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2008年06月30日

●ある意味、またも鬼太郎ショー (FC東京×ジェフ千葉)


昨日の夕方は、味の素スタジアムでJ1第14節。FC東京 1-1 ジェフユナイテッド千葉。1ヶ月半に渡る中断も明け、いよいよリーグ戦の再開、と書きかけたところでATOKが「最下位」と誤変換して笑ったのだが、相手は18位の千葉であった。開始早々今野が退場するアクシデントで苦境に追い込まれながらセットプレーから東京が先制するが、後半千葉の攻勢の中でまたもアクシデントから同点ゴールを喫し、痛み分け、あるいは恨みっこなしのドロー。


あいにくの雨の中キックオフ。千葉は立ち上がりから引き気味で、自陣でフィールドプレーヤー8人が守備ブロックを形成する「プレミアっぽい」守備戦術。東京はボールを支配し、さっそく5分には右サイドを突破したエメルソンのクロスが平山の胸にすっぽり収まるチャンスも。この場面はシュートの当たりが悪く逸機したものの、「崩すのに苦労はしそうだが、辛抱強くやっていけば優位に試合を運べそうだ」という感触を得ることができた。ところが。

7分、千葉DFのクリアキックを処理しようとした佐原が大きく弾んだボールに頭を越され、これを拾ったFWレイナウドが独走。慌てて今野が追いすがったものの、ペナルティボックスに入ったところで引き倒してしまい(?)PK&レッドカード。東京はいきなり窮地に追い込まれてしまう。このPKはレイナウドの甘いシュートを塩田が気迫のセーブで止め、失点は逃れることができたものの、80分以上を10人で戦わなければいけない状況であった。

10分、またロングボールでレイナウドが左サイドを抜け、追いすがる徳永が切り返しで転倒したところをシュート。塩田が弾き出したボールを走り込んだMF工藤がまたシュートするが、これも塩田が横っ跳びでストップ。東京は梶山1ボランチのダイヤモンド型に中盤を編成して「10人シフト」へ移行しようとするも、前半半ばくらいまではパスをつなげず、トップへのボールも濡れたピッチで滑って抜けてしまい、攻撃の組み立てに苦しむことになる。

東京にとって幸いだったのは、数的優位に立ったにも関わらず、千葉が当初の慎重な戦い方を変えなかったこと。時間を与えられ、梶山がキープしてみたりエメが戻ってボールをさばいてみたり試行錯誤するうち、再び攻撃が形になり始めた。23分、千葉DFの緩慢なボール回しに突っかけた平山がボックス内で池田に倒されてPK。だが、カボレの右隅を狙ったシュートはGK立石がどんピシャのタイミングで飛んでストップ。残念すぎる逸機。

それでも、そこからは東京ペース。25分、ボックス手前で粘る金沢のミドルシュートがポスト右を抜ける。33分、バイタルエリアでのパス交換からカボレがノーステップでシュート、わずかにバーの上。そして39分、エメのクロスをDFを背にして受けた平山がシュート。これは立石が横っ跳びで防いだものの、左CKとなり、羽生のクロスをファーに流れた佐原が頭で叩きつける!ボールは立石に当たってゴールイン。貴重な先制点を得て、1-0で後半へ。


後半立ち上がりは東京が個人技を発揮。47分、左スローインから梶山が持ち込んでボックス手前から低く速いシュート、ポスト右を抜ける。49分、逆襲でカボレが持ち上がってグラウンダーのシュートを立石がキャッチ。56分には羽生の引き出しから左サイドを崩してカボレのクロス、ファーで待ちかまえる平山が受けるが思い切りズッコケて逸機。しかし、次第にハーフタイムで前半の慎重なサッカーを修正した千葉が主導権を握っていく。

千葉が明らかに変わったのは攻撃。前半はFW新居・レイナウドを目がけた縦のボールが多かったのに対し、後半は左右へのパス回しとオーバーラップを多用してサイドから圧力をかけてくるやり方へ。右から左からクロスが入り、東京DFは空中戦に追われることに。8分、DF坂本のクロスを工藤がボックス内で落として走り込む新居がシュート、DFブロック。57分にはMF戸田を外してFW巻を入れ、攻撃の駒(ターゲット)を増やす交代。

59分、羽生のナイスタックルでボールを奪ったかに見えた場面、こぼれ球への反応が遅れてピンチとなり、ボックス左からのFKをカボレが何とかクリア。62分、左からのFKをゴール前でファーに流れる巻が落とし、佐原と競りながらレイナウドがシュート、塩田がビッグセーブ。63分には東京のカウンター、中央持ち上がるエメから平山へラストパスが通るも、倒れながらのシュートはGKキャッチ。その後も千葉ペースが続くが東京ベンチは動かない。

アクシデントが起こったのは66分。立石のパントが東京陣で跳ねたところ、巻と競る佐原と金沢が接触して倒れ、レイナウドがフリーで抜けるピンチ。藤山懸命のカバーリングでシュートは左に外れたものの、目の上を切った佐原はタッチ外での治療を余儀なくされた。その間に千葉は斉藤→谷澤とさらに攻撃的な交代。そして69分、左→右の揺さぶりから新居のクロス、DFの間に入ったレイナウドがダイビングヘッドで叩き込む。佐原の一時退場により高さに強いDFを欠いただけでなく、マークが混乱してレイナウドを放してしまったのは致命的だった。1-1。

千葉の攻勢は続く。ボックスへ入るクロスとアタッカーの増加を東京DFは受け止めきれず、エメや羽生が最終ラインまで戻って守備する姿が目立つように。73分、縦パス一発でレイナウドがDFライン裏に飛び出すが、塩田がボックス外まで出てクリア。75分にはボックス付近でハイボールが跳ねてまたも佐原がそらし、レイナウドが拾って撃ったシュートを塩田がこれまた横っ跳びで好セーブ。ここは一度、中盤守備を立て直すべきにも思えたが……。

城福監督が選択したのはフレッシュなアタッカーを入れての「撃ち合い上等」だった。羽生に代えて大竹、続いてカボレに代えて祐介を投入。78分、中央を持ち上がる大竹が30m以上のロングシュート、わずか左上を抜けてスタンドがどよめく。81分、新居からのクロスをレイナウドが頭で叩くがバーの上。中盤がスカスカになる中で互いに好機は作りつつも、千葉は最終局面での精度がやや低く、東京は大竹・祐介のいずれも周りと絡めず空回り気味。

82分、平山OUT、赤嶺IN。もう力づく、というやつか。85分、左から谷澤のクロスを巻がヘディングシュート、塩田キャッチ。その直後にはボックス手前で祐介がFKを獲得するが、祐介自身が芸のない弾丸シュートを壁に当てて逸機。88分にはエメから祐介へラストパスが通り、切り返しから左足でシュートするも枠外。結局、ロスタイムには藤山が炎のオーバーラップまで見せながらついに得点は奪えず、0-0のまま試合終了となった。



勝点1を確保できたというべきか、それとも勝点2を失ったと言うべきか。冷静に振り返ってみれば、まあ引き分けは妥当なかな、と思う。もちろんホームだから勝ちたかったけど。

今野の退場が試合の行方を大きく左右したのは指摘するまでもない。佐原のあれは、判断ミスに加えてコンディションの問題もあった(修正動作がきかなかった)のだろうが、それにしても痛かった。高山主審はとても厳格ないし杓子定規なタイプなので、一発退場は致し方ない(黄色にしてほしかったけど)。むしろ、失点によるデメリットと数的不利のそれを考えたら、今野のプレーも軽率だったと言えなくもないような気がしなくもない。どっちなんだ(笑)。

しかし、佐原というのも、本当に良くも悪くも目立つというか、「やってしまう」男なんだねえ。やや戦意過剰なところといい激しさの中にしなやかさの感じられるプレースタイルといい、個人的には好きなタイプなんだけど、本来は何を置いても信頼性が求められるのがCBというポジションである。勝っていればまだ「自作自演の鬼太郎ショー」とか言って笑ってられるのかもしれないけども。もちっと、ブレのないような感じでお願いできれば。

あと、退場への対応も含めて、この日はちょっと采配もピリッとしないように思えた。前半こそ相手の消極的とも言える戦法で救われた感はあったが、後半は失点前からDFラインはだいぶ厳しい状況に追い込まれていたわけで、ちょっと様子を見すぎたかな、と。佐原一時退場の場面も後手に回った印象だったし、ひたすら前の方を替えていく終盤の采配も「?」てな感じだった。結果論はさておき、あれでは梶山と藤山が過労死してしまうぞ(笑)。

個々の選手では、まずエメルソンはピッチを縦横無尽に駆け回ってチームを支えてくれた。MVPだと思う。羽生はいつも通りの頼もしい働き。カボレと梶山はまあまあ。平山はシュート以外は上出来だった。祐介は昔の祐介に戻っちゃったか。今野は退場前も試合に入れてないような感じで、試合勘にやや問題があったかと。金沢は相手に寄せられた時の判断が冴えなかった。徳永は平均点かな。藤山は、調子の悪い他のDFのしわ寄せを1人でかぶるような形になっていたが、それでも大概何とかしてしまうところが本当に凄い。そして塩田は……こっちがMVPでもおかしくはないかも。彼の好セーブで何度も命拾いした。


てな感じで、この日の天気のようになんだかスッキリしない中断明け初戦となってしまった。いくら経験値を蓄積っつったって、それはチャレンジする状況にあってこそのものだから、やはりここはきっちり勝って「次勝てば首位」の位置にいてほしかった。気になるのは、週半ばにナビスコ準々決勝もあって日程が厳しくなるこの時期に、出られない選手がまた増えていること。今野ももちろん痛いのだが、それ以上に長友が……うーん、代表コワイ(笑)。
 

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コメント

羽生の代わりに浅利を入れて、梶山を前に上げる手もあったかと思いました。

ただ、梶山1ボランチもそれなりに効いてましたから、安定した守備を変えるリスクを避けたのかもしれません。

結果の勝点1は、残念でしたが、久々にスタジアムが「燃えた」好ゲームでした。雨にも関わらず、観戦された人は、幸運だったと思います。

どうもです、相変わらずの緑サポです。
前回のコメントの返答ありがとうございました。
お礼を書いておらずすみませんでした。

千葉が気になっていたので、TVで見てましたが・・・強いですねwFC東京ww
上手さよりも強さを感じる試合でしたよ。
平山も確変突入してるんじゃないですか?

賛否はあると思いますが、相変わらず城福さんの采配はハッキリしてて良いですね。
まぁ私も守備陣が死んじゃうんじゃないかと思いましたが、あの失点だけで済みましたし。

千葉はワタワタしてましたが、FC東京だからこうなったものの、ウチがやったら退場者無しで、思いっきり互角な感じが・・・。

・・・、サイドバックの選手意外と多くないですか?
出来れば1人頂きたい・・・

>羽生の代わりに浅利を入れて、梶山を前に上げる手もあったかと思いました。
バリエーションとしては色々あるかと思いますけど、確かに「浅利を入れた方が良いのでは」とは思いましたね。特に、後半の押されて受けに回った時間帯は。

元々私が梶山を中盤の底に置くやり方があまり好きではないというのもあるかもしれませんが、梶山と藤山には相当な負担がかかってましたよね。梶山、がたいは良いけどタフじゃなさそうだから……次の試合の反動がちと、いやかなり心配。

>だいぶつさま
どうもです。あまり強い強い言われると、つい「褒め殺しでは?」と警戒してしまいます(笑)。なんちゃって。

>平山も確変突入してるんじゃないですか?
そうですねえ。あともう一皮(いや二皮くらいか?)むければなあ、という感じでしょうか。パスワークとの絡みはだいぶよくなってきたので、あとは最終局面ですね。途中どんなにノロくてもいいから、シュートの瞬間だけ三倍速になってくれないかな(笑)。

>・・・、サイドバックの選手意外と多くないですか?
>出来れば1人頂きたい・・・
ダメ(笑)!特に椋原と長友は絶対あげません!!ただ、確かに今野もSBできるし、怪我人が直ってくれば少し多すぎるくらいなのかな……でも、服部がいるじゃないですかあ。

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