●プレイバック「多摩川クラシコ」
明日はアウェイの川崎フロンターレ戦。今年から東京と川崎の両チームはこの対戦を「多摩川クラシコ」と呼んでイベント化するんだそうな。なるほど、ヴェルディが自殺的監督選びによりJ2下位に沈み、浦和や横浜Mは並ぶものなきビッグクラブを目指し、大宮や横浜Cはちょっとアレな状況(人のことは言えないが(笑))の今、「首都圏の好敵手」というコンセプトでイベント化するに相応しいのはこの組合せなのかもしれない。
実際、99年のJ2時代から、いや実際にはもっと前のJFL時代から、この両チームは印象的な戦いを繰り広げてきた。大まかに言ってJ2時代は川崎の優勢、J1に上がってからは東京の優勢、ただし最近はまた川崎が強くなってきた、ということになるだろうか。以下、僕が観戦したいくつかの試合について、簡単に振り返ってみよう。
【その壱 1999年9月5日 J2第24節 FC東京 0-0川崎フロンターレ】
残暑厳しい西が丘の夕べ。集まった観客、実に4844人。あの小さなスタンドに一体どうやって詰め込んだのか(……と思っていたら、札幌戦は6千人超だったとか。うそだ(笑))。首位川崎と2位東京の直接対決は、互いに一歩も譲らない好ゲームに。
序盤の川崎の攻勢を、東京DFが体を張った守備でギリギリしのぎきる。後半半ば、川崎の攻撃の要ツゥットが微妙な判定で退場に。試合の流れは一気に傾き、今度は東京の一方的な攻勢が続くも、川崎は残る10人が奮起して耐えきった。実に120分間。スコアレスだが、両チームとも最後まで頑張りきる、全く目を離せないエモーショナルな熱戦。夕暮れの延長戦、足をつらせてなお走るティンガ(現ドルトムント)の姿が忘れられない。
【その弐 2000年5月6日 J1第11節 FC東京 2-1 川崎フロンターレ】
GWの駒沢競技場。昇格後快進撃を続ける東京と、大補強にも関わらず予想外の苦戦で15位に沈み、監督を解任したばかりの川崎がJ1で初対戦。立ち上がりからアマラオ不在の東京が攻め、今井新監督(元東京ガス監督)率いる川崎が守る場面が続く。わずか1年足らずでの力関係逆転を象徴するような展開だった。
前半こそ逸機し続けた東京だが、後半に入り55分に先制。カウンターで持ち上がる神野先生から小林成光へラストパス。小林がドリブルでGKもかわして決めた。「そのままゴールの向こうまで走ってっちゃうんじゃないの(笑)」と思うような小林のドリブル小僧ぶりが懐かしい。73分には内藤のクロスを元川崎のツゥットがドン!と頭で決めて追加点。1点は返されたものの、2-1で完勝。前年は結局川崎に1勝もできなかっただけに、これは気持ちよかった!
【その参 2006年11月11日 J1第30節 FC東京 5-4 川崎フロンターレ】
シーズン通して不振に苦しみ、初の監督解任も経験した東京に対し、再昇格後順調に力をつけて優勝争いにも加わっていた川崎。後半半ばまでは、当時の状況を反映するかのように川崎優勢で試合が進む。川崎の外国人選手を生かしたソリッドな攻撃に加え、東京DFのミスも重なって49分までに4失点。
ところが、51分に馬場の機転の利いたFKから戸田がゲットすると、53分にはジュニーニョが2度目の警告で退場。これで流れが変わって東京の大攻勢に。83分にGKのミスから平山が、終了間際には規郎のクロスを宮沢がそれぞれ頭で決め、ロスタイムには今野がミドルシュートを突き刺してついに逆転。微妙な判定で川崎が9人になる幸運もあったが、「勢いに乗ると手がつけられない」東京の特質がいかんなく発揮されたゲームだった。
この3試合の他にも、奥原の美しいボレーシュートと悔しい逆転負けが記憶に残る99年の等々力や、アマラオがハットトリックした大爆笑の00年国立、栗澤のラストパスと信男さんのゴールが鮮やかだった昨年の等々力、等々。東京×川崎は試合内容的に「ハズレが少ない」カードのように思える。今後もこの調子で好試合を続ければ、そのうち本当に「川崎(東京)との試合だけはちょっと違うよね」という雰囲気になったりするかも。
正直なところ、たかだかJ2以降数年の歴史に「クラシコ」はちょっと大仰だよなあ、とか、んなことより東京は先にやるべきことがあるだろう、とか思わないでもないんだけど、まあお互いのライバル関係を前向きに見つめていく、というコンセプト自体は悪いことではないと思う。なにしろ川崎フロンターレは東京より一足先にアジアの舞台へ飛び出した偉大なるライバル、なのだ(昔さんざん「川崎○ンコターレ」とか書いたのは忘れた(笑))。
さて、今年はどういう試合になるのだろう。