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2009年03月29日

●正しい「ナビスコカップの戦い方」 ('09ナビスコ杯 vsヴィッセル神戸)


今日の午後は、味の素スタジアムでナビスコカップBグループ第2節。FC東京 1-0 ヴィッセル神戸。リーグ開幕2連敗に続いてナビスコ初戦もレイソルに完敗と、芳しからぬ内容・結果が続く東京。若手抜擢のメンバー・新布陣で「仕切り直し」を狙う一戦となった今回は、序盤はチームが機能せず苦戦の様相を呈するも、後半パスワークから大竹の一撃で得た1点を守りきって見事勝利。今後に明るい見通しをもたらしてくれそうな、意義ある戦いとなった。
 
 
東京は代表に抜かれた長友の代わりに椋原を右SBとして起用。CBに今野が入り(茂庭は怪我?)、ボランチを羽生と今季初登場の浅利が、攻撃的MFを大竹・梶山が務める新鮮な布陣となった。羽生が前に出て浅利がDF前を固めることが多いので、感覚的には4-1-3-2みたいな感じか。しかし、立ち上がりはこれが機能しなかった。慣れない組合せのせいもあるのか、いつも以上にパス回しはぎこちなく、なかなか攻撃が組み立てられない。

これに対して神戸は精力的なプレスから中盤戦で優位に立ち、前がかりに。7分、ボックス左でFK、吉田のクロスがはね返ったところ馬場がミドルシュートを狙うが、権田の正面。14分、松岡のアーリークロスを攻撃参加の石櫃がヘッダー、枠をかすめてヒヤリ。東京はつなぐ意識は高いのだが、プレスに耐えきれず長いボールを蹴って渡してしまう場面が目立つ。ただし、浅利の指さし確認の甲斐あってか、守備はこれまでの4戦に比べれば穴のない印象。

幸いなことに、神戸は攻め込むまではシャープにパスを交換するのだが、仕上げの部分ではやや工夫が不足していた。東京DFの健闘もあり、確かに攻撃の糸口はなかなかつかめず東京側スタンドから「前!前!」などと不満の声も飛ぶものの、ボールを支配されている割には失点の危険も感じない。まったりと試合が進む。28分には右サイドからのFK、神戸はボックス内で落としてフリーの吉田がシュートするが、羽生がコースを塞いでブロック。

残り10分あたりから、東京もパスがつながりだして攻勢に。35分、羽生から左へ流れた梶山へ好フィード、切り込んで狙ったシュートはDF直撃。40分、右サイドで攻撃参加した椋原がDFをぶち抜いてえぐりクロス、ファーで梶山が落とし、赤嶺が左足で狙うも体勢が崩れて決まらず。さらに42分、左サイドからドリブルで仕掛けた大竹がCBの間へ走る赤嶺を狙ったラストパス、半歩届かずシュートは外れ。時間はかかったものの、ようやく様になってきた感じ。


後半頭から神戸は馬場OUTで鈴木規IN。東京ゴール裏大ブーイング(笑)。だが、強引に仕掛ける規郎の投入は神戸の攻撃に活を入れる形となり、ほぼ互角の攻め合いに。46分、カウンターで梶山から右の羽生へ展開、さらにDFライン裏へ抜けるカボレにパスが通るが、角度がなくなって折り返しをカットされる。49分、ボックス右手前で神戸のFK、規郎の弾丸シュートは壁直撃。51分には石櫃が巧みに今野の後方へ出てシュート、権田キャッチ。

58分、東京にチャンス。倒されてもファウルをとってもらえない姿が目立つカボレが左タッチ際を怒りの激走、えぐって入れたクロスはツネ様、じゃなかった宮本にカットされたものの、CKから波状攻撃に。そして59分、右から中央の赤嶺にパスが渡り、その左でDFを背負うカボレにパス。これをカボレがスルーし、さらに左を追い越す大竹がDF脇を突破した。大竹は冷静にGKの位置を見てシュート、ボールはゴール左上隅に突き刺さった。お見事!1-0。

これで東京がペースをつかむ。呼吸の合ったパス交換も増え、良い雰囲気に。ただ、肝心なところで梶山や徳永のテンポのズレたプレーが出たりして、前半の神戸同様に攻撃回数の割にはチャンスは少ない。70分、出足よくボールを奪った梶山がDFラインへ走り込むカボレへのラストパスを狙うが、わずかに合わず。一方神戸は過敏な村上レフェリーの判定を利用し、67分と73分に東京陣内でFKを得るが、石櫃と規郎のシュートはいずれも枠に飛ばず。

神戸は茂木や松橋といった攻撃の選手を投入。これに対して東京はカボレと大竹を休ませて祐介・鈴木達を入れる。75分、梶山がまたも出足よく規郎からボールを奪い、オーバーラップの椋原がDFをかわして中へ。しかし赤嶺を狙ったクロスはDFがカット。77分、神戸はショートコーナーからクロス、なぜかどフリーになっていた茂木が頭で狙うもなぜか大はずれ(笑)。いや、結果として勝ったから笑えるのだが、ここはヒジョーに危ないシーンだった。

終盤は神戸がロングボールを交えながら前がかりになるが、東京は佐原や今野が着実にはね返し、逆に相手の裏をとって好機を得る。79分には浅利のパントをうまく拾った今野が右から、87分には赤嶺が左からボックスへ突入するが、いずれもラストパスが通らず。ロスタイムにはボールを奪った徳永が一気にボックスまで持ち上がり、DFを引きつけてから逆サイドの鈴木へパスするも、ボレーシュートは枠外。しかし、結局そのまま東京が逃げ切りに成功した。
 
 

今季の5試合の中で最もポジティブな印象の残るゲームだった。

ヴィッセル神戸は今季から監督を替えてステップアップを図っているらしいが、まだチームが固まらないのだろう。やろうとしていること、ストロングポイントが明確になっていない感じ。レアンドロと大久保の穴はやはり大きく、昨秋に対戦した時の「松田キビキビサッカー」の方が手強かったかな、と。まあ、そう簡単に新しいコンセプトが滲透するわけでもないだろうし(先日ここで「改革は意外と順調」とか書いた浦和もその後苦戦してるし)、しばらくは様子見かな。

FC東京は、前節柏にチンチンにされたことで城福監督もついに腹を括ったのか、けっこう思い切った布陣変更に出て、それが功を奏した格好である。大竹・椋原という若手の抜擢と、羽生を中心にしてカボレや赤嶺もパス回しに加わる、よりパスサッカーに適した選手配置。ほとんど形すら作ることしかできなかった最初の30分間はさすがにちょっと心配にもなったが、その分浅利先発の効果もあって守備は安定していたし、後半は結果が出て良かった良かった。

冷静に見れば、パスそのものの精度、出し手と受け手の呼吸、シンプルにやるところと手数をかけるところの判断、動き直しの頻度、追加点のチャンスにおける決定力など、いずれも「まだまだ」であって、このまま名古屋や鹿島といった強豪に通用するとはとても思えない。でも、去年の春に見えていたような、新しい地平への可能性は見えたような気がする。紆余曲折はあるかもしれないけど、目指すサッカーはこの延長線上にあるのではないかな、と。

まあ、そこまでは言い過ぎかもしれないが(笑)、「若手を使って」「冒険的な試みをする」のはナビスコ杯の戦い方としてはきわめてまっとうなものだろう。とにかく、開幕ダッシュは大失敗だったけど、この勝利を契機にして着実にチーム力を積み上げていってほしいものである。

個々の選手では、まず大竹。何だろうね、あのシュートを撃つ前の落ち着きは。やっぱり凄い。トレーニングの成果が出ているのか、体を当てられてもきちんとキープできる確率が高くなっているように見えるし。このまま順調に伸びていけ!そして若手抜擢といえばもう1人、椋原も。「フッキ封じ」の一件で守備力ばかりが注目されている感のある彼だけど、クロスは正確だし仕掛けるアイデアもあるしで、次もスタメンでもおかしくない。物怖じしないのがいいよね。

ボランチ(というよりセンターハーフか)に起用の羽生もなかなか良かった。攻撃的MFに彼と石川あたりを並べたりすると陣形が拡散するばかりでパスが回らなくなるので、中央近くで動き直しを続けてもらう方がチームのためには良いと思う。フィードも良いのを出せるし、いざとなれば前に絡めるし。逆に、どうしても不安定さの残る梶山は後ろより前にいてアクセントをつける役回りの方が見ていて安心というか。もうちょっと周りが見えていると良いのだが……。

守備陣では、今野の奮闘が光った。粘り強いマークで神戸FWに仕事をさせず。今の彼なら、MFで使うよりCBで使う方が断然良いと思う。決して器用な選手ではないので、まず守備に専念させ、逆に「ここぞというところ」で攻撃力を発揮してもらうイメージ。やや崩壊気味だった中盤の守備は、周りの選手にも気を使える(指さし確認!)浅利の方が現状適任だと思うし。そういや04年の加入時から、今野は浅利と一緒に使うと活躍することが多いんだよね。

ともあれ、これで柏戦のモヤモヤが少しは晴れた。来週末までは楽しい1週間だぜー(笑)。
 

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