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2007年09月24日

●亀の甲より年の功 (FC東京×清水エスパルス)


昨日の午後は、味の素スタジアムでJ1第26節。FC東京 2-0 清水エスパルス。3連勝中の東京が6連勝中の清水をホームに迎えた、いわば好調同士の対決。序盤主導権を握った清水が決定機を活かせず、そのミスにつけ込んだ東京が集中攻撃で2点のリードを奪って逃げ切り勝ち。ホームとアウェイ、あるいはベテラン・中堅と若手。両チームの精神的な「ゆとり」の差が出たゲームであったのではないかと思う。


前半途中までは清水が主導権を握り、FWのポストプレーから藤本・兵藤・フェルナンジーニョらとのコンビで攻めたてる。悪ピッチに苦労して途中からロングボールも増えたものの、軽快なパスワークと組織的な動きが印象に残った。対する東京はサイドチェンジから石川・徳永の突破力を生かそうとするもやや単発的。ただし、今野が持ち上がった時に攻撃の迫力が出るのはいつも通り。30分までの「見た目の採点」ならば清水の完勝であった。

しかし、清水はシュートが決まらない。9分、フェルナンジーニョとのパス交換から藤本がシュートするがポスト右を抜ける。19分、右サイドのギャップへ飛び出したフェルナンジーニョへパスが通るも、シュートは当たりが悪く塩田セーブ。29分、藤本のパスでDFライン裏へ飛び出した矢島のシュートもポストわずか左へ外れた。いずれも決定的であった。東京の方は今野→福西とつないで赤嶺へスルーパスが通った(が、オフサイド)くらいか。

東京に先制点が入ったのは31分。今野からのロングフィードを石川が上手く落として右サイドを全速力で駆け上がり、クロス。中にはアタッカーが1枚しかいない場面だったが、CB高木が戻りながらのクリアを失敗してボールはゴール左隅へ。FWのシュートであれば「ナイスシュート」と言いたくなるような、つまりは高木にとっては痛恨としか言いようがないであろうオウンゴール。気の毒だが、東京にとってはラッキーであった。

予期しない形での失点に清水は浮き足立ち、やや雑なプレーが目立つように。東京はここを逃さずたたみかけた。直後の32分、DFの高くふかしたクリアミスに福西が走り込み、頭で浮かしながらボックス内左へ突入、つま先で「チョン」とクロスを入れる。これをDFと併走してニアに入っていた赤嶺が左足で豪快に蹴りこんで追加点。機を逃さない福西の老獪さと、赤嶺のストライカーらしい動きが見事なゴールに結実した瞬間。

これで余裕の出た東京はスタンドの盛り上がりにも押され、福西のオシャレなヒールパス(笑)も交えて攻勢に出る。36分にはルーカスが左サイドから切れ込んでミドルシュート、GK西部が横っ跳びで弾き出した。37分には清水が攻め込んでボックス内のフェルナンジーニョにパスが通り、切り返しからのシュートがゴールを襲うがこれも塩田がきっちりセーブ。結局、東京は望外の2点リードを得て試合を折り返すこととなった。


ハーフタイム明け、交代出場の戸田がいきなり金沢を削ったのには笑った。遠慮ないな(笑)。

後半立ち上がりは東京が攻める。ルーカスのフォアチェックで作った絶好機のシュート(枠外)、そして戸田の存在に触発されたのか、金沢の珍しいドリブル突破。だが、時間とともに東京の攻撃の勢いは落ちていき、清水がボールを支配するように。理由は明らかで、東京が引き気味になったから。ハーフタイムには監督から「まず守備」というもっともな指示があったらしいのだが、それを(おそらく指示以上に)体現したのは福西であったように思う。

多分、福西は点差を考えて無理しないつもりだったのだろう。必要以上には動かず、しかし射程内に入った獲物は確実に狩る、という姿勢。そしてボールを奪ったら得意の回転ジャンプでファウルゲットするか、フリーの味方に確実に預けて時間を稼ぐ……やっぱり相手にしたら嫌な選手だわな。こういうオン/オフの判断ができる選手は貴重だ。中盤で嫌がらせの守備(笑)を受け、また東京DFの健闘もあり、清水はボール支配の割にはチャンスが作れない。

65分前後には清水のCKが連続し、フェルナンジーニョのクロスがGKとDFの間を抜ける場面も。東京ベンチはさすがに引きっぱなしの状況に我慢できなくなったか、栗澤に代えて規郎を投入。意図はわからなくもないが、これで中盤で「水を運ぶ選手」がいなくなってしまった。東京が引く状況は変わらない。ただし、清水もボックス近辺までボールを運ぶものの、スペースを見つけられず待ちかまえる東京DFの餌食に。74分、福西OUT伊野波IN。

試合はそのまま膠着状態に陥ってしまう。ゴール裏の「攻撃、攻撃、ハラトーキョー」コールとは裏腹に「攻撃サッカー」とはほど遠いものの、勝点3のためには確率が高い方法である。清水は何とか得点を奪おうとパスをつなぎフェルナンジーニョがトリッキーなパスを見せるも、ボックス内にウイングまで帰る東京の厚い守備に阻まれる。84分、右CKのクロスに西澤が合わせるもボールはポストわずか右を抜けた。結局2-0のまま試合終了。



清水は、若いチームにありがちな負け方であった。前半30分までに見せた攻撃はなかなかの華麗さ(ピッチの悪さは気の毒だったね)ながら、そこで得点を奪えず、ミスで先に失点したのが運の尽き。まだ1点差なのだから本当ならそこでチームを落ち着かせるべきなのに、パニックに陥ってしまった。そして、勢いづくと止まらないチームカラーの上に老獪な選手のいる東京に一気にたたみかけられて……ま、いい勉強になるんじゃないのかな。

一方の東京は、相変わらず浮き沈みの激しい戦いぶり。ただ、清水の決定力不足に助けられたのは間違いないにせよ、リードしてからの試合運びでは清水よりも達者であったように思う。福西が加入して、金沢もいて、気がつけばルーカスや石川や茂庭や今野も中堅と言われる年齢になっている。若いエスパルス相手にしてやったり、というか。こういう試合を見ると、近年の苦労も少しは糧になっているのかな、と思えたりして。

前節(横浜FC戦)とちょうど裏返しの言い方をするならば……内容はまだまだ。なので、これからもっともっと向上させていかなければならない。でも、こうした内容でも勝点3を確保できるようになるのは、来年以降リーグ制覇を狙っていく上でとても大事なことではある。

個人的には、この試合のMVPには福西を挙げたい。無茶苦茶異論が出そうだが(笑)、要所を締めたということで。もちろん塩田の堅実なセーブも素晴らしかったと思う。あとは、DFラインも総じて出来が良かったのではないだろうか。藤山と金沢は好調を継続しているし、茂庭はかなりトップフォームに近づいている様子。徳永もここ数試合目の色が変わっているように見える。攻撃陣では……石川が光ってくれたのは嬉しい限りである。

そういえば、この試合のゲストということでアマラオが来ていたようだ。個人的にはいつまでも彼を引っ張り出すのはあまり良い気分がしないのだけれど(レジェンドならレジェンドで、もう少し扱いを考えたらどうだろう。客寄せパンダじゃないんだから)、結果的にストライカーとして彼に続く可能性を持った選手が得点を挙げたのは何かの縁かもしれない、と思わないでもない。赤嶺君にはこのまま成長して、立派な東京のエースになってほしい。


しかし、それにしても、4連敗の後で4連勝……。東京らしいっつーか何つーか、まさに恒例の帳尻合わせモード全開ですな……と、恒例のイヤミだけは書いておこう(笑)。
 

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コメント

清水戦でも、赤嶺選手は素晴らしかったですね。ゴールはもちろん、前線でのパスを引き出す動きや、ルーカスと協力しての相手守備陣へのプレス。チームに、リズムと活力を与えてくれてます。

また、赤嶺選手がトップの位置にいることで、ルーカスが下がり目のポジションで自由に動けて、負担も減っているように思われます。なかなか良いツートップでは、ないでしょうか。

前半戦でボコボコにされたガンバ戦や川崎戦が、ホームゲームで残ってます。是非とも赤嶺選手には好調を維持してもらって、お返しをしていただきたいものです。

赤嶺、いいですよね。前に引っ張られてチーム全体が活性化しますから。03年の阿部吉朗みたいな(泣)。

ルーカスとの2トップは、昨年も秋まではしばしば試みられて、チームに流動性をもたらすなど割とうまく行っていた印象だったんですが……どうする、平山(ガンバレ!)。

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