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2009年03月22日

●やはり羽生と佐原のチームなのかいな (FC東京×モンテディオ山形)


昨日の午後は、味の素スタジアムでJ1第3節。FC東京 1-0 モンテディオ山形。開幕から新潟・浦和に連敗して迎えたホームゲーム、相手は1部に昇格したばかりの山形。東京にしてみれば早くも「絶対に負けられない」一戦であった。試合は、東京がスタメン入れ替えの甲斐あって優位に立ち、山形の組織守備に攻めあぐみながらも羽生のゴラッソで得た1点を守りきって勝利。桜の開花宣言とともに東京にもようやく「春」がやってきた、というところか。
 
 
公式戦では実に10年ぶりになる山形との顔合わせ。山形側ゴール裏には「おぼえてる? ’99.11.21」なんて横断幕も。もちろん忘れるはずがない。あの日、新潟を破った東京にJ1昇格の歓喜をもたらしてくれたのは、後半ロスタイムの得点で石崎ノブリン率いる大分と引き分けた山形なのであった。懐かしいねえ、加賀見の反転シュート、ドキドキしながら試合後のスタンドで待ち続けた30分、そして奥原のガッツポーズ。「ましもコール」なんてのもあったな(笑)
 

 
キックオフ。山形はきれいな4-4-2の陣形。タッチ数少なめにテンポよくつなぎ、FW長谷川のポストプレーから加速、と行きたかったのだろうが、しかしパス回しはぎこちなく、長谷川へのクサビも佐原にはね返されてなかなか前に進めない。対する東京はコンパクトな山形の布陣を考慮してかつなぎにはこだわらず、長めのボールを平山へ、あるいはDF裏へ蹴ってアタッカー陣を走らせようとする。これが功を奏し、序盤から東京ペースで試合が進む。

6分、山形DFがロングボールにかぶり気味になったところ、ボックス内へ抜けたカボレが倒されたがノーファウルの判定。8分、長友がパスカットから突進して左に流れた平山へ展開、低いクロスをカボレの寸前でDFがきわどくカット。さらに右CKから佐原がどんピシャのヘッダーを撃つが、ワンバウンドのボールをGK清水が横っ跳びで好セーブ。カボレ・石川のスピードは山形DFを圧倒しており、CKの数はいつになく多い。早めに先制したいところだったが……。

前半半ばになると山形もMF宮沢・SB石川竜と好選手を揃える左サイドからチャンスを作るように。23分、宮沢→左に流れた長谷川→中央の古橋→右でフリーの秋葉とパスがつながるが、シュートは権田が片手で弾き出した。東京にしてみれば、相手が前に出てきた方がやりやすい。24分にはカウンター、石川からオフサイドギリギリで飛び出すカボレへパスが通り、ボックス左でGKと一対一の大チャンス。しかし、カボレのシュートはポストわずか右に外れ。

28分、右サイドを持ち上がった徳永がDF2人を振り払いながらゴール前の平山へつなぐが、反転シュートはDFがブロック。32分、CKのこぼれ球を拾った梶山が狙いすましたミドルシュートをゴール右隅に飛ばすも、これも清水が横っ跳びでビッグセーブ。相変わらず東京の方が好機は多いのだが、まとまって粘りを見せる山形DFを崩しきれない。34分、左に流れた古橋のキープから長谷川がボックスに突入した場面は、今野が追いすがって止める。

36分、キレのある動きを見せる長友が平山のワンタッチパスで左サイドを抜け、一気に深くえぐるがクロスはカボレの前でカット。43分、左サイドから切れ込むカボレが中の平山・石川を見ながらフェイントでDFを外してシュート、タイミングを外された清水の脇を抜くも、ゴールライン直前でDFがクリア。終了間際には山形にカウンター攻撃の場面があったが、東京DFのカバーが効いて古橋の弱いシュートを権田がキャッチ。双方無得点のままハーフタイムへ。
 
 
後半は頭から攻め合いに。カボレ・石川のチェイスから圧力をかける東京に対し、山形も前半に比べてプレスの激しさを増す。いきなり45分、左サイドから切れ込む長友が意表を突くミドルシュート、清水が弾き出す。直後、山形は秋葉がドリブルで茂庭を抜いてボックスへ突入、倒されたように見えたが笛は鳴らず。51分には茂庭がキックをMFキムに当てて裏をとられ、アタッカー2人×DF1人の大ピンチとなるが、佐原が素晴らしいタイミングのカバーでストップ。

55分、東京に先制点が生まれる。山形がパス回しにもたついたところを石川が奪取、オーバーラップの長友が左サイドを駆け上がってボックス内に入れ、カボレがDFを背負いながら右サイドの羽生へ流す。羽生はカバーに入るDFの動きをよく見ながら左足でシュート、ややドライブのかかった弾道に清水のジャンプも届かず、ゴール左上に突き刺さった。強さにこだわらず落ち着いてコースを狙った羽生の判断力が光った得点であった。1-0。

59分、左サイドのFKで梶山がインスイングのクロスを入れ、ファーにこぼれたところを石川がボレーで狙うも大ふかし(笑)。追いつきたい山形はより大胆なパス回しを見せるようになり、主に石川竜を起点に左右への大きな展開から前へ出る。61分、キムのクロスを北村が落とし、ゴール前で長谷川の足下に落ちた場面は権田が前へ出て防ぐ。ここで城福監督が動き、石川に替えて鈴木達。鈴木は精力的に動いて山形のパスの出所を抑えにかかる。

ところが、67分に危ない場面。石川竜からボックス左のスペースに入り込んだ北村へ絶妙のパス、北村は寄せる梶山をかわしてからゴール前の長谷川へ。長谷川は佐原の寄せでシュートできないもののボールをきっちり戻し、走り込む秋葉がシュート!観念しかけた場面だったが、幸いゴール右に外れてくれた。追加点が欲しい東京は69分、左サイドの争奪戦から羽生が好フィード、ゴール正面に走り込む平山へ通りかけたところで清水が間一髪クリア。

後半半ばからは攻める山形、守る東京という構図が続く。山形は東京アタッカーのフォアチェックをかわして何とかクロスまでは持っていくのだが、中を固める東京DFにはね返されるばかりで決定機が生まれない。頼みの長谷川も佐原が抑え込んだ状態。東京は逆襲攻撃にも人数をかけず、無理しないモード。さらに82分には山形のパワープレーシフトに合わせて羽生OUTで米本IN、中盤をフラット気味へ移行して山形のサイド攻撃を遮断しにかかった。

終盤は東京の守備策が当たって山形は攻撃の形も作ることができなくなり、淡々と時間が過ぎていく。東京は前線にボールが入ると平山や梶山がキープ力を発揮。88分には突如右サイドを突破した鈴木のクロスに平山がダイビングヘッドで飛び込むが、DFの寄せでゲットできず。ロスタイム、石川竜の対角線フィードを園田がボックス内へ折り返した場面は権田がしっかりとキャッチ。結局、東京が虎の子の1点を守りきって今シーズン初勝利を挙げた。
 
 

やれやれ、というか、ちょっとだけホッとした、というか。

モンテディオ山形は、事前の予想どおり真面目でよく鍛えられたチームだった。動きがキビキビして陣形も幾何学的にきれいで、ああ、なるほど、こういうチームが上がってくるのはいいことだよなあ、と好もしく思う。ただ、J1に残留できるかどうかとなると、ちょっと微妙かも。長谷川・古橋・宮沢・石川竜・清水あたりはJ1でも十分通用しそうに思えるが、いくつかのポジションはちょっと劣る感じがするのも事実。そこら辺は小林伸二監督のお手並み拝見、である。

FC東京は、ようやくひと息つくことができた。一対一の能力では完全に上回っていた印象ながら、決定力の面で違いを見せられずに僅差の勝負となってしまい、「快勝」とはとても言い難い。それでも、この試合は勝点3を獲得することこそが重要だったのだからとにかく良かった。勝因は、佐原が復帰したこと、長友とカボレのコンディションが上がってきたこと、ボールを収められる平山の起用、山形の組織的な中盤守備を避けるシンプルな攻撃、といったところか。

MVPは佐原。この2試合、攻撃の不明瞭さもさることながら、より深刻なのは守備の脆弱さであった。彼の復帰による守備の安定、それがもたらした安心感は計り知れない。体のキレは今一歩ながら、その分セーフティにやっていたのも好印象。あと、もう1人挙げるならやはり羽生。狙いすました左足シュートは見事だった。運動量や飛び出しばかりが注目されがちな彼だけど、足技や判断力も優れている選手なので、そこをもっと生かせればいいのにと思う。

つーか、結局、頼りになるのは昨年加入した(しかも1人はレンタル中である)羽生と佐原かよ、という。今回は羽生も交替する時、誰にキャプテンマークを渡したら良いのか、きっと迷わなかったことだろうな(笑)。それはそれで良いんだけど、以前からチームにいる選手にももうちょっと頼もしくなってもらいたい、と思うのである。特に中盤の仕事をあまりできていない6番とか(今回は、これまでの2戦に比べれば守備の仕事はできていたけど)。

他の選手では、平山の健闘が光った。彼は案外足下がしっかりしてるし周りも見えているし、前線での収まりやパスの回りを考えるのならば先発起用でも不思議はない。ただ、彼は点がとれないんだよね、自分では。赤嶺を使うとそれなりに点はとってくれるけどボールが収まらなくて、平山を使うとそれなりにボールを収めてくれるけど点がとれない。つくづくこの2人の使い方は難しい。まあ、浦和と山形のDF能力の違いなんかも考慮すべきかもしらんけど。

石川は、この日みたいにチームが「縦の上げ下げ」を中心に動くと生きてくる選手。攻守に貢献していた。カボレも同じなんだけど、やはり1点は入れてほしかった。梶山は悪くなかった。でも次はまた狙われちゃうんだろうね。梶山1人に依存している限りこのチームのパスサッカーに進歩はない。茂庭がさほど良く見えなかったのは、周りがここ2試合ほどひどくなかったからか(笑)。権田は好セーブもあって、思い切りが出てきた感じ。SBは……攻撃は良かった。

ともあれ、繰り返しになるが、前節に比べればずっとマシにはなったものの、内容的にはさほど良かったわけでもない。これでようやく今季のスタートラインに立ったかな、というところである。浦和戦の後にはションボリしてた城福監督も少しは落ち着いただろうから、ナビスコ杯の2試合なんかもうまく活用して、4月の磐田戦に向けてチーム力を積み上げていってほしいものである。少なくとも、そのあたりには「今年やりたいサッカー」の片鱗くらいは見せてほしい。
 

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コメント

山形戦、平山・佐原の復帰でチームの背骨がしっかりしたという印象でした。しっかりした背骨のサイドを、石川・長友が上下に動き回るので、躍動感と安定感が両立してました。これなら、去年のレベルには戻ったと思います。


しかし、ピッチ上の11人の選手の個人能力を単純に足せば、現役・元A代表、U代表だらけの東京が遥かに強いはずなのに、終わってみれば1:0。

つくづくサッカーは、面白く、恐ろしいスポーツです。

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