●今季のベストゲーム? (FC東京×ヴィッセル神戸)
昨晩は、国立霞ヶ丘競技場でJ1第24節。FC東京 3-1 ヴィッセル神戸。前節5得点の圧勝でようやく連敗を抜け出した東京。今回は同じく「中下位」を彷徨う相手との直接対決となったが、今季一番にも思えるアタッキング・フットボールで足下のおぼつかないヴィッセル(笑)を圧倒。結果、気持ちのいい勝利で勝点3をゲットした。これでどうにかこうにか残留争いからは抜け出した形になったか。
キックオフ直後、神戸の早いパス回しから左サイドを走る大久保がクロス、茂庭がクリアしそこねてボールがファーに流れたところにど朴が飛び込むも、幸いヘディングシュートはバーの上を越えてくれた。ヒヤリとする立ち上がり。しかし、その後は東京がペースをつかむ。6分、中央で福西がボールを奪い、そのまま持ち上がってスルーパス、左サイドから切れ込んだ栗澤が抜けたが、シュートはGK榎本が横っ跳びで弾き出した。
東京は前からの労を惜しまないチェイスでボールホルダーに圧力をかけていく。対する神戸はコンパクトな陣形でショートパスをつなぎ……たかったのだろうが、パス回しはぎこちなくコンビプレーもズレがちで、なかなか中盤から前へボールを運べない。17分、カウンターから右サイドを抜けたレアンドロのシュートもポスト左に外れ。神戸DFはハイボールの競り合いも不安定で、東京は今野・栗澤の機動力を生かして容易にボールを確保することができた。
19分、赤嶺のポストプレーから金沢がクロス、フリーになっていた梶山に合いかけるが、ヘディングはバーの上へ。25分には右サイドからのクロスがファーに流れ、拾った栗澤がGKとDFの間めがけて速いクロスを入れるも、味方も反応できずに逸機。押せ押せの東京。ところが27分、右コーナー付近で神戸がFKを獲得。ボッティのクロスにDF河本が頭で合わせてゴールイン、神戸先制。押していただけに嫌な感じの失点ではあった。
神戸は得点をカンフル剤に一時生気を取り戻した感があったが、しかし相変わらず迂闊にボールを失うことが多く、すぐにまた東京ペースへ。36分、左に流れた栗澤がクロス、ファーに走り込む石川がダイレクトボレーを狙うも当たりそこね。40分には右サイドからのクロスを赤嶺が落とし、こぼれ球を拾った栗澤がゴール前へグラウンダーのクロス。走り込む福西がDFともつれながらもゲットした……かに見えたがこれはオフサイド。
ようやく同点ゴールが生まれたのは終了直前。ボッティの後方からのファウルでボックス前のFK。梶山のシュートは壁に当たったものの、そこから連続でCKとなり、最後はDFに競り勝った今野が頭でシュート!GK反応できずにゴールイン!いや、さすが今野、押しながらも追いつけず嫌な雰囲気になりかけていただけに、貴重なゴールだった。決定力ならこの男。まさに「いい時間帯」の得点で、アゲアゲムードでハーフタイムへ。
後半も頭から東京の攻勢。50分には負傷の福西OUT、ルーカスIN。51分、クロスのこぼれ球をボックス内で拾った今野がシュートするがサイドネット。54分には右からのCKでマークが外れたルーカスがダイビングヘッドを撃つも枠を外れてしまう。決定力は相変わらずである(笑)。一方の神戸は前半に比べ早めに縦に入れることが多くなり、散発的ながらチャンスも作る。64分、左から切れ込んだレアンドロの強烈なミドルシュートもポスト右に外れ。
どちらが先に得点するか、ここがまさに勝負所の時間帯。やってくれたのはあの男だった。
68分、人数をかけた右サイド攻撃でDFも寄ったところ、石川からボックス外の赤嶺へ斜めのグラウンダー。後ろから走り込むルーカスを見た赤嶺は振り向きざまのラストパス、ルーカスがDFの間を抜けてGKと一対一になり、落ち着いて撃ち抜いた。いや、神戸DFのマークも緩かったとはいえ、実に鮮やかな得点だった。赤嶺もルーカスもお見事である。2000年、同じ国立の名古屋戦でのツゥット→由紀彦のラストパスを思い出した。
こうなると東京は強い。神戸の中途半端なコンパクト指向も好都合で、右へ左へ速くボールを動かし、DFを走らせてはまたスペースを突く。少ないタッチからの大きな展開で徳永が右サイドを疾走した場面は美しかった。この日は采配も堅実で、74分に石川OUTで浅利IN。81分には浮き球で右サイドを抜けた赤嶺が低いクロス、シュートブロックに入った坪内が転倒してしまい、ルーカスがこぼれ球を拾ってゴールネットに突き刺した。これで勝負あり。
東京は最後まで攻撃の手を緩めない。82分、殊勲の赤嶺に代わって平山投入。その直後にFKから波状攻撃となり、金沢のフィードを今野が頭で落として平山が飛び込んだが、榎本の飛び出しで間一髪ノーゴール。88分にはボックスすぐ外でFKを得てルーカスがシュートするが、案の定というか(笑)宇宙開発。梶山に蹴らせればいいのに……。ロスタイムにも平山が強烈な反転シュートを放つも、榎本がキャッチ。結局、3-1で試合終了となった。
まずヴィッセル神戸について。コンパクト指向で、DF~中盤のタッチの少ないつなぎから加速してアタッカーを走らせるサッカーか。しかし完成度が低いのか選手の危機察知能力が低いのか、無理にワンタッチでつなごうとしてミスしたりプレスのかかっている選手にパスを渡したり、東京にとってはおいしい相手だった。DFの能力も低く、「これでよく勝点29も獲ったな」というのが正直な感想なのだが、そんなチームが東京より上の順位なのがショッキング(笑)。
どれほど成長しているか楽しみにしていた近藤祐介クンは、この試合見た限りではあまり変わっていなかったような。軽いプレーが多く、味方への要求水準がやたら高い一方で味方の要求にはあまり応えられていないのは相変わらずか。
FC東京は、今季一番までかはわからないけど、稀に見る好内容のゲームだったように思う。前からよくボールを追いかけ、攻めてはよくボールを動かし、人もよく動き、3得点を奪うことができた。まあ、神戸の守備が柔軟性と対応力に欠けていたのも確かだが、「寄せておいて、その裏を突く」ダイナミックな攻撃は見応えがあった。この試合に限らず、ああいった形をより意図的・組織的に作れるようになることがチームのステップアップの鍵だろう。
個々の選手では、まず何といっても今野の活躍を讃えたい。本来のボランチに戻ったことであらゆる場所に顔が出せるようになり、チーム全体の攻守の厚みが確実に増した。また、チームに流動性をもたらしたという意味では栗澤もいい仕事をしてくれたように思う。これは僕の持論だけれども、彼は典型的な「水を運ぶ選手」である。彼がチームに入ることで梶山・今野・馬場といった「決定的な仕事のできる選手」がより輝くようになるのだ。
攻撃陣では、赤嶺の活躍が光った。よくボールを引き出し、左右に確実にさばいてチームの攻撃を活性化。得点こそなかったものの、決勝点のアシストも素晴らしかった。ほら~だからもっと早く使ってれば~(笑)。ルーカスの2得点は、単純に「1トップ」の負担が軽減されたからだろう。石川がイマイチ機能しきれてないこと、徳永や金沢の特性、今の東京の強みが中盤にあること、を考えると、ウイングを置かない布陣も面白いかもしれない。
ということで、今年もまた恒例の帳尻合わせが始まったようである。リーグ戦は「ピークの高さ」を競う戦いではないんだけどね。次はまた代表戦の関係で2週間空くわけだが、中断明け以降は来季につながる戦い(と、その陰で来季の躍進を見据えた準備)を強く望む。
そういえば、実は昨年末にFC東京の村林専務と「東すか」の編集長及び兄貴の間で「来シーズン9月に入った段階で東京が首位にいたら「東すか」の増刊号を出す」という賭けがなされていて、ムラバーは自信満々の様子だったのだが……結果は12位か。全然ダメじゃないすか(笑)。いかに自己について正確な認識ができてないかということだな、東京というチームが。