うまねんblog

ＥＡＳＴが前目から突っかけていくのに対し、ＷＥＳＴは宮間・原・阪口のパスワークで組み立てる対照的なサッカー。前半は後者が圧倒。テンポ良くくるくるとパスが回り、特に中心となる宮間の活躍は見事だ。２０分、宮間から右展開、阪口がアーリークロスを入れ、原がボレーで狙うも当たりが弱くノーゴール。守ってもＷＥＳＴは池田率いるＤＦラインがアタッカーの突進を巧みに封じ込める。２３分、久々に突破した中村のクロスはＧＫ福元がジャンプ一番キャッチ。

ところが、一方的な展開ながらなかなか同点ゴールが入らない。２８分宮間のドリブルシュート、３３分ゴール前混戦でのプレチーニャのシュートはいずれも決まらず。そのうちカウンターからＥＡＳＴもチャンスを作るようになり、柳田のクロスへの飛び込みや中村の強烈なシュートがあったが、いずれも福元がセーブ。終了間際には宮間の鮮やかなサイドチェンジからプレチーニャの折り返しをＦＷ大谷が狙うも枠外。ＥＡＳＴ１点リードのまま前半が終了した。

後半頭の選手交代でＥＡＳＴはＦＷ大野・安藤らがＩＮ、ＷＥＳＴは池田・津波古がＯＵＴ。これで流れが変わった。開始直後こそ宮間→大谷とつないで阪口のミドルシュートがゴールを脅かしたものの、以後はＥＡＳＴペースへ。ＷＥＳＴのＤＦラインは統率役の池田が下がったことで不安定になり、強化されたＥＡＳＴの前線に押し込まれ続ける。前半とは逆の構図。５１分、ボックス手前から澤が弧を描きながらゴール前へ突入、シュートを福元がセーブ。

５５分、スローインからＤＦ田村がクリアを大野に当ててしまうが、幸いシュートはきわどく枠外。６１分には土橋が右サイドを突破、クロスを大野がボレーで叩き、福元横っ跳びで好セーブ。そして６３分、豊田のスルーパスで安藤が右サイドを抜け、速いクロスをファーに詰めた大野が難なく押し込んでゲット。このシーンのＥＡＳＴのパスワークは見事と言うしかなく、前半の「上手い」ＷＥＳＴとはまた違ったダイナミックな攻撃サッカーであった。２－０。

試合の流れからしてこの時点ではＥＡＳＴの優位は動かし難く感じられ、「ああ、前半のいいサッカーが報われないのか……」と残念にも思えた。が、しかし。ここからＷＥＳＴが驚くべき反発力を見せる。原動力になったのは途中出場のＭＦ川澄。原に替わって入った彼女は抜群のスピードを見せ、斜め方向の飛び出しや高速ドリブルでＥＡＳＴ守備陣を脅かす。６９分、ＤＦの間に割って入った川澄が山郷と一対一かと思えた瞬間、ＤＦ岩清水がナイスカバー。

７０分、ボックス前のパス交換から大野の浮き球で近賀がゴール前へ飛び出すが、シュートはＧＫ正面。そしてその直後、中へ入る米津とスイッチした川澄が左サイドへきれいに抜け、思い切ったシュート！ボールはＤＦに当たってコースが変わり、そのままゴールへ。プレーの勢いがそのままボールに乗ったような得点だった。２－１。これでＷＥＳＴは息を吹き返し、相変わらずライン自体は不安定ながら、ＤＦも体を張ってピンチをしのぎ続ける。

同点ゴールが生まれたのは７５分。川澄の度重なる仕掛けが効いたかＥＡＳＴのＤＦラインが前に出かけて乱れたところ、阪口のスルーパスでプレチーニャが抜け、一対一から見事山郷の脇を抜いてゲット。２－２。前半あれほど押し込んでとれなかったＷＥＳＴが、２点ビハインドから速攻でたて続けに２得点。いや、サッカーというのはわからないものだ。こうなるとどちらも熱くなってイケイケの撃ち合いに。楽しい楽しい、オールスターはこうでなくっちゃ、ね。

８０分、田村のクリアミスから近賀がサイドをえぐり、ゴール前へ突入するもＤＦ小野が好カバー。８２分、宮間が左サイドでふわりとボールを浮かしてＤＦ２人を抜き去るが、折り返しを大谷がふかしてしまう。８５分、安藤の突破→クロスから澤がシュート、ＤＦブロック。惜しかったのは終了間際で、右サイドプレチーニャのキープから大谷が仕掛け、逆サイドでフリーになっていた川澄へパスを通す。しかしシュートはゴールポストを直撃……。結局、同点で試合終了。

結果は２点ずつ奪いあっての引き分け。終盤攻勢をかけてあわやの場面も作った分だけＷＥＳＴの方がちょっぴり悔しいかな、と想像したのだが、しかし考えてみれば途中までは「やはりＥＡＳＴ強し」の流れだったわけで、まあこれはこれで悪くない結果だったのかな、とも思う。もちろん、ＥＡＳＴの方もまた然りである。試合後、両チームとも選手たちは抱き合ったり肩を叩き合ったりして、嬉しそうに健闘をたたえていた。なんともいい光景だった。

おそらくこの試合、一番重要だったのは結果ではない。大事なのは、いつになく大勢足を運んでくれた「サッカー好き」どもの前でいいサッカーを見せること。そしてそのミッションは十分に達成された。ＷＥＳＴのワンダーなパス交換、ＥＡＳＴの強くて速いサイド攻撃、そして終盤のスリリングな攻防。僕たちは、とても面白く熱いサッカーを目の前で（なにしろ西が丘だから！）見ることができた。試合後、降り出した雨にも関わらず拍手を送るお客さんの多かったこと。

個々の選手に目を向けると、澤、大野、原、柳田、近賀、阪口、池田、福元、山郷……さすがは豪華メンバーだけあって質の高いプレー連発だったのだけれど、特に宮間あやにはシビれっぱなしだった。長短自在正確なパスに加え、狭いスペースでキープする技術、適確な戦術眼、そして攻撃を牽引する積極性。その「司令塔」ぶりは男女合わせた日本サッカー界でも出色である。いつか、彼女は澤の後を受けて日本の「１０番」を付けることになるのだろうな。

つーか、試合中、宮間はずっと笑顔で楽しそうにプレーしてたね。ＶＩＶＡ！

いや、しかし、僕も本当に楽しかった。僕は女子サッカーは年に数試合しか観ないのだが、観た後には必ず良い気分になってスタジアムを後にしているような気がする（もちろんいいカードを選んで見ているというのもあるのだろうが）。なんつーか、この試合の後に両チームのサポーター席で出た横断幕（上の写真参照）なんかもそうなんだけど、選手も観客も主催者も、「サッカー好き」の比率がとても高そうなのがいい感じなんだよね。幸せな空間が、あるから。
　　
　
　
エントリーのタイトルは、THE CONDORSのファーストアルバムからとった。なんか、すごくいい言葉だな、と。