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2009年04月23日

●『蹴りたい言葉J』

3連続サッカー本レヴュー(と大げさに言うほどのもんじゃないが)の2冊目。
 
 
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続いては、いとうやまね著『蹴りたい言葉J』(コスミック出版)。海外におけるサッカー名士たちの名言を集めた『蹴りたい言葉』に続くシリーズ第2弾。「リサーチの達人」(と、Amazonでは紹介してあるんだよマジで(笑))である著者が、今度はJリーグの開幕前から現在までにおける名言・迷言を集めた一冊。

構成的には『蹴りたい言葉』と同様に、見開きの右頁に名言→左頁にその解説という流れになっており、とても読みやすくなっている。内容は、やはり前作と同じように格言的なものを集めた本というよりは、象徴的なコメントを取りあげることを通じて様々な人物や出来事を紹介する「名士録」「事件簿」的な色彩が強いと言えるかもしれない。また、正直「掘り出し物」は少なく、ある程度Jリーグを追ってきたファンならば知っている発言が多いのではないだろうか。

重要なのは、『蹴りたい~』とは異なり、今回はそれらの名言・迷言が年代順に並べられていることである。冒頭に来るのは90年にカズの帰国を後押しした読売クラブ森下事務局長の「殺し文句」であり、最後に来るのが08年入れ替え戦を実況した倉敷康雄アナの感動的な一言である。その間に並ぶのが川淵チェアマン、ジーコ、中田、ラモス、ゴン隊長、ピクシー、俊輔、宮本ツネ、松本育夫、シャムスカ、オシム……etc。アマラオなんてのもいたな(笑)。

つまりこの本は、「名言集」の体裁をとりながら、実はJリーグ16年間の歴史を概観することのできる一種の「史書」なのだ。紹介されているそれぞれのコトバには、その時々におけるJリーグの状況やら発言者が遭遇した困難・喜び・驚きが満ちており、1頁読み進むごとに当時の光景が頭の中に鮮やかに甦ってくる(特に俊輔の「部活サッカー」ね!)。Jリーグも開幕して16年、こういう類の本が作られるようになったのかあ、と感慨深く思ったのであった。

そういや、16年目なんだね、Jリーグ。『日本サッカー史』を読んで感じた「10~15年で1フェイズ」という感覚を当てはめるなら、今はバブル期10年の次の時期(地域密着期?)のまっただ中かもしれないし、ちょうど新しい時代が始まるところなのかもしれない。そういう歴史の中、最後の見開き頁に掲載されている倉敷保雄アナのコメントが鮮やかに表現している「文化」については、今後も変わらず残していくべきものとして胸を張るべきなんだろう、僕たちは。
 
14年後に第2弾、あるいはページ数が倍くらいになった増補版を期待(笑)。
 

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