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2009年02月15日

●スティーブン・ラーカム対ヤコ・ファンデルヴェストハイゼン ('09ラグビー日本選手権2回戦)


今日の午後は、秩父宮ラグビー場で日本選手権2回戦。不況の影響で選手カットやらロアマヌの大麻陽性で東芝が出場辞退やらと暗い話題が続くラグビー界だが、一ファンとしてはこんな時こそ支えてあげねば、と思う。第1試合はリコーブラックラムズ 24-23 NECグリーンロケッツ。1回戦で帝京大と引き分けたリコーと、神鋼を破って勝ち上がってきたNEC。当然後者の方が下馬評が高かったのだが、リコーが接戦を制して驚きのアップセット。
 
 
前半はやはりNECが攻め、リコーが我慢する展開となった。リコーとしてはできるだけ敵陣で戦いたいところだったが、2分、SO河野のキックがチャージされ、NECはラトゥ→箕内→マーシュとつないで、最後はCTB水田が左隅にトライ。コンバージョンも成功で0-7。その後もトップリーグ最強のFW3列目を中心にNECの攻勢が続く。13分には松尾がPGを成功させて0-10。「やはり一方的展開になるか」という雰囲気が漂っていた。

流れが変わったのは16分、LOヒューマンの負傷退場から。リコーは本来CTBのジョエル・ウィルソンをFLに上げ、FBにラーカムを投入した。結果的にこの布陣が当たり。SH池田とウィルソンの機動力はNECに密集周辺での突破を許さず、さらに日本人選手の猛タックルとラーカムの的確なポジショニング・キックで対抗。17分、ウィルソンがNEC陣でインターセプトから走りきってトライ、7-10。これで試合は俄然面白くなった。

ただし、リコーの闘志過剰とも思えるプレーぶりは一方で多くの反則を呼んだ。特にハイタックルは多く、かなりヒヤヒヤものではあった。トライを奪えないNECはリコーの反則に乗じて22分、38分とPGで得点を追加。7-16。さらに前半終了間際にはFLの相がハイタックルの繰り返し(?)でシンビン。今度こそNECが圧倒するか、というところでハーフタイムへ。

後半、意外なことに攻勢に出たのは数的不利の側だった。リコーは今季2部リーグ所属で「挑戦者」の立場が明らかなだけに、気持ち的にはやりやすかったのかもしれない。41分、NEC陣中央の細かいパス攻撃から河野が抜け、ラトゥのタックルを振り切り、さらに鋭いステップでFBもかわしてトライ。なんというか、よろけながら決して倒れず、気迫の塊になって走りきったようなトライだった。14-16。続いて50分、河野がPGを決めて17-16。なんと逆転。

そして51分、今度はNECの安田が反則への報復行為でシンビン。スコアだけでなく人数的にも形成逆転することになった。ところが、リコーにしてみればここで突き放しておきたいところだが、NECは負傷の松尾に替えてヤコ・ファンデルヴェストハイゼン(以下「ヤコ」)を投入。ヤコはラーカム同様に的確な位置取りとキックを見せ、さらに鋭いパスで味方を走らせる。リコーのラインアウトに失敗が続いたこともあり、再びNECの攻める場面が増えていった。

攻めるNEC、守るリコー、わずか1点差。PGでもひっくり返る状況だが、リコーはNECの縦突進にも粘り強く耐え、致命的な場所で反則を犯さない。注目のラーカムとヤコはともにミスなく後方で味方を支え、時には2人でキック合戦も。そして75分、リコー陣でNECのパスが乱れたところ、こぼれ球を拾ったWTB小松が独走。24-16。その後はNECが猛反撃を見せるも、箕内の意地の1トライにとどまって試合終了。ピッチ上に黒衣の歓喜が弾けた。
 
 
いや、面白かった。娯楽性という意味では今シーズン最高かも。

今季2部に甘んじた名門リコーは、この一戦に賭けていたのだろう。気迫と粘りの防御は凄かったし(反則の多さは褒められたものじゃないが)、得点場面の集中力は大したもの。ついでに、メイン最前列に陣取る「タヌママ」(田沼選手の母君)の応援も見事だった(笑)。一方のNECは接戦に強いはずなのにこの展開を落とすのはらしくないというか。FWの優位性をBKでの突破までつなげられなかった感じ。さすがにラトゥと箕内ばかりでは相手に読まれるわな。

嬉しかったのは、リコーのラーカムとNECのヤコがともに(途中からではあったが)出場して、レベルの高いプレーを見せてくれたこと。つーか、ラーカム対ヤコなんて……「それ、どこのワールドカップ?」という感じである。ヤコはともかく、ラーカムは「ちょっと年金リーグに寄ってみました」的な経緯だったし、おまけにリコーが2部に落ちちゃってたし、あまり良い印象はなかったのだが、でかい仕事をしてくれたねえ。よかったよかった。

若いファンはあまり知らないかもしれないが、1999年~2003年くらいのラーカムというのは本当に凄い選手だったんだ。キックはさほど上手くないが抜群に前が良く見えていて、独特のステップでDFラインをばんばんブレイクして……個人的には、史上最も好きなSOと言っても過言ではない。それが(プレーヤーとしての晩年とはいえ)目の前でプレーをしていて、それも印象的な好ゲームを演出してくれて。最高といえば最高であったかも。

ということで、準決勝は「ラーカム対トニー・ブラウン」である。なんかトライネーションズ代理戦争みたいな感じになってきた(笑)。いくら何でも今度は三洋電機が有利かと思うが、とにかくリコーには健闘してもらって、暗い雰囲気を吹き飛ばすいい試合になってもらいたいと思う。
 
 
第2試合は、サントリーサンゴリアス 59-20 早稲田大学。世間的には「サントリー大勝」なのかもしれないが、個人技頼みの早稲田に対してサントリーがミス連発でもたつきまくり、2トライを献上してしまった試合だった。東芝だったら100点近くとっていたのではなかろうか、と思う。

この試合の戦いぶりからも、やはりサントリーの選手たちは東芝や三洋電機に比べてナイーブなんだな、と思わざるをえない。早稲田の捨て身の(反則まがいともいう)飛び出しや密集をレフェリーが大目に見ると、そのプレッシャーに抗しきれずミスを連発。ついにはたてつづけにインターセプトをくらって20点も失ってしまった。清宮さんとサントリーの選手たちに期待しているのはこんなレベルじゃないんだけどな……やりづらかったのは確かなんだろうけど。

というより、やっぱりこの大会は理不尽な部分を多く含んでいるんだな、と。東芝の棄権で準決勝の片方がなくなったのはアクシデントとしても、トップリーグ3位のサントリーが6位のクボタを破って勝ち上がってきたのに、どうしてここでまた学生とやらなきゃいかんのよ、という。大学生やクラブチームの参加は良いことだと思うけれど、もう少しどうにかならんかなー、とファン的には思ってしまう。スタンドの雰囲気は微妙だし、どちらのチームもちと可哀想。
 

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