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2009年01月01日

●「ガンバ王朝」の時代が来るのだろうか ('08-'09天皇杯決勝)

明けましておめでとうございます。村田陽二です。今年も観戦記を中心に、ダラダラと長いテキストを書き散らかして行こうと思いますので、どうぞよろしくお願いします。
 
 

新年最初のサッカー観戦は、国立競技場で第88回天皇杯決勝。ガンバ大阪 1-0(延長1-0) 柏レイソル。現王者として是非ともACL出場権がほしいガンバと、石崎監督の花道を飾りたいレイソル。状況は違えどモチベーションたっぷりの2チームが「日本一」をかけて激突した。コンディションの優位を生かすべく早めに切り札を投入した柏が押し切れず、持ち前のパス能力で終盤戦を支配したガンバが延長戦のワンチャンスをものにして勝利。
 
 
立ち上がりラッシュをかけたのは柏。パス回しでリズムをつかもうとするガンバに対して前から激しくプレスをかけ、速い守→攻の切り替えで攻め込んでいく。6分、オーバーラップした村上がDFをぶちぬいてマイナスの折り返し、フリーのポポがシュートしたがGK藤ヶ谷が片手でビッグセーブ。ガンバは自陣からなかなか抜け出すことができず、特に柏の右サイドは太田・村上が安田を圧倒。11分、左CKからポポが直接狙い、藤ヶ谷が倒れ込んできわどくはじき出す。

しかし、柏の攻勢は長く続かない。ガンバはやはり連戦の疲労からか、遠藤・橋本を筆頭に動きの重さは否めない。が、それでもルーカスへのクサビから押し上げるうち、次第にパスがつながってきた。15分、バイタルエリアのパスワークから明神がシュート、GK菅野横っ跳びではじき出す。24分にはルーカスのドリブルシュートでCKを獲得、明神のヘッダーが枠内へ。守っては山口の指揮の下、オフサイドトラップで柏アタッカーの飛び出しをシャットアウト。

28分、橋本がスルスルッと中盤を抜け、戻したボールを明神がシュート、ポスト左に外れ。36分には左サイドを駆け上がった安田が村上を抜いてゴール前へ突入、山根と交錯しながらシュートするが菅野の正面。体調不安のガンバとしては早めに1点ほしいところだが、柏DFも相変わらず粘り強い。40分、CKのこぼれ球を明神がシュートするも栗澤がブロック。逆に、終了間際にはポポが強烈なミドルシュート、藤ヶ谷が躍り上がってセーブ。無得点で後半へ。
 
 

後半、太田に替わってフランサ登場。柏ゴール裏が沸く。柏は前線でタメができるようになり、攻撃の変化と持続性が増した。53分、藤ヶ谷のクリアミスを拾った柏は素早くつなぎ、左サイドを抜けたポポがニアを狙ってシュートするもわずかサイドネット。一方のガンバはパス回しで度々ボックス近辺まで攻め込むものの、そこからの攻めに好調時の迫力がない。主導権争いの時間帯が続く。東京ファンとしてはどうしても「魔法」にやられた準決勝を思い出してしまう。

58分、ポポOUT李INで柏は試合を決めにかかる。60分、フランサが左サイドからフワリとDFを越える絶妙のクロス、ファーに上がっていた古賀が頭で叩くも藤ヶ谷がまたもスーパーセーブ。その後もフランサはトリッキーなパスを連発してガンバ陣をかき回す。ガンバはルーカスも含めて足が止まりだし、キツい雰囲気。その中で孤軍奮闘していたのは寺田で、巧みなトラップ・ターンから幾度か仕掛け、65分には強烈なミドルシュートを菅野が横っ跳びではじく。

ここで柏にアクシデント。チームのヘソ的存在の山根が負傷し、早くも3つ目の交替を余儀なくされる。68分、李が左サイド突破、クロスをファーに滑り込むフランサが叩くが枠に飛ばせず。そうしてガンバがしのいでいるうち、柏の攻撃も息切れし始め、再びガンバのポゼッションが高まっていく。ただし、ガンバもパス交換から幾度かルーカスにクサビを入れるものの、フォローが続かず、ルーカス自身のシュートは枠に飛ばない(笑)。膠着状態で時間が過ぎていく。

82分、久しぶりに村上が右サイドを突破、安田のスライディングが決まらず、シュート性のクロスが藤ヶ谷を抜いたが惜しくも李に合わず。85分、ボックス内の李へパスが通るも中澤が絡んでシュートさせず、こぼれ球を叩いた菅沼のシュートは枠外。89分、古賀のバックパスが弱くなったところに山崎が走り込むも間一髪届かず、直後に寺田が突入して撃ったシュートも菅野がキャッチ。結局、双方譲らず延長戦に突入。長い戦いはガンバに厳しいかと思えたが……。
 
 
驚くべき事に、そこから試合を支配したのはガンバだった。持ち前のパス回しで前後左右にボールを動かし続け、揺さぶり、穴を狙う。柏はフランサと周りが噛み合わない場面が多く、開始直後のフランサのシュート以降はほとんど防戦一方。98分、ボックス内でルーカスが倒れながらシュート、DFの体に当たってガンバはハンドを主張するも、笛は鳴らず。105分にはフランサへのパスを山口が出足鋭くカット、パス交換から山崎がシュートするが菅野がキャッチ。

延長後半、ついに西野監督も動いて山崎OUT播戸IN。柏の最後の交替からは既に40分が経過しており、この交替は心理的に大きな影響があるように思われた。15分間で十分かどうかは微妙だったが……。106分、パスワークでボックス手前に進出した遠藤がミドルシュート。110分には寺田・ルー・遠藤が細かいパスワークで突破を図り、小林祐がきわどくカット。大攻勢というほどではないが、ガンバがジワジワと締め上げていく。113分、橋本に替えて倉田。

そして116分。柏陣ボックス左手前で攻防の最中、DF裏へスッと入り込んだ遠藤が冷静に中を見て折り返し、倉田のシュートのこぼれ球が播戸の足下へ。一度はシュートをDFがブロックしたものの、こぼれ球が再び播戸の足下に転がって柏万事休す。ゴール右隅にゲット。一瞬でDFの急所を見つけた遠藤の戦術眼と、播戸の執念が呼び込んだ得点だった。その後はもう柏に反撃の余力はなく、ガンバが着実に時間を使い切って試合終了。青黒の歓喜が弾けた。
 
 

これだけボロボロの状態で勝つとは。ガンバ大阪の勝負強さには脱帽するしかない。

この試合でガンバはなんとシーズン61試合目。特に12月はCWCもあって過密日程だった上に、二川・佐々木ら主力に怪我人が続出。キックオフ直後から遠藤や橋本は運動量もプレーの精度も本来のものとはほど遠く、前半10分くらいまではほとんどパスサッカーの体をなしていないかった。また、その煽りを受けてルーカスや山崎、明神らの消耗も早く、後半半ばあたりのバテ方を見たら「こりゃ駄目だな」と思えたものだ。それなのに、それなのに、である。

彼らが培ってきた経験とパス能力は伊達ではなかった。相手の攻勢を受ければキャプテン山口を中心に落ち着いてしのぎ、自分たちの流れになってもペースを崩さずゆったりつないで(休んで)からここぞという時にスピードアップ。精神的タフネスと、試合の流れを読む賢さ、そしてフィジカルの劣勢を補う技術と組織力。全体的にはヨレヨレの状態ながら、勝つためのノウハウを駆使して厳しい試合を見事乗り切ってしまった。さすがはアジア王者、である。

なんというか、ACLとCWCでの高次元の戦いを経て、ガンバというチームは一段とグレードアップしたような印象を受ける。他チームのファンとしては、羨ましくもあり、「このままでは容易に追いつけない差をつけられてしまう」という焦りをも感じる状況でもある。鹿島に比べると資金的にも余裕がありそうだし、あるいは「ガンバ王朝」の時代がやってくるのだろうか。まあ、今シーズンの激戦の反動が出て、来シーズンはグダグダになりそうな気もするけれど(笑)。

MVPは藤ヶ谷だろう。なんだかんだで枠内シュートを撃たれる場面も幾度かあったわけで、それを防ぎきった守備は素晴らしかった。その前ではキャプテン山口が優れた読みを披露。さらにその前では明神が攻守を牽引。遠藤も、怪我に苦しむ中で得点に絡んだプレーはお見事。フランサにばかり気をとられてたけど、こちらにも「魔法使い」がいたんだな、と。攻撃陣ではルーカスと寺田と、あと播戸か。あれほど外しまくってた播戸が最後の最後で決めるとは。

ちょっとガッカリだったのは安田ミッチー。何なんだ、あの効果の薄いドリブルフェイントは。マンUに移籍直後であまり活躍できなかった頃のC・ロナウドみたい。

柏レイソルの方は、よく言えばひたむきな、悪く言えばワンペースなところが裏目に出ちゃったかな、と思う。パスでいなされるのは予期の範囲内だったろうし、後半ガンバの足が止まったところでフランサと李で勝負をつけに行くあたりはプラン通りだったのだろう。でも、そこで決めきれなかったのが全てだった。相手よりも早く動いた分、先に力を使い果たしてしまった。今の力はきっちり出しきったのにあと一歩届かなかったあたり、ノブリンらしいと言えばらしいかな。
 
 
ま、いずれにせよ、来年は他人事じゃなくて「自分たちの一大事」として、霞ヶ丘のスタンドでワクワクドキドキしたいもんである。つい3日前までは「東京観戦記」としての決勝を書く気満々だったりしたもんだから、結局うっかりこんなに長々~と書いちゃったヨ!!
 

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コメント

明けましておめでとうございます。
いやあ、リーグ8位で王朝はないでしょう(笑)。
しばらく戦国時代が続くのではないかと。

おめでとうございます。今年もよろしくお願いします。


>いやあ、リーグ8位で王朝はないでしょう(笑)。

本文中では長くなるので書きませんでしたが、昨年と今年で身につけた経験値や「勝つ術」(あれほど勝負弱かったチームが!)、資金力や育成のノウハウ云々を考えると、図抜けた存在に「今後なるとすれば」ガンバだろうと、そういう意味です。

まあ、上にも書いたように、もちろん今年の反動でグダグダになっちゃうかもしれないですけどね。そればっかしは来年になってみないとわからない。

ただ、今年(もう昨年か)のリーグで東京より下だろうと何だろうと、狙った目標にたどり着く力、という意味では今のところ東京はガンバに追いついていない、むしろ離される危険性もあるな、というのが私の正直な感想です。


>しばらく戦国時代が続くのではないかと。

そうかもしれないし、案外、そうじゃないかもしれない。あれだけボロボロでもしっかりタイトルをとったガンバの立派な姿を見て、新年早々考え込んでしまいました。


まあ、さすがに「王朝」は、誰がどう見ても大げさな表現ですけどね(笑)。

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