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2008年06月24日

●2勝の壁は厚い、などと言ってちゃいかんのだが (ラグビー日本×フィジー)


日曜の午後は、国立競技場で'08パシフィック・ネーションズカップ第3戦。日本代表 12-24 フィジー代表。前節仙台でトンガを撃破して意気上がる我らがジャパン、今度はさらなる強敵フィジーと今季最初(で最後?)の東京でのテストマッチである。悪天候の中行われた試合は、前半キック戦法に徹した日本が小刻みにリードを奪ったものの、後半フィジーの力強い攻勢を前に痛恨のミス連発。結局、3トライでたたみかけられて悔しい逆転負けとなった。


降りしきる雨の中、開始直後からキック戦に徹する日本と近場を突くフィジーとのせめぎ合いが続く。前半は我慢比べの様相。ジャパンは縦突進に対して箕内・マキリを中心にしつこくタックルを浴びせてノックオンを誘い、奪ったボールはタッチキックかハイパント。5分、フィジーのハンドで得たPGをアレジが決めて先制。11分には攻め込まれてPGで同点に追いつかれるものの、14分にアレジが40m以上はあるロングPGを決めて再びリードを奪う。

ずぶ濡れのピッチ上、当然ハンドリングエラーが頻発するが、日本はFBウェブの安定したキック処理で流れを渡さない。ラインアウトやスクラムが安定せずに攻勢には至らないものの、全体的には日本ペース。34分にPGで3点を追加。その直後にはカウンターから箕内が好判断のゴロパント、小野澤が押さえ損なったこぼれ球を平が拾ってトライ、と思ったところでノックオンの笛。後ろにこぼしたように見えたのだが……ここは1本欲しかった。6点差で前半終了。


後半になるとネジを巻き直したフィジーが前がかりに。近場に固執しすぎず、密集脇を1~2度突いてからセンター付近に振って後ろからランナーを走らせるプレーが目立つようになった。また、SH田中は徹底して狙われ、スクラムが少しでも回るとフィジーのSHヴァタがオフサイド覚悟で襲いかかってくる。長い手足を活かしたフィジーの絡みタックルにも苦しみ、日本はマイボールを満足にキープできず、受け身の時間が続いて次第にDFラインがバラけ始める。

50分、フィジーが低く蹴り出したボールをウェブがキャッチした場面。チェイスの選手もおらず「よしカウンターのチャンス!」と思った瞬間、走り出したウェブがなんと落球。これを再び蹴り出され、CTBナンゲレヴキが競走を制してトライ。コンバージョンもFBラウンガがきっちり決めて9-10。あっという間の逆転劇である。それまでウェブはジャパンでは別格とも言える安定したフィールディングを見せていただけに、何とももったいないミスだった。

しかし、まだ1点差。時間も30分近くを残していた。さほど焦る必要もないような状況ではあったのだが、しかしジャパンの選手たちはヒートアップしてしまう。突然始まった「パスラグビー」。最初こそ勢いに任せてフィジーを押し込み、54分にはアレジがPGを決めて一度は逆転するものの、その後は回す割に前へ進めず、次第にFWの動きも落ち始め、セットプレーのミスやパントチェイス失敗から逆襲をくらって一気に後退、の場面が増えていく。

56分、22m内で日本にミスが出てフィジーのスクラム、さほどひねりのないムーヴでアレジの脇があっさり破られ、左へのパス展開、最後は数的優位からラワンガが再逆転のトライ。さらに難しいコンバージョンもラワンガが決めて12-17。そこからは昨秋W杯と同じような展開になった。なんだかんだでたったの1トライ差。懸命に回してトライを奪おうとするジャパンだが、意外と(と言っては失礼だが)粘り強いフィジーDFを前になかなかゴール前へ進めない。

逆に、フィジーがカウンターからすわトライか、という場面が2、3度あったのだが、これはスローフォワードやノックオンに救われて何とか5点差が続く。後半半ばを過ぎてムーヴから平がきれいにラインブレイクした場面はフォローが続かず逸機。日本はニコラス→ロビンス、菊谷→コリニアシ、小野澤→ロアマヌの交代で打開を図るものの、全体的に動きが落ちている中で入った選手はかえって浮くような感じとなり、あまり効果はないように思えた。

73分、アレジが狙ったロングPGはいいコースに飛んだようにに見えたが、バーに当たって惜しくも決まらず。トライの香りがしない日本としては、あるいはこのPGが勝利へのラストチャンスだったかもしれない。逆に78分、日本陣ゴール前に蹴り込まれた低く速いボールを戻るウェブが押さえきれず、走り込んだWTBゴネヴァが拾ってダメ押しのトライ。コンバージョンも決まって12-24。惜敗と言いたいところだったが、終わってみればダブルスコアになっていた。



チーム名と得点経過、そして最終スコアを見れば「最後は格上が力で押し切った」ことになるのだろうか。なるほど、確かにフィジーは日本より強かったのかもしれない。ただ、ジャパンにも勝つチャンスは十分にあったように思え、「しくじった」印象は拭い去れない。ああ、残念。

前半はおおむね日本の狙い通りだった。ハンドリングエラーやラインアウトのミスは目立ったもののそれはお互い様だったし、我慢してスコアを拾いに行ったのは至極正しい判断だろう。惜しむらくは、やはり終了間際の小野澤の「ノックオン」になるか。もう一回足でプッシュしてから押さえに行っても良かった……というのは結果論だな。判定も微妙だったが、あそこで1T1C以上に差を広げていれば後半の展開は違ったものになったかも、と思うととても悔しい。

より大きな課題に見えたのは、後半10分の時点で逆転を許してからの試合運び。フィジーの出来も決して良くはなく、まだ全然焦るような状況じゃないのに、それまでの堅い戦術を捨てるかのようなパス展開。一旦逆転したのはよかったが、そこで変に消耗したのが終盤に響いたように見えた。で、全体的に足が止まってから再びハイパントを上げ始めたり、交代選手もとにかくパワーで押し切ろうというようなメンツでやや空回りしたり。どうもチグハグだった。

全体的には、もう少しスクラムが安定しないと厳しいか。相手SHが絡みやすいようにコントロールされちゃって、もうちょい我慢すればサイドアタックで揺さぶるなど田中も工夫できるのだろうけど、実際にはボールをSOに渡すのにも難渋する有様だった。ジャパンは「長い足」のカウンターに多くを望めるようなチームではない(フィジーと比べれば一目瞭然)ので、セットから精密な仕掛けができないと難しいのではないか。ハイパンよりスクラム、みたいな(笑)。

しかし、なんつーか、ホント、こういう試合を勝っておかないと、いつまでたっても勝率は壊滅的なままなんだよな。フィジー・サモア・トンガ相手に年間2勝したのは平尾監督時の99年だけだったっけか。最終戦のサモアはアウェイだから勝つのは難しそう。となると、なおさらこの試合は惜しすぎる。ちっきしょー。
 

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