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2008年04月01日

●もっと多くの人に見せたい試合 (FC東京×京都サンガ)


日曜の午後は味スタでJ1第3節。FC東京 3-3 京都サンガFC。歴史的経緯を考えれば、こじつけも含めてもう少し盛り上がってもいいような気がしないでもない「新旧都対決」。双方ともやや粗っぽく撃ち合いの展開となったが、一度は逆転を許した東京が終盤の幸運なゴールで引き分けに持ち込む。勝点3こそ得られなかったものの、開幕戦に続いて「サッカー応援本来の楽しさを思い出した」充実感を得られる試合だった。これで観衆2万人弱はもったいない。
 
 
2分、東京がいきなりの先制点。ボックス右角でGK平井のミスキックを拾ったカボレが切り返しでDFをかわしてシュート。ニアを狙った強烈な一撃は平井がはじき出したものの、右からのCKをカボレがすらしてファーに抜けたところをフリーになっていた吉本がシュート、当たりそこねのボールが平井の頭を越してゴールイン!2日前に子供が生まれたばかりの羽生を祝福する「ゆりかごポーズ」で喜ぶ選手たち。最高の立ち上がりだった。

ところが、幸先の良い得点にも関わらず東京は勢いに乗れない。京都の前からのチェイスに対してボールを引き出す動きが少なく、ぎこちなくつなごうとしては失敗が続く。怪我人の多さでメンバーが大きく変わった影響もあっただろうし、バーレーン帰りの羽生や今野も動きが重い。8分、カウンターからこぼれ球をパウリーニョがシュート、バーに当たって外れ。18分にはCKでマーカーの茂庭を転ばせた角田が同点ヘッダーを叩き込み、試合は振り出しに。

東京がペースをつかむのは前半半ばから。相手の守備の強度が落ちたところでパスがつながりだし、つられて人の出し入れやオーバーラップも増えて……印象としては、開幕戦と同じパターン。特に目立ったのは大竹と徳永で、前者は正確な判断と技術で、後者は持ち味の馬力でボールを敵陣深くまで運ぶ。25分、大竹が蹴ったCKが今野に合うが、ヘッダーは枠外。29分には羽生と今野のパス交換から大竹のループシュートが流れたところ、赤嶺が拾ってクロス、カボレが頭で狙うも、これも枠外。

中盤を支配された京都は縦の長いボールを増やすが、果敢に前へ出る吉本ら東京DFがはね返す。そして44分、クイックリスタートから長友が突破してCKを獲得、大竹の素晴らしい弾道のキックを赤嶺が頭で叩きつけて平井を抜いた。2-1。「いい時間帯」のゴールである(笑)。終了間際には塩田がクロスに飛び出して触れないピンチがあったが、徳永の好ブロックで難を逃れ、リードのまま前半を終えることに成功した。よしよし、という感じ。


後半頭から京都はパウリーニョ→田原の交代。前線にターゲットができたことで京都の攻撃にも芯が通り、アーリークロスから田原のヘディングシュート、という場面が何度か。いずれも遠目からのものだったので事なきを得たが、不気味ではあった。それでもまだ全体的な流れとしては東京優位で、大竹のミドルシュート(わずかに枠外)がスタンドをわかし、CKのこぼれ球をボックス内で吉本が落として羽生が右足で狙う場面も(平井キャッチ)。

56分、京都は角田に代えてアタリバを投入。この交代が当たった。アタリバは大きな手足を生かしたキープと丁寧な配球で京都の攻撃に「ため」をもたらし、受身に回った東京のDFラインはズルズル後退。そして東京陣ボックス周りで波状攻撃となったところで渡邉が思い切ったミドルシュート、横っ飛びの塩田も届かずゴール右上に突き刺さる。2-2。撃った瞬間、「これはどうしようもない」と観念するようなもの凄いシュートだった。

降り出した雨の中、京都はその後もロングボール主体の攻めを続け、対する東京はDFラインの押し上げがきかず、選手間の距離が空いてパスをつなげない。前線の赤嶺・カボレに長めのボールを入れてそこから展開、という形で打開を図る。60分、ボックス正面から狙った大竹のFKは、枠を捉えるも平井がセーブ。71分に京都は柳沢OUT林INで前線の活性化を図り、東京は74分に金沢OUT浅利INでDFライン前を固めつつ今野を前に出して攻撃力増大を狙う。

先に成果が出たのは京都の方だった。77分、左に流れた林のクロスにどフリーの田原が飛び込むもシュートはバーの上。80分、中盤のこぼれ球に東京の選手の反応が遅れたところでアタリバがDFライン裏に浮き球を送り、DFより一歩早く走り込んだ田原がどんピシャのスライディングシュートでゲット。これまた凄みのあるスーパーゴールだった。2-3。追い詰められた東京は大竹に代えて川口、赤嶺に代えて平山を投入。パワープレイで前線の強さにかける。

87分、右サイドを駆け上がる徳永がクロス。おそらくミスキックだったのだろう、フワリと上がったボールは平井のタイミングを外すようにゆっくりと落ち、こぼれたボールをファーに詰める今野がDFに競り勝って押し込んだ。よし!3-3。「負け試合」からの回生に場内は大盛り上がり、その声援に乗って東京は攻勢に出る。ロスタイムにはCKで羽生がスタンドを煽る場面も。だが、終了間際ボックス内に今野が落としたボールには誰も走り込まず、結局同点のまま試合終了の笛が鳴った。
 
 

ホームで勝てなかったのだから、喜ぶべきではないのかもしれない。しかし、渡邉といい田原といい、この日の京都アタッカーの「当たりよう」は半端ではなく、スーパーシュートを2本も決められた(しかもセットプレーでも1点献上している)時点で普通は負けである。そこを最後まであきらめず追いついたのだから、チームと選手たちの頑張りは讃えなければならない。試合後、場内に「You'll Never Walk Alone」の歌声が響いたのもそういうことなのだろう。

攻撃面では、神戸戦と同様に前半半ばくらいからしばらくはパスも回っていい感じだったのだが、まだ意図的にその状態を作り出すまでは行っていないし、後半相手がシフトチェンジした時には対応が完全に後手に回ってしまった。まあ、あまり教条的になってもいかんし、大事なのは使えるバリエーションを増やすこと。今はとにかく時間がなく、怪我人も多い状況の中でセットも交えてちゃんと点をとっているのだから、なんだかんだでうまくやってるのかな。

不安なのはやはり守備だろうか。CB2人は確かに不安定、なんだけど、吉本(1年ぶりの味スタ先発!プロ初得点!)はまだ経験を積んでいく段階にあるのだろうから、我慢して見守ることが必要だ。問題は茂庭で、いつからあんなドタバタ走りのDFになっちゃったんだろうか。エメルソンと互角にやり合ってた頃は腰が低くて忍者走りだったんだけどなあ。あと、3点目の場面が典型だけど、試合の中でふっと「落とし穴」みたいな時間があるんだよね。

個々の選手では、なんといっても大竹。ユースから昇格の18歳。開幕戦でも能力の片鱗は見せていたし、ナビスコ磐田戦で大活躍の話は聞いていたけれど、生で見るとまた驚かされる。なんなんだろうか、あのCKやFKの正確さは。ルースプレイでも、ドリブルで突っかけながらきちんとルックアップできているのが素晴らしい。憂太のようにセンスの塊でもなければ梶山のような底知れなさもないけれど、より実戦向きの輝きを感じるのである。「金のとれる選手」だ。

しかし、チームが新しいサッカーに向けて不器用ながらも一丸となってい(るように見え)て、楽しみな若手が出てきて、試合の展開もなかなか面白くて、なんちゅーか、ホント今年は楽しくて仕方がない。それにひきかえ去年の今頃は……という話はそろそろやめにしようか(笑)。前を向いて行ける喜びよ。
 

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コメント

本当に楽しい。分けても楽しい(笑)これよ、これ。試合後の「You'll Never Walk Alone」、これが答だわ。永年?夢見ていた、「東京にもシュート性のクロスを」が今そこに。桜も見事で、フードコートのフォーも美味しかった。いい流れだ。後は芝か(笑)

スリリングな良い試合でした。

何より選手の必死さが伝わる内容が、素晴らしかったです。京都の選手も頑張っていたし、サッカーの魅力が十分に出た試合を観戦出来て、ホームでドローなのにスゴく満足してしまいました。

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