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2008年08月18日

●ここで焦って蹴り出したら水の泡 (FC東京×浦和レッズ)


土曜日の夜は、味の素スタジアムでJ1第21節。FC東京 0-1 浦和レッズ。前節はアウェイの地でようやく2ヶ月ぶりの公式戦勝利をあげた東京だったが、今度はホームに帰って「最大の強敵」との対決となった。試合は、前半東京がパス主体の攻撃で互角以上に渡り合うものの、後半浦和のシフトチェンジに対抗できず、悔しい悔しい1点差負け。残念ながらまたもホームで、そして大観衆の前で勝点3獲得という結果を残すことができなかった。


立ち上がりから3万7千観衆の熱気に煽られるように、真夏の試合にしては激しいボール争奪戦が繰り広げられた。まずペースを握ったのは東京。キックオフ直後、平山とのコンビでエメルソンが左サイドを突破し、クロスのこぼれ球をカボレがヘディングシュート(GK都築キャッチ)。8分、エメとのワンツーで羽生がボックスへ突入、クロスをカバーに入った闘莉王がカット。10分にはボックス手前で獲得したFK、石川のシュートがポスト左を抜ける。

前半は浦和の中盤守備がややゆるく、東京はカボレやMFへの縦パスから展開、引き続きボランチ起用の羽生が前後左右に走ってパス攻撃を組み立てる。14分、長友→羽生→カボレ→エメと滑らかにつながってクロスを逆サイドの石川が折り返すが、飛び込むカボレに合わず。対する浦和は中をコンビで崩す場面が少なく、サイドからのクロスは茂庭・佐原が着実にはね返す。18分、自陣で浅利が永井にかっさらわれかけた場面は塩田が飛び出してセーブ。

怖かったのはFWの飛び出しである。22分、田中と高原がギリギリのタイミングでDFライン裏に抜け出し、クロスを逆サイドの闘莉王が折り返すが、戻った羽生がカット。この場面に限らずバックスタンド側の副審はオフサイドの判断が甘く、浦和の2トップはそこを巧みに突いているようにに見えた。ただし、全体としては東京が押し気味。27分、スピードでDFをちぎったカボレがゴールライン近くまでえぐってマイナスのクロス、やや逆ダマになり平山はシュートできず。

35分、エメのスルーパスで今野が左サイドを突破、クロスはカットされたものの、ボックス内でこぼれたボールにカボレが走り込んでシュート、さらに二次攻撃から今野がミドルシュートを撃つが、いずれもDFがブロック。危なかったのは38分で、カウンターで持ち上がる永井に茂庭が突っかけたところ、その後方に高原が走り込んで浮き球で抜け、一対一のシュートが左ポストを直撃。さらにこぼれ球に永井が走り込んでシュート、佐原がスライディングで防ぐ。

終了間際には双方陣形が間延びし、カウンター合戦に。44分、東京がパスワークで攻め入ってボックス手前でなんと浅利にボールが渡ったのだが……懸命のシュートは威力なく都築キャッチ。45分の田中のミドルシュートは塩田が横っ跳びで防ぐ。ロスタイムには浦和のカウンターでまた高原が一対一になるが、塩田の体に当たったシュートはバーに当たって外れ。その後東京が押し込んだ場面も決定機に至らず、前半はスコアレスで終了した。


後半に入ると浦和が前がかりに。前半左に張っていた永井が右へ回るなど布陣変更を交えて仕掛けてきた。54分、右から中へ流れる田中がミドルシュート、またもゴールポストを叩く。その直後、ロングボールで田中が右サイド抜け、シュートはわずか左に外れ。59分には右へ回った相馬のインスイングのクロスを田中が折り返し、高原に渡る寸前で塩田がパンチング。対応に追われる東京はアタッカーへの縦パスも入らなくなり、浦和のボール支配が続く。

60分、浅利OUTで梶山IN。開いてしまった前線と後方のつなぎ役を期待したのだろうか。62分、その梶山のスルーパスでカボレが抜け、折り返しを上がった梶山がボレーで狙うも空振り。これに対して浦和は平川に替えて細貝を、高原に替えてポンテを投入し、主導権を放さない構え。そして67分、浦和の攻勢に対してクリアが小さくなったところで鈴木がDF裏へ浮き球を入れ、ゴール前へ走り込んだ相馬がダイレクトボレーを突き刺した。0-1。

何とか流れを変えたい東京は石川に替えて赤嶺を投入。4-3-3気味の、梶山が中盤の底でコントロールするような布陣である。しかし北京帰りの梶山は動きが重く、どうも羽生やエメの動き出しとリズムが合わずにギクシャクした感じ。74分、梶山からの厳しいクサビをカボレが巧みにボックス内の赤嶺へつなぎ、はたいたボールを走り込む羽生がシュートするもポスト右を抜けた。東京は3人目の交代でカボレOUT川口IN。やはり平山は残すのか……。

75分を過ぎたあたりになると、後のない東京が前がかりになり、浦和は引いて守りを固める。暑さの中両チームともさすがにキツそうで、足をつる選手もチラホラと。78分、右サイドを突破した赤嶺の低いクロスに川口がニアで合わせようとするも、DFに当たって押し込めず。その直後には左サイドから梶山らのコンビプレーで攻め込み、こぼれ球がフリーの平山の足下に落ちるが、シュートは右に外れ。浦和は永井に替えてDF堤を入れ「逃げ切りモード」。

85分、今野が右足でクロス、平山のヘッダーは都築キャッチ。この時間帯はもう東京の波状攻撃状態である。が、浦和DFの牙城を前にほとんど決定機には至らない。88分、ショートコーナーから梶山が切り返しでDFを抜いてボックスへ突入、シュート性のクロスを入れるも赤嶺の手前でDFカット。その直後にはボックス正面でFKを得たが、梶山のキックは壁直撃。ロスタイムにいくつか入れたクロスも全てはね返され、結局そのまま試合終了となった。
 
 

残念ながら、現在の実力相応の結果だったのかな、と思う。前半は浦和の慎重な戦いぶりにも助けられて互角以上に渡りあっていたものの、後半の布陣変更・シフトチェンジに対応しきれず先に失点。堅守を誇る相手にこれでは苦しい。終盤は引く相手に対して攻勢に出るも、DFに冷や汗をかかせる場面はあまりにも少なかった。やはり前半にリードしておきかったと言えばそれまでだが、試合全体の流れとしては浦和の注文通り、完敗である。

残念だったのは、やはり後半ほとんど自分たちの攻撃の形が作れなかったこと。前線と最終ラインの距離が離れて厳しかったのは確かなんだけど、それにしてもさほどプレッシャーもかかってないのに慌ててパスを出してはミス、そしてまた自陣深くまで攻め込まれてやり直し、という場面が多かった。特に今野のミスの多さは……。あと、梶山の調子も良くなく、パス&ゴーも味方へのフォローもないのでパスの受け手が孤立してしまっていた。

ここら辺は一朝一夕に良くなるものでもないだろうから、少しずつ精度を上げていくしかない。ただ、10番の選手がミスしてうつむいたりトボトボ歩いたりするのはどうなんだ、とは思うけど。

もちろん、この試合の中でも見るべき部分はあった。前半の、カボレ・羽生・エメの流動的な動きに石川の飛び出しが加わるパス攻撃はなかなか見応えがあった(長友の上がりが噛み合えばもっと良かったが)。守備では、茂庭の復調傾向が一層明らかになったのが喜ばしい。失敗したけどラストパスにチャレンジしたりして、今までとは違う姿勢も見えたし。これらはいずれも名古屋戦に続く良い流れであるので、今後も続けてもらいたいものだと思う。

得点力、ということについては、これもまた特効薬はないのだろう。ただ、思うのは、3月~5月にユニットとして機能して「久々にチームで2人二桁得点の選手が出るか?」という勢いだったのは、カボレ・赤嶺の2トップだったということ。中断明け後はチーム全体の不調もあって2人とも結果が出ていないが、代わりに平山が量産しているわけでもない。カボレ・赤嶺が軸で平山は3番手、で良いのではないかな(とか書くと点入れたりするんだよな、平山は(笑))。

まあ、とにかく、まだまだ力が足りないのも確かだし、レッズにまた負けたのは残念(ちゅーか不愉快)極まりないことではあるんだけど、長い目で見れば悲観するような内容でもなかった、と僕は思う。ブレずにまた次の試合でより良いサッカーをすることが肝心で、ここで変に焦るのが一番良くないんじゃないかな。駄目(笑)?
 
 
 
以下、余談。

僕はメインスタンド2階に座っていたのだが、近くに座っていた男性が先制されてから「早く撃てよー!回してんじゃねえよ、撃てよー!!」と叫びっぱなしなのには閉口した。まあ、確かに相手が引いて守りを固めている場合にはミドルシュートを撃つのも一つの手だし、梶山なんかは撃ちにいった方がいいとも思うようなシーンもあったけど……それにしてもミドルを撃つためのつなぎは必要で、いくらなんでも相手陣に入った瞬間「撃てー!」はないだろう。

つーか、どうもその人は状況如何に関わらず「とにかく早く!」なのね。要は、バックスタンド1階とかに多くいる、パスコースを失って一旦下げたりするとすぐブーイングするような人たちの同類なのだろう。もちろん早く速くプレーすること自体は悪い事じゃない。好ましくないバックパスもあるだろう。でも、それはくどいようだが状況次第である。自分が焦っているからって、それをまんま口に出してプレーしている選手たちにぶつけるのは良くないよな。

ちなみに、シーズン前に小平で練習見学をした時、城福監督が「パスを出したら動け!」と同じくらい口が酸っぱくなるほど繰り返していたのは「慌てるな!行けない時は作り直せ!」であった。城福流ポゼッションサッカーの敵はどのJリーグチームでもなく、実は「早く前に蹴れよ」オヤジたちじゃないか、とちょっと思ったりして(笑)。いやマジで。
 

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J1第21節  東京 0-1 浦和 ご無沙汰しておりました。 このブログが1週間も空くことは滅多にないんですが、 ・実家帰ってた ・帰って... [Read More]

コメント

「蹴れ打てオヤジ」サイドスタンド1階にもいますよ。2階にいても聞こえてきます。
城福サッカー下で彼らの望むシュート数を確保するためにはポゼッション何割取ればいいんでしょうね?
もはや抵抗勢力にしか見えないですよ。

ま、U-18が真逆のサッカーやって優勝するクラブですから(笑)一朝一夕には変われないかも知れませんけど。

はじめまして。
味スタゴール裏で応援していて、こちらをいつも拝見して勉強させてもらっている者です。
残念な結果に終わりましたが、仰る通り
彼我の差はそう簡単には縮まらないという
所でしょうか。
あと余談の所に激しく同意です。
ゴール裏のあちこちからも「早く早く前へ前へ」の声が結構上がりだしましたね
(中断後不調になってから 特に)

ガーロの時の失敗した教訓を生かさなきゃ
なりませんよね・・・
チーム同様、応援する方の意識も
変わるには”時間がかかる”のかも知れませんね。
駄文、失礼しました。


徳永を負傷で欠き、五輪帰りの長友・梶山がお疲れ気味では、浦和相手には厳しかったのはしょうがないとは思います。(味スタで負けたのは、悔しいですが。)

城福監督の目指す方向は、間違っていないと思いますが、結果がでないと、サポーターとしてはイライラが募るばかりです。

こういうときはセットプレーで得点出来ると、チームに勢いが出るのですが、正確なボールを蹴れるキッカーが少ないですから、相手を慌てさせる事も出来ません。(苦笑)

大竹は、試合に出れないのでしょうかねぇ。

こんばんは!
自分もメイン2階で涼しかったがピッチはもっと暑かったのかな?
前半の終わりのラブリータイムに取れなかったのが響きましたね。
知り合いで隣席の浦和サポ曰く東京のサッカーの質は上下の振れ幅が有り過ぎるのが敗因じゃね?と言われ同感、、、工夫して欲しかったなー。
どうしたら前を向けるか?もう少し引き出し方を考えないと残り15分の繰り返しに成ってしまいますね。
最後に、ムービングは相手も動けてムービングなのかも???

余談、まったく同意です。状況を無視して、やれサイドだ前だと思考停止な野次は百害あって一利なし。駆けっこではないのですから。

ただ、目下、個人的な問題意識は、いかに早く攻撃するか、です(笑)。

もちろん、状況如何に関わらず急げ、ということではなく、戻りきれていない相手をいかに突くか、ということ。速攻が得意な柏や川崎を見ながら、問題意識が頭をもたげます。

で、暫定的な答えは、メトカラさんが書かれているとおり、相手を引き付けて(≒味方が使えるスペースを作って)からパス・アンド・ゴー(≒今度は自分がパスを受けられるように動く)
をいかに早く繰り返していくか、ということかな、と。
まぁ、当たり前のことかもしれませんが、意外と出来ていない。

シーズン前の川崎との練習試合@麻生で、横パスを出そうとした浄にブルーノが「運べ運べ」(=もっと相手をひきつけてからパスを出せ)と叫んだのが思い出されます。

最近気になるのはサポーターの間でMovingって言葉が独り歩きしすぎて、東京が目指すサッカーが見えにくくなってないか?ってことです。
じゃあ自分がわかってるのか?っていうと正直自信がありませんw

いや、どうもみなさん、コメントありがとうございます。浦和戦だと、アクセス数も含めてやはり反響がけっこう返ってくるなあ(笑)。

自分としては、別に勝負を捨てているわけではないのですが、やはりここ数年の迷走ぶりを考えると、少なくとも今年は「ここらでひとつ、腰を据えていこうや!」の気分です。

別の言い方をすると、サッカーの好みは人それぞれなれど、今東京が取り組んでいる新しいチャレンジをまずは応援しよう、という。まあ06年の夏までも同様の心境ではあったのですが。

>U-18が真逆のサッカーやって優勝するクラブですから(笑)
ユースが立派に優勝しちゃったもんだから、それこそ06年と同様に「ユースは面白いサッカーをやっているのに、それに引きかえトップは……」とか言う人が出てくるのではないかと心配(笑)。あと、クラブの上の方の人は、ユースとトップのサッカーの整合性をどう考えているのかな、とはちょっと思います。

>ガーロの時の失敗した教訓を生かさなきゃなりませんよね・・・
全くその通りだと思います。最終的に城福さんで優勝できるかどうかは正直わかりませんが、ちょっと口にしただけで「よくわからん味だ!」と吐き捨てちゃうようなもったいない真似だけはしたくないものです。可能性をあっさりと捨て去ることは。

>大竹は、試合に出れないのでしょうかねぇ。
確か怪我がまだ治ってないので、柏戦かその次か……私も期待してます。

>最後に、ムービングは相手も動けてムービングなのかも???
それ、けっこう鋭いかも(笑)。いくら「いいサッカー」をしていても、いざ相手が穴熊になっちゃった時にどうするか、というのは深刻な問題です。東京に限らず、ですが。ホント、こじ開けるための(あるいはこじ開けなくても良いようにするための)引き出しを増やさなければなりません。

>戻りきれていない相手をいかに突くか、ということ
相手の守備が整う前に攻めたてる、というのは、スペースも人数も限られているフットボールなる競技の鉄則ですからね。それはパスサッカーであろうと放り込みであろうと同じであるはず。

>パス・アンド・ゴーをいかに早く繰り返していくか
まさにそれこそが「ムービング」のイメージでしょう。

>Movingって言葉が独り歩きしすぎて
要は、ボール保持を基本にしつつ能動的に仕掛けていくサッカーということだと思うのですよ。機先を制してボールを動かし、ゴールへ運んでいく。そのためにまず人が動く、と。「ポゼッション」という言葉を使わなかったのは、その言葉を「停滞」のイメージで誤読してしまう危険があるからではないか。と、勝手に私は思っています(笑)。

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