●「ラグビー」なら強いぜ(笑) (FC東京×横浜Fマリノス)
土曜日の午後は、味の素スタジアムでJ1第28節。FC東京 2-1 横浜Fマリノス。豊富なタレントを抱えながら中位に沈んでいる両チームの対戦は、華麗なパス回しなどとても望めない悲惨なピッチ状態で行われた。大味なロングボールの蹴り合いと局面での個人勝負が延々と繰り返され、この手のサッカー向きで交代策も的中した東京が逆転勝ち。つーか、「半世紀前のイングランドのサッカーってこんな感じ?」。
前半立ち上がりから両チームとも意欲的にボールチェイスを仕掛けていくが、まずペースを握ったのは東京。この日の味スタは相変わらず、というよりこれまでに輪をかけて酷いピッチ状態で、ユルい足場とはがれる芝に横浜の選手は滑りまくってボールをつなげない。一方東京の方はさすがに慣れた風(と言っても程度の問題でしかないのだろうが)で、シンプルに両サイドへボールを運んでチャンスを作る。
そうして東京が好機を逃しているうち、試合はいつの間にやらほぼ互角の形勢に。横浜の攻撃の中心は山瀬兄弟。兄はナビスコ準々決勝の時と同様絶妙のボールタッチを見せ、弟も堅実な技術と運動量で見せ場を作る。35分には山瀬のキープからオーバーラップした那須が右サイドをえぐるも、坂田へのラストパスは伊野波がカット。44分、ボックス内へ走り込んだ金沢のシュートはバーの上。お互いに攻めきれないままハーフタイムへ。
後半になると横浜は田中隼を入れて那須を左に回し、攻撃ではロングボールを多用してきた。大島へのフォローも前半より速い印象。「こりゃまずいな」と思ったか思わないか、中盤でボールを拾った山瀬兄から左サイド駆け上がる山瀬弟へパスが通り、DFが寄せる直前のタイミングで撃ったドリブルシュートがゴール左上に突き刺さった。思わず言葉を失うような強烈な得点。「カエルの弟はカエル」とでもいうか(笑)。
横浜は先制点だけでは満足せず、2点目を奪いに前へ出る。東京はリチェーリを左に回して対抗し、東京の左×横浜の右という攻防が中心に。ただ、両チームともピッチに足をとられてラストパスや仕掛けのドリブルがなかなか決まらない。個々の選手は頑張っているのに、全体的にはユルめの雰囲気という不思議な状態。58分、ボックス内で弾んだボールを中澤がオーバーヘッドで狙うがやや当たりが弱く塩田セーブ。
61分、東京は消えていた赤嶺に代えて平山投入。残り30分にして早くも「放り込み」作戦である。ピッチの悪さと押され気味の中盤を考慮したのだろうが、この日はこれが当たった。66分、ルーカスからの美しいサイドチェンジを受けたリチェーリが左サイド切り返しでDFを外してクロス、ゴール前で待ちかまえていた平山が那須に競り勝って榎本の頭上を抜く。ハンマーで叩いたような、重厚なヘッダーだった。1-1。
そこからは双方とも早め早めにロングボールで前線へボールを送り、DFが必死こいてはね返し、の繰り返し。肉弾戦というか、パチンコというか(笑)。横浜は最終ラインでの競り合いこそ中澤の奮闘で優位に立つが、それ以外では平山の競り勝つ姿が目立つ。69分、ボックス外のFKを山瀬兄が直接狙い、塩田がゴールポストに激突しながら弾き出す。71分、福西OUT浅利INで「対パワープレイシフト」。77分にはリチェーリが足を痛めて石川投入。
81分、平山が入れた速いクロスが榎本の前を抜け、惜しい場面にスタンドからは悲鳴が。しかし「こりゃドローかな」と思いかけた84分、塩田のパントがボックス外で跳ねたところ、躊躇した榎本が飛び出すもクリアしきれず、規郎がキープ。すかさず横へ走り込む石川へパスが通り、無人のゴールへミドルシュートが突き刺さる。カバーのDFが戻る寸前、ややドライブのかかった弾道できれいに決めた。感激の仕草でゴール裏まで走っていく石川。2-1。
その後は慌てて横浜がパワープレイに走るも時既に遅し。「攻めるだけ」と同様、「守るだけ」も今の東京にとっては得意のシチュエーションである。今野が潰し、浅利が埋め、茂庭が絡み、藤山がかすめ取り、伊野波が食らいつき、金沢がバランスをとる。さらにこの日は、平山のコーナー付近での長いリーチを生かしたキープが加わった。あれ、横浜のサポーターはさぞ腹が立ったろうなあ(笑)。その時間稼ぎが功を奏し、結局東京が逃げ切りに成功。
今シーズンマリノスとはこれで4試合目になるが、どの試合でも「蹴り合い」になってるような。
横浜Fマリノスにしてみれば「なんじゃこの芝!こんなとこでサッカーするんか!」と言いたかったところかもしれないが、味スタの仕様なのでご勘弁いただきたい(笑)。この試合の戦いについて言えば、東京のウイングのポジションチェンジ(大熊時代以来の東京の常套手段)にしてやられたり、前半無理につなごうとしてボールを失い続けたり、終盤マルケスをFW起用して「無駄遣い」したり、どうも後手後手に回った印象。
FC東京は、清水戦もそうだったけど、なんだかんだ言って味スタのピッチを味方につけているのが笑えるというか……みんな文句タラタラなのにね。ともあれ、決して良くない内容ながら、肉弾戦・局地戦になると強さを発揮するのは相変わらずである。加えて今回は采配も当たった。放り込みへ意思統一するための平山投入、中盤省略状態に対応した浅利投入はいずれも○。決勝点のシーンもリチェーリだったらまず入らなかっただろう(笑)。
個々の選手では、まず何といっても石川が「男を上げた」のが嬉しかった。前節はまた孤軍奮闘空回りして、交代時には荒れてたみたいだし、10月6日は2年前の手術日でもあるそうだし。オジサンとしては、彼みたいな好青年には幸せになってほしいのよ、ホント。リチェーリは引き続き好調なようだが、肝心な所でボールを置き忘れる悪い癖は何とかした方が。平山は良くも悪くもヘンすぎである(笑)。あと、DF陣は皆よく頑張ったと思う。
東京はこの勝利でJ1通算100勝だそうな。1勝目はもちろん2000年のFマリノス戦。あれから7年か……。
しかし、味スタの芝は酷かった。今までは「そのうちマシになるだろ」なんて思ってたけど、同じ時期に国立や日立台、等々力の青々としたピッチを目の当たりにして、さらに絶好の観戦シーズンである秋になっても状況が改善されていないのを見て、さすがに「なんで毎回毎回こんな「球蹴り」を見せられなきゃならんのだ」と腹が立ってきた。まあ上にも書いたように「ラグビー」得意の東京としては悪いことばかりではないのかもしらんけど。
そういや試合後の飲み会で「東すか」編集長が話してたんだけど、東京の「ラグビーっぽいサッカー」はある意味原初的なフットボールの姿を体現していると言えないこともない。元々、サッカーとラグビーに分化するはるか以前、フットボールってのは高く上げたボールを大勢で奪い合いながらゴールへ運んでいく村のお祭りだったわけだから。そういう根元的な部分で東京の選手たちが強さを見せるというのは、決して悪いことではない。
とはいえ、現代に至るまで150年の進化の歴史も忘れちゃいかんのだよな(笑)。スマートさと泥臭さ、あるいは「サッカー」と「ラグビー」をどれだけ求めるかは状況にもよるし人によって好みもある(東京ファンは「ラグビー」好きが多いのだろう)けれども、僕としては少なくともベースは「サッカー」であってほしい。だって、観に行くのはラグビーじゃなくてサッカーなんだもの。だから、来年は本当に頑張って下さいませ味スタ(とFC東京)の皆さん。
[注]
上で気軽に「サッカー」「ラグビー」なんて二項対立的に書いてしまっているけれど、これはあくまでステレオタイプなイメージの話であって、現実はそんな簡明なものではない。つーか、現代のトップクラスのラグビーはもっとずっとスマートですよ、アマルさん(笑)。
コメント
そりゃもちろんいくらなんでもアマルだって、ステレオタイプなイメージを引き出して「例」として使っただけでしょう(笑)
実際、自分でも「誇張した言い方」って言ってますし♪
Posted by: ジェフサポ | 2007年10月08日 20:48
こんばんは、ナオゴール嬉しかったです。
敢えて不満が有るとすれば
(1)大分戻って来たが手を使うモニの守備
(2)主審
(3)ルーの露骨な時間稼ぎ無しw
(4)梶山は居ないよ金田さんw
目標が無い何て言わせない、皆で取ろうよ天皇杯!
(J2上位は露骨な回避だな~)
Posted by: 古美根 | 2007年10月08日 21:07
石川選手のゴールを、MXTVで見直しましたが、実に難しいシュートだったんだ、と思いました。後ろから中澤選手が猛然と迫る中、ノリオからのパスを地面に叩きつけて浮かし、柔らかいタッチでゴールに放り込む。力まかせに蹴るのとは違い、予めイメージがなければ出来ないプレイです。石川選手の素晴らしさが出た、美しいシュートでした。
次節以降も、サイドの選手の先発争いは、厳しいでしょうが、頑張ってもらいたいものです。
Posted by: コタツねこ | 2007年10月08日 21:34
>ジェフサポ
あ、別にアマルさんを揶揄しようという意図はなかったのですが、そういうニュアンスになってたらすいません。おっしゃる通り、あくまで「例」ですからね。
しかし、ああいうたとえがサラッと出てくるあたり、やはり「あの方」の息子さんなのだなと、密かに感心しました。
>(J2上位は露骨な回避だな~)
東京は逆に、リーグ戦で選手を休ませつつ、天皇杯にベストメンバーを送り込んだりして(笑)。
>石川選手の素晴らしさが出た、美しいシュートでした。
いや、まったくです。足下で大きくはねたボールを、ダイレクトで叩いてドライブをかけて、ナイスコントロールでした。彼はトラップも上手いし、前に国立で反転ボレーを決めたみたいにシュート力もあるし、そこら辺を生かすプレーをもっともっと見せてほしいところです。ちょっと「かけっこ」が多くなりがちですからね。
Posted by: murata | 2007年10月08日 22:05
>ラグビー
背番号通りはモニのフッカー、今ちゃんのフランカー、ノリオのフルバックかな。
あと、見てみたいのは平山のロック、土肥ちゃんのエイト、ユウタのスクラムハーフ、福西のセンター、徳永&石川のウイングてなところでいかが。
ここでも10番役がいないな。(苦笑)
プロップ役は小峯しか思いつかないw
Posted by: ぶらっくばす | 2007年10月08日 23:03