとつないでスルーパス、CBの間を抜けかけた鄭をブルーノが後ろから引き倒してしまい、なんとPK&一発退場の判定。愕然、呆然。そのPKをジュニーニョが決め、2-1。東京は好調の石川を下げて茂庭を投入、平山が右サイドの中盤に回る4-4-1で立て直しを図るが、勢いに乗る川崎相手にベタ引き状態になってしまう。61分、今野が裏をとられてレナチーニョがゴール前へ突入したシーンは、長友が懸命にカバー。

65分、ボックス手前でジュニーニョにボールを奪われた梶山がファウルしてしまい、FK。東京の選手が抗議する間に川崎は早いリスタートでパスをつなぎ、フリーの谷口が豪快なシュートをゴール右上に決めた。あの局面であの位置取りをしてあのシュートを撃てるあたり、さすがは谷口である。2-2。さらに68分にはジュニオールとのコンビからジュニーニョが左サイドを破ってクロス、レナチーニョがボレーシュートを突き刺した。2-3。わずか10分間の3失点。

逆転した川崎は前半とはうって変わって余裕のサッカーを見せ、慌てて前に蹴らずに後方でのパス回しが多くなった。逆に東京はなかなかボールもとれず、時間はどんどん過ぎていく。75分、中央を縦につないで平山からカボレへラストパス、しかしトラップでシュートが遅れてDFブロック。直後のCKで今野が撃ったヘッダーも枠外。76分、東京は平山に代えて中村北斗投入。カボレ・鈴木の2トップとし、ようやく前目からチェイスして反撃の糸口を探れるように。

いなす川崎、突っかける東京の構図は続く。78分、たて続けにボックス内のジュニーニョ・中村憲にパスが入り、東京DFが何とかしのぐ。82分、カボレのドリブルシュートは川島がキャッチ。88分、CKでファーに抜けたボールを北斗がボレーで叩いたが枠外。ロスタイムには右サイドを抜けた北斗から狙いすましたクロスが入るも、中央に走り込んだ米本が空振り……。結局、パス攻撃で幾度かチャンスは得たもののあと一歩届かず、1点差のまま試合終了となった。
 
 

負けは負け。悔しいのは確か。でも、下を向く必要はないとも僕は思った。

55分までのサッカーは間違いなく好内容であり、試合展開は理想的だった。正直なところ今のDFでは川崎の超強力3トップに粉砕されてしまうのではないかと心配だったのだが、この2ヶ月築いてきたブロック守備は予想以上に機能してくれた。そして、懸案のセットプレーでの先制点。さらにリードしても調子に乗らず、相手をいなすパス回しまで見せて成長を感じさせてくれた。石川の追加点もバッチリの時間帯だった。あとは「そのまま行く」だけ、だったのだ。

ブルーノの退場はしゃーないわな、と思う。ああいう場面になったらDFは本能的に手を出すものだろうし、実際にはペナルティボックスの外であったのなら(万一10人になっても2点リードなら)なおさらである。PKとなったのは残念だけど、サッカーに誤審は付きものだし。やはり、問題は、まだ1点リードしていたにも関わらずたて直すことができず、バタバタと守備が脆くなり、連続失点を許したメンタリティの弱さ、もしくはチームの応用力の低さに求めるべきだろう。

茂庭を入れるために外したのが石川だったのは、議論を呼ぶところではないか。おそらく城福監督としては、ボールを持てる平山を残すことで、押し込まれる状況を少しでも緩和したかったのだろう。セットプレーで「高さ」がほしかったのもあるかもしれない。だが、結果的には上げ下げの動き出しに鈍さのある平山はサイドの守備で機能せず、平山→北斗の交代までは防戦一方になってしまった。羽生の負傷退場で交替枠が残り少なかったのも判断を難しくしたか。

あと、ちょっと思うのは、退場したのがブルーノでなかったら成り行きは全然違ったのではないか、ということである。55分までのブルーノは守備でのステディなプレーぶりもさることながら、味方への指示出しや叱咤でも目立つ存在だった。彼の存在はチームにとって1/11以上だったと思う。そして、そういう意味では、彼以外で精神的に頼りになりそうな佐原の欠場、羽生の負傷退場もやはり痛かったのかな、と。つーか、最近チームに来た選手ばかりじゃないか。

……いかん、自分で「下を向く必要はない」とか書いたくせに、つい記述がネガティブになってしまった(笑)。まあ、繰り返しになるけれども、決して内容は悪くなかったし、紙一重の勝負だったと思う。順位は15位まで下がってしまったが、この日の55分まで見せていたサッカーに磨きをかけていけば、決して降格を心配するようなレベルのチームではない。「クオリティーは僕らの方が上だった」という城福監督のみっともない負け惜しみも、僕は嫌いじゃない。

これで多摩川クラシコは通算5勝5分5敗。次は、勝とう。
 

トラックバックURL

このエントリーのトラックバックURL:
http://umanen.org/mt/mt-tb.cgi/2492

コメント

味方に指示を出してチームをコントロールするピッチ上の監督をするのは、ポジション的にも、チーム歴的にも梶山だと思うんですが、スタンドから見ている限り、この点は余り進歩してないようで・・・。


経験を積めば相方の米本の方が、チームの司令塔になれそうな雰囲気があるのですが、いかがでしょう?

梶山は、まあそういう役回りに向かないということでしょう。昔からそうでしたし、おそらく今後も難しいんじゃないかと思います。身近に見てるわけではないから推測ではありますが……。

米本クンあたり、どうなんでしょうね。まだビジュアル的には、寺に入って間もない小坊主という感じですけど(笑)。

コメントする

(初めてのコメントの時は、コメントが表示されるためにこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまでコメントは表示されませんのでしばらくお待ちください)