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2008年03月07日

●始まりは、半信半疑から。 (もう一度)

2008年Jリーグ開幕を明日に控えて。

以下は、06年の開幕戦前に味スタにて配布した「東すか15号」掲載の原稿である。

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始まりは、半信半疑から。
~2002年Jリーグ1stステージ第1節 vs鹿島アントラーズ(味の素スタジアム)~


Jクラブとなって7年目のFC東京にとって、ガーロ監督就任は4年ぶり2度目の監督交代である。「戦術は?」「選手起用は?」「監督の人柄は?」……正直なところ、監督の実力やチームとの相性なんてやってみなければわからない部分も多く、期待が半分不安も半分、というところだろうか。まあ、仕事でも学校でも恋愛でも、物事が始まる時というのは大体がそういうものである。4年前も、そうだった。

2002年の開幕戦。原博実新監督は、テレビ解説者としては「いい時間帯に入りましたね~」でお馴染みの人気者、監督としてもJ1ステージ3位の実績があった。しかし一方で浦和降格のイメージを引きずっており、ファンの反応は微妙だったように記憶している。加えて、従来の「堅守速攻」からの脱却を図って「攻撃サッカー」の旗印を掲げたことも、我々の期待と不安に拍車をかけたのだった。ホンマ大丈夫かいな、と。

いざ蓋を開けてみると、東京は我々の度肝を抜いてくれた。高いDFライン、前目からアタックする守備、パサーの宮沢を起点に速い展開を狙う攻撃。全ての選手が、好機とみるや前へ前へ上がっていく。相手が前年王者の鹿島ということなど関係ない「イケイケサッカー」。11分、由紀彦が入れたグラウンダーをDFの死角から現れた小林成が押し込み、先制。17分には小林のラストパスをオーバーラップしたCB伊藤(!)が蹴り込んで追加点。

リードを奪っても、東京は攻撃の手を緩めない。興奮したゴール裏も「守るなー東京!」コールで後押しする。44分、左サイドへの展開から小林の折り返しをケリーが押し込んで3点目。さらに52分には由紀彦のクロスにアマラオが詰めてつぶれたところ、逆サイドへ流れたボールをまたも小林が決めた。ついに4点差である。終盤鹿島の反撃をくらったものの、4-2での勝利。原東京はこの上なく劇的な形で出発し、我々の期待は一気に不安を凌駕したのだった。

ただし、今にして思えば、あの結果はやや出来過ぎであったように思う。シュート数は東京13に対し鹿島15。相手の不出来さの割には試合を支配できたわけでもなく、土肥の好セーブでしのぐ場面もあった。結局この年東京は年間9位に終わることになる。開幕戦も、実力というよりいわば「出会い頭」による快勝だったのかもしれない。

それでも、あの試合が重要な第一歩であったと思うのは、結果云々ではなく、戦いぶりの中にキラリと光る可能性を垣間見る事ができたから。特に、果敢に前へ突っかける宮沢とサイドから前線へ飛び出す小林の姿。あの明確なスタイルへの意志こそが、まさしく原東京の核心であろう。きっと、仮に結果が4-4の引き分けに終わっていたとしても、彼らの姿は強烈な印象として焼き付いたに違いない。

だから。今日の開幕戦、シャムスカ率いる大分は侮れない相手だろうし、東京はガーロ体制になってまだ2ヶ月余り、チームは熟成にはほど遠いはず。勝てるかどうかは全く予断を許さない。それでも、やっぱり、どこかで何か「キラリと光るもの」は見せてほしい、というのが僕の願いだ。勝敗は二の次とまでは言わないけれど、最初の数試合くらいは今後の可能性に目を向けてみたいのである。

だって、新しい「始まり」なんだもの。


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2年前の原稿をわざわざ再掲した理由は他でもない。08年の開幕を迎える僕の心境、すなわち「正直半信半疑だけれども、物事の始まりというのはだいたいそんなもの。今は今後の可能性にこそ目を向けていたい」という気持ちが当時とほとんど同じだからである。長きにわたって慣れ親しんだ原監督から全く新しい監督への交代、全く新しい方法論の導入。

誤解を恐れずに書くとすれば、僕の中でFC東京に関する「時計」は2年前で時を刻むのを止めているのである。もっと正確に表現するならば、2年前の開幕戦、大分相手に2-0で快勝して動き出した針は、その年の8月に一旦動きを止め、翌年の開幕に大きく逆方向へ巻き戻ってしまった、というのが今の認識なのだ。「停滞」と言ってしまうと身も蓋もないが。

だから、新監督が就任した今季のFC東京に僕が求めたいのは、どんな形であれ「前進」である。順位は二の次。笑わば笑え、ここ何年か失敗続きであろうと、我らがFC東京は今シーズンもまたチャレンジしてくれるのだ。正直なところ成功するかどうかはわからない。でも、確実に成功する路などどこにもない中で、勇気をもって挑戦に足を踏み出してくれるのであれば、そんな東京をこそ僕は好きなのだと再確認することができるだろう。

始まりはいつも半信半疑から。でも、始まりだからこそ、前向きな見方だけは忘れたくはない。時計の針よ、進め。
 

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コメント

いよいよ開幕ですね。
何度迎えてもこの高揚感はいいものです。

その一方でmurataさんが書かれている「半信半疑」感も拭えず、このエントリーには激しく同意させられました。

思えばつい数ヶ月前、原さんを筆頭に主力の多くを放出した時、たくさんの東京ファンが我を忘れて錯乱していたように思いますが、その後城福さんが就任し、今野が残り、羽生やカボレがやって来て、明瞭なコンセプトのもと目指すサッカーが語られるようになった途端、やたら明るい展望が開けたように「おいついこないだまでの悲観はなんだったんだよ」と突っ込みたくなるような雰囲気が漂っていますね。

しかしこの根拠なき楽観論こそサッカーファン気質そのものであり、かく言う私もそんなお気楽サポーターの一人であります。

不安を抱きつつもそれを上回る期待感を持って今年も新しいシーズンに臨みたいと思っています。

>2年前で時を刻むのを止めているのである。

たぶん症状(笑)は同じなのであろう。私ももうランニング・敗じゃなくてHight状態で、感覚が麻痺している。

がだ。今期はなんか匂う。勝利の匂いがする。にほひ。バモ!

オフィシャルの塩田日記を読むと、自分たち(サポーター)も「迷わないぞ!選手・監督・コーチ・スタッフ・チームを信じて付いて行くぞ!」
っていう気持ちにさせられます。またそういう姿勢が大事なんだと改めて思いました。

>「おいついこないだまでの悲観はなんだったんだよ」と突っ込みたくなるような雰囲気
確かに。年明けまでは「この世の終わり」みたいな感じだったのが、今や「的確な補強」「楽しみ」ですからね(笑)。もちろん、そういう雰囲気の方が全然好ましいわけですが。

抽象的な言い方になりますが、見守る方、応援する方もあんまり慌てちゃいかんのだと思います。といいつつ、やっぱりワクワクと不安(つーか心配)とが半々ですね、私も今は。でもそれが楽しかったり。

>今期はなんか匂う。勝利の匂いがする。にほひ。バモ!
そうです。「なんかうまそうなにほひがするぞ~」という感じで思わず涎が(笑)。とびきりのごちそうが待ちかまえているといいなあ。まずは前菜(とりあえず一勝!)から。

>sgさん
塩田君の日記、なんつーか、「意志」の感じられる文章ですね。彼個人についても、今年はまさしく大黒柱としてチームを支えてくれそうな気がします。

始まっても半信半疑!?

うーん。正直、期待しすぎたかな、という印象です。ワンタッチパスがポンポンつながるとか、連動性が随所にみられるとか、そんなのを想像してたんですが・・・。簡単にできる訳がないのはわかりますが、やろうとしているようにも見えなかったんですよね。
もらい手の動きが少なくて、出しどころに困っているシーンがあったり、中央が手薄でサイドにボールを逃がしてシーンを多くみた気がします。。。また、後半のエメアウト、カボレ投入後は完全にカボレ大作戦で。。。
確か、入り口でもらったトーチュウ号外の監督インタビューでは、システマチックな動きよりクリエイティブで意外性のある動きの方が楽しいといったコメントがあったような気がしますが、今後展開されるのは、連動性というより個人のイマジネーション重視のサッカーなんですかね。別にそれでもいいですけど。
基本的にはまだまだ期待してますけどね。

>いのうえさん
まあまあ。今はまだあまり期待しすぎるのは無茶というものです。監督が替わって始動してわずか2ヶ月、しかもその半分以上は主力を代表に抜かれていたわけですから。

私は今の段階では「こんなもん」だと思いますけどね。これからですよこれから。

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