« ヴィノクロフの涙に、涙 ('07ツール・ド・フランス前半戦) | メイン | 「良薬口に苦し」としなければ ('07アジアカップ準決勝 日本×サウジアラビア) »

2007年07月23日

●冷や汗ものの勝利 ('07アジアカップ準々決勝 日本×オーストラリア)

昨晩はNHK-BSでアジアカップ準々決勝。日本 1-1(PK4-3) オーストラリア。暑さへの慣れとパス攻撃の巧緻性で日本が優位に試合を進めるもリードできず、逆に後半半ばに先制点を許す苦しい展開。直後に高原の同点ゴールが飛び出したものの、その後もボールを支配しながら得点を奪えない時間が続き、勝負はPK戦までもつれ込んだ。最後は守護神・川口の連続PKストップで何とか日本が準決勝進出。


オーストラリアが守りを固めて縦のボールをビドゥカに当ててきたのは予想通り。「中澤が前を向かせずにMFが挟み込む」日本の対策はよく機能した。ただ、切り札的存在のアロイージが先発してきたため、「予想より1枚多い」アタッカーの圧力に日本の守備網が破れかける場面が何度か。特に駒野は腰高の守備が目立つ。コンセプト的に仕方ないとはいえ、中澤以外に強靱なDFがいないとこういう相手にはやっぱりツライ。

日本は相変わらずの「焦らない」パス攻撃で対抗。この日は前の試合に比べて中村「2号」憲剛の動きがキレており、「1号」俊輔とのパス交換からいい形を作り出す。遠藤も機能しており、全体的には中盤を制していた。ただ、高原へのマークが厳しいことに加え両サイドがいまいち効果的なプレイができていないこともあり、「あと一本つながれば」の場面で行き詰まることが多い。突き刺す槍が足りない、という印象だった。

 
前半の終わり頃から、やはり暑さがこたえるのかオーストラリアの足が止まる。37分、ダブル中村のパス交換から遠藤のボレーシュートに持ち込むが、GKシュワルツァーがワンハンドでセーブ。このGKは「動きすぎず、止まりすぎない」いい選手。後半に入っても日本の優勢が続くがオーストラリアはよく耐え、61分にはビドゥカOUTキューウェルINの交代。タイプの違う選手が入ったことで日本のDFがマークをつかみきれない場面が増えていく。

69分、サイドアタッカーの圧力にさらされた駒野がCKに逃げ、キューウェルのキックがファーに抜けたところをアロイージが押し込んで豪州先制。ニアにいたDFたちは人に集中しすぎてボールに触れず、アロイージに付いていた巻はボールを見過ぎてマークがおろそかになったように見えた。とられた時間帯といい、守りを固める相手を崩せず交代選手にやられた展開といい、典型的な負けパターン。おまけにやられたのが巻……。

ここで日本を救ったのはエース高原。失点の3分後、左サイドから俊輔がクロス、ファーで競った巻が中へ落とし、こぼれ球を拾った高原が鋭いフェイントでDFをかわしてシュート、冷静に左ポスト際へ決めた。UAE戦の2ゴールも凄かったが、今度のゴールはそれ以上の凄みがあり、値千金でもあった。日本はついに真のストライカーを得たか、とさえ思う。思わず叫んじゃったよ。「よっしゃ!!」。あと、巻がきちんと仕事したのもよかったな。

そして76分、高原とハイボールを競ったMFグレッラがひじ撃ちで一発退場。日本は数的優位に。よし、これは行ける、90分で決めてしまえ!!……しかし、日本の攻撃は一向にスピードアップしない。おそらく、時間が経てば経つほど相手が不利になるという予測、「事故」による失点を恐れる気持ちが「確実に決めたい」という慎重な姿勢につながったのだろう。まして、10人とはいえ強くてでかい相手が引きこもっているのである。


延長戦になってもじりじりとした攻防が続く。日本は延長前半途中で佐藤寿人、後半に矢野を投入。しかし、横パスの多い日本はその2人までなかなかボールを運べない。終了間際、ゴール前の混戦で俊輔がシュートするチャンスはまたもシュワツァーがストップ。結局、1-1のまま延長戦終了となった。オーストラリアの思うつぼの展開であり、しかもGKのファインセーブの後。PK戦に入るのにこれ以上嫌な雰囲気があるだろうか、という感じ。

ところが。PK戦1人目、キューウェルのキックを能活が横っ跳びでストップ。2人目のニールのキックはゴール左隅へ飛んだが、これも能活が電光石火のジャンプで弾き出した。おー!!オーストラリアの監督の愕然とした表情と、能活の澄んだ目が印象的。その後は全て決められたものの、日本は思いっきり宇宙開発した高原を除いて成功し、最後は中澤が豪快にゴール天井へ突き刺してようやく日本の勝ち抜けが決まった。


冷や汗ものの勝利だった。120分間、主導権を握っていたのは間違いなく日本。ただ、その割にチャンスの数はさほど多くなかったし、得点はたったの1点だった。特にオーストラリアに退場者が出てからの44分間は、いくら相手が引いていたとはいえ、チャレンジする回数がやや少なすぎたのではないか。慎重になりすぎて相手に息をつく暇を与えていたような。日本代表が「遠藤化」しているのではないかと、ちょっと心配(笑)。

サッカーは不確実性の高いスポーツであり、判定勝ちのない競技である。だからこそ、強い意志を持って「試合を決める」姿勢に欠ける(ように見える)戦いぶりには感心しない。もっとも、状況に関わらず「早く!前へ!!」ではイカンのだが。

すっきりしない戦いぶりの中、光ったのはベテラン勢の活躍。PK2本を止めた能活を筆頭に、俊輔、中澤、あと高原か。高原はいわゆる「黄金世代」だけれども、その他の3人はそれ以前の世代だ。やはり修羅場をくぐった経験というのはデカいということなのだろう。実に頼もしい。逆に言えば、世代交代という観点からするともう少し若手も頑張れ、ということになる。憲剛や阿部や今野もこの大会を経て彼らに追いついてほしい。

PK戦について。高原の宇宙開発については「PK戦はその試合で活躍した選手が外す」という法則通りなんだけど、そもそもこの法則はなぜそうなるのか、実に興味深い。あと、能活の守護神ぶりはもちろんスーパーだったのだが、個人的には1人目の俊輔の成功が大きかったと思う。あれで2人目以降が平常心で蹴ることができた。遠藤得意のおちょくりチョロキック(笑)と、駒野のドカン!ね。俊輔は前回大会の失敗を取り戻したよな。


まあ、何はともあれ、生き残った事は何よりである。次はサウジアラビアか?
 

トラックバックURL

このエントリーのトラックバックURL:
http://umanen.org/mt/mt-tb.cgi/2268

コメントする

(初めてのコメントの時は、コメントが表示されるためにこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまでコメントは表示されませんのでしばらくお待ちください)