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2009年04月15日

●男たちの闘い ('09ツール・デ・フランドル、'09パリ~ルーベ)


先週、そして今週の日曜夜は年に一度のお楽しみ、サイクルロードレース「北のクラシック」2連戦(本当は、間の平日にヘント~ウェヴェルヘムが行われるから3連戦らしいんだけど)をJSPORTSでフル観戦。吹きすさぶ横風に激坂石畳が続くツール・デ・フランドル、そして27カ所ものデコボコ石畳が選手たちを痛めつけるパリ~ルーベ。毎度の事ながら「テレビの前で観ている側で良かった」と言いたくなるほど過酷な、しかし最高に面白い2レースである。
 
 
まず第93回ツール・デ・フランドルは、昨年のリプレイを見ているかのような展開となった。レース全般を通して、トム・ボーネン率いるクイックステップが抜群の存在感を発揮。コッペンベルグをはじめとする難所ではペースアップして集団を制圧、ボーネンがパワフルなペダリングで他の有力選手をふるい落としにかかる。そしてボーネンが厳しいマークに遭うや、今度はこれまたエース級のデヴォルデルとシャヴァネルが好位置から仕掛けていく。盤石。

優勝は昨年度王者のデヴォルデル。昨年と同様にボーネンがマークをはがせないと見るや前方へ進出、エイケンモレンのアタックからミュールの激走で突き放して一気にゴールまで走りきった。途中まではアシストに徹してけっこう脚も使っていたように見えたのだが……強い!文句なしの連覇である。ゴールする際に天を指さしたから何だろうと思ったら、今年のツアー・オブ・カタールで亡くなったノルフに捧げる勝利だったんだね。神がかりというやつか。

一方、ボーネンはまたも勝つことができなかった。それも今回は包囲網というより、元チームメートのポッツァートによる徹底マークのせいだから相当に悔しかったのではなかろうか。ポッツァートは「とにかくボーネンにだけは勝たせん!」という走りで最後までボーネンに張り付き、デヴォルデルらは完全に放置。まあ、カチューシャのチーム力を考えれば仕方がないようにも思えるのだが、レース前の記者会見でボーネンに挑発されたのも影響していたのだろうか。

しかしクイックステップのチーム力は本当に凄い。エース級3人を揃えて、いわゆる「トリデンテ」ってヤツか。アスタナのコンタドール・ライプハイマー・アームストロングと比肩する豪華なメンツである。サッカーで言えばアンリ・エトー・メッシが並ぶバルサの3トップみたいな。
 
 
続いて1週間後、第107回パリ~ルーベ。ポッツァートの粘着マークの影響で優勝争いについてはやや拍子抜けの感があったフランドルに比べると、こちら昨年と同様に堂々たる力比べの展開になった。多発する落車やトラブルによって、難所を越えるごとにみるみる集団の人数が減っていくサバイバル・レース。降りかかるプレッシャーや事故にめげず、自ら仕掛け続けたことで「ただ1人残った」ボーネンが連覇、そして3度目の優勝を飾った。

シビれるレースであった。中盤の山場アーレンベルグにおいて、ボーネンの先頭通過は予想どおりだったものの、大落車で有力選手がアシストの大半を失ってしまう性急な展開。各チーム2~3人の力比べが続き、残る石畳(パヴェ)が10を切った頃からアタックが連続する。これはもう目が離せない。そこでも中心になったのはボーネンだった。自ら先頭を猛進しては、集団をふるいにかけ続ける。脚を使うことに対する恐れなど微塵も感じられなかった。

で、難易度4~5の石畳が続く終盤戦。6人の争いから落車で4人が遅れ、ボーネン、少し遅れてポッツァートが抜ける展開に。これは偶然ではなく、ボーネンのコースに対する知識と経験、そして何より攻撃的な走りが生んだ結果だろう。あとはフランドルで因縁を残した2人の追いかけっこ。気迫を全身にみなぎらせて逃げるボーネン、冷たい闘志を燃やして追うポッツァート。まるで映画かドラマのようだ。10数kmの闘いの末、ついにボーネンが逃げ切った!!

いや、ボーネンは本当に強かった。序盤に落車して傷を負い、残り30km地点では自転車が壊れて一旦遅れるアクシデントも。しかし、それらを全てはね返す意志と脚の強さが彼にはあった。パヴェではとんでもないスピードで前を引き、平坦区間でも先頭交代を厭わなかった。オーラが違うというか、まさしく「王者の走り」である。牽制する他の5人の目の前でボーネンが怒りを露わにボトルを叩きつけた途端、集団が回り出した場面にはちょっと笑ったけど。

ポッツァートは47秒引き離されての2位。終盤ボーネンを追うところでは観客から大ブーイングを浴びて気の毒だったが、「完全アウェイ」で大いに力を見せたのではなかろうか。最後、競技場に入ったところで先にゴールしたボーネンのお尻をポン、と叩いて祝福したのはいいシーンだった。ついでに、彼も含めた5人がメカトラブルで遅れたボーネンをペースを上げずに待っていたあたりも、解説の栗村さんが言うように「美しい」シーンだったのは間違いない。
 
 
超一流レーサーの超人的な技術と体力、そして精神力を見せつけられ、一方でこの上なく人間くさいやりとりも目撃することができる。これだから自転車ロードレースは面白い。今年のツール・デ・フランドルとパリ~ルーベは(セットで見れば)そういうレースだったのだと思う。ビバ、ベルジャン!!つーか、沿道の観客が掲げていた「Tornado Tom Frites!!」とか書いてある(ちょっとおバカ入った?)横断幕を見たら、 無性にベルギー料理が食べたくなった(笑)。
 

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