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2007年06月05日

●勝因と、『敗因と』 (前編)


日曜の夜は、国立競技場で女子サッカー北京五輪最終予選を観戦。日本代表 6-1 韓国代表。事前には接戦も予想されていた「グループA最大のライバル」との対戦は、意外や意外、一方的な展開に。怒涛の攻撃で6点を奪ったなでしこジャパンが予選突破をほぼ確実にする勝点3を獲得。スコア的にも内容的にも文句のつけようがない、胸のすくような快勝だった。


日本のプレーはとにかく「素晴らしい」の一言。宮本を起点にパスをつないで攻撃を組み立て、スペースが空いたとみるやサイドチェンジやオーバーラップを繰り出す。そしてボックス付近では明確な意図をもったクロスと荒川・澤らのドリブル勝負。バリエーションの豊富さとテンポの良さ、さらに決定的プレーの精度に圧倒され、韓国はほとんど何もできなかった。観客としても最高に面白いサッカー。今まで観た「なでしこ」の中でも一番かもしれない。

特筆すべきは、日本のポゼッションの高さだろう。日本は中盤にさほどテクニックに長けた選手がいるわけでもなく、フィジカルもまあ大したことはない。しかし、ボールを持たない選手の精力的な動き出しと動き直し、練り上げられたコンビネーションによりスイスイとパスをつないでボールを支配してしまった。それも、ただつなぐだけでなく、相手を寄せたり穴を突くためのパス回し(きちんとフィニッシュまで至る!)だからストレスはほぼ皆無。

まあ、この日は韓国の消極性にも助けられたのかもしれないが、それにしても日本選手の組織力と意思統一ぶりは見事なもので、「こうすれば日本は勝てる」の典型だったように思う。このチームは監督や選手の入れ替えによって多少の方向修正があったとしても「(フィジカルの弱さを補う)パスサッカー」という基本コンセプトは変えず、五輪やW杯という目標に挑むたびに一丸となってそれまでの積み重ねを成果として出し切る。そこが好ましいのだ。


いや、ホント、心の洗われるような90分だった。澤さんは相変わらずカッチョ良かったし、僕の好きな磯崎さんや大谷さんも元気に頑張っていたし。
 
 
 
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ところで先日、「そろそろ1年もたつかねえ」ということで、買ったまま部屋に積みっぱなしになっていた『敗因と』(光文社)を読んでみた。金子達仁・戸塚啓・木崎伸也の3氏による共著。'06サッカードイツW杯における日本代表内部の確執とチームの崩壊を描き、そこから「あの惨敗」の原因にたどり着こうと試みたノンフィクションである。

一読した感想は……非常に面白かった。あっという間に読み終えてしまった。関係者への精力的なインタビューと具体的エピソードの積み重ねにより、「昨年の初夏、日本代表の内部で何が起こっていたのか」が鮮やかに描き出されている。金子さんの悪い癖の妙な断定調も少なく(皆無ではないが)、その代わり選手の発言や振る舞いなどかなり際どいところまで踏み込んでいて、「よくここまで」と言いたくなる労作であった。
 
 
この本の中で明らかにされた事実自体は意外なものではない。大会当時の日本代表はまとまりとはほど遠く、その中心には孤立する中田英寿がいた、と。原因は中田のパーソナリティにもあったし、守備戦術を巡る攻撃陣と守備陣の意見の食い違い、そしてもちろん選手の自主性に過度な期待を抱いて彼らに道標を示さなかったジーコの手腕にもあった、と。「やはり」というか、ブラジル戦で僕たちが目にした光景そのままだったわけだ。

問題になった豪州戦戦後半の小野投入にしてもそう。ジーコは、とにかくポゼッションを高めてしのぎたかった。だが、DFラインはズルズル下がり続け、FWは淡泊に前に出てボールを失い続ける。結局小野は広大な中盤のスペースに消えてしまい、日本は最後の10分で3失点。そもそもチームに意思統一がなければポゼッションも何もできるはずがなく、そしてあの場面は日本代表が抱えていた確執や矛盾が典型的に現れた場面だったのだ。


後編に続く)
 

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コメント

なでしこ素晴らしかったですね。我が家は前半まで家にいたんですが、いてもたってもいられなくなって、タクシー飛ばして国立入りしたんです。だから生は後半から。ちょうどうまねんさんの位置からセンターラインの線対称のとこらへんで見てました。周りは選手の後輩たちがいっぱいいて、ムンムンしてました(笑)

『敗因と』、私は今264ページめです。もう読まなくてもいいかな〜なんて思ってたり。8章のブラジル戦のところで泣きそうになり、何度も本を閉じてしまいました。あの時の周りの情景や音が襲ってきて、たまりません。8章で力尽きました(笑)
とても面白かったです。

私は右の写真のちょうど真ん中のとこらへんで見てました。周りはおじさんやお兄さんたちがいっぱいいて、ムンムンしてました(笑)

いやあ、良かったですよね、なでしこ。「こんなに胸ときめかせるサッカーがあるとは!」ってな感じですかね。

唯一の不満は愛しの未央タソの出番が少なかったことかな(笑)。

私の回りにはおそらく現役プレーヤーであろう女の子(小学校高学年?)がたくさんいて、そのけたたましさは相当なものだったんですけど、そんなことも大して気にならない上機嫌の夜でした。

周りから見たら、俺1人やたらムンムンしてたかもしれません(笑)。

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