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2007年05月10日

●夜明けまえ ('07ナビスコ杯第5節)


昨晩は、国立競技場でナビスコカップ第5節。FC東京 0-1 横浜FC。リーグで下位に低迷している両チームの、決勝ラウンド生き残りをかけた2連戦その1。ホームの東京が序盤から優位に試合を進めるも、一発のチャンスを決められ先制を許し、終盤のパワープレイも実らず完封負け。相手との力量差を見せつけられた川崎戦とは異なり、「勝てるはずなのに」自ら崩れてしまった敗戦であった。


前半は「いくらなんでも勝てるだろうこれは」という流れ。横浜FCの攻撃には相変わらず迫力とキレがなく、中途半端につなごうとしては行き詰まってロングボール、が多い。たまに中盤で寄せが甘くなった東京MFの裏をとっていい形になりかけるものの、ほとんど決定機はなし。守備の方も、引いて中を固めるばかりでしなやかさに欠け、ボールホルダーへのプレッシャーもかなり弱かった。鹿島戦にもまして「こんな相手に負けてはいかん」という感じ。

東京は攻勢に出る。川口・規郎と石川・徳永を揃えた布陣によりサイドを完全に制圧。プレッシャーの弱い中パスも比較的よく回り、左右に揺さぶりながら梶山や伊野波がアタッカーを走らせて決定機を作る。が、決められない。4分、規郎の突破からボックス内に飛び出した川口がGKと一対一になるも菅野がセーブ。6分、ゴール前フリーでパスを受けた石川はスリップして逸機。32分には混戦からGKのいないゴールをルーカスがインサイドキックで狙うもハズレ。

そして34分。今野がカズにボールを奪われて横浜のカウンターとなり、ボックス寸前で藤山が倒してFK。日曜日に似た位置から大橋にやられたばかりだったので嫌な予感がしたのだが……案の定、内田の蹴ったグラウンダーは跳んだ壁の下を抜け、土肥ちゃんの横っ跳びも届かずゴールイン。なんともあっけない失点。「またか」とバックスタンドは静まり返った。横浜は当然守りに入る態勢に。それでも、彼我の戦力差を考えれば「まだ55分ある」はずだった。


後半。東京はさらなる攻勢に出るべく、縦の関係にあった平山とルーカスを横並びにし、梶山も高い位置へ。ところがこれが逆効果。前の選手と守備陣が分断され、アタッカーは横浜の引いて守る守備網の中へ呑み込まれた状態に。そこで前と後ろをつなぐのが伊野波1人ではいかにも弱い。立ち上がりこそ石川や平山のシュートがあったものの、徐々にチャンスも作れなくなっていく。逆に横浜は55分、セットプレー崩れから内田がフリーでシュートを放つも枠外。

59分、足を痛めた石川に代えて栗澤。ここで栗澤をチョイスしたのはおそらく前と後ろの橋渡し役を期待したのだろう。意図としてはわかりやすい。だが、入った栗澤はサイドに張るのか中でさばくのか動き回るのか迷いが見え、ほとんど機能しなかった。他の選手(特に梶山)も位置取りや動きを変えるでもなく、前や後ろでパスの来るのを待つのみ。うーむ。65分には川口→ワンチョペで3トップ化。68分、右に流れてパスを受けた平山がシュートするも菅野セーブ。

後半も半ばを過ぎると、東京は早くもパワープレイ態勢に。規郎や徳永がガンガン蹴りこんでいく。しかし、平山にしろルーカスにしろワンチョペにしろ、元々は「頭が得意」な選手ではない。1人1人は弱くとも密集して守りを固める横浜の守備を前になかなかロングボールをいい所へ落とせず、逆にカウンターを食らいかけながら時間が経過していく。規郎や徳永が無理にでもドリブルを仕掛けていく方がよほど相手にとってイヤなように見えたのだが……。

78分にはCKの場面で平山→赤嶺の交代。が、「よりによってCKの時かよ!」という気持ちもあるのか、平山はなかなか外に出て行かない。スタンドからは野次やブーイングが飛ぶ。それにキレた(?)平山はわざわざCKのキッカーの前を横切り、ベンチには目もくれずにシャツを脱いでそのままロッカールームへ。不協和音がスタンドにも聞こえてきたシーンだった。88分、ワンチョペが狙ったボレーシュートも枠を外れ、結局そのまま0-1で試合終了。



完膚なきまでに叩き潰のめされた川崎戦とはまた違う負け方だった。前回はあまりの力量差・点差の大きさに開き直ることができ、川崎のペースダウンもあったとはいえ後半にそれなりの攻勢をとることができた。今回は、川崎よりははるかに弱い、選手個々の力量で言えば東京よりもずっと劣るチームが相手。なのに、わずか1点先行を許した時点でチーム全体が自分を見失い、チグハグな采配もあって自壊してしまった印象である。これはこれで症状は深刻だ。

まあ、どうせ負けるんなら(もちろん勝つに越したことはないんだが)、前半みたいに「パスワークで相手を揺さぶって、空いたサイドやスペースを使う」方向性(の萌芽くらい?)で行ってほしいものだ。「サイドへ縦ポン」に徹してしぶとく勝ち点を積み重ねたとしても、それじゃ昨年の後半戦と同じで次(を考えるべきだよな、もう)につながらない。サイド速攻が「本来の東京」なのかどうかは知らんけど、少なくともパス回し自体を停滞とみなして「早く前へ!」ばかりじゃ(もちろん状況によってはそれでもいいんだけれども)本当に進歩がないではないかと思う。

試合後にゾッとした光景2つ。まず、選手たちとともにバックスタンドへ挨拶に来た原さんの髪の毛に、遠目でもわかるくらいたくさんの白髪が混じっていたこと。開幕の頃と比べると……悩んじゃってるんだねえ。それと、終了の笛が鳴った後、シーンと静まり返ってブーイングも拍手もしないU席の人々の姿。あれは何というか、応援の熱がどうとか言う以前に、非常に薄気味の悪い状況であった。千葉戦に勝ったとして、スカッと明るくなるのかね、あれが。


選手たち(特に石川!!)は、どこか不十分で拙いかもしれないけど、みんな一生懸命にやっていると僕は思う。いや、監督やスタッフも多分同じように頑張っているのだろう。だけどそんな中で、「あえて」手をつけなければならないとすればいつどこに、という問題なんだ。きっと。

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コメント

石川がんばってますね。バッシングする人もいますけど、「何とかしよう!」とする姿勢を一番感じます。千葉戦はケガの具合で出られるかどうか分からないけど、もし出場したら誕生日ゴールを期待したいです。


東京はまだ終わらんよ。これからこれから。

>「何とかしよう!」とする姿勢を一番感じます。
そうですね。それが空回りしてしまうところが悲しいんですけど(笑)、でも私はとことん彼を応援していきしたい。少なくとも、「気持ちは一番」ですから。

横浜FC戦、チームとして平山に何をさせたかったのか、全くわからりませんでした。

ボールが入らず起点に出来ず、ルーカスとの連携も悪く逆に邪魔する有り様。平山自体の動きも良くなかった。なんで75分過ぎまで引っ張ったのか?後から入った赤嶺が前線をそれなりに活性化させたのを見ると、原監督は勝負カンもニブっているとしか、言えないなぁ〜。

修正を繰り返すうちに、訳がわからなくなっているのが、現状だと思います。

まずは、チームコンセプトへの原点回帰が、肝要だと思います。

ナビスコネタではないのですが、ゾッとしたといえば・・・。
今まで降格と言ってもどこか他人事のような、最後は結局中位に落ち着くような予感があったのですが、たとえば折り返しまでを考えると、、、
■折り返しまでの残り対戦チーム
ジェフ、横浜FM、名古屋、清水、浦和、甲府、ガンバ
最低の残留目安を年間30点として、折り返し時の目標を半分の15とした場合、残り試合で7点とる必要があります。現在2勝しかしていない点、横浜FCからですら得点できていないことを考えると、残りチームから7点拾うのは現実的でない気がします(2勝1分?どこに勝てるんだ?)
残りチームのことは折込み済みかも知れませんが、私はいまさらながらゾッとしました。折り返し地点の勝ち点が一桁だったりしたら、本気で寒いですね・・・。

>チームとして平山に何をさせたかったのか
そもそも東京は平山をポストプレーヤーとして育てたいのですかね、点取り屋として育てたいのですかね。少なくとも彼はヘディングがあまり得意ではない、ということは観る方も頭に入れておいた方がいいと思います(とか言ってると今日あたりドーンと頭で決めたりして(笑))。

>修正を繰り返すうちに、訳がわからなくなっている
確かに、横浜FC戦の試合の中だけ見ても、交代やフォーメーション等の修正をするたびに状況が悪化していく感じでしたからね。

>■折り返しまでの残り対戦チーム
まったく、だからこそ、今日の試合が大事になりそうですね。今日勝ち点が拾えれば、名古屋の調子も落ちているし、まあ大丈夫かな、と。負けてしまうと、中断期間までにたてなおすのは相当厳しそうだけど……。

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