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2007年04月30日

●ここまでは助走の助走 (ラグビーアジア三ヶ国対抗試合)


昨日の午後、秩父宮ラグビー場でアジア三ヶ国対抗試合第2戦。日本代表 73-3 香港代表。圧勝の韓国戦から大幅にメンバーを変更して臨んだカーワンジャパン。前半からミスが多発、なかなか押し切れないもどかしい展開となったものの、後半には立て直してトライの山を築き、結果的に13トライを奪う圧勝となった。課題が散見されたのも確かで諸手を挙げて大喜び、とはいかないが、勝って反省できるのは悪いことではない。


先制点は早かった。1分、テンポの早いパス回しで香港守備をブレイク、最後はSO廣瀬が右ライン際を駆け抜けてトライ。有賀のコンバージョンは惜しくも外れたものの、幸先の良い出足である。ところが、そこから前半半ばまではなかなか得点の入らない時間帯が続く。日本の優勢は揺るぎないものの、ハンドリングエラーによる逸機が多い。また、慣れないシンガポール協会レフリーの教条的な判定もじれったさに拍車をかけた。

ようやく落ち着いたのは、26分に3つ目のトライを挙げた頃からか。WTB遠藤の突進を香港は止められず、面白いようにDFラインが破られていく。しかし、有賀のキック不調(成功率わずか1/6)と、ラックでのもたつきやパスミスにより、思うようにスコアは積み重ならない。27-3でハーフタイムへ。数字だけみればまずまず(10年前は香港にもなかなか勝てなかったのだよ!)ながら、スタンドの空気はもう一つスカッとしていなかったような。

後半。JKの喝が効いたのか、ジャパンはより早くアグレッシブに仕掛けていく。1分、FL佐々木の鋭い出足のボールを確保からすかさずパス攻撃、廣瀬がDFを振り切ってトライ。これで完全にペースをつかんだ。その後はSH矢富がスクラムサイドを抜け、WTB北川は幾度もライン際を快走、FL渡邊も持ち味の突破力を発揮する。パス攻撃でバックスが、モールからFWが次々トライ。終わってみれば73-3。韓国戦に続いて2週連続の大勝である。



ノックオンやラストパスのブレなど、ミスの目立つ試合だった。まあ、攻撃でいい形が作れているからこそ「あと一つちゃんと通せば!」と思ってしまうのかもしれないが。頼れるキッカーの不在も深刻な問題。有賀は最初の2本がギリギリで決まらず、リズムを失ってしまったようだ。彼だけでなく、SO安藤も含めて13本中4本の成功では……。アレジが出られる時はいいが、最低もう1人はしっかり蹴れる選手がいないと。廣瀬はなぜ蹴らない?

一方で、韓国戦と同様、カーワンジャパンの明確な方向性が見えた試合でもあった。浅い位置から面で速く押し出すシャローディフェンス。素早いパス回しからクラッシュ寸前にフォロワーへフラットなパスを通して抜き去ろうとする攻撃。大筋はこれで間違いない。あとは、選手がどれだけついて来られるかと、細部の完成度がどこまで高められるか。今後W杯に至る強豪との対戦では、ディテールこそが生命線になるかもしれないのだ。

個々の選手では、まずWTBが上々。遠藤はミスも多いが驚異的な馬力が魅力。北川はコースどりや緩急のつけ方に独特の感覚があるようで、DFを翻弄していた。LO熊谷や佐々木は悪くない仕事ぶり。廣瀬は身体能力は抜群だがゲームメイクがやや未知数。矢富は、もっと早いパスアウトと広い視野を!CTB陣は……前へ出る力はあるけど、パス能力と、受けに回った局面でどうか。有賀は、弱い相手だと地味な仕事が評価されずに損だな(笑)。


まあ、結局、再建途上の韓国と中国返還以来弱体化が進む香港とでは、本来のポテンシャルを発揮しだしたジャパンの敵ではなかったということ。問題は今後。相手は飛躍的に強くなる。クラシック・オールブラックス、オーストラリアA、フィジー(2回)、サモア、トンガ、カナダ、ウェールズ、オーストラリア。強化の時間が足りない中、この相手に勝利するのは本当に大変なことだ。個人的な希望としては3勝(W杯で1勝)以上だけれど……応援したい。

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