●チームの現在地はここ (浦和レッズ×FC東京)
昨日の晩は、埼玉スタジアム2002でJ1第15節。浦和レッズ 2-0 FC東京。東京にとっては昨年の上位「3強」と当たる3連戦の冒頭、浦和にとっては完敗だったリーグ再開初戦(柏戦)の次ということで、ともに是非とも勝ちたい一戦であった。試合は、序盤浦和が猛攻をかけて先制したのに対して東京も途中から反撃に転じたものの、守りを固める相手を崩しきれずそのまま完封負け。あらためてこのチームの道のりの厳しさを思い知らされることになった。
7月の暑さの中、両チームともあまり前からボールにアタックしない「夏仕様」のサッカーとなったが、まずペースを握ったのは浦和。高原に代わり先発した田中達也がボールを引き出しながら駆け回り、流動的に動くポンテと2人で前線をかく乱。最初のシュートこそ平山の折り返しから羽生が放ったものの、そこからは浦和の攻勢が続く。3分、左タッチ際でエジミウソンと競った佐原が転倒、折り返しのボールを達也がシュートするもこれは決まらず。
東京はパスを回して攻め込もうとするが、浦和のタイトなマークにあって前線へボールを運べない。一方東京DFは強行出場の佐原をはじめとしてどこか覚束ない印象。4分、浮き球に反応した達也が左サイドDFライン裏に抜け、あわてて藤山・佐原がカバーに入ろうとしたところでマイナスのクロス、フリーになっていたエジミウソンが豪快なシュートをゴール上に突き刺した。わかってはいたのだろうが、マークの混乱を修正しきれなかったか。0-1。
6分、グラウンダーの長いボールでカボレがDFライン裏に抜け、ボックス内で阿部に後ろから倒されたように見えた……のだが、これはノーファウルの判定。11分、エジミウソンとの壁パスで阿部が東京CBの間に入り、ミドルシュートがバーの上を越した。13分には右サイドまたロングボールで抜け出した達也が佐原のカバーリングにあいながらもシュート、サイドネット。東京は完全に後手に回った格好で、自陣に押し込められてしまう。
16分、平川と達也にDFが引きつけられたところでフリーのポンテにパスが通る絶体絶命の場面、ふかしてくれて命拾い。その直後には山田のアーリークロスを佐原がかき出したところ、ボールが達也に当たって跳ね返り、ちょうどゴール方向へ。塩田が際どくクリア。さらにCKから堀之内が撃ったヘッダーも塩田が横っ跳びでセーブ。25分にはポンテのクロスをエジミウソンが押し込んだかに見えたが、これはオフサイドでまた命拾い。
東京の反撃が形になり始めたのは前半半ばを過ぎてから。26分、今野が平山とのワンツーで中央突破、シュートはやや威力なくGK都築キャッチ。28分、平山が中盤でボールを奪い持ち上がるが、より良いシュート体勢を探しているうちにコースがふさがれて逸機。30分、ボックス手前で得たFK、梶山が狙って惜しくも枠外。浦和は序盤のラッシュの反動か足が止まり、それに比例して東京アタッカーがポジションを外れて流動的に動けるように。
もちろん浦和もただやられっぱなしではない。カウンターと闘莉王の攻撃参加は相変わらず脅威であった。43分、FKからポンテのクロス、闘莉王が頭で叩きつけるがポスト左を抜けた。東京にとって惜しかったのはロスタイム、右CKの場面。羽生がクロスを上げた次の瞬間に今野のマークが外れて「キタ!!」と立ち上がりそうになったものの、ヘッダーはポスト直撃で外れ。都築は一歩も動けていなかったのに……残念。そのまま前半終了。
後半が始まると、ネジを巻き直したレッズが再び守備をタイトにして攻勢に。まず左からのFK、ファーの山田が金沢に競り勝って折り返し、エジミウソンがボレーシュート(枠外)。50分、ロングボールで平山が抜けるもクロスはDFに当たって決定機に至らず。8分にもミスパスをさらわれてポンテから決定的なクロスが入るが幸いFWに合わず。ところが54分、浦和ペースにも関わらず達也OUT、永井INの交代。さらにポンテに替えて梅崎投入。
これらはコンディションを考慮した予定の交代であり、「そこまでは飛ばせ」というハーフタイムの指示もあったのだろう。前線での活動量が減った浦和は引き気味となり、呼び込まれるように再び東京の攻勢へ。しかし、東京もエメを軸としたパス回しで相手陣中央までは楽々ボールを回すものの、さすがに浦和のようなチームに守りに徹されるとそこからが難しい。横パスからなかなか前に進まず、羽生がスペースへ飛び出しても使われない姿が目立つ。
62分、エメがボックスへ突入、コースを狙ったシュートはDFに当たったものの二次攻撃となり、エメのスルーパスで平山がDFライン裏へ抜けた。よし、決めろ!だが、左足で撃ったシュートはあえなく枠外……どうした高校選手権得点王。煮え切らない前線に対して、後方では藤山が奮闘。鋭い出足から相手の一歩前でボールを奪いまくる守備は芸術的とさえ言える出来だった。67分には攻撃参加から平山とのワンツーで中央突破を図るが、惜しくも失敗。
ここで東京は動きの重いカボレに替えて川口投入。とにかく前でボールを引き出してもらいたい、という意図か。一方の浦和は完全にカウンター狙い。69分、縦に走るエジミウソンからクロス、闘莉王がシュートするも塩田が横っ跳びでキャッチ。71分、広い左→右の展開から羽生→徳永とつないでクロス、川口のヘディングシュートははギリギリ枠内に飛ぶいい弾道だったが、都築が素晴らしい反応で弾き出す。敵ながら見事なセーブだった。
東京の攻勢は続き、ほとんどハーフコートマッチの状態。ただし密度の高い浦和DFを相手にボール支配率ほどの決定機は作れない。74分、エメからDFライン裏へ飛び出す羽生へのパスが通り、低いクロスに逆サイド川口が走り込むが合わせきれず。その直後には川口のドリブル勝負からボックス手前の絶好の位置でFK獲得。「梶山、決めろ!!」と叫んでみるが、そんな時に限ってなぜか徳永が思い切りバーの上にシュート。ラグビーか(笑)。
77分、右サイドで羽生が流れたボールを懸命に拾い、切れ込んだ徳永の左足シュートを都築がはじくもFWが押し込めず。逃げ切りたい浦和は82分にエジミウソンOUT、細貝IN。そこからは東京がチャンスをほとんど作れず……87分にはなんと羽生に替えて石川投入。羽生はまだ十分に動けていたように見えたのだが。その直後に浦和のカウンター、体勢を崩した藤山と入れ替わった永井が一気にドリブルシュートをゴール左隅に突き刺して、勝敗が決した。
正直なところ、試合前は6月までの「駄目なレッズ」(笑)が脳裏にあったので、流動的に動く前の3人を先頭に翼を広げて「怖いレッズ」が襲いかかってきたのにはちょっと面食らった。達也が動けている時間限定ではあったけど。ただ、その後はきちんと意識して守備を固めていたし、前半終わり頃と後半頭の「いい時間帯」には牽制的な攻勢に出るなど、さすがに勝ち慣れているチームだけのことはあるな、というのが抱いた感想である。
そんなレッズを相手に、東京は自分たちのサッカーがあまりできなかった、というか、バラバラな感じだった。自陣を固める相手に対して横方向へのボール移動が多いサッカーになるのは仕方がないとして、いざ仕掛けていく時の連動性と、あとスペースを使う意識や判断が良くなかった。相手の3バック脇に飛び出した羽生や信男さん、それからオーバーラップのSBにボールが出ず、エメや梶山頼みでどんどん狭いところに行って……あれでは苦しい。
なんだかんだで今シーズン、これまで戦ってきたのが比較的楽な相手というのはあるかもしれない(上位の名古屋や柏には負けているし)。で、ここで一気にプレーの強度が高まって、これまで見えなかった綻びが露わになった、と。もう一つには、6月の中断期間以降、どうも全体的に選手のコンディションが良くないように見えるんだよね。カボレを筆頭として。ソウル遠征やらもあって、調整が上手く行っていたのかな、大丈夫かいな、という。
あと気になるのは、中断明け以降の3試合、どうも城福監督の采配に冴えが見られないことだろうか。この試合の途中交代でも、動けなかったカボレに替えてボールを引き出せる信男さんというのは効果的だったと思うのだけれど、この暑さの中負けていて残り数分まで交代枠2つ残したのはどうなんだろう。そして、石川を入れる際に外したのは羽生だったのだが、これにはガッカリした。彼は10番や13番や6番よりよく動けていただろうに。
とにかく、城福監督になってまだ1年目。6月まで望外の好成績で来ることができたのはそれはそれでいいとして、そこで変に偏った方向へ凝り固まることがないといいな、と思う。せっかくここまで臨機応変に良い感じで来ているのだから。
個々の選手では、良かったのがまず藤山。持ち味の前に出て奪う守備だけでなく、体をぶつける激しさも見せて不調の佐原を見事カバー。あとは攻撃参加で迷わずシュートまで行っちゃえ(笑)。塩田も好セーブ連発で○。攻撃の方では、羽生と信男さんは無尽の運動量と効果的なボールの引き出しでさすがの貢献。エメルソンはチーム全体が良くない時に頼られちゃって、「黒い奥原」っつーよりも「ケリー再び」という感じになってきたような。
良くなかったのは、まず佐原。対応は常に遅れがちだしポジショニングも悪くて、正直試合に出られる状態じゃなかったのかな、と思う。ただ、包帯ぐるぐる巻きで戦う姿にはちょっとした感動も覚えてしまった。両SBはやや気圧されていたのか、どうも反応の鈍さがめだったような。今野はやっぱり試合に入れてなかった。カボレはかなりお疲れのご様子。梶山も体がキツそうだったけど、それよりも後半のFKは「10番なら自分で蹴れよ!!」。
平山についてはどう考えればよいのだろう。ここ数試合僕は比較的好意的に見ていたのだが、面白いパス出しはできてもシュートの仕掛けがことごとく決まらない姿を見ていると、彼の起用は「FWを1人減らしていること」になるのではないか、という気もしてきた。つーか、平山を我慢して使っているうちに調子を崩してしまった赤嶺の事を考えると、「梶山や今野には特等席がないのに平山にはあるんですかね?」とイヤミの一つも言いたくなったりして。
つーか、あんまり悔しいんでダラダラ書いてたら、今シーズン一番長い観戦記になっちゃったよ(笑)。まあ、今は城福監督と選手たちを信じて辛抱すべき時なのだろう、きっと。幸い6位にとどまっていることだし、道のりはまだまだ長いのである。