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2008年09月21日

●スミイチ、穴熊、大きな勝点3 (川崎フロンターレ×FC東京)


土曜日の夜は、台風明けの等々力競技場でJ1第25節。川崎フロンターレ 0-1 FC東京。「クラシコ」と銘打ち出してから4回目の対戦は、今度こそその名にふさわしく上位進出を目指すチーム同士の熱戦となった。試合はホーム川崎が一貫して猛攻を浴びせ、東京側は負傷者・退場者も出す苦しい展開に。が、序盤にエースの一撃で得た虎の子の得点、チーム一丸となった堅守、そして采配の妙も加わって、東京が見事J等々力初勝利をゲットした。


キックオフ直後から、川崎がスピード感溢れる攻撃で攻めたてる。3分、右からのクロスがボックス内の混戦でジュニーニョの前に落ち、ボレーシュートはわずかにポスト左。次のCK、ヴィトール・ジュニオールのクロスにジュニーニョが合わせるも右に外れ。しかし、先制点は東京。5分、カボレが井川と競って獲った左CK、徳永のインスイングのクロスがファーに流れたところを赤嶺が左足ダイレクトで叩く!ゴール右隅に決まって1-0。さすがの一撃、である。

その後も川崎の攻勢は変わらない。見た目4-2-4、アタッカーの1人か引いてパスを受けるとスイッチ・オンで加速する感じ。9分、鄭大世が正面から強烈なミドルシュート、バー直撃。15分には鄭の仕掛けから戻したボールをジュニオールがミドルシュート、左に外れ。しかし川崎も4枚ものFWが前に張る布陣はややバランスが悪く、中村2号と谷口の負担は大きそう。「つけいる隙はあるな」と思ってみていたのだが……なんと赤嶺が接触で腕を痛めて負傷交代。

東京は急遽平山を投入、カボレのフォロー役に。ただでさえ羽生を欠いてダイナミズムには欠ける状況で、ボールを支配されながらDF陣の攻守でしのぐ時間帯が続く。19分、CKからカウンター、左に流れてパスを受けた平山がカボレを狙ってクロスを上げるがDFブロック。26分、村上の低く速いミドルシュートがポスト右を抜ける。29分、ドリブルで仕掛ける鄭を佐原が止め、こぼれ球を中村が拾ってアーリークロス、ジュニオールが合わせるもバーの上。

30分過ぎになると東京は数的優位の中盤で中村・谷口へうまく圧力をかけられるようになり、川崎は攻めあぐむように。37分、長友が高い位置でボールを奪い、平山の折り返しを今野がミドルシュート、わずか左に外れ。39分には黒津がスピード感たっぷりのドリブルで右サイドを突破して中央の鄭へパスが通るも茂庭・佐原の2人がかりで止める。40分にもボックス前のパス回しからジュニオールの浮き球で中村がDF裏へ抜けるが、ダイレクトボレー決まらず。

ところが。何とか互角に近い戦いに持ち込めるかな、という雰囲気になってきたこの時間帯にまたアクシデント。41分、今野が川崎陣での競り合いで中村を倒して一発レッドカードの退場。この日の今野は本職の守備的MFに戻り、浅利のアシストもあって持ち味の「勢いよく攻守を切り替える」動きができていただけに痛い出来事であった。その後はやや混乱の中で両チームが攻め合うも決定機には至らず、東京1点リードのまま前半終了。
 
 
後半。東京はカボレを前に残して自陣へ引きこもる戦法に出た。対する川崎はもちろん前がかり、時には5、6人が前線に上がって中村のタクトの下で仕掛けていく。46分、楔パスを受けた鄭が左へはたき、追い越す谷口がシュートするが塩田の正面。48分、左右への揺さぶりから飛び出した村上がサイドをえぐってクロス、こぼれ球を山岸が狙うも味方の選手に当たって逸機。51分には右CKから中村のクロス、DFの前に入った谷口のヘッダーがバーの上。

その後も川崎の波状攻撃が続く。ここで立ちはだかったのは佐原。前半こそ鄭に押され気味だったものの後半は「守りきる」ことに集中できたのが良かったのだろう、次々上がるクロスをはね返しまくる。57分、左へのフィードにジュニーニョが快足を飛ばして追いつきクロス、走り込む中村のダイビングヘッドを塩田が左手一本でストップ。60分には縦パス一本でジュニーニョがDFライン裏に抜けたが、塩田の頭を抜いたシュートはゴール左にそれて命拾い。

ここで東京はカボさんに替えて鈴木達。前に平山が残り、鈴木は逆襲時に追い越す役割を担う。この采配は奏功。平山は本来の体幹の強さと足下の巧さを発揮して、鈴木はサイドへの速い持ち出しでそれぞれ時間を稼ぐ。また、こういう展開になると梶山のクネクネキープは実に頼りになるのであった。焦れる川崎はレナチーニョを投入し狭いスペースをこじ開けようともがくが、ぶ厚い守備にはね返され、バックパスをCKにしてしまうなど次第にミスが増えていった。

66分、平山が左から切れ込み強烈なミドルシュート、川島倒れ込んでキャッチ。71分、川崎は右FKで前線に9人が上がるスクランブル体勢をとるも、ジュニオールの巻き込むクロスは塩田が弾き出す。川崎は村上・谷口に替えて田坂・大橋を投入。谷口を外したのは意外なれど、中村に続くパスの供給源となる大橋はやっかいな存在に思えた。76分、左右にゆさぶる攻撃からジュニオールが左ポストを狙う浮き球、山岸が飛び込むも塩田が体を張ってセーブ。

ここで東京はエメOUT藤山INの交代。残り15分。逃げ切りに入ってもよい時間帯であり、川崎が二列目を強化したことを考えても的確な采配であった。藤山はDFライン前「6人目の守備者」として精力的にタックルを仕掛け続ける。78分、ジュニーニョからゴール前へ飛び込む山岸を狙った浮き球、塩田が寸前で弾き出すもその勢いで塩田は飛び出してしまい、ジュニオールが無人のゴールを狙うシュート。幸い角度がほとんどなく、きわどくサイドネットへ。

終盤はもう理屈抜きの勝負である。幸い、東京は最後まで高い集中力を発揮する。83分、右持ち上がるレナチーニョから逆サイドのジュニーニョへ、折り返しにレナチーニョが飛び込むも間一髪浅利がクリア。86分、ジュニオールのクロスに合わせた鄭のヘッダーは塩田キャッチ。87分にはスローインのこぼれ球を右サイドで拾った中村が左足インスイングの高速クロス、ファーにジュニーニョが飛び込むもわずかに届かず。結局、東京が逃げ切りに成功した。
 
 

見応えのある戦いだった。これはこれで、間違いなく「いい試合」である。

今野の退場が試合に決定的な影響を与えたことは指摘するまでもない。ただし、それが必ずしも東京不利に働かなかったのがサッカーの面白さ(というか難しさ)。結果的に東京は逃げ切ることに戦い方の焦点を合わせることができ、それが後半の将棋で言うところの大熊、じゃなかった「穴熊」的守備固め戦法による完封につながった。逆に川崎はスペースを失い、攻撃陣が寸断されて不発。ジュニーニョが一対一を外してくれたのを見て「いける」と思った(笑)。

それにしても東京の選手たちはよく頑張った。45分間押し込まれっぱなしになりながら大きなミスもなく、落ち着いて集中力を保ちきったのは素晴らしい。欲を言えば、終了後も「これくらい当然」という風情で振る舞ってほしかったのだけれど、さすがに気力が一杯一杯だったか、DF陣が倒れ込んだのは仕方ないか。まあ、浦和戦や緑戦の時に「相手の選手は試合後倒れ込んだのに、ウチは……」的な批判をしていた人達はさそかしご満足されたことだろう(笑)。

あと、この日は城福監督の好采配も光った。早い時間帯での予期せぬ赤嶺→平山の交代で残り2つしか枠がなかったところで今野退場の状況。どうするのかな、と思っていたのだけれど、出す選手の選択と時間帯、それぞれの交代に込めた意図はベストのものだったのではないかと。結果から逆算して見ているからかもしれないが、悪循環の時期に比べれば采配に迷いがないし、こういう試合を経ることで監督もチームも新しい経験を得られるんだよね。

個々の選手に目を向けると、誰がというより、やはり皆がチームの一員として頑張った結果かな、と思う。守備陣は塩田と佐原がハイボール対応、茂庭・長友がカバーリングで各自持ち味を出していた。浅利と梶山、藤山もまた然り。あの平山や加入間もない鈴木でさえも状況に応じたプレーができているのを見て「ああ、着実に成長しているんだな」と嬉しくなった。もちろんまだまだな部分もあるにせよ、選手がしっかり考えてプレーするようになってきているから。

川崎にしてみれば、「やっちゃった」類の試合だろうか。一昨年来川崎の試合についてはけっこう多く観ているけど、うっかり(←これが重要)先行を許してしまい後半猛攻をかけるも個人技頼みのサッカーになって届かず、は彼らの失敗パターンだから。ただし、それでもあわやの場面をいくつか作ったのはさすがだと思えたし、試合後に川崎サポーターが選手たちを拍手で迎えたのは立派な態度だと思う。サポーターたちだってよっぽど悔しかったろうに。

ついでに書くと、今年は初めて訪れた等々力のホスピタリティが相変わらずだったのは嬉しかったこと。00年くらいまでは正直あまり足を運ぶ価値があるように思えなかったスタジアムだが、雰囲気といい飲食といい家族連れの賑わいといい、凄まじいばかりの充実ぶりである。チームの後押しをしながらもイベントとして楽しんでしまおう、という余裕のある雰囲気がいいんだよな。『川崎市民の歌』はあれは一種のギャグなのか、ちと微妙な感じだけど(笑)。
 
 
ともあれ、この勝利で東京は6位をキープし、フロンターレにも勝点差2まで肉薄することができた。次節から磐田・札幌と「必死の降格候補」と当たるのは微妙なところで、その2試合における今野不在も痛いのは確かだが、まあ羽生が戻ってくるしブルーノさんも使えるみたいだし、きっと大丈夫だろう。心配なのは赤嶺の怪我。せっかく今季10点目をあげて「どこまで伸ばすか」といよいよ楽しみになってきたところなのに……好事魔多し、か。早く良くなってほしい。
 

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コメント

初めてコメントします
川崎サポです

悔しいですが完敗でした

川崎市民の歌はギャグではありませんよ
我々小学校から歌ってますからww

お疲れでした、今回は交代も選定が難しい中で良くぞ的中させた監督、コーチ陣にも感謝!ナビスコ杯決勝風味でしたね。

川崎はブラジル人の出来に左右されるんだなぁ、
前半の川崎サイドが活性化な状態で取られたら東京も大決壊してたかな???
あれだけ攻めて抉じ開けられなかったのを見ると駄目な時の東京みたいだな~とかw
(それでも選手間の受け渡しは良く出来てましたね、前半は)
サリにMVPを挙げたいです、次節は今ちゃんを宥めてた浄さんボランチかなぁ?

「イッツ・ア・スモウワールド」
http://www.frontale.co.jp/info/2008/0922_2.html
「来まくれ!オレンジロード」
http://www.frontale.co.jp/info/2008/0919_1.html
川崎はおっさん狙いですかね?w

赤嶺の怪我は打撲で済んで良かったです。
審判が元で荒れた週末でしたが純粋な勝負を見たかったですね。
こっちの東京も大好きですがw

>カミオダ7さん
はじめまして。コメントありがとうございます。

展開的に川崎にとっては非常にまずい、東京にとってはとても戦いやすい状況になった一戦でしたが、まあ昨年のこともあるのでとりあえず今回は堪忍してください(笑)。

つーか、個人的には東京のライバルはヴェルディよりもフロンターレであってほしいと思っているので、今後ともよろしくお願いしたいところです。あと、ついでに赤いチームも3つほど一緒に蹴落としましょう(笑)。

>川崎市民の歌はギャグではありませんよ
>我々小学校から歌ってますからww
なるほど(笑)。皮肉抜きで、あれを堂々と流して堂々と歌うのがかっこいいな、と。私たち「東京都民の歌」とか、あるかどうかも全然知らないですから。

>古美根さん
どうもです。先日「ベルク」でギネスを飲みながら存続署名の冊子をめくっていたら、古美根さんの名前がありました(笑)。

>前半の川崎サイドが活性化な状態で取られたら東京も大決壊してたかな???
正直なところ、森がいない川崎でよかったなあ、と思いました。山岸も村上もああいう状況がちょっと苦手そうな選手ですから。

>サリにMVPを挙げたいです
頑張ってましたよね。「東京のへそ」の面目躍如です。

>川崎はおっさん狙いですかね?w
というか、ネタもけっこうオヤジギャグ系ですが、あれだけのネタを仕入れられる(段取りをつけられる)バイタリティがギラギラしていていいな、と(笑)。

>こっちの東京も大好きですがw
まったくです。年に数試合にしてほしいですけど(笑)。

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