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2007年04月02日

●11人孤軍奮闘 (柏レイソル×FC東京)


夜、日立柏サッカー場でJ1第4節。柏レイソル 2-0 FC東京。絶好調の昇格組レイソルとの対戦は、東京ファンにとっても様々な思い出が詰まった日立台にて。レイソルが昨年1年間J2で醸成した高い組織力を発揮し、期待の若手のスーパーゴールも飛び出して個人能力頼みの東京に完勝。スコア以上に大きな差を感じさせられる敗戦だった。


開始直後から両チームの差は明白だった。柏は2~3人がかりで素早くボールホルダーを潰す守備と、着実なビルドアップからフランサ&両ウイングで勝負する小気味よいサッカー。一方東京は柏のプレス守備に中盤が寸断され、石川の力ずくのドリブルや平山・ルーカス目がけた可能性の低い放り込みが目立つ散漫なサッカー。隣で観ていたカミさんに「こりゃ「球蹴り」と「サッカー」だね」と言われてぐうの音も出ず(笑)。

それでも、意外と一方的な展開にはならず。柏はフランサのスーペルなパスやサイドを突くウイングのドリブルで良い形に持ち込むものの、最後の場面で動きの齟齬が目立つ。東京は藤山を中心にDFが持ちこたえ、こぼれ球を拾いまくる栗澤の活躍でチャンスを作る。8分、ルーカスのキープから石川がゴールライン際をえぐったがDFブロック。12分、菅沼のスルーパスで鈴木が一対一になるも土肥が好セーブ。その後も一進一退が続く。

均衡が破れたのは34分。柏は鈴木が右に流れてドリブル、東京DFが寄ったところでファーを目がけたクロスに逆サイドから菅沼が猛スピードで走り込む。石川が長駆カバーに走ったが一歩届かず、ダイレクトボレーがゴール右隅に突き刺さって柏が先制した。「目の覚めるような」という形容詞がピッタリの素晴らしい得点。決まった瞬間、バックスタンドの東京ファン密集地帯は水を打ったように静まりかえった。そのまま0-1で前半終了。


後半頭から東京は石川に代えて梶山を投入。さらに福西が前がかりで今野が中盤の底を支える布陣に。4分、フランサのパスで突破した菅沼が勝負してCK、こぼれ球をDF古賀が蹴り込んで0-2。東京は前半よりもボールは持てるようになったものの、攻撃の形がよく見えない。53分、規郎からボックス内の福西へパスが通るがシュートはバーの上。逆に柏のカウンターが形になりだし、アルセウや山根のミドルシュートが東京ゴールを襲う。

66分、平山・栗澤OUTでワンチョペ・川口IN。相手DFの嫌なところを突ける川口が入ったのと、疲れから柏の攻守の切り替えが遅くなったのとで、東京がSBも上げて押し込む形に。しかし、古賀を中心とする柏DFは粘り強かった。集中力を切らさずトップへのパスをカットし、クロスをはね返し続け、機を見てラインを押し上げる。カウンター狙いの攻撃陣もフランサを起点として東京陣を強襲、「あと一歩」という場面が何度か。

終盤、両ボランチの動きも落ちパスがつなげなくなった柏だが、石崎監督は動かない。「このままで行ける」と動かなかったのか、それとも動けなかったのか……。惜しかったのは75分の場面。規郎のクロスがゴール正面ワンチョペの足下に入り、南が飛び出してこぼれたボールを走り込んだ福西が無人のゴールへシュート!が、足を滑らせて宇宙開発。77分には梶山のスルーパスで川口がボックス内へ突入するも、南が飛び出して押さえる。

結局、東京は最後までレイソル守備陣を崩しきることはできず。残り10分で阿部吉朗を投入した柏が2点差のまま逃げ切りに成功した。柏サポーターはもちろん諸手を挙げての大喜び。なんでも柏の広報担当がこの日で退任とかで、終了後にはゴール前で胴上げされる光景も。僕は岡山のマイクパフォーマンスが始まる前に引き上げたのだけど、きっとドンチャン騒ぎになったのだろうな。ああ、羨ましい。



柏は良いチームだと思った。コンセプトが明確で、よく訓練されていて、選手は役割の中で自分の長所を出し切ろうと懸命で……まるで2000年のFC東京みたいだ、というのが率直な印象。おまけに、組織力と言ってもありがちな「守ってカウンター」ではなく、ビルドアップやスペースメイクの意識と仕組みができているあたり、今回のノブリンサッカーは志が高いと思う。ちょっと最後の詰めが甘いのが気になるところではあるが。

個々の選手を見ると、フランサという大砲が1人いて、それ以外はやや小粒にも思えるが「ぴりりと辛い」駒が揃っている。菅沼・李・鈴木といった生きのいい若手はいるし、山根はいぶし銀でクレバーだし、古賀や南はいつの間にか頼もしくなっているし。いや、やっぱり良いチームだ。今後の問題点を探すとすれば、フランサ不在時の攻撃のバリエーションへの不安を含め、選手層の薄さになるだろうか。何にせよ、興味深いチームである。

東京としては、柏のような組織力勝負のチームと対戦すると何が嫌かって、こちらの行き当たりばったりぶりがさらけ出されてしまうことだ……大分戦の時にも全く同じ事を書いたっけ(笑)。特にグループ戦術の差は、唖然とするほど大きかった。代表経験者を並べているのはこちらの方なのに、同数の局面でコロコロ負けるってのはどうなってんだ。即興的な判断の中で「たまたま」ベクトルが一致した時だけ良いプレーが出る感じ。

選手起用についてもちと首を傾げたくなる。五輪予選に挟まった日程で難しいのはわかるんだけど、それにしてもちょっとその場しのぎに過ぎるのではないだろうか。五輪代表中心のチーム作りを優先させて、当然の事ながら五輪組の疲弊と共に戦闘力が低下して、でもバックアップチームができていないのでやはり五輪組に頼らざるを得ず……というのは悪循環ではあるまいか。梶山あたり、腹くくって休ませた方が良かったのでは。

現地で観ていて、選手たちは頑張っている、と思った。やれ気持ちがどうだのシュートの少なさがどうだの言う人もいるかもしれないが、選手たちはそれなりによく走っていたし、戦っていた。健闘が光った栗澤や藤山や川口はもちろん、批判を受けがちな石川や伊野波だって、置かれた状況の中では奮闘したと思う。ただ、悲しいことに、個々の頑張りが連動せず、チーム全体のパフォーマンスに結びついてないんだよね。「11人孤軍奮闘」とでも言おうか。

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コメント

柏には、すっかりお株を奪われてしまいましたね。
僕は03年の東京を思い出しました。
フランサがケリーに、菅沼が戸田に見えました。
あの頃は、よく戸田とナオがポジションチェンジしてましたよね。
もはや、あれは難しいんでしょうかね。

あ、そうですね。この試合ではとにかく組織力が印象に残ったので、本文には「00年の東京」と書きましたが、キープ力のあるブラジリアンがスピードのあるアタッカーを走らせてガンガン、というスタイルはむしろ「03年の東京」に近いかもしれないですね。

左右のポジションチェンジは、由紀彦とコバも、戸田と石川もやってました。けっこうハマれば有効な攻撃の工夫です。今年も開幕前の練習試合では石川が左に回ったりしていて、なかなか良い動きを見せていましたが、シーズンに入るとあまり見られないのが不思議です。中に入るにせよ左に回るにせよ、石川はもっと目先を変え(てあげ)ないと……。

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