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2007年04月08日

●同じ事の繰り返し (FC東京×アルビレックス新潟)


昨日の午後、味スタでJ1第5節。FC東京 1-3 アルビレックス新潟。開幕以来低調な戦いぶりが続く東京。水曜日(ナビスコ杯大分戦)の勝利の後、ホームに戻って上昇気流に乗りたいところだったが、新潟のカウンターサッカーにあえなく撃沈さる。完敗……どころか、内容的には4~5点差がついてもおかしくはなかった。これでホーム4連敗、今季ホーム全敗である。


立ち上がりは東京が押す形に。ルーカス・梶山のキープ力と川口・規郎の動き出しを生かし、パスをつなぎながら攻め込む。対する新潟はアウェイなりの戦いということなのか、基本的には下がり気味からのカウンター狙い。新潟陣ボックス内へのクロスやラストパスがはね返され、そのままエジミウソンを軸にした逆襲、という形が何度か。2分、エジミウソンが左サイドからグラウンダーのミドルシュートを撃ち、塩田が横っ跳びでセーブ。

東京は次第に攻めあぐむ。攻撃の連動性は相変わらずなく、守備でも大分戦ほど前に出る圧力はなし。この日のトップ下は福西。栗澤に比べたらやはりフォアチェックの効きが違う。18分、FKのこぼれ球を梶山がシュートするが左に外れ。20分には左からDFを振り切りつつ切れ込んだ規郎が壁パスでボックスへ突入するも、GKキャッチ。もっとも、新潟の方も前線へのボールの収まりが悪く、「膠着するかな」という雰囲気だったのだが。

新潟の先制点は21分。川口が自陣深くでスルーパスをカットしたところに坂本が猛然と突っかけてボールを奪い、そのまま中へ切れ込む。ボックス内には3~4人の東京DFがいたが、飛び出した徳永があっさりとかわされ、他のDFも動けないでいるうちに坂本は狙いすましたシュート。これが塩田の腕の下を抜けてゴール右隅に突き刺さる。川口のミス(なのか?あれ)よりもカバー守備の脆さがより目立つ失点であった。

またも先制された東京は反撃に出るも、新潟は自陣にしっかりと守備ブロックを形成。26分、バイタルエリアで粘った規郎がシュートするがGKキャッチ。新潟はせわしいカウンターでなく、パス回しで一旦東京を下げさせてからハーフウェーからスピードアップ、というパターンが多い。リードされる側からすればイヤなやり方だ。逆に東京は、慌て気味な割には攻撃も守備も前に加速しない感じ。なにしろ中盤の前目が精彩を欠く福西と梶山だから。

38分、川口OUT石川INの交代。うーむ。確かに川口はややキレを欠いていたのだが、前線における収まり所にはなっていた。先制点の起点になってしまったとはいえ、前半途中で代えられるほどの出来ではなかったような。39分、新潟の中央攻撃からスルーパスでエジミウソンがボックスへ突入、徳永のタックルはかわされるもシュートは塩田が右足でグッドセーブ。結局、その後も東京側にいいところのないままハーフタイムへ。



後半46分、石川のクロスのこぼれ球を拾った福西がDFの間をぬうように突進してシュート、バーの上を越える。50分には新潟が早いリスタートから左へ展開、坂本がフェイントを入れながら切れ込んだところで裏をとられた伊野波が引っ張って倒してしまい、ペナルティ。伊野波は2回目の警告で退場となり、PKもマルシオ=リシャルデスのキックに塩田が触りながらも止めきれず。0-2。「駄目だ……」という空気が場内に流れたような。

10人になった東京は今野がSBに下がって対応。53分、石川の強引な突破からクロス、ルーカスが落として福西が飛び込むもシュートできず。55分、右サイドへのロングボールを矢野が拾い、徳永を振り切りながらゴールライン際えぐってクロス。エジミウソンのシュートミスをリシャルデスが拾ってシュート、バー直撃の跳ね返りをさらにエジミウソンがボレーで叩いて、ボールは大きくバウンドしながらゴール左に吸い込まれた。0-3。

追い詰められた東京は福西を下げてワンチョペを投入。しかし、どうやって崩すのか、誰がワンチョペにパスを出すのかがよくわからない。連戦の疲労のためか次第に両チームとも中盤守備が失われてスカスカの状態になるが、東京の攻め手のなさが目立つ。ところが61分。こぼれ球を拾った今野の持ち上がりから左へ展開、規郎の強烈なクロスがシルビーニョの足に当たり、GKも反応しきれずゴールイン。もうけものの1点であった。1-3。

とにかくこれで勢いに乗りたい東京だったが……64分、カウンターに持ち込んだ場面、石川が右サイドを持ち上がって3対2の大チャンスになるも、石川は中の味方に出すそぶりも見せずにシュート、大ハズレ。オイ!!石川はここまでもひたすら外勝負に徹しており、思わず「あの日記は何だったんだ!」と言いたくなるプレーぶりだった(もっとも、中と絡もうにも中盤には梶山1人しかおらず、無理だったとは思うのだが)。

ここからは、東京の脆い中盤守備(なにしろ1ボランチ梶山(笑))を容易にかいくぐって新潟がチャンスを量産。65分、シルビーニョから右へ展開、フリーのエジミウソンが塩田の頭を越すシュート、バーのはね返りをリシャルデスが頭で押し込むがオフサイド。67分、ノープレッシャーの右サイド攻撃から松下のクロスをリシャルデスがヘッダー、塩田キャッチ。72分、こぼれ球を拾った矢野がDFの間を抜けてボックスへ突入するも塩田が飛び出してきわどくクリア。

攻守ともに連携を欠く東京に対して、新潟は決定機を作りまくる。74分、カウンターから2対3の局面で完全に崩されてエジミウソンと塩田が一対一の場面、塩田が動かず我慢してシュートブロック。78分にはエジミウソンの強引な中央突破からボックス内右側にボールがこぼれ、詰めていた矢野がきっちりゲット……したかに見えたがまたもオフサイド。「何で入らないのだろう」と不思議なくらいだが、それにつけ込めないのも情けない。

81分、金沢OUT平山IN。「パワープレイ?」と思いきやそうでもないらしい。うーむ。新潟は慌てずパス回しや交代で時間を使っていく。85分、藤山のパスカットから波状攻撃になるがワンチョペにあと一歩届かず。89分には梶山がDFをかわしながらボックスへ突入、ルーカスの狙いすましたミドルはGK北野がワンハンドでセービング。91分には新潟の好機、深井のシュートを塩田が横っ跳びで弾き出す。ここでタイムアップ。観客の帰り支度の、速いこと速いこと。



アルビレックス新潟にしてみれば、「アウェイで3点奪って勝ったのは万々歳。でももっとイケたかな」という感じだろうか。決定機の数からすれば、1-3どころか1-5や1-6になっても全然おかしくない試合だった。丁寧にチームで組み立てる部分と個人で勝負する部分をちゃんと併存させようとしているのが偉い。DFラインがやや弱いかな、という気もするが、中位以上の実力はありそうだ。坂本には東京もオファー出してたんだよな……。

一方のFC東京。伊野波退場という痛手があったとはいえ、前半から漂っていた行き詰まり感を鑑みれば、やはり不振の根は深い。問題なのは、この1ヶ月、あるいは1試合の間にも、選手を入れ替えているうちにチームのコンセプトが失われているように見えることだ。例えばこの試合の後半、ワンチョペと平山とルーカスと石川と規郎を並べて、原監督は一体何をやりたかったのだろう。中は梶山1人の中盤で、本当に攻撃が作れると思ったのだろうか。

選手起用に対する疑問も大きい。伊野波と徳永の配置替えは悪くない試みだったが、今や拘りすぎのように思える(伊野波はSBだと攻撃に神経を使いすぎて守備が粗くなるし、徳永はCBとしてはムラっ気がありすぎ)し、拘りと言えば、調子の良くない平山と梶山を無理使いするのもどうなんだろうか。赤嶺や憂太はどこへ行ったのか。また、石川に与えている役割や、FWとしての仕事もこなせる川口と石川を互換的に使うことは妥当なんだろうか。

コンセプトと、そして選手起用の迷走。チーム不振の中、個々の選手たちは決して戦っていないわけではないと思う。だが、おそらくは「どう頑張ったらいいかわからない」状態にあるのだろう。手っ取り早く「最低限」まで立て直すには大分戦前半のようなサッカーをやればいいのかもしれないが……あれが良いということになるのならば福西やワンチョペの起用は難しいし、2005年のレベルから全く進歩しないことになりかねない。


多くの人が感じているように、原監督の下でこうした行き詰まりを経験するのはこれが初めてではない。2005年の低迷の時も同じだった。あの時僕はシーズン終了後に監督交代すべきと思い、実際そうなったのだけど、昨年東京サポーター(のけっこう大きな部分)は「ガーロヤメロ」「ハラトーキョー」と声を上げ(フロントに対する当てつけだったのかもしれんけどさ)、その通り元の鞘に戻って今に至るわけだ。まあ、なんつーか、空しい状況である。

もしかしたら今回も2005年と同様、どこかでチームは立ち直って(おまけに連勝とかしちゃったりして(笑))最後は悪くない成績を収めるのかもしれない。でも、それでは同じ事の繰り返しではないか、と僕は思う。もし仮に「違う方向へ進むべきだ」と感じるのであれば、一歩足を踏み出すのは早い方がいい。

コメント

はじめまして。

楽しみに拝見しております。

新潟戦後半19分の石川のドリブル独走からのシュートは、シュートが打てるならクロスよりシュート優先なので石川の選択は悪くないと思います。(ただ枠には飛ばして欲しかった。枠に飛べば、二人詰めてましたし…。)

それより、ゴール前でボールを持ちすぎてシュート機会を逃す梶山や自分で仕掛けず単に横パスばかりの選手の方が、問題かと…。

どうにもカウンターの失点を恐れて、シュートやドリブル突破より、ボールを取られない事を優先しているとしか思えません。


1点取られたら、2点取ればいい!!位の積極的な試合をすれば、結果はついてくると思います。選手にそれだけの力はある、と信じてます。

こんにちは。>コタツねこさん

>石川の選択は悪くないと思います。(ただ枠には飛ばして欲しかった。
>枠に飛べば、二人詰めてましたし…。)
確かに。
まあ、私はバックスタンドで観ていたのですが、あの場面は「どうせ中には出さず撃っちゃうんだろうなあ」と思っていたら案の定(笑)だったのと、あとそもそも石川に中を使う(囮としても含め)意識が全くないように見えたので、かなり気になったのです。
そんな観客の偏見混じりの見方なんぞ思い切り裏切って、あそこからバシーンと枠に飛ばして詰めたワンチョペがゴール、とかなったらムチャクチャかっこいいんですけどねえ。
石川の調子自体はけっこう良かったし、バラバラのチーム状況下では頑張っていました。

>ゴール前でボールを持ちすぎてシュート機会を逃す梶山や
>自分で仕掛けず単に横パスばかりの選手
横パスも、「慌てず持って相手の弱い部分を探る」動きだったり、「左右に振り回してマークをほどく」意図だったらいいんですけどね。どうも「仕方なく横へ渡して行き詰まる」プレーが多いように見えますね。うーん……。

murataさん、おひさしぶりです、
今の東京は一見さんを誘える状態じゃないですよね、、、。
出し手と受け手の問題かミスパスは多いんで繋がらないし。

まず守備の再構築&補強、そして前目の柔軟性、指揮官、コーチの相手の分析と対策、やれないと落ちますね。
J2とかから選手取れませんかね?

こんばんは。

>今の東京は一見さんを誘える状態じゃないですよね、、、。
まったくですね。で、そういう時に限ってFC東京の営業部から「お知り合い・ご友人ご招待について」なんて手紙が来てました。間が悪いというか、健気な努力に泣けるというか……。

とりあえず、次は今野がCBに回るらしいので、ちょっと期待できるかもしれません。とにかく、まずは守備の安定から。

こんばんは、おはようございます~。ご無沙汰しています。ロンドンからの書き込みです。

ロンドンにいて、東京の試合を生で見られないし、情報も限られてしまっているので、詳細なレポートは有難いです。

ただ、味スタに通えないもどかしさを感じていますが、味スタで観戦しているサポーターも、もどかしさを感じるような状況なのでしょうか?スタンドの雰囲気はいかがですか?「こんなはずじゃなかった~」とか。「けっきょく、一周して元に戻っちゃったな~」とか。

どこかで覚醒すると信じて、遠くから見守っております。

こんばんは。いや、ロンドンだとこんにちは、ですかね。

>味スタで観戦しているサポーターも、もどかしさを感じるような状況なのでしょうか?
>スタンドの雰囲気はいかがですか?
いやー、なんかですねえ、雰囲気的には、もちろん熱く応援している人もたくさんいるんでしょうけど、全体的には「あきらめモード」というか。磐田戦頃には感じられた冷たい怒りもなく、試合が終わったら(人によっては終了前に)さっさと、淡々と帰る、という感じでしょうか。うーん。

>「けっきょく、一周して元に戻っちゃったな~」とか。
去年もうちょっと我慢しておいても良かったのにね(笑)。近道しようとして、かえって目的地からは遠ざかっちゃったみたいです。元の木阿弥。