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2008年03月09日

●うれしさ半分、悔しさ半分 (FC東京×ヴィッセル神戸)


昨日の午後は、味スタで2008年J1開幕戦。FC東京 1-1 ヴィッセル神戸。クラブ創設10周年にあたって「Moving Football」なる旗印を掲げた城福東京、期待と不安が交錯する中での船出である。いかにも初戦らしいぎこちなさと可能性とが交錯する試合となったが、結果は1-1の引き分け。新鮮で意欲的な戦いぶりは嬉しかったし、未完成感たっぷりの状態で負けなかったのは幸運とも言えるし、節目の開幕戦に勝てなくて残念でもあった。


当日まで秘密にされていた開幕イベントのゲストは、ものまねタレントの山本高広さん。大型ビジョンに「10周年」の文字が映った時には「まさかまたアマラオでは」と警戒したのだけれど、肩すかしというか安物感が原点回帰的というか……(笑)。織田裕二のものまね、特に「地球に生まれて、良かったーーー!!」には大笑いしたたが、しかし尺が長くて途中からちとツラかったような。静かに待ってくれた神戸サポには感謝せねばなるまい。

 

キックオフ。やはりというか案の定というか、序盤は東京のカタさが目立った。開始直後に梶山が自陣でミスパスしていきなりヒヤリ、その後も各選手の動き出しは遅くぎこちなく、パスの出しどころに困る場面が多かった。守備の面でもCB-SB-ボランチの連携が整備されておらず、前目のプレス→速攻というわかりやすいサッカーの神戸が簡単にいい形を作る。9分、神戸の縦のつなぎからレアンドロがDF裏へ抜けるが、塩田が思いきりよく飛び出してブロック。

ようやく東京のパスワークが機能し始めるのは前半半ばになってから。平山への縦パスや石川の走力を生かすシンプルなプレーで神戸の守備網を「引っ張り」、開きはじめた隙間へ羽生・エメルソンが滑り込んでいく。初見のエメルソンは豊富な運動量に加えて視野が広く、動きながら周りを生かせるタイプのようだ。36分、左の羽生からエメへ、さらに追い越す羽生が外側を抜け、決定的なクロスをDFとGKの間に送る。が、飛び込む石川はわずかに届かず。

先制点は39分、右サイドに流れた平山がボックス前で倒されてFKの場面。エメが小さく中へ入れ、羽生が壁の裏へダイレクトのクロス。予想外のプレーに神戸DFは反応できず、フリーで走り込んだ今野が右足でゴールへ流し込む。おそらく先週の非公開練習日に特訓したサインプレーなのだろう、鮮やかに決まった。「してやったり」の得点で1-0。

得点は自信を生む。この時間帯の東京は選手間の距離が改善され、ボールを持っていない選手の動きも見違えるように活発になった。終了間際には右サイドのコンビネーションからゴールライン際を羽生がスルスルっと抜け、ゴール前で待ち受ける石川へラストパス。決定機だったが、シュートは神戸DF懸命のカバーでブロックされ、さらにCKからファーサイドでフリーになった茂庭がヘッダーを撃つもGKキャッチ。1点差のままハーフタイムへ。


後半、松橋と朴がOUTで須藤とボッティがIN。前半はどうしてもシンプルな縦攻めに偏りがちだった神戸だが、前線と中盤でそれぞれ変化をつけられる2人が入ったことで左右、あるいは斜めへの揺さぶりが生まれる。次第に下がっていく東京のDFライン。46分には石川がボックス外から強烈なミドルシュートを、49分にはカウンターで左サイドを持ち上がった平山がやはり強シュートを枠にとばすが、いずれもGK榎本がはじき出す。

53分、右サイドを突破しようとする石櫃をエメルソンが倒してFK。古賀の枠へ飛ぶシュート性のボールを塩田がはじき、東京の選手が反応しきれないところを栗原に蹴り込まれた。1-1。ここで早くも城福監督が動く。エメルソンに代えてカボレを投入し、前で絡み合うようなパスサッカーからややシンプルな攻撃へシフト。期待の新FWの登場に沸く東京ファン。しかし、4-4-2への変更も影響したか、なかなかそのカボレまでボールを運べない。

61分、須藤のヘディングパスでDF裏へ抜けたレアンドロがシュートするも、藤山が必死の寄せでブロック。直後のCKではゴール前にボールがこぼれて混戦となったが、これも藤山がクリア。63分、羽生とのパス交換でボックス右へ出たカボレがDF2人を振り切って突入し、シュート(DFブロック)。力・速さ・技術のバランスを感じさせる動きに期待が膨らむ。その直後にはクリアをボックス内で拾った石川がゴール前の平山にラストパスを入れるも、DFがブロック。

この辺から双方とも中盤が間延びし、攻め合いの様相を呈してくる。66分、快足を飛ばした石川のクロスは平山にわずかに合わず。70分、レアンドロが入れたゴールライン際からのクロスをゴール前で須藤が受け、藤山にフェイントをかけながら振り向きざまのシュート(枠外)。さらにCKに北本が合わせるが、塩田がパンチではじき出す。73分には長友のドリブルから平山とのパス交換でカボレがゴール前に迫り、倒れながらシュート(榎本キャッチ)。

76分、東京は石川OUTで大竹IN。大竹は確かな技術と思い切りの良い動きを見せる。80分、ドリブルで持ち上がる大竹がミドルシュート、これがDFラインの中に入っていたカボレの足下に入り、鋭いターンでカボレがDFを置き去りに。ここで河本がカボレを後ろから引き倒した……ように見えたのだが、笛は鳴らず。いやー、イエモッツの後遺症があるのかこの日の穴沢さんは慎重な笛だったんだけど、これはPKだったんじゃないのかなあ。

83分、CKのはね返りを右サイドで拾った大竹が巻き込むクロス、梶山が飛んで「当たればゴール」というタイミングだったがわずかに届かず。84分にはセンターサークル内に飛んだボールをカボレが巧みなトラップで拾って突進、DF4人を引き連れながら一気にボックス内へ。最後は内山のタックルに阻まれてシュートできなかったものの、ど迫力の突進にはタマげた。さらにCKに合わせた今野のヘッダーが枠内へ飛ぶが、DFがライン上でクリア。

東京は梶山に代えて近藤を投入する。しかし、これで完全に中盤がなくなる形となり、工夫のないロングボールと個人の無理仕掛けが目立つように。87分、ボックス右斜め前からの神戸のFK、須藤がバックヘッドで狙うも枠外。90分にはカウンターからレアンドロが藤山をかわしてボックスへ入るが、ニアを狙ったシュートはポストを叩き、さらに吉田孝行がミドルシュートで狙うも塩田がキャッチ。結局、同点のまま試合終了となった。
 
 

はっきりいって、東京のチーム作りは「まだまだこれから」である。守備で整備されていない部分は多く、攻撃も意図したコンビネーションで崩したものはさほど多くはなかった。だが、その割には各選手がそれなりに持ち味を出してチャンスは作れたし、必殺のサインプレーで見事な得点をものにすることもできた。だから、欲を言えばやっぱり勝ちたかった。相手にもいくつか決定機があったので、客観的に見ればこの結果は妥当かもしれないが。

攻撃に関しては、熟成してくればかなり面白くなりそうな気配だ。羽生は絶えず動き回る中で判断力を発揮してチームに活力をもたらす存在。エメルソンはスケール感はさほどないものの、チームの機能性を高めてくれそう。カボレは……第一印象としては「技術の高いツゥット」という感じ。「機動力のある重戦車」とでもいうか。ゴール量産を期待したい。あと、石川は周りと絡みながら最後の仕掛けで鋭さを見せてくれ、復活間近の印象。

心配なのは守備陣。茂庭は前へ出る姿勢はあったものの、動きは最盛期のキレと粘りからほど遠く、藤山の奮迅カバーに助けられていた。徳永は相変わらずボールを持つと凄いのだが、フォローの意識や状況判断がイマイチ。長友は勘と小回りに光るものを見せてくれたが、守備の安定感という意味ではまだまだ。そして何より、パスサッカーを指向するのならば、DFラインの中につなげる選手が1人はほしい。クアドロスのフィットが待たれるか。

この試合、ゴール裏に並ぶ取材カメラは東京側の方が多かったのだけれど、やはり「代表組」を何人か抱えているからだろうか。そういう観点からすると、羽生はともかく、あとはやや物足りない出来だったかもしれない。今野は攻撃で活躍する一方、守備でいつもほどの存在感を発揮できなかった。平山は前線の起点として健闘したものの、得点の香りがせず。梶山は……「10番」に相応しい活躍からは10光年ほどの距離があった。次は頼むぞ。

ともあれ、城福東京はスタートしたばかり。結果は最低限しか残せなかったけれど、「パスで崩すサッカー」の片鱗と魅力ある新戦力の存在は、今後に十分期待を持たせてくれるものだったように思う。「ここが良くなれば」「あそこを何とかすれば」とあれこれ考えたくなること自体、可能性の裏返しなんだろうし。今、僕個人としては、2000年や2002年と同じくらいにワクワクした気持ちなのである。「ここからどこまで伸びていくのだろう」と。

いや、なんか、早く次の試合が観たいね。楽しみだ。
 

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コメント

ちぐはぐなプレイが多々あったりしましたが、代表組が合流して時間がたってない事を考えれば、まずまずの内容でした。

個人的には、石川が好調だったのと、平山がスリムになって走れるようになったのが良かったです。

城福監督の考えるサッカーの完成度が上がれば、かなりいい感じになりそうな予感がしました。

それから、カボレは久々に点取り屋の匂いがする選手ですね。早くゴールシーンを見たいものです。

そうですね。確かに色々な条件を考え合わせれば「まずまず」だったと思います。

石川はどうも再生の途が見えてきたようですので、モニも早く好調期のフォームを取り戻してほしいものだと思います。

まあ、しばらくはじっくり眺めていきましょう。

こんにちは、久々にワクテカする試合でした、前半は組織で、後半は個人で闘った感じでした。
時間の中で交代に頼らずに選手が切り換えが出来る様に成れば上位も見えて来ると思いますね。
神戸のサイド攻撃への対処だけは不満でしたが概ね思った事が出来た様な開幕戦でした。
茂庭始めアテネ組は今年は結果が問われると思います、頑張れ。
青野さんの回復具合が気になります。

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