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2007年07月31日

●思わず絶句の日々 ('07ツール・ド・フランス後半戦)

今年のツール・ド・フランス後半戦は、慌ただしかった前半戦が無風状態に思えるほどの荒れ模様に。優勝候補が次々とドーピング絡みの不祥事によりレースを去っていく展開は、ある意味オペラシオン・プエルト&ランディス陽性で無茶苦茶だった昨年にも劣らない、まさに「2年連続で最悪のツール」。いや、極東のファンはいったいこれらをどう受け止めればいいのやら。


序盤の落車&負傷で同情を集めていたヴィノクロフは第13S個人TTでダントツの優勝、翌日の大ブレーキで優勝争いからは脱落したものの、第15Sで再びステージを制するなど大いに気を吐いた。……と、ファンを喜ばせたところで、なんとヴィノのドーピング陽性反応によりアスタナはチームごとツール撤退。昨年の開幕前日に「Basso OUT」の文字を見た瞬間と同様、奈落の底に突き落とされた気分になった。

で、その後はラスムッセンとコンタドールの丁々発止の戦いで盛り上がったものの、今度は第16Sの優勝によりマイヨ・ジョーヌを確かなものにしたかに思えたラスムッセンがドーピング・コントロールにおける所在地の虚偽申告でツールから排除……。おまけに(と言っては失礼だが)モレーニのドーピング陽性でコフィディスもチームごと撤退。なんか、もう、底の見えない恐ろしさとでも言おうか。「ホントに最後までやるの?」という。

印象的だったのは、それまで慎重な物言いだったJSPORTS解説の栗村さんが第17Sで堰を切ったように感情のこもった発言を連発していたこと。「何か大きな力の存在を感じる」「今にコーヒーも禁止薬物に指定されて、5年後くらいにみんなが告白するんじゃないですか。「すいませんでした、コーヒーを飲んでしまいました」って」等々。いつも前向きな栗村さんのこのブラックぶりには驚き、「おいおい」と思いつつも、共感を覚える部分もあった。

もちろんルール違反はルール違反。そしてそれがドーピング絡みともなれば、競技のイメージや選手の身体を守るために厳格な規制や処罰がなされるのは仕方のないこと。ただ、一方で、栗村さんのように「選手の目線」でものを見られる人からすれば、理不尽な現実があるのもまた確かなのだろう。ドーピングの定義、違反についての発表のタイミングや方法、そして一般人の常識を超越したあまりにも厳しい規制。

自転車選手は風邪薬も飲めず、ステロイドの入った皮膚薬も使用できない。飲食物にも制約が多々あるし、所在場所さえ常に明らかにしておかなければならない決まりだ。ただでさえ、体調を管理し食べ物に気を遣いつつ激しいトレーニングに励まなければならないのに。彼らはある意味日常的に絶えず肉体改造をしている人々なのだ。「薬」の部分だけやたらとクローズアップされ、犯罪者扱いされる事のストレスは大きいだろう。

なんつーか、僕もドーピング問題についてさほど勉強しているわけではないけど(一度ちゃんと調べないといかんね)、ここ数年の動きやら今の様々な仕組みやらを見るにつけ、なんかもう限界じゃないかと思っちゃうんだよね。きりがないというか。昨年のツールの時にボーネンがぼやいていたように競技としての強度を落とすなり、規制の線引きを変えるなりしないと、人間のやるスポーツとしては無理がありすぎるのかもしれない。


そんなドロドロ模様のツールだったけれども、もちろん明るい話題もあった。若手の活躍だ。

第一に挙げられるのは、総合優勝&新人賞を獲得したコンタドール。ディスカバリーチャンネル24歳の新鋭選手。苦労人の彼は2年前のこの時期には脳の病気で入院中、昨年はオペラシオン・プエルトのあおりを受けて出場できず。今回は初出場ながら山岳Sでの勇気あるアタックの結果として見事栄冠をつかみとった。ゴールでのガッツポーズも初々しく、フレッシュな勝者の姿に救われたファンも多いんじゃないかな。

ポイント賞はトム・ボーネン。一昨年序盤の大活躍を見て一発でファンになった者としては実に嬉しい。彼は能力的にはダントツなのに、怪我があったりピークを合わせ損なったり、グランツールに関してはどうも歯がゆい戦いが続いていて……。今回はペタッキが不出場、マキュワンとフレイレが序盤でいなくなったのでラッキーと言えばラッキーだったけど、これで一皮むけてほしい。残り数kmでもう少しスムーズに流れに乗れるようになれば。

そして山岳賞は、あっと驚くソレル。バルロワールドはプロツールのチームでもないのにハンターもポイント賞2位の大活躍で、きっとスポンサー的には笑いが止まらないんだろうな。

それにしても本当に若い3賞である。コンタドールとソレルは24歳、ボーネンもまだ26歳。不祥事で退場していった選手たちの多くが30オーバーのベテランだったことを考えれば、象徴的な結果とも言えるのかもしれない。きっと主催者やUCIとしても、世代交代が進むことで新しいツールをアピールできれば、と思っていることだろう。表彰台の後ろでシャンゼリゼの観客席に空席が目立ったのは寂しい限りだが……。


来年こそは、ホントにスッキリとした気持ちで終えられればいいね。


[追記]
その後、なんとコンタドールもあやしくなってきたというニュースが。もー、知らんわ!!
 

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コメント

友人の旦那さんがイタリアのIOCドーピング検査機関で、新しい薬品投与やヘモグロビンの研究やってます。年々高度になってきて大変なんだと言っていました。ちょうど、イタリアの有名な自転車選手(私まるでくわしくないんですが)で、何度かド−ピング問題で名前があがってた人が自殺した後だったんだけど、大幅に薬品改定があったらしく、世界中の機関にむけて指示書?を出したって話してました。やはり持久系競技に多いらしく、ってことは利き目あるんだなあ。我が家の老猫の後ろ足が立たなくなって、弱いステロイドを一ヶ月ほど投与したら、前より元気になってしまいましたから(笑)

自転車競技はチームに必ずドーピング専門ドクター(投与する専門)がいて、以前IOCの研究員が絡んでたなんてこともあったらしく、なかなか厄介みたいです。本当にどこまで行っちゃうんでしょう。
>自転車選手は風邪薬も飲めず、ステロイドの入った皮膚薬も使用できない。
については、代用品の研究も進んでて、ほぼ問題がないそうです。間違えて飲んじゃった、塗っちゃったっていうのは、たいてい嘘だと、彼は言ってました。
www.jtu.or.jp/kyougikisoku/dope2.html

どうもです。

>イタリアの有名な自転車選手で、何度かド−ピング問題で名前があがってた人が自殺
マルコ・パンターニですね。ジロ・デ・イタリアとツール・ド・フランスで優勝するほどの選手だったのに、ドーピング疑惑で追いつめられて、最後はコカインのオーバードーズだったそうです。

>ってことは利き目あるんだなあ。
いやあ、そうでしょう。ステロイド系だと、口内炎の薬とか利き目すごいし。「アミノバイタル」とかも、寝る前に飲むと翌朝の体調は一目瞭然の違い。私個人は、ドーピングどいえば主に「ウコンの力」ですが(笑)。あれも無茶苦茶ききますな。

まあ、ドーピングってのはやるのと防止するのと表裏一体ですから、医学が進歩すれば不正手段も進歩して、その防止策を開発したらまた医学が進歩して……うーん。

>代用品の研究も進んでて、ほぼ問題がないそうです。
なるほど。それはそうでしょうね。そうじゃないと、ホントにドーピングテストが引っかかるのを恐れて適切な医療が受けられない、なんて事態も発生しちゃいますもんね。

ともかく、自転車に限らず、アスリートなんてのはみんなホントにキツいトレーニングをこなして頑張ってるのに、ドーピングがスキャンダル化することで「人体実験」的イメージで世間にとらえられちゃったりして、(不正をしてない選手は)本当にかわいそう。

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