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2009年03月16日

●リーグ戦はあと32試合もある (浦和レッズ×FC東京)


土曜日の午後は、はるばるさいたまスタジアム2002まで出かけてJ1第2節。浦和レッズ 3-1 FC東京。ともにパスサッカーを標榜する両チーム、ともに開幕を完敗して迎えた「負けられない」第2戦。浦和が荒削りながら「人もボールも動く」サッカーで優位に立って先制、一度は東京が好展開から追いついたものの、後半はゆるい東京DFの裏を突くポンテらの活躍で浦和が圧倒し、2得点を重ねて今季初勝利を収めた。東京は愕然の連敗。
 
 
試合は立ち上がりから浦和ペースで進んだ。5万観衆で赤く染まったスタンドの後押しを受け、積極的に前へ出る。いきなり3分、DFをはね飛ばしながら左サイドへ飛び出した田中達のシュートは権田が伸び上がって弾き出したものの、続くCKでポンテの低く速いクロスに東京DFが反応できず、阿部のダイレクトボレーがゴール左へ決まった。前節セットプレーでやられていた割にはあまりにあっけなく見えた、出鼻をくじかれる失点。0-1。

浦和はSBがあまり上がらないものの、DFラインでの丁寧なパス回しからMF陣が豊富な運動量でよくボールを動かし、東京のDFラインにギャップができると田中達とエジミウソンが快速を飛ばして突っ込んでくる。6分、右から切れ込むエジミウソンがフェイントで茂庭をかわしてシュート、わずか左に外れ。東京はDFが簡単に裏をとられる場面が多く、前節に引き続き茂庭がカバーに奔走。前線にもなかなかパスが収まらず苦戦の様相となった。

ようやく可能性が見えたのは13分。梶山→羽生→カボレとつないで長友が左サイドを突破、クロスははね返されたものの、直後にボックス右でキープした梶山が追い越す徳永へパスを通し、DFに走り勝ってグラウンダーの折り返し。ニアに滑り込んだカボレがGK・DFと交錯しながらゲット。1-1。これで東京はパス回しのリズムが良くなり、梶山を中心に押し込む場面も。23分、羽生のミドルシュートのこぼれがボックス内のカボレに渡るも、シュートは都築の正面。

だが、東京ペースは長続きしない。25分過ぎ、右に流れたポンテが好クロスを連発、いずれも権田や茂庭が辛うじて防いだものの、以降は浦和アタッカーの流動的な動きに東京守備陣、特に今野は振り回されるばかりに。32分、細かいパス交換から原口が仕掛け、DF2人がかりで止める。42分、大きな左右の揺さぶりから闘莉王がボックスへ突入するピンチ。その直後、クロスにまた闘莉王が飛び込むも茂庭が激突しながら防ぐ。同点でハーフタイムへ。
 
 
後半はネジを巻き直した東京が前がかりになろうとするが、逆に浦和が追加点。48分、今野が中央を持ち上がってカボレにつないだところでボールを奪われカウンター、右サイド駆け上がるポンテからのクロスをフリーのエジミウソンが合わせてゲット。東京にしてみれば積極的な姿勢が裏目に出た形だが、攻→守の切り替えも遅かった。1-2。さらに51分、ゴールライン際で競った茂庭が転倒してしまい、原口と権田の一対一となるが権田が何とかストップ。

浦和の攻勢は止まらない。52分、フォアチェックでボールを奪った鈴木が左サイドを突破、闘莉王が頭で合わせたヘッダーは大きく弾んでバーを越えた。反撃したい東京だが、浦和の守備網にパスワークが寸断されポゼッションできない。梶山も難しいパスを選択してしまい、むざむざボールを失うことが多い。56分、ようやくボックス正面まで攻め込んで梶山とのパス交換からカボレが闘莉王をかわしミドルシュートを撃つも、都築が横っ跳びでナイスセーブ。

ここで両ベンチが動く。まず57分に浦和が原口に替えて高原。東京は鈴木→大竹、祐介→赤嶺、さらに羽生→石川。東京は前節に引き続き「三枚一挙替え」である。しかし流れは変わらず、64分、浦和が右→左へ大きくつないで細貝がクロス、ファーで高原の撃ったヘッダーを権田がストップ。ここら辺、浦和は圧倒的に攻めながらも「しとめ」の部分がやや雑であった。69分、エジミウソンの突破からゴール前の闘莉王にクロスが通るが、トラップミスで命拾い。

東京にとって惜しかったのは71分、左サイドのパス交換から梶山が右へ大きくはたき、石川がダイレクトでシュートした場面。強烈なドライブのかかったボールは都築の頭上を越したが、バーを直撃して決まらず。くそ!72分、中途半端な位置取りの徳永の背後を突いてポンテが抜け、どフリーでシュートするも幸いサイドネットに外れ。東京は大竹にほとんどボールが渡らず、たまに石川や長友が奮闘してクロスを上げてもアタッカーに合う気配がない。

そして83分、突如オーバーラップした坪井が左サイド深くまで持ち上がって折り返し、中央の山田直を経由して右のポンテへ。ポンテは落ち着いた切り返しで長友と茂庭のマークをずらしてシュート、ニアサイドを抜いて決まった。1-3。これで勝負あり。残り時間はスコアが動くこともなく、レッズサポーターの勝利の歌声がさいスタのスタンドに響き渡ってタイムアップ。東京は、Jリーグに参加後はじめての開幕2連敗を喫してしまった。
 
 

たかがまだ2試合、されどもう2試合。

浦和レッズは、予期していた以上に良い出来だった。個々のパスの精度や連携面はまだまだなものの、鈴木啓の運動量に象徴されるように「とにかくアクション」という意志ははっきり見て取ることができた。で、流動的なの動きの中でアタッカー、特にポンテが生き生きと技術を発揮して3得点。東京にしてみればやりたいサッカーをやられてしまった、というところか。フィンケ監督の就任・チーム始動からわずか2ヶ月余り。改革は意外と順調に進んでいるようだ。

「浦和のメンツはパスサッカー向きではない」という議論もあるようだが、そんなことはなかろう。中盤にはダイナモの鈴木とパサーの阿部、トップ下には流動的に動き回って本領を発揮するポンテ、FWには引いてパス回しに加われる田中が揃っており、DFラインには上がれてフィード力もそこそこある闘莉王がいる。そして抜擢されたフレッシュな新顔の存在。まあ、少なくとも、06年の東京があのメンツでポゼッションやろうとした時ほど無謀ではないのでは(笑)。

一方、FC東京にとって事態は深刻だ。開幕の4失点に続いて今度は3失点。強力アタッカーを揃える浦和が相手であったにせよ、相手の「しとめ」の精度がもう少し高ければもっと失点は多かったはず。目につくのは、バイタルエリアとそのサイドでのマークの混乱だ。前半半ば、ポンテが右サイドでやりたい放題だった場面などはひどかった。もともと個々の守備力に多くを望めないのに……前節も書いたが、守備の組織力が1年前に戻ってしまった印象である。

攻撃の方も、新潟戦では相手の消極性にも助けられて前半は優位に進められたのだが、今回はホームでの初勝利に燃える浦和の勢い込んだ守備に早い時間帯からズダズダに分断されてしまった。選手たちのプレー選択を見ても、速攻に行くのかある程度つないで行くのかがバラバラで、連動性を失ったまま中途半端に前がかりになってバランスを失ってしまった。そもそもボールを持つことすらできないのにムービングもくそもない、という感じか。

あえて良かった部分を探すと、やはり13分から10分間くらいのパス回しだろうか。開幕前の練習試合で梶山を前目で使っていた事から察すると、おそらくあの同点ゴールのように「梶山のキープから追い越すSB(ボランチ)の決定的なプレーにつなげる」というのは今シーズンの一つの狙いなのだろう。そういう意味ではいい得点だった。他にも梶山から羽生あたりにグラウンダーのパスが入って連動が始まるといい形になるのだが……あまりに少なかった。

ともあれ、「優勝」を目標に掲げると公言していたチームがふがいない内容で2連敗したのだから、少なくとも開幕に向けた準備は失敗に終わったと言うしかない。昨シーズンとあまり選手が入れ替わっていないにも関わらず、である。正直、期待が大きかった(ということ自体が見込み違いだったのかもしれんけど)だけに、落胆も大きい。

あと、チームのパフォーマンス以上に心配なのは、城福監督についてである。この2試合は解せぬ選手起用も多く、監督自身に迷いがあるようにも見える。浦和の先制点の後、大型ビジョンに映ったアップの顔に動揺の色が伺えたのはちょっとショッキングだった。試合後のインタビューでも表情に覇気がなく、「大丈夫かしら」である。とにかくもう一度、戦い方を整理して、結果はともかく堂々と挑んでほしい、と思う。当分は彼に頑張ってもらうしかないのだから。

この敗戦により、現在の順位はなんとなんと17位である。ポジティブな見方をするにせよネガティブな見方をするにせよ、まだ2試合しか済んでいないとも言えるし、まだ32試合も残っているとも言える。辛くて長い8ヶ月になってしまうのか、それとも別の意味で忘れらることのできない32試合になるのか。とにかく、ガンバレ!!
 

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コメント

得点が取れないのは予想してましたが、守備がこれほどユルいとは思いもしませんでした。


セットプレーで簡単にマークを外される、サイドの2対2の攻防に競り負け簡単にライン裏にボールを入れられ飛び出した選手に誰もついて行かない等々、チームの守備戦術が浸透してないだけでなく選手一人一人が迷っているように見えます。

幸い、連勝はガンバ大阪と新潟のみ。次節山形戦は根性(苦笑)で勝って、ナビスコ2連戦は戦術的なトライをするということでどうでしょうか?

>守備がこれほどユルいとは思いもしませんでした
同感です。少なくとも、そこは昨年1年間の蓄積があると思ったんですけどね。

>チームの守備戦術が浸透してないだけでなく選手一人一人が迷っているように見えます。
一度、シンプルに整理する必要がありそうにも見えますね。相手のエースにマンマークを付けるとか(笑)。

>次節山形戦は根性(苦笑)で勝って、ナビスコ2連戦は戦術的なトライをするということでどうでしょうか?
山形戦は、冗談抜きで一つのヤマですねー。セットプレーの1点を守りきるでも何でもいいから、とにかく勝点3。これに尽きます。

システムは迷いが有るなら一度、去年のやり方にリセットしても良いかと思いますね。
3トップ気味で左カボレ、平山が調子が良い様なのが活かせれば良いですが。

SBと中盤の守備が絡んだ時が雑なのは早めに改善して欲しい処です。

権田頑張れ、超頑張れ!

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