●チクショウ、鯉のぼり振られちゃったヨ(笑) (サンフレッチェ広島×FC東京 テレビ観戦)
J1第10節は、スカパー!の中継を録画観戦。サンフレッチェ広島 2-0 FC東京。前節はメンバー落ちの大宮が相手ながら3点を奪っての勝利で、ようやく光明を見出したかに思える東京。GW5連戦の第4戦は、ここ2試合スコアレスドローと「らしくない」試合が続いている広島とのアウェイゲーム。内容的には互角に近い戦いを繰り広げるも、チャンスに得点が奪えず、攻撃局面での完成度の差を見せつけられて2失点の完敗となってしまった。
降りしきる雨の中キックオフ。ピッチの上をボールがよく走る。カボレ師匠を負傷で欠く東京だが、立ち上がりの雰囲気は悪くなかった。広島の攻撃をパス回しの起点で抑えるという意図だったのだろう、いつもより前目からのプレスがはまり、ショートカウンターから良い場面がいくつか。11分には赤嶺の強烈なミドルシュートをGK中林が弾き出す。対する広島は序盤はややおとなしめいうか、佐藤寿人を狙って長いボールを使うなど、ステディなサッカー。
17分、広島が左右への揺さぶりから左サイド服部の攻撃参加でチャンス。ラストパスは通らなかったものの、広島もエンジンがかかってきた。そして22分、中央に上がってきたストヤノフが右サイドに飛び出すミキッチへスルーパスを通し、どんピシャのクロスを高萩が頭で叩いてゲット。ここぞという場面での急加速にDF陣がついていけなかった印象。0-1。さらにその直後、権田のクリアミスを拾った柏木が無人のゴールを狙ったシュートは枠外。
その後はしばらく東京の攻勢に。25分、長友のクロスがDFに当たってこぼれたところを赤嶺がつなぎ、中央走り込む梶山がフェイントでDFをかわしてシュート!完全に決まったかと思えるタイミングだったが、これは槇野(?)の好カバーに防がれ、さらにゴール前に残る祐介がこぼれ球を拾うがオフサイド。残念。29分、また左サイドを突破した長友のクロスに羽生が詰めるも枠に飛ばせず。この時間帯に決められなかったことが後々まで響いてしまった。
38分、広島が右サイドでパスカット。至近にいた梶山がチンタラ追ってるところをつながれ、ブルーノの裏をとった寿人からのラストパスで柏木が抜ける決定機になるが、前に出た権田が体でストップ。東京の攻撃陣では赤嶺と石川の動きはキレているものの、カボレの代わりに先発した近藤は見せ場を作れない。1点ビハインドでハーフタイムへ。
後半は頭から東京が前がかり。51分、近藤OUTで鈴木達IN。55分、またも攻め上がった長友からクロス、羽生のかく乱のおかげでDFがボールに触れず、赤嶺が左足ボレーで叩くもバーの上。一方の広島は逆襲狙い。パスワークから柏木がボックスへ突入した場面は米本がブロック。54分、右サイドを突破したミキッチのシュートは権田がしっかりキャッチ。ここら辺、広島の方が東京のサイドの裏を突いて効率的にチャンスを作れているように見えた。
63分、米本に代えて平山投入。直後、赤嶺が左タッチ際から入れたクロスをボックス内で平山がピタリと落とし、石川のシュートが決まった……ように見えたが、なぜかファウルの判定でノーゴール。65分、広島は高萩OUTで盛田IN。平山対策でもあるのだろう、DFの高さを増しつつゴール前を固めてきた。68分には羽生からの球足の長いスルーパスで石川が左サイドを抜け、ボックスへ突入してシュートするも中林が横っ跳びでナイスセーブ。
70分を過ぎると広島がストヤノフの攻撃参加から主導権を取り戻す。まずはストヤノフ自身のミドルシュートが東京ゴールを襲い(権田セーブ)、73分にはボックス手前のせめぎ合いから柏木のシュートがポストを叩く。そして74分、寿人からボックス手前の柏木へ、さらに左をオーバーラップする青木へとパスがつながり、GKと戻るDFの間を抜くクロスをファーに走り込む寿人が蹴り込んだ。完全に東京DFは振り回され、決定的な追加点。0-2。
そこからは東京が猛攻を見せ、サイドから次々にクロスを入れるが、ボックス内を6~7人で固める広島DFにはね返されるばかり。たまにこぼれ球をシュートするもほとんど枠をとらえられず、中で変化をつけられる大竹の投入は80分を過ぎてから。終了間際にはブルーノも上がっての総攻撃となるも、赤嶺のボレーも外れ、梶山のミドルシュートも決まらず、ついに得点を奪うことはできなかった。結局、2点差のまま試合終了。今季初の完封負けである。
完成度の差、だろうか。形のできているチームと、形を模索しているチームとの差。
サンフレッチェ広島はよくパスを回すチーム。だけど、決して漫然と回しているわけではなくて、最終局面の形と、そこに至るまでのイメージがしっかりチーム内で共有されているように見える。だから、ストヤノフや槇野の攻撃参加にしろウイングバックの仕掛けにしろ寿人や柏木の飛び出しにしろ、タイミングにズレがなく、どんな相手でも(守備はともかくとして)得点はできる。J2に落ちても信念を曲げずにパスサッカーをやってきた成果、と言っていいだろう。
一方のFC東京は、中途半端というか、どういうサッカーをやろうとしているのかよくわからないというか。神戸戦・磐田戦あたりの「抜本的なパスサッカーへの取り組み」(だったように見えたのだが、どうなんだろう)があまりにアレだったので、昨年と同様に何とか折衷案を探って……ということだろうとは思うけど。試合後の監督と梶山のコメントにかなり齟齬があるのが、ちょっと、いや、かなり気がかり。城福東京はいったいどこへ行こうとしているのか。
とはいえ、この試合も内容が悪かったと言うほどではなく、あわやという場面もいくつか作った。順位は15位に下がってしまったが、浦和・鹿島はともかく、6位の山形あたりとは勝点3(1ゲーム差)しか違わないのだから、悲観的になる必要はないのかもしれない。少なくとも大分のファンの気持ちを考えれば……なにさこれくらい。フンだ(笑)。
個々の選手では、まず長友は良い出来だった。ようやく本調子かな。石川は相変わらず好調を維持。ただ、クロスの精度も相変わらず(笑)。赤嶺は、1本はシュートを決めてほしかった。でも、何もできなかった32番と比べれば実力差は歴然。平山はちょっと動けるようになってきた感じ。今野は、1点目はともかく2点目は寿人に付いてほしかった。権田はよくやっている。ブルーノさんは意外と大丈夫だった。米本は、まだボールに食いつくのが精一杯か。
微妙なのは梶山。さほど悪いプレーぶりではないのだが、彼1人で中盤を担わざるを得ないあたりにチームの構造的な問題が表れているというか。本当ならパーツの1つとして、それこそ前半25分の決定機のように局面で仕事をしてもらいたい選手なんだけどね。あるいは、梶山を「捌き屋」として割り切って使うのであれば、前にもう1人「エクストラキッカー」がほしい。大竹の成長待ちと言うことになるのだろうが、エメルソンを失ったのがつくづく悔やまれる。
そういや、元14番(由紀彦じゃない方)、どうしてるんだろうね。
[追記]
スカパー!の中継映像はおそらく現地のテレビ局から買ったものだったのだろう。実況・解説の方がけっこうFC東京の事を持ち上げてくれたので、思わずテレビの前で恐縮してしまった。途中、多分米本と混ざっちゃったんだろうけど、実況の桐山アナが「カジモト」とか連呼していて、いつまで続くのかとハラハラドキドキ(笑)。解説は広島大学サッカー部監督の沖原さんで、いかにも指導者らしい一つ一つのプレーに関する丁寧な解説に好感が持てた。