« 城福東京、08年から09年へ (2009年展望 後編) | メイン | 『パイパー』 »

2009年03月01日

●清宮氏とサンゴリアスの大きな宿題 ('09ラグビー日本選手権決勝)


昨日の午後は、秩父宮ラグビー場で日本選手権決勝サントリーサンゴリアス 16-24 三洋電機ワイルドナイツ。半年間続いてきたラグビーの国内シーズンもいよいよ大詰め、トップリーグと並ぶ「最高峰」の大会の決勝である。MS杯ではともに苦渋をなめた2チームの対戦は、サントリーがキック戦法で優位に試合を進めながらチャンスに攻めきれず、逆に少ない逆襲の好機をものにした三洋電機が勝利。同じ顔ぶれの前回決勝と同じ結果となった。
 
 
立ち上がりから優勢だったのはサントリー。前日の雨雪の影響で軟弱なピッチ状態も考慮したのだろう、自陣や中盤ではとにかくキック戦法で前進を図り、敵陣に入ってからは密集周辺で細かくボールを動かしていく。復帰したSO曽我部が低くスペースへ蹴り込み、あるいは22mライン前に高々と蹴り上げ、そこへFWが殺到。受身に回った三洋はたて続けに反則を犯し、5分、11分、18分とニコラスのPGが決まってサントリーがリードを奪う。9-0。

しかし、サントリーは深く攻め入りはするものの、三洋DFの粘り強いタックルに阻まれてなかなかトライにまでは至らない。2度狙った曽我部のDGも大きくそれて決まらず。前半半ばを過ぎると外国人3人を並べた三洋FWがスクラムと密集で力を発揮してサントリーの攻撃テンポが落ち、またタッチライン際にFWを置くライン攻撃から山本貢が大きくゲインするなど形勢はほぼ互角に。三洋が入江のPGで3点を返して9-3でハーフタイムへ。
 
 
後半も立ち上がりはネジを締め直したサントリーのペース。曽我部の天を突くハイパントを三洋DFが処理ミスしたこともあり、サントリーがゴール前まで攻め込むチャンス。ところが、この「最低3点、できれば7点」の状況でまた取りきれないのだ。タッチ際の長友を狙った曽我部のキックパスは北川が好タックルで止め、左中間から右に大きく展開してBKが余り「ついにやったか」という場面も、ニコラスのラストパスを小野澤がノックオンして逸機。

そうしてサントリーがもたつくうち、三洋はSOブラウンらを投入して勝負に出る。そして59分。三洋はタッチライン際を突破した霜村の快走からゴール前に攻め込む。中央の密集から右へ展開、霜村がパスフェイクでトイメンの山下を抜き、ラストパスを吉田尚に通してトライ。9-10。逆転されたサントリーはペースを上げて攻めにかかるが、焦りもあるのか密集で時間をかける割に安定して攻撃を継続できない。三度目の正直を狙った曽我部のDGも失敗。

65分、サントリーのパス攻撃の乱れを突いてターンオーバーからFL川口が独走、サントリーDFが追いすがったところでフォローの北川にパスが通ってトライ。最後、ゴールライン上で小野澤のタックルが決まって北川がボールをこぼしたように見えたが、主審の下井さんはトライを認めた。ビデオレフリーがあれば……というところだが、スタンドで見ていた僕からもノックオンくさく見えたプレーだったので、これは普通に誤審というべきかも。9-17。

もう後がないサントリーは攻めなければならないのだが、FWに消耗の色は濃く、結局はまたキック戦法に逆戻り。曽我部がひたすら上げるパントを三洋はブラウンを最後尾に戻して確実に処理し、時間ばかりが過ぎていく。サントリーは曽我部をあきらめ成田・野村を入れてペースを取り戻しにかかるが、逆に73分、三洋はフィールド中央の密集から若松→田中→吉田→北川とパスをつなぎ、裏に出た北川が走りきってトライ。これはお見事、だった。

残り時間はサントリーが意地の反撃を見せるも、77分に速いパス展開から北條が1トライを返すのがやっと。そのまま8点差でタイムアップ。ワイルドナイツ、日本選手権連覇である。
 
 

終わってみれば、「勝つべき側が勝った」試合だったかと。

サントリーにしてみれば、清宮監督が試合後にコメントしたとおり、優勢の時間帯に攻めきれなかったことが敗因か。キック戦法自体は試合の入り方として決して悪くなかったと思う。PGで得点を重ねたのも良し。でも、その攻勢をトライに結びつけることができず、攻めあぐねから三洋お得意のカウンターをくらうことになってしまった。得点の形として期待してたであろう曽我部のDGの不発(少なくとも3つめは決めないと!)も痛かったが……。

なんというか、今年のサントリーの「不全感」を象徴する試合と言ってもいいかもしれない。FWの劣勢は想定の範囲内で、だからこそのキック戦法だったのだろう。だが、いくらなんでも拘りすぎたし、結局は何をやりたいのかわからないラグビーになってしまった。加えて、ピンチにおける守備の淡泊さと、劣勢になった時の精神的な余裕のなさ。監督も選手も能力の高さは疑いないのに、どこか筋が通っていないというか。こんなもんじゃないはずなのに。

一方の三洋電機は、押されてはいたが慌てるそぶりはなかったし、守備の隙のなさでは完全に勝っているように見えた。また、チャンスの形になった時の集中力も凄まじく、リードしても守りに入らず最後は北川のトライで突き放してみせるあたりもさすがであった。チームプレー全般の質はリーグ終盤から落ちてきているように思えるのだが、それでも昨年同じ大会を勝っている自信と「勝者のメンタリティー」は健在だったということかもしれない。

ともあれ、三洋電機にとっては「めでたしめでたし」。サントリーは来季へ向けて大きな宿題を持ち帰ることになった。負けず嫌いの清宮監督がどういう答えを出してくるのか、楽しみに待ちたいと思う。というか、神鋼戦で一旦固まったかに見えたチームがその後なぜグズグズになってしまったのか。なぜ三洋電機との3戦でいずれも接戦を演じながら勝ちきれなかったのか。この経験を糧にできるかどうかは、清宮氏とサントリーの将来にとって重要に違いない。
 

 

トラックバックURL

このエントリーのトラックバックURL:
http://umanen.org/mt/mt-tb.cgi/2468

コメントする

(初めてのコメントの時は、コメントが表示されるためにこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまでコメントは表示されませんのでしばらくお待ちください)