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2009年02月08日

●「逆風」をはね返した鉄壁 ('09ラグビーMS杯決勝)


今日の午後は、秩父宮ラグビー場でトップリーグプレーオフ(マイクロソフトカップ)決勝。東芝ブレイブルーパス 17-6 三洋電機ワイルドナイツ。選手の不祥事を機に団結してリーグ終盤破竹の快進撃を見せたものの、再びの不祥事に揺れる東芝。一方、昨年準優勝の雪辱に燃え、サントリーとの接戦を制して勝ち上がってきた三洋電機。試合は、強風の中キックで主導権を争う展開となったが、鋼鉄の守備を見せた東芝がロースコアゲームを制して優勝。
 
 
秩父宮は大抵の場合メインスタンドから見て左→右の風が吹いているのだが、この日はそれが特に強かった。よって、前半は自然と風上に立つ東芝の攻勢に。ヒルのロングキックで深く押し込み、力強いFWの突進でクサビを打ってから横へ展開していく。これに対して三洋は反則すれすれの激しく高いタックルで対抗。22m内で粘ってなかなかトライを許さない。3分に入江のPGで三洋が先制してから20分はスコアが動かず、地味なつぶし合いが続く。

三洋にとって痛かったのは、久々に復帰した大黒柱トニー・ブラウンが精彩を欠いたこと。向かい風の影響を差し引いてもキックは飛距離・精度ともに悪く、パスで味方を動かす場面もほとんどなし。密集でのボールへの絡みも東芝の素早い出足に遮られ、単なるいちタックラーになってしまった感があった。23分、22m内で三宅がパントのキャッチミス、処理を慌てたブラウンがパスをインターセプトされ、東芝が難なくつないで吉田大が中央にトライ。7-3。

その後も東芝ペース。ただし、三洋DFもギリギリのところで粘り、ゴール手前でターンオーバーを奪うなど追加点を許さず時間が進む。36分、東芝はセットからの右展開にムーヴも織り交ぜてWTB廣瀬が抜け、追いすがるDFを振り払ってトライ。12-3。しかし、終了間際、三洋も入江が逆風を突くPGを見事に決めて12-6と差を詰める。一方的に東芝が支配していた割にはわずか6点差、三洋にしてみれば「まずまず」という状況だったのではなかろうか。
 
 
後半、三洋ベンチがいきなり動き、ブラウンOUT榎本INで入江がSOへ移動。前半のブラウンの出来を考えればやむを得ないところか。今度は風上に回った三洋がロングキックとハイパントで前進を図るが、入江・田井中のキックはヒルに比べればかなり見劣りし、前半の東芝ほどの攻勢にはならない。それでも10分過ぎにゴール前でラインアウトのチャンスを得るが、すれ違いを狙う平行パスをDFに詰められた榎本が弾いてしまい、あえなく逸機。

後半半ばになると疲れが出たか、三洋が息切れ。蹴り合いでは不利なはずのヒルが好コントロールで風を避け、一気に陣地を挽回するシーンが目立つように。三洋は肝心なところで反則やハンドリングエラーが多発、途中出場の吉田尚が抜けた画面もフォローが続かない。気がつけば、前半に引き続いてまたも三洋がゴール前に釘付けになっていた。せっかくの切り札・WTB北川も自陣でかつスペースがないのではどうしようもない。時計は刻々と進んでいく。

最後の5分、東芝は三洋ゴール前でひたすらピック&ゴーを繰り返し、試合を「殺しにかかった」。観ている方にとってみればある意味単調で退屈な、しかし当事者にしてみれば必死としか言いようのない肉弾戦が続く。フルタイムのホーンが鳴った直後、ようやく三洋がボールを奪って展開するが、三宅が投げた苦し紛れの山なりパスをインゴールで北川がノックオン。これを廣瀬が気迫のダイヴで押さえ込んでとどめのトライ。そのまま試合終了となった。
 
 
風をものともしなかったブレイブルーパスと、風を味方にできなかったワイルドナイツ、か。

東芝の選手たちは初めから表情が硬く、入場してまずはスタンドに深々と一礼。やはりロワマヌの件(大麻陽性→謹慎)の影響は大きいのだと思わざるを得なかった。しかし、試合が始まってみればここ数試合と同様、いやもしかしたらそれ以上の気迫を個々の選手が見せ、80分間激しいプレスをかけ続ける鉄壁DFで試合を支配した。ミスは(特に攻撃時に)決して少なくなかったものの、後半の風を恐れぬ戦いぶりもお見事。勝利は順当なものだと思う。

個々の選手では、まずキャプテンの廣瀬。厳しい状況の中で味方を奮い立たせる2トライ、キックキャッチから巧みに時間と陣地を稼ぐプレーで勝利に貢献、見事重責を果たした。また、リーグ得点王のヒルもさすがの活躍。自身のキックやランの威力もさることながら、相手キックに対するポジショニングに隙がないのが素晴らしい。あとは、大野や「キャプテン」冨岡といったベテラン勢の奮闘も光った。ホント、こうしてみると真面目ないいチームなのにねえ……。

三洋電機の敗因は、後半の追い風を上手く利用できなかったことに尽きるだろう。ブラウンはまだトップフォームにはほど遠い様子だったし、入江はいい選手だけどヒル相手には荷が重かった。ノートライじゃあ仕方がない。あと、せっかくボールを奪っても切り返して展開、というところでやたらミスが目立ってしまった。普通の相手ならリーグで見せていたような「自然な連動」でいいのかもしれないが、東芝みたいな相手にはもう少し「作り込み」が必要なのだろう。

しかし、本当に東芝は日本選手権出場を辞退するのだろうか。こんないいチームが、もったいないよなあ……個人の不祥事の責任は、基本的に個人がとるべきだと思うし。他のチームの人たちも「ぜひ出てもらいたい」と声明でも出したらどうだろうか。三洋もサントリーも、このまま「勝ち逃げ」されるのはきっと悔しいに違いないから(笑)。
 

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