●まだ3試合ある!! ('07ラグビーW杯 日本×豪州)
昨晩は、ラグビーW杯フランス大会日本代表初戦をJSPORTSで観戦。「いよいよやってきた」というべきか、「とうとうやってきてしまった」というべきか……結果は日本 3-91 オーストラリア。前半こそゲームを支配されながらも粘って失点を抑えたジャパンだったが、後半に入って堤防が完全決壊。13トライを献上し、攻めてもノートライの惨状。大会に臨む根本戦略さえも揺さぶられかねない、言い訳の効かない大敗となってしまった。
立ち上がりから豪州が日本陣に攻め込み、ジャパンはすんでのところでしのぐ展開。太陽を背負う形になった豪州がキックとそこからの縦突進を多用したのに対し、日本はタックルの入りが悪いものの集中力を保って食い下がり、豪州のハンドリングエラーを誘う。SO小野のキックも安定していた。タックルミスによるラインブレイクとモール押し込みで3トライを奪われたものの、3-23でハーフタイムへ。「これなら十分許容範囲」という感じだったが……。
後半開始直後、オープン攻撃からFLエルソンがラインブレイク、あっさりと中央へトライ。これである種の精神的なバランスが崩れてしまったのか、前がかりになった日本は、しかし豪州の厳しい防御にターンオーバーを食らいまくる。ただでさえ雑なパス回しやタックルは心身の疲労から精度が落ち、さらに新入りFBの不用意なミスも加わった。一生懸命やっている選手たちには申し訳ないが、見ているのもツラい40分であったように思う。
一方、太陽を正面にする方向に回ったオーストラリアは、前半と異なり徹底したパスラグビーを展開。馬力と技巧を兼ね備えたFWがボールをむしり取り、それをSOラーカムが散らし、モートロックが、ギタウが、トゥキリが、FBレイサムが日本の薄い防御ラインを破りまくる。SHグレーガンも縦横無尽に駆け回って大活躍。さらには若いバーンズやミッチェルの快走まで加わって、まさに「景気づけ」のごとくやりたい放題攻めまくりであった。
結局、日本は後半だけで10トライ68失点(!)。終わってみれば88点差、日本にとってW杯史上2番目の大敗(もちろん1番目は思い出したくもない「145」)である。前半終了時には笑顔も見られた日本人ファンのグループが、試合終了時には全く生気を失った表情をしているのが印象に残った。
正直なところ、勝てるとは思っていなかった。2チーム作って2試合目に重点を置く戦略でもあり、個人的にはできるだけ失点を抑えて(50点以内?)トライを奪ってくれれば御の字だと思っていた。だが、それにしても91失点は……W杯は、勝敗を競うと同時に「その国のラグビーの魅力」をプレゼンし合う場でもある。あまりにも見せ場の少ない惨敗は、日本の1ファンとして本当に悔しい。選手やスタッフは僕なんぞよりはるかに悔しい思いだろう。
もちろん彼我のラグビーの「基礎体力」に差があるのは言うまでもない。フィジカルの差、防御ラインを作るスピードの差、プレッシャーのかかる場面でのプレー精度の差、密集技術の差、「前の見える」選手の有無。例えば、パス攻撃で細かく方向を変えられた時の日本のDFラインの脆さなどは、国内試合における攻撃の創意工夫のなさの裏返しなのかもしれない。根本的には、トップリーグをはじめ日本ラグビー全体のレベルを上げないとダメなのは確かだ。
だが、繰り返しになるが、それにしても91失点は……やられすぎのように思える。カーワンの「低くて速い日本人の特性を生かす」方針には基本的に賛成だけれど、今のところそれは実現されていない。「低くて速い」ラグビーをやるのにこのメンバーでいいのか、という春からの心配も的中してしまったようだ。速い捌きのできないSH、タックルの高いCTB、空回り気味の第三列。「捨て試合」ならば、もっと防御的なメンバー構成で臨むという手もあった。
まあ、いきなり悲観的な気分になってしまったのだが、よく考えたらまだ1戦目なんだよな(笑)。十分取り返しは効くだろうし、そもそもカーワンの2チーム方針は「フィジーとカナダに勝つ」事を主眼としているのだろうから、次勝ちさえすればこの惨敗も無駄ではない、ということになるのだろう(方針の是非はさておき)。ヘッドコーチの腕の見せ所でもある。期待したい。つーか、これで4戦全敗とかなったら、確実にW杯のアジア枠はなくなってしまうことだろう。
最後に、数少ないポジティヴな要素を。大畑の離脱で急遽メンバーとなったWTB北川の健闘には胸が熱くなった。サイズには恵まれない選手だが、強靱な足腰を生かしたランと勇気あるタックルで幾度か見せ場を作り、特に前半、ハイタックルをくらいながらDF2~3人を引きずってボールを生かしたシーンには目を見張った。「ジャパンらしい選手」として、今大会はもちろん、その後の活躍も期待できる選手だと思う。日本のドミニシになってくれ!!
コメント
>次勝ちさえすればこの惨敗も無駄ではない
ロジカルなギャンブラーJKとしては何と言われようとも、2戦目に集中するために1戦目を「捨て試合」にしたわけですが、負傷交代以外入れ替えなしなど、ここまで徹底するとはかなりすごい。もちろん、これで結果が出なかったらかなり痛いわけだが。
>パス攻撃で細かく方向を変えられた時の日本のDFラインの脆さ
去年11月のオーストラリア首相XV戦でも、春のPNCオーストラリアA戦でも、これで抜かれまくっています。ワラビーズは多様な攻め方ができるでしょうが、効率良く攻めきるためには、これが日本の弱点と見切っていたのでしょう。
Posted by: 潤 | 2007年09月10日 12:44
>ロジカルなギャンブラーJK
>負傷交代以外入れ替えなしなど、ここまで徹底するとはかなりすごい。
そう、選手の入れ替えなしには驚きました。何人か入れて試合に慣らしておいた方がいいのでは?とか考えちゃいましたが……。
こういう思い切ったことを平然とできる(ように見える)あたりが大物の大物たる所以なんでしょうね。ジーコとかにも感じたことですが。
Posted by: murata | 2007年09月11日 00:01