« 決戦!!バイタルエリア (大宮アルディージャ×FC東京) | メイン | 5月11日は味スタへ »

2008年05月07日

●祐介くん、スキヤキだよ、スキヤキ (FC東京×名古屋グランパス)


昨日の午後、味スタでJ1第11節。FC東京 0-1 名古屋グランパス。片や首都に所在するクラブながら3年連続で残留争いに足を突っ込み、片やJ有数の規模を誇るクラブにも関わらず「中位力」などというありがたくない代名詞が付いてしまった両チームの対戦が、今シーズンはなんと上位争いの一戦に。連敗ストップに向けて一丸の組織と気迫の守備を見せた名古屋が1点を奪い、メンバーのやりくりに苦しむ東京の追撃を抑えて辛うじて逃げ切り。


キックオフ。梶山が出場停止の東京は栗澤・羽生・金沢・今野で中盤を構成、CBは高さ(ヨンセン)対策で佐原と速さ(杉本)対策で藤山のセット。対する名古屋はワイドな4-4-2の布陣で、左右に大きく揺さぶってから縦方向のプレーを狙ってくる。序盤は名古屋ペース。3分、ポストのヨンセンにボールが入り、佐原が寄せたところで追い越すマギヌンにパスが通って裏へ抜け、前へ出る塩田もかわされるがクロスがゴールラインを割って命拾い。

東京は慣れない布陣ゆえかパスの出し手・受け手で息が合わない場面が目立ち、なかなか前線までボールを運べない。9分、赤嶺の落としからDFの間に持ち出したカボレがミドルシュートを撃つも、バーの上。一方、チームの完成度で上回る名古屋は適確な距離・タイミングのフォローと動き出しを見せる。力強く大きな展開に東京の守備は引き延ばされながら押し込まれていった。10分、CKから小川のクロスを塩田がかぶって吉田に合いかけ、ヒヤリ。

17分、名古屋に先制点。後方でのゆったりしたパス回しから突如スピードアップして小川がスルーパス。ヨンセンが佐原を引っ張って空いたスペースに杉本が走り込み、藤山も付ききれない。シュートは前へ出る塩田の脇の下をかすめ、ゴールへ転がり込んだ。わかっていたパターンだったが……。ちょうど長友が負傷で外へ出ている間でもあり、東京としては悔やまれる失点。杉本はその後も一度藤山をぶっちぎるシーンがあり、さすがのスピードであった。

東京も反撃に出る。18分、アーリークロスをボックス内でカボレが落としてフリーの栗澤に渡るが、栗澤はなぜかシュートせず、カボレに戻したクロスを楢崎がキャッチして逸機。20分には金沢のミドルシュートがポスト右を抜け、23分にもスローインで長友がボックスへ突入、戻したボールを金沢→赤嶺とつなぐもシュートはDFブロック。さらに26分には左サイドで今野がDFを置き去りにして快走、クロスにDFと競りながら赤嶺が合わせるがヘッダーはバーの上。

しかし、素早く守備ブロックを形成する名古屋に対して、東京は速攻を急ぐあまり少ない人数で仕掛けてはボールを失う場面が多い。復帰したての羽生も試合勘が戻っていないのだろう、体が重そうでパスも相手にひっかけてしまうことが多い。34分には左サイドに流れた羽生がカボレに合わせるも、ヘッダーはバーの上。逆に39分にはパヤリッツァの攻撃参加からマギヌンのクロスを小川が折り返し、ヨンセンに合いかけるピンチ。結局、0-1で前半終了となった。


後半頭から、羽生に代わって大竹投入。本当ならもう少し「ここぞ」という場面で使いたい選手だが、やりくり上仕方がない。開始早々、左サイドのパス交換から栗澤がインスイングのクロス、飛び込むカボレにわずかに合わず。48分、フィードを受けて左サイドを走る小川に徳永が競り負け、クロスから二次攻撃となり、杉本のクロスに飛び込むヨンセンと塩田が交錯するような形になるピンチ。こぼれ球を佐原がかき出して何とか事なきを得る。

東京は最初こそ意気込んだものの、すぐに攻撃は沈滞。おそらく連戦の疲れからだろう、人もボールも「ムービング」にはほど遠く、カボレ頼みの放り込みプレーが目につく。12分、大竹の大ふかしのミドルシュートがチームの焦りを表しているように見えた。もちろん名古屋の方も疲れておりミスは同じくらい多いのだが、前線~中盤守備の寄せの鋭さで東京を上回る。大竹がドリブルで仕掛けようとした瞬間に囲まれ潰される、というシーンが何度か。

何とか攻撃に勢いをつけたい東京は赤嶺OUT、近藤祐介INの交代。66分、東京陣ボックス内へのフィードを杉本と佐原が競り合い、こぼれ球がヨンセンの足下に落ちるもシュートをふかしてくれた。69分には祐介の目の覚めるような弾丸ミドルシュートを楢崎が正面でキャッチ。これを見たピクシーは杉本に代えて米山投入、DFを増やして逃げ切りを図る。73分、祐介のスルーパスで長友が左サイドを抜け、カボレを狙ったクロスは惜しくも通らず。

ここで東京は栗澤に代えて石川を投入。スピードで切り裂きたいところだったが、石川も試合勘が戻っていないらしく、ドリブルは不発気味。それでも押し気味の東京は79分、名古屋陣で獲得したFKを祐介が早いリスタート、DFライン裏に飛び出したカボレが楢崎に倒されてPK獲得。よし!ところがカボレは足を押さえて動けない。そこで祐介がボールを持ち、スタンドの期待と満身の力を込めてシュートを撃つ。だが、ボールは空しくバーに当たって跳ね上がった……。

絶好の同点機を逃し、東京の幾人かは意気消沈したように見えた。特に祐介は棒立ちに。城福監督の怒声が飛ぶ。82分、ショートコーナーから石川のクロスを徳永が流して佐原の足下に落ちるが、シュートできず。40分を過ぎる頃になると驚くことに名古屋の前からのチェイス守備が復活。86分、ヨンセンのポストで左サイド抜けた阿部が折り返し、中村がシュートするも塩田の正面。87分にはボックスすぐ外で東京がFKを獲得するも、石川のシュートは大外れ。

劇的だったのはロスタイム。92分、竹内が右コーナーの時間稼ぎから突然切れ込み強烈なシュート、ボールはバーを叩いてはね返り、詰めた米山が頭で押し込もうとするが枠外。「得失点差もうけた!」と思っていたら、今度は東京が名古屋陣でFKを獲得、藤山のフィードのこぼれ球がゴール前の祐介の前に落ち、左足でシュート!楢崎セーブ!そのこぼれ球をまた祐介を拾い、今度は右足でシュート!また楢崎セーブ!!……というところで試合終了。うーん。


名古屋グランパスは、思っていたよりピクシーらしくないというか、意外性はないけれども自分の型をしっかり持って組織的な攻守を貫く、という意味では昨年までのフェルホーセンの蓄積をきちっと生かしているのかな、という印象。ピクシー色が出ているのはむしろ「魂」の部分で、前後半通じての鋭いプレス守備はなかなかに見事だった(効率的な動きができているからこそスタミナがもつのだろうが)。なるほどこれが「スーパーハードワーク」か、と。

FC東京は、怪我人続出や代表への大量招集にもめげず突っ走ってきたけれども、さすがに連戦でいっぱいいっぱいかな、という感じ。特に中盤は……僕は誰であれ(カボレでも!)、誰かに頼りすぎるというのは危険だと思っているので「穴」という言葉は使いたくはないけれど、羽生や石川の調子が戻らない段階で梶山が出場停止になったのは痛かった。特に大宮戦での梶山のプレーを見たばかりだと、ね(まあ、警告累積自体が彼の責任でもあるのだが)。

この試合で不満だったのは、前半の試合運び。先制されてから、なぜあんなに攻め急いだのだろう。前がかりにならない相手に対していくら速攻で先手をとろうとしても無理というものである。結果的に、すぐボールを奪われては守備に追われてスタミナを無駄にロスし、息切れすることになった。梶山不在と羽生の不調で中盤のボールキープ力が落ちているとしても、だったら焦らず後ろから作り直さないと。小平で城福さんが口うるさく言っているように。

個々の選手では、塩田はミスキックも多くて変な感じ、佐原はヨンセン相手にやや気合い空回りか。長友のおとなしさは腕の負傷のせいだから仕方ないが、逆サイドの徳永がなにげに絶不調。予測や予備動作をおろそかにする癖のある選手だから、フィジカルが落ちると影響がモロに出るのかも。浄さんは2人ボランチだとやや辛い。羽生と石川は回復待ち。栗澤はちゃんとシュートを撃つように。カボさんは体がだいぶキツそう。他の選手はだいたいいつも通り、かな。

近藤祐介にとってはつらい試合となってしまった。あのPK、今野が蹴るべきではないかと思ったけれど、最初から祐介に決まっていたのか他の選手の腰が引けたのか。試合後、多分彼は泣いてたと思うのだが、失敗して泣く選手は東京では小峯以来だな(あ、吉朗とジャーンもいたか)。まあ、早いリスタートでカボレにパスを出したのは祐介だし、ロスタイムの場面でも2度のシュートをきちんと枠に飛ばしている。出来は悪くなかった。これを糧にして精進すれば、勝点1なんてすぐに取り返せるよ。決勝ゴール1本でおつりがくるじゃないか!!

そう、色々書いたけど、長いリーグ戦、1敗くらい実はなんてことないのである。しっかり反省して、次の柏戦で勝てばそれでいい。
 
 

試合後は、家の近所の「アジアーナカフェ」というお店でカミさんと夕食。「祐介くんにはPK失敗後も試合後も下を向いてもらいたくなかった。あのロスタイムみたいに偶然チャンスが来るかもわからないし、次の試合でまた頑張ればいいのだから」という話をしながら、「タイ風春雨スキヤキ」などの料理をジョッキのビールで流し込む。え?なんでエントリーのタイトルに「スキヤキ」かって?そりゃ決まってるでしょう、『上を向いて歩こう』ですよ……。

トラックバックURL

このエントリーのトラックバックURL:
http://umanen.org/mt/mt-tb.cgi/2380

コメント

PKのシーン、カボレが立ち上がれず、近藤がボールの近くに行ったときの姿を見て、宇宙開発を予想しました。かなり体に力が入っているのが、遠目からもわかりましたから。

個人的には、今野・石川・金沢あたりに蹴ってもらいたかったところですが、緊迫したシーンで蹴りに行った近藤の心意気は、心から拍手したいと思います。

追記
05年、同じ名古屋戦(アウェー)でルーカスがPKを外してから、長い連敗をしたんでしたっけ。今年は、次節柏戦に勝って、流れを戻したいですね。

コメントする

(初めてのコメントの時は、コメントが表示されるためにこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまでコメントは表示されませんのでしばらくお待ちください)