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2007年12月24日

●最後まで変わらなかった (天皇杯準々決勝テレビ観戦)

天皇杯準々決勝@熊本は、NHK-BSの中継でテレビ観戦。FC東京 0-2 サンフレッチェ広島。監督交代が決定済で負ければ現体制が終了する東京に対し、リーグでの2部降格が決定しながら監督の続投が決まっている広島。互いにモチベーションの持ち方が興味深い一戦となったが、勝敗の行方を左右したのはやる気云々という次元ではなく、「勝つための方策」と「積み重ねられたもの」の優劣だったように思う。
 
 
序盤の落ちつかいない攻防から、試合が動いたのは13分。森崎のアーリークロスをボックス内で佐藤寿人が落とし、走り込んだ柏木が豪快なボレーシュートを決めて広島先制。その後も広島は着実なパス回しで攻撃を組み立て、ペースを握る。柏木や平繁がボールを引き出し、寿人が落とし、森崎やストやんが左右へ動かす。両翼は駒野と服部である。ホント、なんでこのチームが2部落ちするのよ、と言いたくなった(笑)。

東京の方は立ち上がりこそ気迫の前がかり守備で押し込んだものの、すぐに行き詰まり、サイドに追いつめられる姿が目立つ。1トップ川口にもボールが収まらない。29分、規郎が今野の好クロスをボレーで叩くもバー直撃。32分の川口のシュートはサイドネット。逆に37分、広島が逆襲からチャンスを作り、柏木が左へ流れる平繁を囮に使って右を駆け上がる駒野へ絶妙のラストパス、シュートが決まって0-2。広島リードでハーフタイムへ。

後半に入ると「ネジを巻き直した」東京が再び勢いのある守備で流れを取り戻しにかかる。50分には川口・栗澤に代えて平山・浅利を投入。中盤の底に浅利を入れることで梶山・今野の上がりを助ける狙いだったのだろう。これはある程度功を奏し、プレーエリアの中心は広島陣内へ。これに対して広島は5バックのように引いて守りを固める形となり、東京は徳永の攻撃参加も増えてようやくサイドから攻勢をかけられるようになった。

ところが、自陣深くで守備ブロックを形成した広島に対し、連動性をベースにした仕掛けの少ない東京はどうしても個人能力や偶然に頼ることになるのだが、この日はストヤノフや盛田ら広島DFが実に粘り強かった。次々入るクロスはいずれもはね返される。63分にルーカス投入で中の駒を増やしたものの、66分に梶山が、68分に今野が、72分に平山がそれぞれボックス内でシュートを撃ちながら、いずれもバーを越えてしまった。

75分を過ぎる頃になると東京も攻め疲れとなり、広島がDFの裏を突くカウンターでチャンスを作るように。80分、寿人のスルーパスでボックスに突入した服部がシュートするもサイドネット。終盤には圧力のかからない中盤を双方が攻め合い、ロスタイムには東京は石川が、広島は高萩と柏木がいずれも決定的なシュートを放つが決められず。結局、2点差のまま試合終了。2部落ちの決まっている広島が準決勝に駒を進めた。
 
 
そもそも東京は、どうして川口を1トップで(しかもトップ下栗澤で)起用したのだろうか。ただでさえ融通の利かないチームで、この土壇場でそれかよ!という(いや融通が利かないからこそ、か)。J'sGOALのコメントを読む限りは温情的なものもあったのかもしれないし、無論「当たればそれでいい」のだが、この日ピッチにあったのは「適材適所」でも「選手の能力を生かす戦術」でもなく、単なるミスマッチであった。あんな使い方で起用に応えろったって。

怪我人の多さで思うようにメンバーが組めない事情はわかる。でも、川口や栗澤の起用法の問題にとどまらず、それに象徴される選手の適性把握の問題であるとか、各自の能力を生かすための決まり事の欠如とか、戦い方の幅の狭さとか、4-5-1システムへの拘りがもたらしたチームの膠着状態とか、監督の持つ「引き出し」の少なさとか……この試合では、シーズンを通して痛感させられた諸々の事柄を最後にしてまたも思い知らされたような気がした。

まあ、正直なところ、こういう無理矢理なサッカーで個人能力と根性を武器に勝ち進んでしまって勘違いが続くよりはいいし、来年J1で戦える分「それをリーグでやっとけよ!」という広島よりはマシなんだと思う。いや、ホント、「早く来シーズンが来ないかな」。選手も、スタッフも、はるばる熊本まで応援に行ったファン・サポーターの人たちも、皆さんどうもお疲れ様でした。

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コメント

11人が、孤軍奮闘してしまう毎度の内容でした。

川口1トップは、ルーカス・赤嶺・平山が使えればなかった選択でしょうし、中盤5人は広島のサイド攻撃対策でしょうが、上手くいかなかったですね。

どうも徳永の攻撃参加のタイミングが、合っていないように思えます。昨日は金沢が高めでプレイしていたようで、守備に配慮したかもしれませんが、石川との高い位置での連携が少なく効果的崩しはありませんでした。

徳永の攻撃が効果的になれば、決定的なシーンも増えると思います。

城福新監督には、組織的な攻撃の構築に期待してます。

>無論「当たればそれでいい」のだが、この日ピッチにあったのは「適材適所」でも「選手の能力を生かす戦術」でもなく、単なるミスマッチであった。あんな使い方で起用に応えろったって。

こちらの一文、まさにリーグ後半の広島にこそ何度投げかけたかわかりません。
強固(頑固)に信頼するメンバーと目指すサッカー、でも勝てなくてJ2に降格すると大変だよ、
って何回も言い続けてたんですが・・・・

このメンバーでこのサッカーができるなら、
どうしてJ2に行かなきゃいかんのよ・・・
と今さらながら虚しさがこみ上げて参ります。
(それでも、降格して監督留任という前代未聞の超大技に出たサンフレッチェの来期には注目です)

リーグでは何とか残留を決めた東京が監督交代で、2部落ちの広島が監督留任。まあ、この試合の様子を見ていると、わかるような気もするんですが。

選手起用と同様、こうした監督起用も「当たればいい」んですけどね。個人的には、どちらも間違いとは言えないけど、東京は「妥当な判断」、広島のは「思い切った判断」という印象です。

>このメンバーでこのサッカーができるなら、
>どうしてJ2に行かなきゃいかんのよ・・・
いや、ホント、悔やんでも悔やみきれんでしょうなあ……。

>徳永の攻撃が効果的になれば、決定的なシーンも増えると思います。
代表のトレーニングで、そこら辺の判断力を磨いてほしいものですね。

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