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2009年04月20日

●歴史は繰り返す (FC東京×ジェフ千葉)


土曜日の晩は、国立霞ヶ丘競技場でJ1第6節。FC東京 1-2 ジェフユナイテッド千葉。前節鹿島相手に悔しい敗戦を喫した東京が、今季まだ未勝利と不振に苦しむ千葉を迎えた一戦。試合は粗い「蹴り合い」の様相を呈し、前半東京が石川のキモチいいシュート一発で先制するも、終了間際に千葉がお得意の粘り腰を発揮して瞬く間に2得点。まるで昨シーズン最終戦のリプレイを見ているかのような逆転負けで、早くもシーズン4敗目となった。
 
 
この日はIOC評価委員が来日中ということで、試合前には東京オリンピック・パラリンピック招致活動応援イベントが行われた。ソウル五輪100m背泳ぎ金メダリスト鈴木大地さんによる「聖火台灯火式」。東京ゴール裏には「2016」の横断幕が掲げられ、「バサロ!」コールも。いやー、あの30mバサロは燃えたよなあ。隣のコースが世界記録保持者のバーコフで……という話は、長くなるので割愛(笑)。トーチから火が移るのにちと時間がかかったが、何とか点火。

 
キックオフ。東京はこの日も4-3-3の布陣で、CFWに近藤祐介が、アンカーに新人の米本が入った。いきなり激しくボールに絡む米本のプレーに歓声が沸く。東京は手数をかけずに3トップを走らせ、対する千葉はサイドに速くボールを運んではクロス、という昨年同様のパターン。序盤の一進一退から、前線の突進力にものを言わせて次第に東京が押し始める。9分、カボレのパスを石川がコーナー付近で拾ってクロス、梶山がボレーで叩くがGKがキャッチ。

千葉はサイドにボールを運ぶところまではスムーズなのだが、そこからの工夫に乏しくクロスは大半が佐原や権田の餌食に。15分、佐原が目測を誤ってボールをそらし、拾った巻のクロスに工藤が走り込んでシュートした場面も権田がキャッチ。19分、左に回り込んで梶山のパスを受けた石川がグッと加速して仕掛け、DFの間に突っかけてから右足一閃!ボールはGK岡本の横っ跳びも届かすゴール右隅へ。素晴らしい軌道のシュートだった。1-0。

その後も千葉はラインを押し上げてサイドから反撃、東京は裏のスペースを狙って3トップで逆襲、という構図が続く。22分、東京陣FKのクロスからゴール前で混戦となり、こぼれ球を坂本がシュートするが権田が横っ跳びで弾き出す。26分、カボレの浮き球でDFライン左に飛び出した近藤が左足でシュートするも、枠をとらえられず。この時間帯は東京の守備組織がよく機能し、千葉はサイドで行き場を失ってミスか、単調なクロスを佐原がはね返す場面が続く。

もっとも、千葉の攻めにあまり怖さを感じない一方で東京のカウンターも精度が低く、意図の合わない雑なパスでボールを失い続ける。「おっ」と思わせたのは36分の米本で、左サイドのボール争奪戦から一気に持ち上がって左足で惜しいクロス。42分、石川・羽生とのコンビネーションから徳永が右サイドを深くえぐるが、クロスはDFがカット。1-0のままハーフタイムへ。守備は及第点だが攻撃はバラバラ、個人能力頼みという印象がぬぐえない前半だった。
 
 
後半も双方積極的に前へ出るのだが、組み立ての段階でミスが多くなかなかチャンスに至らない。53分、羽生が中央を突進、DFを引きつけて左に出し、カボレのシュートを岡本がジャンプ一番弾き出す。さらに続くCKからの二次攻撃、佐原がDFをブロックしてフリーになった徳永が左上隅にゲット!……に見えた場面はオフサイドの判定でノーゴール。56分、早いリスタートで祐介がDF裏に受けてシュートする決定的場面も、岡本がわずかに触って枠外へ。

63分、千葉は米倉に代えて谷澤投入。イヤな奴が出てきたな、という感じ。これに対して東京は石川OUTで鈴木達IN。「パス回しに絡める鈴木を入れて戦い方を変えるのかな」と思いきやそんなこともなく、鈴木は石川同様に単騎で仕掛け続ける。65分、停滞し始めた状況にしびれを切らした感じでカボレが左サイドからロングシュート、岡本の正面。67分には千葉のカウンター、深井のシュートがDFに当たって権田の逆を突くが、幸いわずか右に外れてくれた。

69分、米本→浅利の交代。中盤が間延びし始めていたので、その対策か。しかし東京に特に陣形をコンパクトにする意識も見られず、空いたスペースを使ってジェフの攻撃が形になり始める。73分、右に開いた深井から速いクロス、二列目から飛び込む谷澤のヘッダーがゴール左上をかすめて冷や汗。リードする東京は相手より余裕がある状況のはずなのに、ボールを奪っても攻め急ぐばかり。75分、CKからの波状攻撃で近藤がシュートするもポスト左。

78分、東京はカボレに代えて赤嶺を投入、陣形を4-4-2に変更。逃げ切る意図は明白だったが、どうも守備ブロックが固まりきらない。79分に鈴木のシュートが外れてからは千葉ペースに。82分には波状攻撃から巻が権田と交錯しながら撃ったヘッダーがバー直撃。そして85分、左サイドのスローインで徳永の背後に出たアレックスがグラウンダーのクロス、DF全員がなぜかボールウォッチャーになったところをどフリーの巻が易々と蹴り込んだ。1-1。
 
完全に思惑の外れた東京は慌てて前へ出るも、ただでさえ連携に乏しかった攻撃は千葉の守備陣をほとんど脅かすことができない。逆にロスタイム、ボール争奪戦の中で長友・今野が転倒して穴だらけになった東京DFライン裏に谷澤が絶妙のパスを通し、権田と一対一となった深井が落ち着いてループシュートを決めた。歓喜の千葉ゴール裏、沈黙の東京ファン・サポーター。そのまま1-2で試合終了。笛が鳴った瞬間、祐介と浅利がピッチに崩れ落ちた。
 
 

カール・マルクス曰く、歴史は繰り返す。最初は悲劇として。そして二度目は……(笑)。

攻撃については、ラインを高く押し上げる相手に対してカボレ・石川・近藤の突進力を生かす3トップ&放り込みサッカーという選択は、まあわかる。ただ、実際に始まってみるとお世辞にも機能したとは言い難い内容だった。途中で大竹を入れてギアチェンジできれば良かったんだけど、石川の個人技で先制したせいもあってズルズル続けることになって、交替も疲れた選手の入れ替えに。で、追加点を逃し、追いつかれた後の「お釣り」も残っていなかった、と。

守備の方は、全般的には悪くなかったと思う。開幕時に比べると組織的で厚い守備網が張れるようになっており、後半半ばまでは東京の帰陣速度が千葉のサイド展開の速さを完全に上回っていた。正直「逃げ切れるだろう」と思ったものだ。ただ、城福監督が「伝わらなかった」とコメントしているように、浅利投入以後2点目を取りに行くのか守りきるのかが中途半端になったのと、あと肝心なところで消極的なプレー(クロス見送り)が出てしまったのは非常に残念。

結局、先週の鹿島戦と同じで、「本来やりたいサッカー」をある程度度外視しても(いや途中からやるつもりだったのかもしれないけど)勝点3を取りに行って、でも結果を出せずに1試合の消化と後味の悪さだけが残った、ということになるだろうか。それって格好悪いというか。2試合連続のミッションインコンプリート、である。

ありふれた物言いになってしまうけど、おそらく城福監督は昨年と同様に、「理想」と「結果」のバランスをとろうとしてあがいているのだろう。その姿勢自体は、ファンとしても本来歓迎すべきところだ。また、相手や試合の状況に応じて戦い方を変えることを選手に要求しているようでもある。でも、残念ながら今のところ選手たちはそれについて行けてないように見えるし、城福監督自身も微妙にブレてメッセージを選手に伝えきっていないようにも思う。

昨年と同様、こうして相手なりに対策を考えてやりくりしているうちにある程度バランスのとれるやり方が見つかって、そこそこ良い成績を残すことは可能だろう。だが、それだとやっぱり東京が抱える根本的問題が温存されちゃうような気もするんだよな。それこそ神戸戦や磐田戦でやりかけたみたいに、腰を据えて取り組むべきなんじゃなかろうか。別に2トップか3トップかとかそういうレベルではなく。対症療法じゃなくて根本的な体質改善を目指す、くらいの勢いで。

まあ、こういうのは「言うは易く行うは難し」の典型なのだろう。特にシーズン中ともなると一歩間違えば「ガーロやめろ」再び、だし。上にも書いたように守備は改善されてきているので(と、この試合の後で書くと異論も多そうだが、僕はマジでそう思っている)降格を心配するレベルではないと思うが、このままだと「いつもと同じ」シーズンになりそうなのが切ない。少なくとも、梶山の頭上をボールが行き交うサッカーはどうかと思うぞ。あと、椋原あたりの起用法とか、ね。
 
 
ジェフ千葉の印象は昨年の最終戦の時と全く同じ。サイドからの単調なクロス攻撃は退屈で怖くない。が、一度勢いづくと止まらない、という。特に谷澤という「ジョーカー」の存在は大きいよね。彼は柏にいた時は「独裁スイッチ」で有名(?)だったけど、千葉に移籍して相手選手を消さなくなった代わりにより嫌な選手になったような。だいたい、あの顔が腹立つんだよな(笑)。個人的には、福西亡き後の「Jリーグくせ者三傑」は谷澤、谷口(川崎)、柏木(広島)である。
 

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コメント

>別に2トップか3トップかとかそういうレベルではなく。

すごく同意です。
選手の配置どうこうじゃなく、ウチはボールの動かし方とかサポートの仕方とか
根本的な所変えていかないと、結局何も変わらないですよね。。。

赤嶺投入で追加点を取る、という城福監督の考えは当然だと思います。(私はそう思いました。)ただそれならば、時期が遅れた感が拭えません。

あの時間なら、三枚目は平山だと思ってました。鹿島戦と違って。(苦笑)

残り12分+αの間試合を落ち着かせ、何事も起こさせずに終わるには、前線でのキープ力・賢く時間を使うセンスを持ち、相手FK時の壁になれる平山だと思ってました。もちろん、FWとして点を取ってくれることも期待してました。


城福監督、「良い勝ち方」の理想にこだわったのでは?

何にせよ、良い時と悪い時の振れ幅が大き過ぎますね、それが全体でそうなるのが東京らしいってのも、、、orz
ユースケは腐らず頑張って欲しい、赤嶺と平山の中間の役割が出来るのは貴重かと(カボレ以外だと)

「城福 浩、がんばれよ!」「何をゆうたんや、城福 浩!」「バー○ング!」

バーコフ!
懐かしすぎです。。。
よく覚えてますねぇ、感心しました(ってそこかよw)

>上にも書いたように守備は改善されてきているので(と、この試合の後で書くと異論も多そうだが、僕はマジでそう思っている)

私もそう思いますよ。確かに90分持続しないのには理由があるとは思いますが、それは守備ではなく攻撃に問題があると思います

単なる私見ですが

どーもー。

>ウチはボールの動かし方とかサポートの仕方とか根本的な所変えていかないと
全くその通りで……もしかして、まず監督にオフトさんみたいなタイプの人を連れてくるところから始めないといかんのでしょうか。もしくはクラマーさんとか(笑)。

>赤嶺投入で追加点を取る、という城福監督の考え
ここら辺は見解の分かれるところなんでしょうが、残り12分で3人目の交代、しかも4-4-2への変更、といった状況を見て私は「これは(チーム全体として)守りに入るんだな」と思いました。確かに完調なら平山だったのかもしれませんが、鹿島戦が悪すぎましたから。

いずれにせよ、2点目を取りに行くのか、守り固めを徹底するのかが中途半端だったように思います。さもなきゃ、あの谷澤のスローインで(羽生以外)棒立ち、はないかと。

>ユースケは腐らず頑張って欲しい
確かに。甘いかもしれませんが、私はあの座り込んでしまった「32番」の背中に今後の可能性を感じました。この悔しさを糧に精進してほしいですね。

>バーコフ!
予選で世界新を出したんですよね。間違いなく当時の最強選手。だから、あの鈴木大地の30mバサロはいわば奇襲で……という話はやっぱり長くなるのでここら辺で(笑)。

>確かに90分持続しないのには理由がある
攻撃というか、ボールを奪っても(速攻できるかどうかの状況に関係なく)前へ急ぐばかりで、相手をいなすでもなく回して休むでもなく……という感じで早々にスタミナを消耗しちゃうということなんでしょう。ボールの動かし方の効率性、という面では千葉の方が上だったし。

少なくとも、終盤の選手たちのガス欠状態は「気持ち」の問題ではない、と私は思います。

いつも拝読しております。
が、「独裁スイッチ」につられました。

谷澤が柏にいたときにはよく「デスノート」等と我々も呼んでおりましたが、
「独裁スイッチ」との呼称は言いえて妙ですね!!!

そうかー、その言い方があったかー!と感服しました。

どくさいスイッチそのものを知っている方が少なかろうと思われます。原作好きか、辻村深月好きか・・・。私は後者です。

>まっきー(柏) さん
どうもです。

「どくさいスイッチ」という表現は、「切腹倶楽部」から拝借して前々から使っております。最近では相手選手を消すことは少なくなりましたが……。

でも彼が入ると何かが起こるんですよね。それが敵味方問わず、というのが恐ろしいところですけど(笑)。FC東京にとっては、完全にトラウマ的存在です。


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