●初心に還るべし、でっか (FC東京×柏レイソル)
一昨日の午後は、味スタでJ1第12節。FC東京 0-1 柏レイソル。厳しい「GW5連戦」もいよいよ最後、4日前の名古屋戦で敗れた東京としては是非とも勝利で一区切りつけたいところであった。試合は雨の中目まぐるしく攻守が入れ替わる攻め合いとなり、あと一歩のところで崩しきれない東京に対し、GKのミスを逃さず虎の子の1点を守りきった柏が勝利を収める。「城福東京」としては初めての、しかもホームでの連敗となってしまった。
5月らしからぬ冷たい雨の中でキックオフ。滑るピッチコンディションを考慮してかどちらも攻撃に人数をかけすぎずやや慎重な序盤となったが、それでもこのカードらしく随所で激しいボール争奪戦に。6分、ロングボールが藤山の前ではねてDFライン裏に流れ、菅沼が出足良く飛び出してドキリとさせられたが、幸いシュートはポスト左に外れてくれた。8分、右CKから梶山がGK菅野の頭上を狙って山なりのヘディングシュートを撃つも、バーの上。
この日は梶山が最初から「目覚めた」状態。周りがよく見えており、確実なトラップから適確にパスを回して前へ絡んでいく。13分、今野・梶山とのパス交換から羽生がボックスへ突入し、速いクロスを入れるもDFがカット。16分にはカボレからアーリークロス、ボックス内で今野が落とし、羽生がゴール前へ走り込むが折り返しをDFがカット。さらにそのCKから今野が狙ったヘッダーは菅野がキャッチ。東京ペースながら、柏のDFも堅さを見せつける展開。
前半半ばあたりから柏にもチャンスが生まれるように。24分、中盤で跳ねたボールを浅利が処理しそこない柏のショートカウンター、太田が茂庭をちぎって中央どフリーのアレックスにボールが渡ったがシュートはバーの上。25分、梶山のフィードを巧みなトラップで受けたカボレがDFを抜いてゴールライン際をえぐるが、クロスは菅野キャッチ。26分には徳永が不用意な寄せからポポにちぎられ、アレックスの突破から菅沼のミドルシュート、茂庭がブロック。
ボール支配では上回りながらも柏のしつこいチェイスにあい、東京のパス攻撃は次第に停滞。一方の柏はシンプルだが速いパス交換で快足アタッカーを走らせる。滑るピッチも柏に味方し、藤山もインターセプトを仕掛けられない。36分、カウンターから左→右の大きな展開で太田が走り、鋭い切り返しで金沢を抜くも一対一を塩田がストップ。東京もカボレ・赤嶺のフォアチェックからいい形を作るが崩しきれず、梶山の苦し紛れのミドルシュートは枠外。前半はスコアレスで終了した。
後半になるとネジを巻き直した東京が攻勢に。開始直後、中盤でボールを奪った梶山がそのままミドルシュート、菅野横っ跳びでセーブ。48分、カボレが右タッチ際を古賀に当たられながら突破、深くえぐるもシュートできず。51分、右に流れたカボレのクロスを逆サイドで拾った赤嶺がもう一度クロス、飛び込むカボレに合いかけたが寸前でDFがクリア。55分にも菅野のパントを出足良く拾った金沢が持ち上がり、今野のミドルシュートがポストわずか右を抜ける。
たたみかけたい東京は羽生に代えて「スイッチ」大竹を投入する。59分、またも金沢が出足良くパスカット、梶山につないでミドルシュート、DFに当たったボールがポストわずか左を抜けた。さらにそのCKで今野がヘッダーを撃つもバーの上。65分には大竹がドリブルでボックスへ突入するもDF2人がかりに止められ、さらにスローインから切れ込む大竹のミドルシュートは菅野キャッチ。得点の香りはするのだが、あと一歩でDFの粘りにあう場面が続く。
前がかりになれば裏を狙われる危険も増すわけで、前半と同じように東京の攻撃が息切れし始めた20分過ぎから柏がチャンスを作るように。66分、ポポとのパス交換でボックス正面に進出した菅沼がミドルシュート、塩田がはじいたこぼれ球を太田が拾うが、塩田が懸命にボールをかき出す。67分、赤嶺との細かいパス交換でDFの壁を突き破るようにカボレがゴール前へ突入するも、菅野キャッチ。68分には藤山のパスミスからボールを奪われ、太田のシュートを茂庭がブロック。
目まぐるしい攻め合いの中、城福監督はさらなる攻撃強化を選択。梶山を中盤の底に下げ、浅利OUT近藤INでアタッカーの数を増やす交代。だが、これが結果として裏目に。相手アタッカーの飛び出しをキャッチする浅利が抜けて今野も前がかりになったことで守備力は低下し、中盤で柏の速攻を止められなくなってDFラインも下がっていく。そして73分、柏のCKが3度続き、塩田のパンチングが小さくなったところ、逃さず大谷がボレーで蹴り込んで柏先制。
後半も半ばを過ぎての失点は痛かった。前へ行く気にはやる東京は中盤が間延びし、攻めてはカボレ目がけた放り込み、守っては深くまで攻められてから辛うじてDFが止める場面の繰り返し。76分、ボックス内でDFを背負った祐介がパスを受けて反転シュート、ポスト右を抜ける。78分には赤嶺に代えて平山投入。その直後、今野が左から入れたクロスを祐介がバックヘッドで流して平山の前へ落ちるが、DFに体を寄せられてシュートは枠外。
終盤になると柏は人数をかけた守りと逆襲狙いに徹するように。東京はようやくSBも加えて力ずくの波状攻撃を繰り出すようになるが、しかし工夫のないクロスは大半がFWの前ではね返された。惜しかったのはロスタイムのシーンで、右から徳永のロングスロー、カボレが頭で落として走り込む大竹がシュート!しかしボールは壁を作るようにゴール前を固める柏DFに当たって得点ならず。結局、そのまま0-1で試合終了となってしまった。
柏レイソルもフランサや李忠成など欠場者が多く、決して絶好調とは言えなかったのだろう。それでも、石崎ノブリンの作ったチームらしく、ソリッドないいサッカーを見せてくれた。選手では右ウイング太田の飛び出しの鋭さが光っていたけれど、「おっ」と思わされたのはボランチの大谷である。素早い攻守の切り替えの中で繋ぎ役を適確に果たし、ナイスポジショニングで決勝ゴールもゲットした。いつの間にやら良い選手になったものだ。山根の後継者、かな。
FC東京は、前節に引き続き0-1の敗戦。共通するのは「ハードワークする相手に対してムービングできず、仕方なく力攻めでチャンスを作るも決めきれなかった」という試合展開だ。大宮戦までの「作戦勝ち」ではなかなか見えてこなかった課題と力不足ぶりがここに来て急速に明らかになったような感じではある。再構築中のチームにいよいよ最初の正念場が訪れた、というところだろうか。
この試合で結果的に勝敗の分かれ目になったのは、浅利→近藤の交代だった。城福監督にしてみれば、アタッカーを増やして一気にたたみかける意図だったのだろう。ただ、長友不在でSBの上がりに多くを望めない状態では「ピルロ役」梶山の配球力は生きず、DFラインも高く保てない(何しろ茂庭・藤山だから……)中でかえって柏に逆襲のスペースを与えてしまう結果となった。守備の事も考えれば、アタッカーを増やすにしても今野を底に置いて梶山を前へ絡ませた方が良いようにも思うのだけれど、それはそれで展開力とサイドの突進力が足りない、という判断なのかもしれない。難しいところだな。
それよりも気になるのは、苦しくなった時に「カボレ頼み」の傾向がどんどん強まってきていることである。特に上記の浅利OUT以後は中盤が作れず、結局味のないポン蹴りの連続になってしまった。自分でシュートを狙うだけでなく前線でのさばき役・つぶれ役もこなして奮闘してくれるカボレは凄いし、ヴェルディ戦の前半みたいに明確な作戦なら良いのだが、やはり本来は中盤をしっかり作って最終局面をカボレに任せる、という形にしたいところ。
結局、この2戦で思い知らされたのは、チームが目指すべき「人もボールも動くサッカー」までの道のりはまだまだ遠い、ということであり、もちろん様々な戦法を駆使して勝点も拾いながら理想を追求するべきではあるけれど、「軸」をどこかに置き忘れてしまっては本当の意味で強いチームはできない、ということだろう。そろそろ怪我人も戻って来つつあるし、初心に還るべし、と。そういう意味では、この連敗も良い薬良い勉強になればいいな、と思う。
個々の選手では、まずカボレの頑張りに敬礼。梶山も前節に引き続き良かった。娘さんが生まれたおかげで何かのスイッチが入ったのかな(笑)。羽生は前節よりは良くなっていたけれど、まだ6分くらいか。大竹は完全にマークされてるので、もっと周りを使わないと厳しいだろう。SBに入った金沢はまずまずの出来。むしろ問題は逆サイドの徳永で、攻守ともに全く精彩なし。この日の出来を見たら、右長友で左金沢というオプションもアリだな、と。あと茂庭は……。
しかし、連敗したにも関わらず、上位が足踏みしているおかげで未だ4位にいるのは幸運というか何というか。もっとも、大混戦ゆえに16位との勝点差も「6」しかないという状況では、喜んでばかりもいられないけれども。次はリーグ中断前では最後の試合となるアウェイの磐田戦。選手は連戦で疲れもたまって大変だろうが、ファンにとってもここを勝つか負けるかでは気分的に大違い(何しろ1ヶ月半尾を引くから(笑))なので、ぜひとも勝利をお願いしたい。
そういえば、この日は「UK Day」ということで、スタンドにも英国系の人たちが多く来ていたようだ。もっといいサッカー&こちらの勝利を見せたかったな……。あと、特別販売なのだろう、コンコースでは瓶のバスペールエールとフィッシュアンドチップスを売っていた。どちらも意外と(と言っては失礼だが)美味也。つーか、エール好きの僕としてはこの2品はレギュラー化して、もっと言うと樽のエールをリユースカップとかで売ってくれると嬉しいのだが。無理?
コメント
今季からの3ボランチは、守備は安定しますが、どうしても前線へのフォローが薄く、murataさんご指摘の通りの前線に放り込む「カボレ大作戦」になりがち。
カボレも中盤が苦しく自分にボールが出なくなると、下がって組み立てを始めるので、ますます相手ゴール前の人数が足りなくなる悪循環。
失点のリスクはありますがSBや、中盤の選手がFWをドンドン追い越してゴール前に行かないと点は取れないでしょう。
中断期間で修正出来れば良いのですが、代表組も多いから、なかなか大変そうですが城福監督の手腕に期待しています。
Posted by: コタツねこ | 2008年05月12日 18:56