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2008年07月03日

●痛い、でもリカバリーできる負け ('08ナビスコ準々決勝1stレグ)


昨日の夜は、仕事帰り超特急で味スタに駆けつけてナビスコカップ準々決勝1stレグ。FC東京 1-2 大分トリニータ。ともに日曜のリーグ戦から中2日という酷なスケジュールでの対戦(ただし、大分の方が遠征である分よりキツいはず)。ターンオーバーとも言える大幅なスタメン入れ替え作戦で臨んだ東京だったが、ほぼベストメンバーで勝負してきた大分相手に主導権を握りきれず、外国人選手ら主力組の途中投入も実らずに競り負け。


この日の東京は事前の報道通り、千葉戦から7人もの選手が入れ替わったスタメン。ある程度仕方ないことながら、前半はぎこちない感じのサッカーとなってしまった。攻撃の組み立てでは狭い方へ流れがちで、中盤は梶山頼みの色が濃い。守備でもマークの受け渡しやこぼれ球への反応などで隙を見せることが幾度かあった。徳永が味方に任せようとしてかっさらわれたミスと、塩田が前に出られず茂庭が際どくクリアした場面には冷や汗。

一方の大分は「まずハードワークから」のチームカラー通りキビキビとした守備を見せ、東京の連続攻撃を許さない。ただ、中2日の長距離遠征が影響したか、攻撃で畳みかける感じはさほどなし。全体的に決定機の少ない試合となったが、チャンス自体は東京の方がやや多かったように思う。序盤の平山のシュート、梶山・石川とのコンビパスで椋原がDFラインの間を抜けたシーン、巧みに相手SBの裏に出た椋原の赤嶺を狙ったクロス……。

ところが、先制点したのは大分。28分、東京陣ボックス手前でボールが跳ね、落下点にFW前田が入る。すかさず茂庭が寄せていったものの、前田は体勢を崩しながら左足つま先で引っかけるようなボレーシュート。これが絶妙の軌道で飛んで塩田の横っ跳びも届かず、サイドネットに吸い込まれた。虚を突かれたような失点。これで東京はリズムを崩し、その後しばらくはさらにミスが増えて東京ファンのフラストレーションは高まっていった。

そこで停滞を破ったのが「ムービング」。いつの間にかロスタイムに突入していた前半終了間際、中盤でのパス交換からボックス左手前へ上がっていた平山へ楔のパス(梶山から?)。平山は一旦足下に収めるかと思いきやダイレクトでDFライン裏にはたき、中央から絶妙のタイミングで飛び出した石川が西川の脇を破ってゲット!!まさに目の覚めるような、緩→急の見事な得点だった。そのまま前半終了。いい時間帯に入りましたね~(笑)。


後半は立ち上がりから、同点ゴールの勢いそのままに東京が攻める。茂庭に代わって藤山が入った(交代の理由は不明)ことで防御から攻撃への切り替えに鋭さが増した。椋原の攻撃参加も増え、前半よりは惜しいクロスが何本か。左サイド持ち上がる平山からボックス内の赤嶺へ、さらにライン裏へ飛び出す栗澤へとパスが通った(そしてシュートが突き刺さった)場面は完全に決まったかと思えたが、しかしこれはオフサイドでノーゴール。

たたみかけたい東京は53分に(おそらく負傷の)石川に代えてエメルソン投入。エメルソンは持ち前のキープ力と躍動感で攻撃を牽引。さらに63分には平山に代えてカボレを投入。さあ、これで決めるぜ……と思いきや、ここからチャンスが増えていかない(むしろ減ったかな)のがサッカーの面白さというか。「潤滑油兼活性剤」羽生がいないとエメルソンとカボレは2人でやりすぎて、逆にチーム全体のダイナミズムが失われるきらいがあるのだ。

で、東京が攻めあぐね始めると「弓を引き絞っていた」大分のカウンターが出始める。後半中頃、金崎の突破からウェズレイがグラウンダーに走り込んだ場面や、左サイドをえぐるウェズレイが吉本を振り切ってシュートした場面、あとエジミウソンが右サイドを突破してクロスを高松に合わせた場面などはかなり際どかった。東京もカボレのキープ→エメのクロス→逆サイドから入る梶山とつながるチャンスがあったが、これはシュートが空振り。

79分、大分はウェズレイに代えて小林亮。あまり攻撃的な意図には見えず、「コンディションや今季のホームでの強さ(7勝2分1敗だっけ?)を考えれば、ここは同点で十分なのだろうか」とも考えたのだが……83分、東京陣右サイドでワンタッチ・ツータッチのパスが流れるように続く攻撃が炸裂。最後はDFラインの間に入ったエジミウソンがゴール左にシュートを突き刺してゲット。敵ながら、感嘆せずにいられない見事な攻撃だった。1-2。

その後は、東京のやや強引な反撃を大分が全員守備と慌てず時間をつぶすパス回しでしのぎ続ける。エメルソンがホベルトからボールをかっさらってショートカウンターになった場面、ホベルトがもうバテバテで走れないんだけど懸命に戻り、DFの壁に阻まれていたエメからボールを奪い返したのは象徴的な光景だった。結局、4分のインジャリータイム(どこでそんなにあったのかな?)でもスコアは動かず、大分が1stレグを制することに。
 
 
残念な敗戦だった。いや、まあ、いつも敗戦は残念ではあるのだが(笑)。

メンバーを大幅に変えた(落とした、と言ってもいいのだろう)のは、若手に経験を積ませる&2番手の選手層を試すという意図も含みながら、基本的にはこの中2日3連戦をいかに乗り切るか、というのがその趣旨だったはず。言い換えれば、3戦とも勝ちに行くからこその「やりくり」だったわけだ。そう考えると、千葉戦の引き分けに続くこの敗戦は「うまく行かなかった」わけで、まして今回は負けたら終わりのカップ戦なだけに……痛いわな。

前半ギクシャクしたのはある程度仕方がない。いくらサテライトや練習試合があるっつっても、そうそう今回のメンツで実戦を重ねるわけじゃないだろうし、今年はスタメンだけでなく布陣やシステムも「日替わり」だから。それより問題は、後半頭に一旦いい流れになったのに、カードを切っていくうちに結局カボレやエメに頼るサッカーとなり、しかも全体としては再び停滞していったことだろう。この2人の特長は「ムービング」の中でこそ生かしたいやね。

個々の選手に目を向けると、やはり椋原にせよ吉本にせよ、まだ頼りになるベテランと一緒に使ってこそかな、という感じはした。塩田は別に出来が悪かったわけではない。茂庭は吉本に比べたらマシかな、とも思ったのだけれど、茂庭・吉本のCBだとボールが前に進んでいかないんだよね。藤山も別にフィードが上手いわけではないのだが、鋭い出足で前に出てボールをとれるのがいい(そしてそのまま持ち上がって処理に困る、と(笑))。

浅利はいつも通り。梶山は攻撃では仕事をしたけれど、味方の守備の混乱を収められず、むしろ助長していたような。石川は中寄りで使う方がやはり生きる。栗澤は正直空回りしているように見えた。動き直しの呼吸が味方と合ってない。エメルソンは相変わらずグー。平山はパス回しの中でいいアクセントに。カボさんはお疲れかな?プレーの精度自体が落ちてきているような。心配なのは赤嶺で、千葉戦もそうだけどどうも存在感が……。

トリニータは、さすがに本調子のようには見えなかった。ただ、攻守(特に守備)にサボる選手が見当たらずよく訓練されており、なんというか、チームに一本筋が通っているような印象は相変わらずだった。やっぱりシャムスカ監督が鍛えてきた成果ということなのだろう。あれだけ戦力引き抜かれて今年の成績は、それこそオシム時代のジェフと同様に驚異というしかあるまい。高橋大輔も戻ってきたことだし、2ndレグも厳しい戦いになると思う。


まあ、とにかく、これで次はリーグの浦和戦。せっかくやった「メンバーやりくり」を無駄にしないためにも、ここはひとつ久しぶりにガツンと勝って首位に肉薄してほしいもんである。僕らもはるばる地の果てまで観に行くわけだし。
 

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コメント

梶山は何かのインタビューで「前線への飛び出しと、サイドのサポートが課題」みたいなことを言っていたと記憶しています。今日の試合は浅利が控えていたこともあって、結構積極的に上がっていたので「課題克服のためにがんばってるな」っと自分的には好印象でした。しかし、逆に中盤での浅利の負担が増えてしまったような気がします。指摘された守備の混乱を収拾できなかったというのはその辺でしょうか?羽生がいればうまくフォローできたのかも。

千葉戦出場組は動けないと思いましたが、フレッシュなはずの選手も動かず、大分のスローペースにはまったのが敗因かと・・・。

前半からパスで相手を動かせば、大分の方がつらいはずなのに、リスクを怖がって消極的なプレイになったのは残念です。

それにしても、茂庭の交代理由がわかりません。ビルドアップが消極的だったせいでしょうか?

>しかし、逆に中盤での浅利の負担が増えてしまったような気がします。
そこら辺が微妙なところなんですよね。私も、梶山の攻撃方面の能力を引き出すには浅利や今野といったカバーリング能力のある選手と組ませた方がいいと思います。

ただ、昨日もそうですけど、だからといってMFというポジションは攻撃にのみ専心するわけにはいかず、守備での役割が求められるわけですが……梶山、周りがいつもほど「梶山の守備の役割」を限定してくれない中で、ちょっと右往左往というか、振り回されちゃってましたね。つくべき相手につかず、追うべきでない相手を追っちゃてたり。

難しいポジションだし、彼自身も難しいものに挑戦していく気持ちがあると思うのですよ。それは今後の楽しみでもあります。ただ、現時点では、おっしゃるとおり羽生のような気の利くプレーヤーと一緒の方が欠点が浮き出なくていいのかもしれませんね(つーか、栗澤も本来は気が利くプレーヤーのはずだったんだけどな……)。

>大分のスローペースにはまったのが敗因かと・・・。
確かに。後から思えば、大分は引きこもりとは違う形で「アウェーの戦い」をきっちりやってきたんだな、と。得点シーンは鮮やかでしたが。

>茂庭の交代理由がわかりません。ビルドアップが消極的だったせいでしょうか?
体のキレの悪さと、あと彼と吉本のコンビだとボールを奪ってもそこから前に出る勢い(ないし流れ)が生まれないからではないでしょうか。

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