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2008年11月25日

●正直なところこれで脱落、だが (ヴィッセル神戸×FC東京)


日曜日の午後は、ホームズスタジアム神戸でJ1第32節。ヴィッセル神戸 1-1 FC東京。いよいよリーグ戦も佳境の「ラスト3」。東京にとっては優勝争い生き残りをかけた、神戸にとっては目標の5位以内に近づくために、それぞれ負けられない一戦であった。試合は、ホーム神戸がアグレッシブな速攻を武器に優勢に立つが、東京もカボレの一撃で食らいつく。最後まで目の離せない熱戦は両者痛み分けのドローに終わり、東京は優勝争いからほぼ脱落。
 
 
東京はおなじみ4-3-3の布陣。対する神戸も3トップか、と思いきや、大久保が2トップ(レアンドロ、吉田)の後ろ左サイドに位置する4-4-2であった。東京はカボレの突破を、神戸はアタッカー陣の流動的な動きを武器に開始直後から攻め合うが、東京はSBとボランチの連携に難があるのか、引くFW、飛び出す二列目のいずれもつかまえきれずにバイタルエリアを使われる場面が目立つ。13分、平山のキープからカボレのミドルシュートはバーを越えた。

16分、神戸のカウンター攻撃。中央上がる大久保は今野がスライディングタックルで止めたものの、こぼれ球を拾ったレアンドロが真ん中を持ち上がってシュート、佐原がブロックしたボールが右でフリーの田中の足下に。カバーに走った茂庭も切り返しでかわされ、シュートが塩田の脇を抜いた。3対3のピンチ、誰もマークに付かない田中にパスが出ず、レアンドロがシュートしてくれた時は「よし」と思ったのだが……そこで田中へこぼれるか。0-1。

これで流れは一気に神戸へ。アタッカーは勢いづいて東京陣を大いにかき回し、SBも次々と攻撃参加。18分、左から切れ込む大久保がミドルシュート、ポストのわずか右。20分、今度は内山がミドルシュート、塩田がかろうじてはじき出す。東京は相手の攻めに対応するのが精一杯、ボールを持っても猛プレスに追われて攻撃を組み立てることができない。23分、石川のサイド突破からボックス内で混戦になるが、長友のシュートは左に外れ。24分には今野が自陣で田中にボールをかっさらわれ、茂庭が懸命のカバーリングでしのぐ。その直後、またも大久保がミドルシュート、きわどくバーをかすめて冷や汗。

35分を過ぎる頃になるとさすがに神戸のペースも落ち、東京のパスがつながるように。しかし、カボレや石川からクロスは入るものの、神戸も土屋北本を中心にはね返して決定機を作らせない。40分、左サイドのFK、石川の低く速いクロスをGK榎本が小さく前にはじくも、平山の詰めは間に合わず。ロスタイム、カボレのオーバーヘッドパスから左サイド長友→平山と渡ってクロス、ニアに飛び込む羽生が体に当てるがGKキャッチ。そのまま前半が終了した。
 
 
後半になると東京がラッシュをかける。開始直後に攻め込んで石川がクロス、ボックス内で平山が胸トラップからボレーを狙うがDFがブロック。3分には両SBが攻撃参加しての波状攻撃から石川がミドルシュート、バーを越えた。平山の強さを生かそうという縦のボールも増え、どうやら前半の劣勢(特に二列目の中~外で頻発するマークのズレ)に守備の修正で対応するのではなく、とにかく攻撃で圧力をかけて封じ込める、という方針であるように見えた。

だが、東京の攻勢は持続しない。サイドこそ勢い任せで押し込んだものの、梶山が今野やSBの助けを得られずに孤立し、中が組み立てられない。セカンドボールへの反応も神戸の方が速く、いつの間にか試合は神戸ペースに戻っていた。52分、ドリブル突破を図る大久保を梶山が後ろから倒してイエローカード、今季残りの出場停止が決定……。58分、ボックス内深くからレアンドロが戻したボールを内山がゴール前へラストパス、塩田が倒れ込んで抑える。

59分、城福監督が動く。石川に替えて大竹を投入、やや遅まきながら中盤を厚くする形にシフト。61分、ボックス右手前でFKを獲得、大竹のクロスをファーで徳永が折り返して詰める平山が体に当てるも、シュートしきれず榎本キャッチ。63分には神戸がバイタルエリアのつなぎから右展開、石櫃のクロスはDFの間を抜けて逆サイドに抜け、待ち受けた大久保がボレーで狙うがポスト右。一瞬、観念するような大ピンチだった。66分、平山OUT鈴木達也IN。

69分、吉田が右サイドをえぐって長友をかわすが、茂庭と佐原が2人がかりでストップ。茂庭、この大事な試合でキレキレである。71分、東京は羽生に替えて赤嶺投入、神戸も吉田OUTで栗原IN。東京はパスを回して攻め入ろうとするが、神戸はMF・DFを問わず激しいチャージを連発(まるで川勝時代のようだ)、なかなか崩せない。77分、東京の波状攻撃はDFが積み重なるように防ぐ。その直後に神戸のカウンター、レアンドロのシュートを塩田がキャッチ。

とにかく前へ出たい東京と、その裏を突いて逆襲を決めたい神戸、という構図が続く。東京は焦りからか雑なリスタートも多い。78分、縦パス一発でカボレが抜け、石櫃に引っ張られながら左足でシュートする大チャンス。しかし榎本が横っ跳びでセーブ。惜しかった!そして83分、中央のパス交換からボックス前で赤嶺が収めて反転パス、左側で怒濤の追い越しをかけるカボレが抜け、シュートが榎本の手を弾いてゴール右隅に決まった。ようやく同点!1-1。

こうなれば「あと1点」。東京が猛攻……と言いたいところだが、疲れから押し上げられない東京のMF・DFに対し、神戸が素晴らしい運動量で再攻勢に出る。88分、石櫃のサイド突破から波状攻撃、大久保と規郎の連続シュートはいずれもDFがブロック。89分にはボックス内でレアンドロにボレーの絶好機、ふかしてしまい頭を抱える。その直後には茂庭がバックパスを奪われるも、レアンドロのパスがブレて大久保は角度を失い、シュートを塩田がキャッチ。

5分のロスタイムは両チーム意地の攻め合いとなった。神戸まで駆けつけた数千ファンの声援を受け、東京アタッカーは懸命に前に出る。が、歩き始めた梶山をはじめ、もう後ろの選手がついて行けない。一方の神戸は間延びした中盤を通過してチャンスを作り、幾度かボックス内へラストパス。東京DFがヨロヨロになりながら何とかはね返す。一度でもいいから、大竹が前を向いて勝負する場面を作りたかったが……。終了間際、ボックスへ走り込んだレアンドロが浮き球をダイレクトボレーで叩くも、塩田がビッグセーブ。結局、同点のまま試合終了となった。
 
 

内容的には完敗だった。でも、神戸まで観に行った甲斐はあった。

神戸はいかにも松田監督らしく、ソリッドな良いチームに仕上がっていた。1タッチ・2タッチで回してくる中盤は切れ味があり、選手たちはこぞって攻守に精力的。ボッティ不在の影響はあったに違いないが、5連勝はやはりフロックではない。レアンドロにもう少しだけでも決定力があったら……(笑)。大久保も以前より成長しているように見えた。前は能力の高い選手ながら「使われる」だけだったのが、「使い、使われる」ことができるようになった様子である。

そんな神戸に対し、東京はあまり良い出来ではなかった。大敗した清水戦と同様に中盤の数的不利を連携で補うことができず、攻撃陣も中盤もバラバラの時間帯が多かった。守備陣は奮闘したと思うが、結局前と後ろが分離してその間を好き放題やられてしまった印象。よくぞ負けなかった、勝点1をとれたものだと思う。気持ちの面では決して神戸に劣っていたとは思わないけれど、前半のサッカーの質の差がダメージとなって終盤に現れたのだと思う。
 
東京は、これで優勝争いからは脱落したと言ってよいだろう(と、前にも書いたような気がするが(笑))。元々棚ぼた気味に上位に食い込むことができているわけだが、さすがにここに至って棚ぼたの上に棚ぼたを期待するのはずうずうしいような気がする。振り返れば今シーズン、この試合も含めて「ここで勝てば優勝に前進」というプレッシャーのかかる試合では必ず負けているように思う。要するに、まだ力不足なのである。その事実は素直に認めた方が良い。
 
もっとも、だからといってネガティブになる必要はない。東京が、これまでそういう状況にあまり立つことができていなかった(03年2ndと04年ナビスコ決勝くらいか?)事を考えれば、前進しているのは間違いないのだから。今年1年ゼロから上位の一角に食い込むまで戦い続けた中で、足りないものがいっぱいあることがわかった。一方で、通用するものもたくさんあることがわかった。優勝争いの中で勝ったり負けたりするからこそ、見えるものがあるはずなのだ。
 
そう考えれば、この悔しい敗戦(負けてないけど)も決して無駄にはならないのだと信じたいところである。こういう経験を積み重ねていくことで、チームというのは強くなっていくのだから。……なーんて偉そうに書いたりしているけど(笑)、しかしホント、この試合は勝たせてあげたかった。ロスタイムだったか、左サイドからの折り返しが猛スピードで上がる大竹の足下に入りそうになって、結局トラップできなかったんだけど、一瞬奇跡の尻尾くらいは見えたような。
 
最後に、個々の選手について。まず良かったのは塩田と茂庭、カボレあたりか。塩田は好セーブ連発。茂庭は抜群の頼もしさで、彼のゾーンにボールホルダーが入ると「残念、そこは茂庭」という感じ。カボさんは言うまでもなく勝点1の殊勲者である。流れが悪い時に仕事ができるのは、やはりカボ・赤嶺コンビ。良くなかったのは守備で効かなくなっちゃった今野、前半は寝ぼけ眼の梶山、守備の応用力がない徳永、攻撃の応用力がない石川あたりだろうか。
 
 
ちなみに、この試合のレフリーはあの家本さんだったんだけど、あまりやかましく吹くこともなく、イエローカードも納得の2枚だけで印象が良かった。あと、ホームズスタジアムには初めて行ったのだが、メイン席はスタンドの角度が適度で専用球場だけにピッチも近く、とても見やすくて感心した。歓声のこもる感じも、ハコとして大きすぎないのも良い。つまり、試合内容以外はけっこう快適な観戦を楽しめたわけだ。これで勝ってれば本当に完璧だったのにー(笑)。
 
 
 
やっぱり悔しいので、夜は神戸牛を食ってやった。コンチキショウメ。
(食いかけ失礼。)

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コメント

>前進しているのは間違いないのだから
そのとおりだと思います。
上位のもたつきに助けられているとはいえ、開幕前の目標である優勝を狙える位置にいるというのは達成しているのですから。

だからこそあと2試合はすごく大事だと思います。
ここで勝ち点を取れなければいつもどおりの中位でフィニッシュ。
もう一度気持ちを立て直して、充実した1年を締めくくるのにふさわしい試合をしてほしいと思います。

>神戸も土屋を中心にはね返して決定機を作らせない
神戸に土屋はいませんよ。ヘアスタイルのよく似たヤツはいますが(笑)

>ここで勝ち点を取れなければいつもどおりの中位でフィニッシュ。
そうですね。「途中まで頑張ったね」で終わるのではなくて、きちんと数字の上でもしっかりと結果を残す。それでこそ「来年こそは」と口にできるというものでしょうね。

>神戸に土屋はいませんよ。ヘアスタイルのよく似たヤツはいますが(笑)
あ、ホントだ。北本ですよね。まぶしくて見間違えました(笑)。

おおっ、murata殿も現地観戦しておりましたか。家本さんの印象に関してはなんだか安定していなかった感があったんですけど・・・。というか、どちらかというとカードをよく出すほうなんだから気をつけなければいけないのに徳永と梶山は・・・。

>ホームズスタジアム
murataさん同様で、いいスタジアムでしたね。私はバックスタンドで見ていたんですけど、目の前で大竹や長友の動きが見られましたから。

>優勝争いから脱落
スラムダンクよろしく、「あきらめたら、そこで試合終了ですよ」(安斎先生ですね)。というか、川崎サポーターも横断幕に掲げていたなあ。

>家本さんの印象に関してはなんだか安定していなかった感があったんですけど・・・。
いや、事前の先入観というか心配(笑)からすると全然大丈夫だったということで。まあ、徳永と梶山のイエローカードについては文句言えないですね。

>私はバックスタンドで見ていたんですけど、
なんか、ゴール裏だと見づらいみたいな話もあるのですが、あそこは完全に「応援席」と割り切られているのかもしれません。「観客」として見るなら断然メイン・バックがよさそうですね。

>「あきらめたら、そこで試合終了ですよ」
それはそうなんですけど、むしろ欲をかかないで無心で行った方がいいかな、と。棚ぼたなんて、あるときゃあるし、ないときゃないんですから(笑)。もちろん、残り2戦はきっちり勝って。

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