●さすがに、レベルが違いました(笑) (横浜FC×FC東京)
土曜日の夜は、国立競技場でJ1第25節。横浜FC 0-2 FC東京。2週間ぶりのリーグ戦再開。中断後のグダグダぶりがもはや恒例となっている昨今の東京だが、この日も案の定というか、低調な試合内容。ただし、幸いなことに相手があまりにも弱く(と言っては失礼か?でも本当のことだと思う)、結果的には2-0の完勝となった。平山のスーペルなゴールがなかったらブーイングものだったろうけども。
立ち上がりから横浜FCは後方からショートパスを丁寧につないで攻撃を組み立てようとする……意図はわかるのだが、監督交代からわずか3試合目、まだ全然できあがっていない印象。個々の選手の技術の低さとパスコースを作る動きの拙さばかりが目につく。レベルの低いポゼッション志向のチームは東京にとって「お得意さん」である。しばらくするとFW・MFのチェイシングが当たり始め、ショートカウンター中心にチャンスを作る。
9分、左サイドに下がってボールを受けた赤嶺から右方向ルーカス→石川→追い越す徳永とつなぎ、徳永は深くえぐってからクロス。これをゴール前で受けた赤嶺が落とすが、福西のシュートは枠外へ。いい形の決定機。だが、その後徳永のオーバーラップを交えた東京の攻勢が続くもミスが多く、ルーカスや赤嶺のシュートも決まらず。対する横浜もじれったくなる「パス回しモドキ」ばかりで、全体的にはダレた雰囲気で試合は進む。
先制点は34分。横浜陣深くでもたつくパス回しを福西がカットし、瞬時にスタートを切った赤嶺の前方へパス。DFライン裏に抜けた赤嶺はゴールライン際からマイナスのクロスを上げ、走り込む福西が倒れながらボレーシュートを突き刺した。赤嶺らしい機敏な反応と、福西らしい相手の隙を逃さない動きによるナイスな得点。前半残りは東京のペースダウンに乗じた横浜が攻めるが、藤山お得意のパスカットと金沢のスライディングタックルが決まった。
おそらくハーフタイムに監督の檄が飛んだのだろう、後半頭は東京の前からの守備が復活。49分、ルーカスのパスで右サイドを抜けた徳永が猛然とボックス内まで持ち上がって至近距離のシュートを撃つが、GK菅野がビッグセーブ。51分には判断の遅いDFに石川がつっかけ、こぼれ球がどフリーの赤嶺の足下に落ちるも、一対一を菅野が止める。さらに53分、浮き球に反応した福西がDFライン裏に抜けるが、前へ出る菅野がまたまたストップ。
決定機を立て続けに逃した東京からは勢いが失われ、精度の低いロングボール中心の単調な攻撃に堕していった。逆に横浜のぎこちないながら前がかりになる姿勢が功を奏し始め、東京は自陣に押し込まれてしまう。55分にはカズが左サイドから中へ切れ込んでシュート、ポストわずか右に外れた。横浜側に強力なアタッカーがいないためにDFは比較的余裕を持って対処できたものの、最下位チーム相手にしてはしまらない展開。
横浜は山口・滝澤に代えて玉乃・三浦淳を投入。東京も石川・福西OUTでリチェーリ・伊野波INと対抗する。おそらく伊野波は横浜攻撃陣のパス回しの寸断を期待されたと思われるが、福西に比べれば局面の強さを欠くために流れを止めきれず、横浜の攻勢が継続。79分、三浦淳のFKはゴール右上に外れ。81分にはルーカスがボックス外から個人技で狙うも枠外。その直後にはMFカタタウがミドルシュートを撃つも塩田がっちりとキャッチ。
ピリッとしない攻防に決着が着いたのはロスタイム。リチェーリがどフリーのシュートを外してズッコケた直後、左サイドの混戦の中で平山がドリブルを開始。周りの横浜DFが次々突っかけるも、平山はボールを巧みに浮かして突進を続ける。ボックス手前でDF2人を跳ねとばし、最後は飛び出した菅野までかわして無人のゴールへ流し込んだ。ゆったりしたフォームだけにかえって迫力が際だつ、40m超のドリブルゴール。スタンド狂乱の中で終了の笛が鳴った。
実質的に「降格」と「残留」がそれぞれ決まったような試合だった。
横浜FCの選手の能力は、J1レベルにはとても達していないように見える。ならばと組織力でカバーするにしても、残り11試合の段階で監督を替えて違うコンセプトで作り直すのでは到底間に合うはずがない。残念ながら降格は必至だろう。というより、選手はともかくフロント、もしかしたら監督さえも、既に無駄な抵抗は諦めて来季以降の再チャレンジを見据えてチーム作りをしているのかもしれない。それならそれで、わからない話ではない。
一方東京にしてみれば、「結果は上出来、内容は駄目」という試合だった。4連敗の後に3連勝、神戸を抜いて勝点32の11位に浮上。さすがにこれでもう、残留争いに巻き込まれる心配もないだろう。それはそれで結構なことには違いない。ただし、原監督も試合後のコメントで認めているように、決して内容はよくなかった。梶山不在の影響もあるのかもしれないが、勢い任せと攻撃の淡泊さは相変わらず、というか前節よりひどくなった。
個々の選手では、まず守備においては藤山と金沢の健闘が目立った。決して身体能力に優れているとは言えない2人だが、受け身の時間帯でもいいポジショニングをとり続けて突破を許さなかったのはさすが。攻撃陣では、徳永の馬力を生かした上がりと赤嶺の精力的な動き、そして福西の戦術眼が光った。福西についてはいろいろ言う人もいるみたいだけど、使い方さえ間違わなければ決定的な仕事のできる選手なのは間違いない。
そして平山。この日もわずか数分間の出場ではあったが、豪快きわまるゴールでファンを大いに喜ばせてくれた。得点への意欲と体幹の強さとボール扱いの巧さがピタッとはまったドリブル。彼は、最初のワールドユースで大熊さんがパワープレー要員として使ってからどうも「電柱」イメージが定着しているんだけど、本来はゴールゲッターとしての特長を持った選手である。原さんも反町さんもどうも勘違いしているような気がするんだよな……。
まあ、とにかく、東京も個々の選手はそれなりに頑張っていると思うし、今後も大いにアピールしてほしいところである。チームとしてはほとんど目標を失っている現状だが、日本代表入りのかかっている選手もいれば、来季の契約が気になる選手もいるだろう。監督は今季課せられたミッションの関係上結果で判断されるしかないわけだが、選手やチームには「来年がある」のだ。残り9試合、そういう目で見守っていきたいと思う。
コメント
ナビスコ杯の(全員で守って、カウンター作戦)を徹底していた横浜FCの方が怖かったですね。
(確かにGK菅野のスーパーセーブがありましたが、)後半早めに1点取れば超楽勝ペースになったと思いました。が、モタモタした相手に決めきれずに接戦モードでお付き合いしてしまうところが、東京が成績も内容も伸び悩み中である証拠だと思います。
ただ、平山のゴールは良かった。FWが単独で長距離を突進してゴールしたのは、04年のホーム・名古屋戦のルーカス以来ではないでしょうか。FWに迫力があると、観戦していて楽しいですね。
Posted by: コタツねこ | 2007年09月17日 22:53
>本来はゴールゲッターとしての特長を持った選手である。原さんも反町さんもどうも勘違いしているような気がするんだよな……。
あくまで個人的な私見ですけど
Numberの平山の記事を読んで以来私もそんな気がしているんですよね。
戦術云々やいろいろなポジションの選手を育てた実績はあるものの、”FW”もっと言うのならば”原博実型の本格派ポストプレーヤー方ストライカー”とでも言うかそういう選手を育てるのが下手なような。
確かにのせるのは上手いとは思うんですけどね
Posted by: よっし~ | 2007年09月18日 23:43
>04年のホーム・名古屋戦のルーカス以来
ああ、ありましたね!あれは凄かった。今回の平山のゴールも凄かったけど、展開的にはオマケと言えないこともないので、今度は試合を決める一撃をよろしく、みたいな。
>そういう選手を育てるのが下手なような。
まあ、自分のプレーってどうしても感覚的に把握しがちなものでしょうから、かえって難しいのかもしれないですけどね。タイプが違っても何でも、とにかくストライカーはチームに必要ですからねえ。吉朗……(泣)。
Posted by: murata | 2007年09月20日 22:32