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2007年07月15日

●完勝の陰に一抹の不安 ('07アジアカップ 日本×UAE)

金曜の晩、NHK-BSで観たアジアカップグループB第2戦。日本 3-1 UAE。カタールとの初戦は悔しい引き分けに終わった日本代表。今度こその第2戦は、エース高原の個人技炸裂で前半3得点を奪う快勝。ただし、グループBのトップに立つ文句のつけようのない結果だったものの、一抹の不安がよぎる内容でもあった。


前半立ち上がりはUAEが積極的なチェイスとタッチの少ないつなぎでDFをかわす攻撃を見せ、「お、手強いな」というのが第1印象。日本は全体的には相変わらず「焦らずじっくり様子を見ながら」という感じで、駒野が復帰した分効果的な上がりが増えたかな、という感じ。18分、FWマタルのミドルシュートを能活が横っ跳びでセーブ。ここら辺までは日本がボールを支配しつつも一進一退というのが正しかったかもしれない。

試合が動いたのは22分。左CKからのクイックリスタート、ゴールラインギリギリまで持ち上がった俊輔が反転クロス、ファーに飛び込んだ高原が頭で突き刺してゲット。よっしゃ!続いて27分、加地のクロスをゴール正面の高原が胸で落としてシュート!ゴール左隅に突き刺さった。立ちはだかるDFもGKも微動だにできないスーパーゴール。これはすごかった!!思わず、画面の前で飛び上がって正座しちゃったよ(笑)。

その後の日本は前線へ進出した俊輔や憲剛、遠藤らが多彩なパス交換でUAEを翻弄。41分には素早いパス回しから遠藤がボックス内でどフリーになり、飛び込む高原へラストパスを送ったところでGKに倒されてPK獲得。俊輔が確実に決めて3-0。この段階で勝負あった、というところか。さらに、後半に入って53分にはCBサイードがレイト気味の両足タックルを鈴木啓太にかまして一発退場。「ああ、終わったな」。

これで日本としてはパスを回しつつ時間を使い、隙を見てカウンターを決めればいいはずだった。俊輔が鋭い切り返しからシュートを放つ。ところが、高原が痛んだ60分すぎから様子がおかしくなった。中途半端に攻め上がってはフィニッシュへ持ち込めず、カウンターに対して中盤のチェックも後追い気味に。66分、憲剛を振り切ったFWモハメドがボックス手前まで持ち上がり、フリーでラストパスを受けたMFアルカスが能活の脇を抜いてゲット。3-1。

ここでオシムが動いて高原→羽生の交代。羽生は得意のボールを引き出す動きでUAEのDFをかく乱にかかるが、足の止まった周りがついてこれず。71分には水野の投入でDFを押し込むことに成功するが、やはりボックス付近での「ひと押し」が足りない。日本が攻めて良い形を作るも決められず、UAEの逆襲をDFラインでしのぐ、の繰り返し。最後は徹底的なポゼッションでUAEの戦意を奪って逃げ切ったものの、どうもピリッとしない終わり方になってしまった。


繰り返しになるが、3-1という結果自体は十分に満足できるものだ。これでベトナム戦は引き分けでも決勝Tに進出は確定だし、UAE×カタール戦の結果次第では首位通過も可能だ。個人的には、カタール戦の後で悲観論を振りまいていたマスコミさんたちに対しても「ざまーみろ」という感じであったりする。しかし、後半の戦いぶり、特に選手交代をするたびにチームの機能性が損なわれてしまうのには一抹の不安が残る。

どうも、カタール戦の羽生と橋本の投入にせよ、今回の羽生と水野の投入にせよ、交代のメッセージがきちんと選手たちに届いていないのではないか。試合の展開に応じた戦い方についての意思統一ができていないのではないか。だからこそ、「監督の意を汲み取れる」選手の重用、すなわち千葉の選手たちへの偏重ともとれるような選手起用をせざるを得ないのではないかな、と。一旦は「脱千葉」を果たしたかに見えたのにね。またちょっと戻っているような。

まあ、始まって1年の「オシムジャパン」だから、今はようやく「基礎」ができた段階で、状況への対応みたいな「応用」はまだこれから、ということなんだろうが。元々回りくどい物言いをする(「気づかせる」「考えさせる」やり方の)監督でもあるし、特に今回は爺さん暑さでいささかまいってるようにも見えるし、監督と選手たちとのコミュニケーションに齟齬や摩擦が生じたりしないといいけどね。外野の余計な心配ではあるけれども。コーチ軍団、ガンバレ。


しかし、高原は凄かった。まさに日本のエース。ドイツに行ってからしばらくは得点感覚に冴えが見られず、正直ストライカーとしてはイマイチだったのだが、今はそれ以外の仕事もしつつ点もきちんと取っているのだから素晴らしい。ジュビロで得点王を獲った頃のオーラみたいなものが蘇ってきた。能力的には既にカズの域に達しているとさえ思える。もっとも、宇都宮さんも書いているように、強力なストライカーの存在ってのは諸刃の剣だったりするわけだけれども、この大会が「高原の大会」になるのならばそれはそれで楽しいかもしれない。

あと、「二人の中村」あるいは「キノコ・ブラザーズ」も、相変わらず見ていて楽しい楽しい。ちょっと風貌的に似ていて2人ともテクニシャン。でもプレイスタイルは微妙に違う。俊輔はカーブをかけたキックと横方向のフェイントに特徴があって、憲剛は直線的なキラーパスと鋭いスペースへの持ち出しが得意。「技の1号、力の2号」か(笑)。ウチではこの2人を勝手に兄弟認定(笑)して、テレビ画面を見ながら「兄ちゃん!」「弟よ……」とかアテレコして楽しんでます。バカですね、はい。いや、でもホント、この2人がピッチ上で共存できているのは僕らにとってものすごく幸福なことだと思う。


次の相手は地元ベトナム。当然暑さと湿度には慣れているだろうし、モチベーションは最高に高かろう。侮れない相手だ。今度こそ巻に期待。
 

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